
「ヘッジファンドは個人で投資できない」と思い込んでいませんか?
確かに投資が難しい面はありますが、個人でもヘッジファンドには投資することができます。投資方法を知らずに過ごしていてはヘッジファンドに運用してもらえるチャンスを逃してしまうかもしれません。
ある程度のまとまった運用資産のある方であれば、実はヘッジファンドのハードルは低いのです。
そこで本記事では個人がヘッジファンドに投資する方法と国内ファンドについて解説します。
後半では個人でも投資できる具体的なヘッジファンドおよびヘッジファンド仲介業者も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
ヘッジファンドとは?
ヘッジファンドに投資する方法の前に、まずはヘッジファンドの概要を押さえましょう。ヘッジファンドは運用会社の1つですが、その運用方法に特徴がありますので、簡単に確認しましょう。
「絶対収益」を追求する運用会社
ヘッジファンドを一概に説明することは難しいですが、端的にいうと「絶対収益を追及する会社」です。絶対収益の追求とは、市場の影響を受けず常に一定の利益確保を目指す運用方法を指します。
ヘッジファンドはどのように絶対収益を実現するのでしょうか。ポイントは「売り」取引にあります。
「売り」取引は投資対象が値下がりしたときに利益を得られる取引です。通常の「買い」だけだと投資対象の値上がり以外に利益は得られませんが、「売り」取引を併用すると値下がりでも利益を得られるようになります。
これにより市場全体が下落傾向にあるときでも利益を獲得できるようになるため、投資収益が市場全体の傾向に依存しなくなり、絶対収益を追求できるのです。
運用戦略の例
ヘッジファンドの絶対収益追求をより理解するため、「売り」取引を活用した具体的な運用戦略を確認しましょう。主なものを以下にまとめました。
株式ロングショート
値上がりが期待できる株式を買い、値下がりが予想される株式を売る戦略です。ヘッジファンドの基本的な戦略で、値上がり・値下がりの両方で収益機会を持つことができます。
アービトラージ
同一資産が2つ以上の価格で取引されているとき、安い価格では買い、高い価格で売りを仕掛ける戦略です。理論上、両者の価格差が必ず利益になります。
上記2つはヘッジファンドが行うさまざまな運用戦略の基本形です。ヘッジファンドはこのような運用戦略を用い、絶対収益を追求するのです。
ヘッジファンドへの投資が難しい理由
そもそも、なぜヘッジファンドへの投資は難しいのでしょうか。主に以下2つの理由からです。
- ヘッジファンドが「私募型」だから
- 最低投資額が大きいから
それぞれ簡単に解説します。
「私募型」のため広く募集していない
金融商品は大きく「公募型」と「私募型」があります。公募型は広く投資家を集めるタイプで、銀行や証券会社などの金融機関で誰でも購入することができます。
一方私募型は投資家を限定して募集するタイプです。限られた少数の投資家だけから資金を受け入れます。ヘッジファンドは基本的に私募型に属します。
ヘッジファンドが私募型を選択する理由は運用の裁量が大きいためです。公募型は広く投資家を募れる一方、運用手法は限定されます。例えば公募型である通常の投資信託は「目論見書」に記載された以外の方法で運用を行うことができません。
私募型なら市場環境に合わせて自由な運用が行えます。絶対収益の追求に不可欠なデリバティブ取引も流動的に行えるため、ヘッジファンドは普通私募型を選択します。情報公開の義務がないことも、運用方法を秘匿したいヘッジファンドに選ばれる理由の1つでしょう。
これらの理由からヘッジファンドは私募型の形態を取っており、個人が投資しにくい理由となっています。
最低投資額が大きい
最低投資額の大きさもヘッジファンドへの投資を難しくしている理由の1つです。
公募型なら1人あたりの投資額が小さくても、多数の投資家から募れば大きな運用資金を集められます。しかし、私募型のヘッジファンドは多数の投資家から資金を集められません。したがって小口の資金を受け入れていると資金が積み上がらず、十分な運用ができない懸念があるのです。
一概にはいえませんが、ヘッジファンドは最低投資額を1,000万円以上にしているケースが多いです。中には数億円ないと資金を受け入れないヘッジファンドもあります。
余裕資金で1,000万円以上預けられる方は限られるでしょう。「私募型」であることと「最低投資額の大きさ」がヘッジファンドへの投資が難しい理由です。
個人がヘッジファンドに投資する方法
ここで本記事の本題、「個人がヘッジファンドに投資する方法」を確認しましょう。
上述の理由からヘッジファンドには投資が難しいですが、最低投資額の条件をクリアできるなら選択肢には入ります。どうすればヘッジファンドに投資できるのでしょうか。主に以下2つの方法があります。
- 個人向けヘッジファンドと直接契約
- 仲介業者に依頼する
1つ目の方法は個人向けヘッジファンドにコンタクトを取り、直接契約する方法です。面談で投資額や運用方針などについて説明を受け、合意の後に投資が可能となります。
もう1つは仲介業者に依頼する方法です。直接契約の場合はヘッジファンドの情報の少なさが障壁ですが、仲介業者を利用すればスムーズに契約できるでしょう。通常では契約が難しいヘッジファンドの仲介も受けられるかもしれません。仲介業者としては、ヘッジファンド専門の証券会社やプライベートバンカーなどが考えられます。
個人向け、機関投資家向けの違い
ヘッジファンドには大きく個人向けと機関投資家向け(法人向け)の2つがあります。ヘッジファンドへの投資は、基本的に個人向けヘッジファンドを選ぶことになるでしょう。
次章で具体的な個人向けヘッジファンドを紹介しますが、本記事では以下の条件を満たすタイプを個人向けヘッジファンドとします。
- HPからコンタクトを取れる
- 最低投資額が1,000万円程度
HPからコンタクトを取れることを個人向けの条件としました。仲介業者を利用しない場合、こちらからコンタクトを取る必要があるためです。中には紹介がないと契約できないヘッジファンドもありますが、そのようなケースでは投資が難しいでしょう。
また最低投資額が1,000万円程度に収まることも個人向けヘッジファンドの条件としました。あまりに高額の投資額が求められる場合、個人では投資が難しいと考えられるためです。
これらの条件を満たす個人向けヘッジファンドを次章にまとめたので確認しましょう。
個人が投資できる国内ヘッジファンドの例
以下のヘッジファンドは上述した個人向けの条件を満たします。
- Japan Act
- BMキャピタル
- フロンティア・キャピタル
それぞれ概要を押さえましょう。
Japan Act
名称 | Japan Act合同会社 |
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住所 | 東京都千代田区神田須田町1-14-1 ヒューリック神田須田町ビル2F |
事業内容 | (1)経営コンサルティング業務 (2)M&Aアドバイザリー業務 (3)有価証券の保有、運用及び投資業務 (4)前各号に附帯または関連する一切の業務 |
コンタクト | 電話:03-6859-8395 URL:https://www.japanact.com/lpa/ |
最低投資額 | 1,000万円(1,000万円以下は応相談) |
「Japan Act」は国内上場企業へ投資を行うヘッジファンドです。割安な価格に放置されている企業へ投資を行い、株主提案を通じて株価上昇につながる施策の実施を促す「アクティビスト」運用を主に行います。
最低投資額は1,000万円としていますが、1,000万円以下の場合も相談可能です。
BMキャピタル
名称 | ビーエムキャピタル合同会社 |
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住所 | 東京都港区六本木7-18-1 |
事業内容 | (1)金融商品取引法に基づく有価証券及びデリバティブ取引 (2)各種事業への投資 (3)有価証券の自己募集 (4)経営コンサルティング業務 (5)前各号に附帯する一切の業務 |
コンタクト | 電話:03-3403-2508 URL:https://bmcapital.jp/BM/ |
最低投資額 | 1,000万円(1,000万円以下は応相談) |
「BMキャピタル」も主に日本株式で運用を行うヘッジファンドです。
損失を出さない運用を信条とし、過去に運用成績がマイナスになった年がないとしています(HPより)。
BMキャピタルの最低投資額は原則1,000万円ですが、1,000万円以下の出資も相談可能です。
フロンティア・キャピタル
名称 | フロンティアキャピタル合同会社 |
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住所 | 東京都港区浜松町2-2-15-2F |
事業内容 | (1)金融商品取引法に基づく有価証券及びデリバティブ取引 (2)各種事業への投資 (3)有価証券の自己募集 (4)経営コンサルティング業務 (5)前各号に附帯する一切の業務 |
コンタクト | 電話:03-6860-0755 URL:https://frontiercapital.jp/159235/ |
最低投資額 | 1,000万円(1,000万円以下は応相談) |
「フロンティア・キャピタル」は主に新興国株式、特にイラン株式への投資を行うヘッジファンドです。
イランは高成長が期待できる国の1つですが、アメリカにテロ支援国家に指定されており、日本でも外為法における「北朝鮮・イラン規制関連取引」などで資金の供給が禁止されています。通常の金融商品を通じた投資は現実的ではありません。フロンティア・キャピタルは、日本において唯一イランへ投資できる方法といえるでしょう。
フロンティア・キャピタルも最低投資額は原則1,000万円で、それ以下は応相談としています。
ヘッジファンドの個人向け仲介業者の例
次に個人が利用できるヘッジファンドの仲介業者として以下3社ご紹介します。いずれも金商法上の登録を行っている業者を選びました。
- ヘッジファンドダイレクト
- ヘッジファンド証券
- くにうみAI証券
それぞれの概要を押さえましょう。
なお仲介業者の場合は複数のヘッジファンドを取り扱う場合があり、最低投資額はそれぞれ異なります。ここでは各社公式HPで確認できる最低投資額を記載していますが、ヘッジファンドによっては異なる場合がある点には注意してください。
ヘッジファンドダイレクト
名称 | ヘッジファンドダイレクト株式会社 |
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住所 | 東京都千代田区大手町1-5-1 大手町ファーストスクエア ウエストタワー 18F |
登録 | 金融商品取引業者(投資助言・代理業) 関東財務局長(金商)第532号 |
連絡先 | 電話:0120-104-359 URL:https://hedgefund-direct.co.jp/request/ |
最低投資額 | 2,000万円 |
「ヘッジファンドダイレクト」は2008年創業の投資助言会社で、主に海外籍ヘッジファンドを富裕層へ提案しています。個人向けのヘッジファンド専門投資助言会社としての実績は国内トップクラスです。
最低投資額は2,000万円。本記事で紹介する仲介業者の中では最も高額ですが、資金面をクリアできるなら有力な候補でしょう。
ヘッジファンド証券
名称 | ヘッジファンド証券株式会社 |
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住所 | 東京都千代田区霞が関3-2-1 霞が関コモンゲート西館32階 |
登録 | 第一種・第二種金融商品取引業 関東財務局長(金商)第2580号 |
連絡先 | 電話:0120-337-104 URL:https://hedgefund-sec.com/contact/index.html |
最低投資額 | 1,000万円 |
「ヘッジファンド証券」は2008年設立のヘッジファンド専門証券会社です。主に1,000万円から購入できる日本株ヘッジファンドを取り扱っています。
ヘッジファンド証券はインターネット取引に対応している点が特徴的です。口座開設はもちろん、ヘッジファンドの購入や解約の申し込みにも対応しています。
くにうみAI証券
名称 | くにうみAI証券株式会社 |
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住所 | 東京都千代田区丸の内2丁目2番3号 丸の内仲通りビル |
登録 | 第一種金融商品取引業 関東財務局長(金商)第1627号 |
連絡先 | 電話:03-5288-6766 URL:https://www.kuniumiai-sec.co.jp/contact/ |
最低投資額 | 1,000万円 |
「くにうみAI証券」は2007年創業の証券会社です。現物株式など、通常の証券会社と同じ商品も取り扱いますが、海外籍ヘッジファンドも1,000万円から取り扱っています。
口座開設は電話でのみ受け付けています。申し出後に書類が郵送されるため、返送し手続きを行いましょう。
ヘッジファンドへの投資は「直接契約」or「仲介業者」
本記事の内容をおさらいしましょう。
- 最低投資額をクリアできるなら個人でもヘッジファンドに投資できる
- 直接契約なら個人向けヘッジファンドが選択肢
私募型のヘッジファンドは投資家を公に募集しておらず、最低投資額も大きくはなりますが、不可能ではありません。基本的には最低投資額さえクリアできるなら投資できるでしょう。
直接契約か仲介業者を利用し、ヘッジファンドを資産運用の選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。