「物言う株主」エリオット・マネジメントとは?国内実績と運用戦略について解説

世界的なヘッジファンドの1つ「エリオット・マネジメント」は、ビリオネア「ポールシンガー」氏が率いるアクティビストファンドです。破綻国家への投資で大きな利益を得たことで有名になりました。

多くのヘッジファンド同様、エリオット・マネジメントも情報公開には積極的ではありません。情報がなかなか集まらないため困っている方も多いでしょう。

そこで、本記事ではエリオット・マネジメントについて以下のような解説を行います。

  • エリオット・マネジメントの概要
  • ファンドを有名にしたアルゼンチン政府債への投資
  • 日本企業への投資実績
  • エリオット・マネジメントのリターン

記事の最後では日本のアクティビストファンドについてもご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。

エリオット・マネジメントとは

エリオット・マネジメントとは

まずはエリオット・マネジメントの概要と、ファンドを有名にしたアルゼンチン政府債への投資につい確認しましょう。

概要

会社名 Elliott Investment Management L.P.
設立 1977年
創設者 ポールシンガー
本社所在地米フロリダ州
PHILLIPS POINT, EAST TOWER
777 SOUTH FLAGER DRIVE, SUITE 1000
WEST PALM BEACH FL 33401
運用資産 418億ドル(2021年1月1日時点)

エリオット・マネジメントはアメリカのヘッジファンドです。設立者でファンドマネージャーの「ポールシンガー」氏が1997年、130万ドルで設立しました。ファンドは順調に成長し、現在の運用資産は400億ドルを超えています。

本人も約43億ドルの純資産を持ち、フォーブス社「2020年アメリカで最も裕福な400人(The Definitive Ranking Of The Wealthiest Americans In 2020)」にも登録されている大富豪です。

アクティビストとして有名なヘッジファンド

エリオット・マネジメントはアクティビストとして有名です。ヘッジファンドの代表的な運用戦略の1つで、エリオット・マネジメントの代名詞といえるでしょう。

アルゼンチン政府債への投資で有名に

エリオット・マネジメントの実績で最も有名なものはアルゼンチン政府債への投資です。アルゼンチンは2001年デフォルト(債務不履行)に陥りましたが、エリオット・マネジメントはアルゼンチン政府の債券を6.17億ドルで取得しました。

アルゼンチンは債務のカットを通達しましたが、エリオット・マネジメントは利息を含む全額の支払いを求め提訴。15年間の争いの末、エリオット・マネジメントは2016年に22.8億ドルを受け取りました。

国家に対する訴訟で大きな利益を受け取った今回のケースは、アクティビストとしてエリオット・マネジメントを一躍有名にしました。

日本におけるエリオット・マネジメントの投資実績

日本におけるエリオット・マネジメントの投資実績

エリオット・マネジメントは日本の上場企業にも投資しています。参考に、以下3社の例を確認してみましょう。

  • 日立国際電気
  • ユニゾホールディングス
  • ソフトバンクグループ

日立国際電気

エリオット・マネジメントが2017年9月に提出した大量保有報告書から、「日立国際電気」株式を5.01%保有していることがわかりました。同年10月には8.59%まで買い進めたとする報告書を提出しています。

日立国際電気は別のファンドがTOB(公開買い付け)を仕掛けており、エリオット・マネジメントも当該TOBに応募。同年12月に同ファンドへ全株売却し、約35億円の利益を得たとみられています。

ユニゾHD

エリオット・マネジメントは2019年8月、「ユニゾホールディングス」株式を5.51%保有したとする大量保有報告書を提出しました。同社には2019年7月、旅行大手「HIS」がTOBを3,100円で仕掛けていましたが、その後複数のファンドが同様にTOBを仕掛け、買収合戦の様相を呈していました。

結局2020年4月、ユニゾホールディングスの従業員が設立したチトセア投資によるTOBが成立しました。TOB価格は6,000円。当初HISが提示した価格のおよそ倍の価格です。

エリオット・マネジメントも当該TOBに応募し、全株売却しました。大量保有報告書から、保有割合は13.14%にまで上昇していたことがわかります。株数は449万5,600株、平均取得単価は約3,650円です。したがって約100億円の利益を得たと思われます。

ソフトバンクG

2020年2月、エリオット・マネジメントがソフトバンクグループ株式に25億ドル以上投資したと報道されました。保有割合は約3%とみられています。当時のソフトバンクグループ株価は4,500円前後、本記事執筆時点(2021年8月12日)では6,654円のため、まだ保有中なら約12億ドルの評価益となる計算です。

アクティビストとしては低い保有割合ですが、投資額25億ドルは決して少なくありません。エリオット・マネジメントの実績では米通信大手「AT&T」への投資(約30億ドル)に次ぐ規模だとみられています。

エリオット・マネジメントはソフトバンクグループに自社株買いやガバナンスの強化を求めると報道されています。保有割合5%以下では大量保有報告書の提出義務がないため、今後は報道ベースで動向を知ることになるでしょう。

以上、エリオット・マネジメントの日本企業への投資3社をご紹介しました。保有中とみられるソフトバンクグループを除き、いずれも大きな利益を得たようですね。

エリオット・マネジメントのリターン

エリオット・マネジメントのリターン

エリオット・マネジメントは2020年、12.7%のリターンを得ました。

ヘッジファンド全体のリターンを表す「ユーリカヘッジ・ヘッジファンド・インデックス」は同期間3.4%だったため、エリオット・マネジメントは平均を上回る好成績を残したといえるでしょう。

エリオット・マネジメントの運用戦略「アクティビスト」とは?

エリオット・マネジメントの運用戦略「アクティビスト」とは?

エリオット・マネジメントの主な運用戦略「アクティビスト」はどのような戦略なのでしょうか。

端的にいうと株価の上昇につながる施策の実施を、経営陣に直接働きかける戦略です。

買った株式の値上がりをただ待つのではなく、自社株買いなど株価が上昇しやすい施策を促し、より直接的に株価の上昇を狙う戦略です。

株式会社では株式の保有割合が大きい株主ほど強い決定権を持ちます。したがってアクティビスト戦略では株式の保有割合を高くしなければなりません。資金力が問われる運用戦略といえるでしょう。

エリオット・マネジメントへのネット上での反応

エリオット・マネジメントへのネット上での反応

Twitterで反応を調べると、著名ファンドだけにエリオット・マネジメントの動向は大きく注目されていることがわかります。特に同ファンドが取得した株式は値上がりが期待されるため話題になる傾向があるようです。

アクティビスト戦略の目的は株価の上昇のため、アクティビストファンドによる株式取得は株価の値上がりをイメージさせます。それが著名なエリオット・マネジメントならなおさらでしょう。インターネット上の反応も概ねそのような傾向がありました。

今後もその動向が注目されるでしょう。

日本のアクティビストファンド

日本のアクティビストファンド
アクティビストファンドの本場は欧米ですが日本にも存在します。代表的な2つの個人向け国内アクティビストファンドをご紹介します。

ストラテジックキャピタル

名称株式会社ストラテジックキャピタル Strategic Capital, Inc.
代表 丸木 強
所在地 東京都渋谷区東3-14-15 MOビル6F
事業内容投資運用業
投資助言業
第二種金融商品取引業

「ストラテジックキャピタル」は国内上場企業に投資を行うアクティビストファンドです。企業が本来持つ価値に比べて市場評価が低い(株価が安い)銘柄に集中投資し、その要因を改善できるよう積極的に働きかける戦略を取ります。

ストラテジックキャピタルはヘッジファンドとしては珍しく、投資先情報の公開に積極的です。通常ヘッジファンドは運用戦略を秘匿しますが、アクティビスト戦略ではほかの株主から理解を得ることはプラスにもなり得ます。同ファンドが情報公開に積極的な理由はそういった背景からかもしれません。

HPで過去の実績まで細かく公開しているためアクティビストファンドに興味があるなら覗いてみるといいでしょう。

資料は基本的には英文でプレスリリース情報などの理解は企業経営に関する知識が必要という口コミも見受けられます。そのため、知識が豊富な玄人にはぴったりのファンドとなるでしょう。

Japan Act

名称 Japan Act 合同会社
代表 葛生 大祐
所在地 東京都千代田区神田須田町1-14-1 ヒューリック神田須田町ビル2F
事業内容経営コンサルティング業務
M&Aアドバイザリー業務
有価証券の保有、運用及び投資業務
前各号に附帯または関連する一切の業務

「Japan Act」も国内のアクティビストファンドです。ストラテジックキャピタル同様、市場から低く評価されている国内の上場企業へ投資を行い、株主提案を通じて株価上昇を積極的に働きかけます。

Japan Actは投資先企業を公開していませんが、過去には「サンエー化研」に対する議決権行使のリリースを出しています。また投資方針と議決権行使基準については公開しているため、そちらを読めばどのような運用を行うのかある程度イメージできるでしょう。

ネットでは情報は少ないものの、出資者には簡単なレポートが送られているようです。そのため、知識や経験の少ない個人でも参加しやすいファンドといえそうです。

JapanActについては下記の記事でもまとめています。

まとめ

まとめ

エリオット・マネジメントはアメリカの著名ヘッジファンドです。野心的な運用戦略を行いますが、出資者の立場から見ればこれほど心強い存在はないでしょう。

国内にもアクティビスト戦略を行うヘッジファンドはあります。出資には条件がありますが、アクティビスト運用に興味がある方はコンタクトを取ってみてはいかがでしょうか?

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