最優秀ヘッジファンドを受賞した「アキトキャピタル」の運用戦略とは?

独自の戦略で顧客の資産運用を担うのがヘッジファンドです。
欧米では広く活用されており、ハーバード大学といった一流大学も基金の一部をヘッジファンドに預けています。

ヘッジファンドの本場は海外ですが、国内にも優秀なヘッジファンドは少なくありません。その代表的な存在が「アキトキャピタル(暁翔キャピタル。以下アキトキャピタル)」でしょう。外資系金融機関出身ファンドマネージャーが率いる和製ヘッジファンドで、2020年には国際的なヘッジファンドアワードで複数部門の賞を獲得しました。

アキトキャピタルはどのような運用戦略を行うのでしょうか。本記事で簡単に解説します。

アキトキャピタルの概要

会社の全貌

アキトキャピタルの概要は以下のとおりです。ヘッジファンドは金商法上の登録が必ずしも必要なわけではありませんが、アキトキャピタルは投資顧問業として登録があります。

悪質な業者もありますが、アキトキャピタルにその懸念はないといえるでしょう。

商号等暁翔キャピタル株式会社
登録番号等関東財務局長(金商)2202号(投資顧問業)
代表者代表取締役社長 山口 功一郎
本社所在地〒100-0004
東京都千代田区大手町1-1-1
大手町パークビルディング8階
資本金900万円
設立2009年3月

アキトキャピタルのファンドマネージャー

ファンドマネージャーの全貌

アキトキャピタルの代表で最高投資責任者(CIO)は山口功一郎氏です。スイス系金融機関「UBS証券」から英系大手ヘッジファンド「ホライゾンアセットインターナショナル」に移り、中小型株式の運用を手掛けました。その後2009年にアキトキャピタルを起ち上げ、顧客ファンドに同じく中小型株式の運用を助言しています。運用者としての経歴は申し分ないでしょう。

アキトキャピタルの主な投資対象は上場企業ですが、山口氏は非上場企業へ投資を行うベンチャー投資家としての一面も持っています。近年は「HIRAC FUND(ヒラクファンド)」や「グローブアドバイザーズベンチャーズ」といったベンチャーファンドに支援者やサポーターとして名を連ねています。

アキトキャピタルの運用戦略

主な戦略とは

アキトキャピタルはどのような運用を行うのでしょうか?ここで概要を確認しましょう。

国内中小型株ファンドのロング・ショート

アキトキャピタルの主な運用戦略は国内の中小型株式を対象としたロング・ショート戦略です。

ロング・ショート戦略とは、値上がりが期待できる銘柄には買い(ロング)を仕掛け、値下がりが予想される銘柄には売り(ショート)を仕掛ける戦略です。上下双方向にポジションを持てるため、値上がりと値下がり両方の局面で利益を得られるメリットがあります。

ただし銘柄を誤れば上下どちらの方向でも損失が生まれるため、銘柄の選別に自信があるファンドに向く運用戦略といえるでしょう。

ただしアキトキャピタルは売り(ショート)を市場に対するリスクヘッジとして活用するケースもあり、このようなロング・ショート戦略を特に「マーケットニュートラル(ベータニュートラル)」といいます。市場の変動はショート部分で相殺されるため、単純なロング・ショート戦略よりも一般にリスクが下がる傾向にあるでしょう。

2020年ヘッジファンドアワードで4部門選出・2部門受賞

ロング・ショート戦略は多くのヘッジファンドが採用しています。日興リサーチセンターによると、ヘッジファンドの運用残高の32.8%はロング・ショート戦略が占めました(2021年12月末時点)。

多くのヘッジファンドが採用するロング・ショート戦略ですが、アキトキャピタルはその中でも優秀な成績を収めています。国際的なヘッジファンド評価機関「ユーリカヘッジ」がアジアの優秀なファンドを表彰する「ユーリカヘッジ・アジア・ヘッジファンドアワード(Eurekahedge Asian Hedge Fund Awards)」において、アキトキャピタルが助言を行う「アキトファンド」が2020年の4部門にノミネートされました。内2部門では最優秀ファンドとして表彰を受けています。

【アキトファンドの受賞歴(ユーリカヘッジ・アジア・ヘッジファンドアワード2020)】
ノミネート受賞
日本の最優秀ヘッジファンド
(Best Japan Hedge Fund)
アジアで最も安定的に収益を稼いだファンド
(Most Consistent Asia-based Fund)
アジア最優秀ロング・ショート戦略ファンド
(Best Asian Long/Short Equity Fund)
アジア最優秀ビリオンダラーヘッジファンド
(Best Asian Billion Dollar Hedge Fund)

アキトキャピタルは国内ではもちろんアジアでもトップクラスのヘッジファンドといえるでしょう。助言を行うアキトファンドは、最低投資額が1億からでハードルは非常に高いですが、チャレンジできる方は検討しても良いかもしれません。

ただ、全てのヘッジファンドがこのようにハードルが高いわけではなく、富裕層しか利用できないというよりは、身近な存在になってきています。
では、どういったファンドになのかをこのあと解説していきます。

そもそもヘッジファンドとは?

ヘッジファンドの概要

国内ではヘッジファンドが一般的とはいえず、ヘッジファンドがどのような存在なのかわからないという方は多いでしょう。ここでヘッジファンドの概要を解説します。

投資信託との違い

ヘッジファンドは一般的な投資信託との対比で考えると理解しやすいかもしれません。どちらも投資家の資金を運用する点は共通していますが、以下のような違いがあります。

資金の集め方主な投資家運用方針
投資信託不特定多数から広く(公募)個人買い(ロング)のみ
ヘッジファンド特定の投資家から狭く(私募)機関投資家、富裕層買い(ロング)のほか売り(ショート)も行う

資金の集め方と主な投資家

投資信託は銀行や証券会社などで広く募集されています。このような資金の集め方を「公募」といい、基本的に誰でも購入可能です。

ヘッジファンドは特定の投資家の資金のみ受け入れており、多くの場合少額の資金は受け付けていません。一概にはいえませんが、国内ヘッジファンドの場合、最低でも1,000万円以上の投資が求められるでしょう。以前は2,000~3,000万が多かったことから、ハードルは低くなりつつあります。
このような資金の集め方を「私募」といい、年金基金などの機関投資家や富裕層がヘッジファンドの主な顧客となります。

運用方針

投資家にとって重要なのは運用方針の違いでしょう。投資信託は基本的に買い(ロング)だけ行います。
この場合、利益の機会は上方向、つまり値上がりにしかありません。値上がりが期待できる銘柄に投資すれば利益を得られそうですが、個別の銘柄はどうしても市場全体の影響を受けるため、相場全体が下落方向に動くときは利益を得ることが困難です。

一方多くのヘッジファンドはアキトキャピタルのように売り(ショート)も織り交ぜながら自由な運用を行います。仮に相場全体が下落方向にあっても売り(ショート)で利益を得ることができるでしょう。

つまりヘッジファンドの場合、相場が上下どちらのトレンドにあっても利益を得ることができるのです。

このように、ヘッジファンドの相場動向に依存しない運用方針を「絶対収益の追求」といいます。この「絶対」は相対の対義語で、「比較対象がない」といった意味です。

言い換えれば「相場がどのような状態でも一定の利益を目指す」ことであり、ファンドマネージャーの手腕次第でいつでも利益を得られる可能性があるでしょう。

主な運用戦略

ヘッジファンドはさまざまな運用戦略を用います。

主なものを以下にまとめました。手法は異なりますが、いずれも相場の影響を受けない絶対収益の追求を行う点で共通しています。

主な3つの戦略
マネージドフューチャーズ先物を活用したロング・ショート戦略。金利や先物といった金融先物のほか、金や原油などの商品先物も取り扱う。
アービトラージ同一資産が異なる価格で取引されているとき、安い価格での買い(ロング)と高い価格での売り(ショート)を同時に仕掛け、両者の価格差を得る戦略。
イベント・ドリブンM&Aなど価格に大きな影響を与える重要なイベントの発生を予想して取引を行う戦略。予想通りイベントが起きたとき、相場から独立したリターンを得られる可能性がある。

ヘッジファンドの運用成績

日興リサーチセンターによると、ヘッジファンドの各戦略における運用成績は以下のとおりです(2021年12月時点)。単純なリターンはTOPIXに届かなかったものも多いですが、リスクは全ての戦略でTOPIXの半分以下となりました。

同じリスクを取ったとき、ヘッジファンドのほうが効率よくリターンを稼いでいるといえるでしょう。

【運用戦略別 ヘッジファンドの運用成績(2021年12月時点)】
リターン(直近1年)リスク(直近1年)リターン/リスク
株式ロング・ショート10.34%5.04%2.05
マネージドフューチャーズ6.72%4.94%1.36
アービトラージ5.05%1.57%3.22
イベント・ドリブン13.20%4.79%2.76
参考)配当込みTOPIX12.74%10.51%1.21

まとめ

契約をする投資家

本記事の内容を以下にまとめます。

  • アキトキャピタルは国内のヘッジファンド
  • 主な運用は国内中小型株のロング・ショート戦略
  • 国際的なヘッジファンドアワードの複数部門を受賞
  • 「絶対収益の追求」がヘッジファンドの強み

アキトキャピタルはアジアでもトップクラスの国内ヘッジファンドです。主な運用戦略は国内中小型株で行うロング・ショート戦略で、優秀な成績を収めたことから国際的な賞で複数部門を受賞しました。

ヘッジファンドには誰でも資金を預けられるわけではなく、アキトファンドでは1億円以上から、他のヘッジファンドでも最低1,000万円以上は求められるでしょう。

しかしヘッジファンドは海外では主流な運用方法の一つであり、アキトキャピタルのように国内にも優秀なヘッジファンドはあります。日興リサーチセンターの資料でもTOPIX(配当込み)より効率的に運用できている様子が読み取れました。

資金面の問題がないならヘッジファンドでの資産運用を検討してみてはいかがでしょうか。
ヘッジファンド選びや、買い方などが知りたい方はこちらの記事も是非チェックしてみましょう。

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