
「ヘッジファンド」は通常の「投資信託」とどう違うのでしょうか。ヘッジファンドの運用手法を取り入れた「ヘッジファンド型投資信託」という商品もあり、少しややこしいですよね。
本記事では、ヘッジファンドと通常の投資信託の違いについて、またヘッジファンド型投資信託の特徴についてまとめます。
ヘッジファンドとヘッジファンド型投資信託のおすすめも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ヘッジファンドと投資信託はどう違う?
ヘッジファンドと通常の投資信託の違いを確認しましょう。両者には大まかに5つの違いがあります。
ヘッジファンドと投資信託の5つの違い
投資信託 | ヘッジファンド | |
---|---|---|
運用方針 | 相対収益の追求 | 絶対収益の追求 |
投資家の集め方 | 公募 | 私募 |
ファンドマネージャーの裁量 | 「目論見書」の内容に制限 | 自由に運用できる(一任契約) |
最低投資額 | 100円 | 数百~数千万円 |
手数料 | 信託報酬 | 成功報酬 |
相対収益と絶対収益の違い
通常の投資信託の運用方針は「相対収益」です。市場全体を基準に運用するため、市場全体が上昇する局面では収益を上げやすく、下落する局面では損失となりやすい傾向があります。
それに対し、ヘッジファンドの運用方針は「絶対収益」です。市場全体がどのような値動きになるかに関わらず、常に一定の収益を目指す特徴があります。
公募、私募の違い
通常の投資信託は不特定多数から広く集める「公募」方式で投資家を募集します。広告等で広く情報を公開でき、投資家の出資や解約も基本的にいつでも受け付けています。
たくさんの投資家を集められる一方、金融庁等への届出などの事務コストが高くなりやすいデメリットがあります。
一方、ヘッジファンドは「私募」方式で投資家を集めます。一定数以下の投資家や機関投資家からのみ出資を受け付け、出資や解約に制限があることもあります。
広く投資家を集められませんが、出資を運用に理解がある投資家に限定できますし、また公募方式よりも事務コストが安くなるメリットもあります。
ファンドマネージャーの裁量の違い
通常の投資信託の場合、ファンドマネージャーは運用裁量に一定の制限を受けます。通常の投資信託は「目論見書(もくろみしょ)」に記載された運用方針に従って運用され、目論見書から逸脱した運用をすることはできません。
ヘッジファンドの場合、ファンドマネージャーはさまざまな運用戦略を取ることができます。投資家と「投資一任契約(投資家が資産運用を任せる契約)」を結んでいるという理由もありますが、出資者が運用に理解がある投資家に限定されているという点も大きいです。
最低投資額の違い
通常の投資信託の場合、ネット証券だと100円から投資できます。
ヘッジファンドの最低投資額は数百~数千万円です。募集できる投資家に限りがあるため、小口の出資を受け付けると運用資金が乏しくなってしまいます。
信託報酬、成功報酬の違い
通常の投資信託は手数料として「信託報酬」がかかります。運用成績に関わらず、投資信託の残高全体から固定の報酬率で徴収されます。信託報酬率は銘柄によって違いますが、概ね0.5~2%程度です。
ヘッジファンドの手数料は「成功報酬」方式が主流です。残高全体ではなく、運用で増えた部分から一定の報酬率で徴収されます。成功報酬率もヘッジファンドによって違いますが、20%程度が一般的です。
ヘッジファンドの手数料体系はファンドごとに大きく違い、成功報酬とは別に運用報酬(信託報酬)を取るファンドも少なくありません。コストだけみれば、ヘッジファンドの方が投資家の負担は大きい傾向にあるでしょう。
ヘッジファンドのメリット
ヘッジファンドのメリットは、なんといっても絶対収益を追求する点でしょう。市場の影響を受けず、安定的に収益を稼ぎ出す姿勢にはニーズが高いと思われます。
また成果報酬の手数料体系を取っている点もメリットの1つです。投資家の利益=ヘッジファンドの利益となり、ヘッジファンドと投資家が資産増大という1つの目標を共有することになります。
ヘッジファンド型投資信託とは?
通常の投資信託とヘッジファンドの両方の特徴を取り入れた「ヘッジファンド型投資信託」という商品があります。
ヘッジファンド型投資信託とはどういう商品なのでしょうか。概要を確認しましょう。
ヘッジファンドの運用手法を取り入れた投資信託
ヘッジファンド型投資信託の特徴を以下にまとめました。
ヘッジファンド型投資信託 | |
---|---|
運用方針 | 絶対収益の追求 |
ファンドマネージャーの裁量 | 目論見書の内容に制限 |
投資家の集め方 | 公募 |
最低投資額 | 100円 |
手数料 | 信託報酬 |
運用方針はヘッジファンドのように絶対収益を追求しますが、その他は基本的に通常の投資信託と同じです。ヘッジファンドの「絶対収益を追及する姿勢」と、通常の投資信託の「投資家が出資しやすい仕組み」の両方を兼ね備えた商品といえるでしょう。
運用手法は変更せず、決まった手法で運用
ヘッジファンド型投資信託は絶対収益を追求しますが、本当のヘッジファンドのように、さまざまな運用手法を切り替えながら運用することはできません。目論見書に記載された、絶対収益を追求できそうな運用手法を繰り返し行います。
具体的には以下のような投資戦略を行います。
ロング・ショート戦略 | 理論価格より割高の銘柄の買い(ロング)と、割安の銘柄の売り(ショート)を同時に行う投資戦略。 市場が下落相場でも売りポジションで収益獲得を目指す。 |
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マーケットニュートラル戦略 | ロング・ショート戦略の1つ。 ロングした個別銘柄と同額の市場全体(先物など)ショートポジションを持つ。 ショートポジションは個別銘柄の場合も。 ロング・ショート戦略は両方のポジションで積極的に収益を獲得する目的だが、マーケットニュートラルの場合、ショートポジションは収益ではなく市場リスクを排除する目的で行われる。 |
グローバル・マクロ | 世界の金融商品を投資対象にする戦略。世界の株式や債券など、さまざまな商品をマクロ経済的観点から割高・割安を判断し、取引を行う。 |
イベント・トリブン | M&Aなど、企業にとって重要な出来事(イベント)が発生する際の変動を収益機会にする戦略。 |
アクティビスト | 投資先企業に対し、企業価値(株価)の上昇につながる株主提案を積極的に行う戦略。 |
アービトラージ戦略 | 同一の商品が複数の価格で取引される場合に、安い価格の買いと高い価格の売りを同時に行う戦略。 理論上、リスク0で価格差がそのまま利益になる。 |
トレンド・フォロー(マネージド・フューチャーズ) | 市場全体が上昇基調なら買い、下落基調なら売りを仕掛ける戦略。 トレンド・フォロー戦略をさまざまな金融商品に分散投資することで、絶対収益を追求する「マネージド・ヒューチャーズ」でよく行われる。 |
ヘッジファンド型投資信託のメリット
ヘッジファンド型投資信託は手軽にヘッジファンドの運用手法を取り入れられる点がメリットです。公募方式なので情報は集めやすいですし、出資や解約も基本的に自由にできます。最低投資金額も、ネット証券なら100円から買えるでしょう。
初めての方におすすめしたい国内のヘッジファンド2選
ここで、ヘッジファンドとヘッジファンド型投資信託のおすすめを、それぞれ2ファンドずつ紹介します。
おすすめ1:Japan Act アクティビストとして投資先の価値上昇を促す
商号 | Japan Act 合同会社 |
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所在地 | 東京都中央区銀座1-16-7 銀座大栄ビル5階 |
投資対象 | 国内株式 |
主な運用手法 | バリュー投資/アクティビスト |
最低投資額 | 1,000万円から |
当サイト管理者も出資している、「Japan Act」は国内株式で運用するヘッジファンドです。割安に放置されている企業の株式を取得(バリュー投資)し、積極的な株主提案を通じて企業価値の上昇を図ります。
Japan Actは株主提案の実績をHPで公表しています。直近では「サンエー化研」へ株主提案を行ったようです。Japan Actがどのような株主提案を行っているか、1つの参考になるでしょう。
公式ブログも運営しており、私募型のヘッジファンドとしては比較的情報発信には積極的です。
出資の受付は、Japan Act担当従業員との面談が必要です。最低投資額は1,000万円からで、1,000万円未満の出資は要相談となります。
当サイト管理者が出せている利回りは年平均10%を超えています。
おすすめ2:BMキャピタル 「損失を出さない」が鉄則のヘッジファンド
商号 | ビーエムキャピタル合同会社 |
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所在地 | 東京都港区六本木7-18-1 |
投資対象 | 国内株式 |
主な運用手法 | バリュー投資 |
最低投資額 | 1,000万円から |
「BMキャピタル」も国内株式で運用するヘッジファンドです。Japan Actと同じように、割安銘柄に投資を行うバリュー投資で株価の上昇を図ります。バリュー投資以外に、イベント・トリブン戦略を採ることもあるようです。
BMキャピタルは「資産を守る」を鉄則に、徹底した企業価値の分析を行います。これまで損失を出したことはなく、安定したパフォーマンスを実現しています。
最低投資額は1,000万円ですが、今後出資額を増やすという条件であれば1,000万円未満でも受け付けているようです。
まとまったお金がない初心者におすすめのヘッジファンド型投資信託2選
次にヘッジファンド型投資信託のおすすめを2社紹介していきます。
おすすめ1:あい・パワーファンド 為替アービトラージのシステム運用
運用会社 | あいグローバル・アセット・マネジメント株式会社 |
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設定日 | 2019年4月23日 |
投資対象 | 外国為替 |
主な運用手法 | アービトラージ戦略 (システム運用) |
販売会社 | あい証券 あかつき証券 など |
「あい・パワーファンド」は外国為替のアービトラージ戦略を行うヘッジファンド型投資信託です。取引システムで市場を常時監視し、価格差の乖離を発見すると瞬時に買いと売りを執行し、安定収益の獲得を目指します。
ヘッジファンド型投資信託の中には運用が上手くいっていない銘柄も多くありますが、あい・パワーファンドは設定から2020年8月現在まで、安定的な運用ができているようです。
おすすめ2:ノムラ・グローバルトレンド マネージド・フューチャーズ戦略で絶対収益を追求
用会社 | 野村アセットマネジメント株式会社 |
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設定日 | 2011年4月26日 |
投資対象 | 株式、債券、金利など、さまざまな金融商品 |
主な運用手法 | トレンド・フォロー (マネージド・フューチャーズ) |
販売会社 | 野村證券 |
「ノムラ・グローバルトレンド(円コース)」はマネージド・フューチャーズ戦略を行うヘッジファンド型投資信託です。
残念ながら、直近では設定来マイナスとなっています。
ただし、2020年はプラスで推移しています。コロナショックで株式市場が大きく調整していた2~3月にも大きな調整が見られませんので、ある程度マネージド・フューチャーズ戦略が機能したことがうかがえます。
まとまったお金があればヘッジファンド、そうでないなら投資信託を
ヘッジファンドは絶対収益を追求する点に特徴がありますが、ヘッジファンド型投資信託を利用すれば、通常の投資信託でも絶対収益をある程度は享受できます。
絶対収益に興味がある方で、まとまったお金がある方は通常のヘッジファンドを、少額で運用したい方はヘッジファンド型投資信託を選択しましょう。