
貯金の目標に1,000万円を掲げる方は多いことでしょう。
決して小さい額ではありませんし、きりの良さから目標にしやすいと思われます。
しかし貯金が1,000万円あっても安心とはいえません。これから貯める方にとってはショックかもしれませんが、公的な調査や人生の三大支出から考えると1,000万円では安泰とはいえない現実があります。
本記事では貯金1,000万円を貯める方法と、なぜ1,000万円あっても安心できないのかその理由を解説します。
貯金1000万円を持っている人の割合はどのくらい?
1,000万円持っている方はどれくらいいるのでしょうか?金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和2年)」から確認しましょう。
全体の約4割は1000万円以上の貯蓄あり
調査によると、全体の39.5%は1,000万円以上の金融資産を持っていることがわかりました。1,000万円以上の金融資産を持っている方はそれほど珍しいとはいえないようです。
年代 | 割合 |
---|---|
全国平均 | 39.50% |
20歳代 | 4.00% |
30歳代 | 20.40% |
40歳代 | 32.70% |
50歳代 | 42.00% |
60歳代 | 46.70% |
70歳以上 | 49.30% |
40代で貯蓄額の平均が1000万円を超える
金融資産の平均額は全国で1,436万円になりました。平均から見ても、1,000万円は多くの方が手にする金額だといえるでしょう。
年代 | 平均保有額 |
---|---|
全国平均 | 1,436万円 |
20歳代 | 292万円 |
30歳代 | 591万円 |
40歳代 | 1,012万円 |
50歳代 | 1,684万円 |
60歳代 | 1,745万円 |
70歳代以上 | 1,786万円 |
貯金1000万円を貯める方法
多くの方が手にしているといっても、これからお金を貯める方にとって1,000万円は一つの目標です。どうすれば1,000万円ものお金を貯められるのでしょうか。
家計を把握する
まずは家計を把握しましょう。優先的にチェックしたいポイントは収支です。家計の出入金のことで、基本的に入金よりも出金が小さい状態が望ましいです。
もしも収支のマイナスが常態化している場合、いずれ資産が枯渇してしまいます。できるだけ早く改善するようにしましょう。
「先取り貯蓄」を行う
先取り貯蓄とは、「使わなかった分を貯める」のではなく「貯めた残りを使う」という風に、給与などの入金の直後(または同時)に貯蓄する方法です。優先的に貯蓄を行うことでより確実に資産形成できるでしょう。
先取り貯蓄は自動的に行われる仕組みを作るようおすすめします。給与から天引きされる財形貯蓄のほか、引き落とし日を給与の直後に設定した積立定期や積立投資などが選択肢です。
資産運用する
銀行預金は金利が低く、利回りに期待できません。効率的に1,000万円を貯めるにはある程度リスクを取り、リターンを狙う方法が望ましいでしょう。次章の利回り別のシミュレーションも参考にしてください。
もちろん損をする可能性もあるため、どうしても元本割れを避けたい場合は銀行預金など安全性の高い方法で貯蓄しておくようおすすめします。
【利回り別】ゼロから貯金1000万円を目指すシミュレーション
お金を積み立てつつ資産運用で利回りを得る場合、お金がどのように増えていくかシミュレーションを確認しましょう。
仮に年間50万円を積み立てる場合、利回り別に以下のようにお金が増えていきます。やはり利回りが大きいほどお金の増加スピードが早いことがわかりますね。
利回り | 5年後 | 10年後 | 15年後 | 20年後 | (参考) 1,000万円到達にかかる期間 |
---|---|---|---|---|---|
0% | 250万円 | 500万円 | 750万円 | 1,000万円 | 20年 |
3% | 265万円 | 573万円 | 930万円 | 1,344万円 | 16年 |
5% | 276万円 | 629万円 | 1,079万円 | 1,653万円 | 15年 |
7% | 288万円 | 691万円 | 1,256万円 | 2,050万円 | 13年 |
10% | 305万円 | 797万円 | 1,589万円 | 2,864万円 | 12年 |
このシミュレーションのポイントは、利回りが高いほど1,000万円に到達する期間が短いのは当然として、それほど高いリターンでなくても貯金より効果は大きいという点でしょう。利回り3%は決して大きすぎる目標ではありませんが、利回り0%より約4年間も期間を短縮できました。
極端に高いリターンを目指さなくても現実的な利回りで十分効果を得られるでしょう。
貯金1000万円で安心できない3つの理由
1,000万円の資産を作れたとしても安泰とはいえません。理由を確認しましょう。
理由1:経済的な豊かさを実感しているのはわずか5%
上述した金融広報中央委員会の調査では「経済的な豊かさ」についてのアンケートも調査しています。全体の約4割が1,000万円以上の金融資産を持っているにもかかわらず、経済的な豊かさを実感しているのはわずか5%にとどまりました。
実感している | 5.00% |
---|---|
ある程度実感している | 41.20% |
あまり実感していない | 35.30% |
全く実感していない | 16.70% |
- 金融資産の全国平均保有額:1,436万円
理由2:貯蓄目標に到達していない
同調査では金融資産の目標額も公開され、全体では2,721万円となりました。年代別に見ても1,000万円を下回るのは20歳代(945万円)のみで、その他の年代は全て2,000万円を超えています。
年代 | 目標残高 |
---|---|
全国平均 | 2,721万円 |
20歳代 | 945万円 |
30歳代 | 2,230万円 |
40歳代 | 3,173万円 |
50歳代 | 2,963万円 |
60歳代 | 2,761万円 |
70歳代以上 | 2,576万円 |
理由3:人生三大支出をまかなえない
人生の三大支出とは一般に「教育」「住宅」「老後」に関する資金をいいます。いずれも高額な出費を伴うことが多く、貯金1,000万円で十分にまかなえるとはいえないでしょう。
日本FP協会によると、人生の三大支出の目安は以下のとおりです。教育費や住宅購入費のいずれも1,000万円を超過しており、1,000万円は老後の生活費のおよそ3年分にしかなりません。
- 教育費:1,002万円
- 住宅購入費:3,494万円
- 老後の生活費:月26万円(20年で計算すると、6,240万円)
貯金1000万円はスタートライン
これらから、貯金1,000万円は最終目標ではなく通過点に過ぎないことがわかります。1,000万円を貯めた後も慢心することなく、そこをスタートラインにしてさらに資産形成に臨んだほうがよいでしょう。
貯金1000万円の資産運用シミュレーション
1,000万円を引き続き運用した場合、どれくらいお金が増えるかも確認しておきましょう。
まずは資金を追加せず1,000万円だけを運用する場合です。上述した積み立てシミュレーションと比較するとお金が増えるスピードがやや落ちていますね。資金を追加しない場合、お金を増やすにはある程度の利回りが求められそうです。
利回り | 5年後 | 10年後 | 15年後 | 20年後 |
---|---|---|---|---|
3% | 1,126万円 | 1,305万円 | 1,513万円 | 1,754万円 |
5% | 1,216万円 | 1,551万円 | 1,980万円 | 2,527万円 |
7% | 1,311万円 | 1,838万円 | 2,579万円 | 3,617万円 |
10% | 1,464万円 | 2,358万円 | 3,797万円 | 6,116万円 |
年間50万円の積み立てを続けた場合は以下のとおりです。利回り3%でも20年後には3,000万円に到達しました。もちろん利回りが高いほど有利で、利回り10%では22年後に1億円を突破する計算です。
利回り | 5年後 | 10年後 | 15年後 | 20年後 |
---|---|---|---|---|
3% | 1,391万円 | 1,878万円 | 2,443万円 | 3,097万円 |
5% | 1,492万円 | 2,180万円 | 3,059万円 | 4,180万円 |
7% | 1,598万円 | 2,529万円 | 3,835万円 | 5,666万円 |
10% | 1,769万円 | 3,155万円 | 5,386万円 | 8,980万円 |
1,000万円を最終的にどの程度まで増やすかにもよりますが、より高い目標を目指すなら積み立ても継続したほうがよいでしょう。
貯金1000万円をさらに増やす資産運用方法とは
1,000万円を資産運用で増やすにはどのような商品がよいのでしょうか?本記事ではリスクが低い順に以下4つの商品をおすすめします。
- 債券
- 投資信託
- ヘッジファンド
- 株式投資
債券
国や企業が資金調達のために発行する商品です。
元本と利息の支払いが約束されているため、満期まで保有したときの利回り(最終利回り)が事前に確定しているという特徴があります。
例えば金利2%、5年後の満期に額面100円で償還される債券を98円で買うとき、満期まで保有した場合の利回りは約2.4%です。
【参考】最終利回りの計算方法
{金利+(償還額面-買付単価)÷年数}÷買付単価 =最終利回り
{0.02+(100-98)÷5}÷98 = 0.024
このように、債券は発行者が破綻しない限り事前に利回りが確定しているため比較的リスクの低い商品に数えられるでしょう。ただしその分、他の商品よりもリターンは低い傾向にあります。
債券は資産運用に取り組みたいものの、比較的低いリスクで運用したい方におすすめです。
投資信託
債券や株式など、複数の資産を一つにしたパッケージ型の商品です。組み入れられている資産によって特徴が異なり、一般に株式の比率が多いほどリスクが大きく、債券の比率が多いほどリスクが小さくなります。
投資信託は不特定多数の投資家から資金を集め、ファンドマネージャーが一括して運用しています。銘柄の選別や売買のタイミングはファンドマネージャーに任せられるため、資産運用の知識がない方でも本格的な運用ができるでしょう。
また最低投資額の少なさもポイントです。投資信託は銀行や証券会社で幅広く募集されており、100円~1万円の少額で始められます。少額から始めたい方にも投資信託はおすすめです。
ヘッジファンド
ヘッジファンドは運用会社の一つで、投資信託と同じく投資家に代わって資産運用を行います。
運用方針はユニークで、特に売り(ショート)取引を行う点で投資信託とは異なります。投資信託は基本的に買い(ロング)のみ行いますが、ヘッジファンドは売り取引も含めた高度な運用を行います。
これにより、投資信託は基本的に上昇相場でしか利益を得られませんが、ヘッジファンドは下落相場でも利益の獲得が可能です。
ただし、投資信託と異なり誰でも資金を預けられるわけではありません。ヘッジファンドは主に機関投資家や富裕層の資金を運用しており、個人投資家からの出資を受け付けていないケースも多いです。
個人向けのヘッジファンドもありますが、最低投資額が大きい傾向にあり、少なくとも1,000万円以上の投資を求められることが一般的でしょう。
ヘッジファンドは、まとまった金額を預けられる方におすすめの資産運用です。
株式投資
自分で株式を個別に選んで直接投資する方法です。投資信託やヘッジファンドを通じて投資するより大きなリターンを得られる可能性があるでしょう。
ただし、当然ですがリスクも伴います。また銘柄選別には企業の財務や株価の分析が望ましいため、一定の知識も必要です。リスクの高さと求められる知識・経験が株式投資のハードルといえるでしょう。資産運用の勉強に割ける時間が十分にあり、かつある程度のリスクに耐えられる方は株式投資をおすすめします。
まとめ
本記事の内容を以下にまとめました。
- 多くの方が貯金1,000万円を保有している
- 1,000万円貯めるには「家計の把握」「先取り貯蓄」「資産運用」が大切
- 貯金1,000万円は安泰ではなくスタートライン
金融広報中央委員会によると、全体の約4割が1,000万円以上の金融資産を持ち、その平均は1,400万円を超えています。貯金1,000万円は手の届かない目標ではなく、多くの方が手にしている金額といえるでしょう。
貯金1,000万円は決して小さい金額ではありませんが、貯蓄目標や人生の三大支出から考えると最終目標とはいえません。1,000万円に到達した後も資産運用を検討してください。その際は債券や投資信託、またヘッジファンドや株式投資を考えてみてはいかがでしょうか。