
欧米で資産運用の手段として発達してきた「ヘッジファンド」ですが、日本でも安定的な運用ができるとして注目を集めています。
ヘッジファンドの主流は欧米ですが、日本にも優秀なヘッジファンドがあります。情報が少ないヘッジファンドですが、本記事ではおすすめの国内ヘッジファンドをランキング形式で紹介します。
ヘッジファンドの投資手法別リターンランキングや、「ベストヘッジファンドアワード」を受賞している世界の優秀なヘッジファンドについても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ヘッジファンドとは
ヘッジファンドには通常の投資信託とは違う特徴があります。まずは特徴をおさえましょう。
ヘッジファンドは独自の投資戦略で「絶対収益」を追求する
普通、投資をすると相場全体の変動の影響を受けるため、常に収益を確保することは難しいです。このように、相場の影響を受ける収益を「相対収益」といいます。
一方、相場の影響を受けない安定的な収益を「絶対収益」といい、ヘッジファンドは絶対収益の確保を目指し運用を行います。
ヘッジファンドはどのようにして絶対収益を追求するのでしょうか。代表的な投資戦略を以下にまとめます。
株式ロングショート | ロングは買いポジション、ショートは売りポジションを意味する。 割安な株式をロングし、同時に割高な株式をショートする。 相場が上がっても下がっても収益の機会を得られる。 |
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マネージド・フューチャーズ | 世界中の先物商品を投資対象とし、ロングやショートを組み合わせる戦略。 株式ロングショート戦略と同じく、相場が上がっても下がっても収益の機会がある。 |
グローバル・マクロ | 雇用や生産など、経済の基本的な視点から理論価格を割り出し、市場価格と理論価格との乖離を収益源とする戦略。 市場価格が理論価格より割安ならロングし、割高ならショートする。 |
アービトラージ | 同じ銘柄が複数の市場で取引されているとき、安く取引されている市場では買い、高く取引されている市場で売る戦略。 市場間の価格差が利益になり、理論上は無リスクで収益を確保できる。 |
マルチストラテジー | 複数の投資戦略を柔軟に使い分ける戦略。 |
投資戦略別のリターンランキング
参考に、投資戦略別のリターンランキングを見てみましょう。日興リサーチが定期的に公表している「ヘッジファンド概況」から、2020年7月時点の直近1年間リターンを投資戦略ごとにまとめました。
順位 | 投資戦略 | リターン (2019年8月~2020年7月) |
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1位 | アービトラージ | +7.41% |
2位 | グローバル・マクロ | +6.31% |
3位 | 株式ロングショート | +5.62% |
4位 | マネージド・フューチャーズ | +3.57% |
5位 | マルチストラテジー | +3.21% |
(参考)配当込みTOPIX | ▲1.94% |
参考:日興リサーチ ヘッジファンド概況(外部サイトへ)
この間、最も高いリターンがあったのは「アービトラージ」です。TOPIXと比較すると9%超アウトパフォームしました。
その他の投資戦略も、概ね良好なリターンを稼いだようです。
投資信託との違い
ヘッジファンドと投資信託の代表的な違いは以下の通りです。
ヘッジファンド | 投資信託 | |
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運用方針 | 絶対収益の追求 | 相対収益の追求 |
投資家の集め方 | 私募型 | 公募型 |
資金のクローズ(拘束)期間 | 解約に制限がある | 原則いつでも解約できる |
多くのヘッジファンドは「私募型」で投資家を集めます。「公募型」と違い、たくさんの投資家を集めることはできません。その代わり、ヘッジファンドの運用に理解がある投資家に限定することができ、さまざまな運用戦略を取りやすくなります。
また資金にクローズ期間を設けることで、頻繁な解約作業に追われることなく、長期的な運用を行うこともできます。
ヘッジファンドの本場は欧米 世界の9割近くを占める
ほとんどのヘッジファンドが投資先に欧米を選んでおり、ヘッジファンド運用残高の9割近くが欧米への投資に回っています。ヘッジファンドの主流は欧米であることが推測できるでしょう。
一方、日本に投資するヘッジファンドはほとんどありません。国内にもヘッジファンドがありますが、世界的には少数派であることが推測できます。
米国 | 68.30% |
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欧州 | 20.40% |
アジア(日本除く) | 7.80% |
中南米 | 2.70% |
日本 | 0.70% |
参考:日興リサーチ ヘッジファンド概況 図表5(外部サイトへ)
日本にも優秀なヘッジファンドはある 国内ヘッジファンドおすすめランキング
確かに日本はヘッジファンド少数派ですが、それでも優秀なヘッジファンドは存在しています。ここで、おすすめの国内ヘッジファンドを3つ紹介します。
1位:Japan Act(ジャパンアクト)
商号 | Japan Act合同会社 |
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所在地 | 東京都中央区銀座1-16-7 銀座大栄ビル5階 |
投資先 | 日本株 |
投資戦略 | バリュー/アクティビスト投資 |
「Japan Act」は国内株式に投資するヘッジファンドです。主な投資先は日本株式で、メインの投資戦略は「バリュー/アクティビスト投資」です。
バリュー投資とは割安銘柄(バリュー銘柄)に投資することで、これは通常の投資信託でも行われる一般的な投資法です。
アクティビスト投資とは、一定以上の株式を保有し、企業価値の向上につながる株主提案や提言を積極的に行う投資法のことです。提案が採用されるときや、企業側の経営姿勢などが改善され、市場の評価が上がることで株価が上昇することが多いです。株価が上昇したときの利益と配当が主な収益源となります。
Japan ActはHPで株主提案の結果を一部公表しています。これまで「昭和パックス」や「サンエー化研」などへ提案を行っているようです。
2位:BMキャピタル
商号 | ビーエムキャピタル合同会社 |
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所在地 | 東京都港区六本木7-18-1 |
投資先 | 日本株 |
投資戦略 | バリュー投資 |
「BMキャピタル」も日本株に投資するヘッジファンドです。「損失を出さない」を信条とし、徹底したリサーチで割安企業に投資する「バリュー投資」を得意としています。
HPではこれまで損失を出した経験がないと謳っており、まさに相場の上げ下げに影響を受けない絶対収益を実現できているヘッジファンドといえるでしょう。
3位:フロンティアキャピタル
商号 | フロンティアキャピタル合同会社 |
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所在地 | 東京都港区浜松町2-2-15-2F |
投資先 | 新興国株式(特にイラン株式) |
投資戦略 | グローバル・マクロ |
「フロンティアキャピタル」は新興国に投資するヘッジファンドです。経済成長率や人口構成比などマクロの視点で投資する国を選定し、その内株式市場が割安になっている地域に投資を行います。
フロンティアキャピタルの選定基準を満たす国として、同社は「イラン」を挙げています。日本からイランへ投資する方法はほとんど用意されていないのが現状で、同社は「日本でおそらく唯一同国株式市場に投資を行うことが出来るファンド(HPより引用)」としています。
【ベストヘッジファンドアワード2020】世界の優秀なヘッジファンドは?
ここで少し参考に、「ヘッジファンドアワード」の表彰を受けた世界の優秀なヘッジファンドを見てみましょう。
ヘッジファンド調査会社「ユーカリヘッジ」による受賞ファンドを紹介
ヘッジファンド調査会社である「ユーカリヘッジ」は、優秀なヘッジファンドを表彰する「ベストヘッジファンドアワード」を発表しています。
2020年のベストヘッジファンドアワードを受賞したヘッジファンドを2つご紹介します。
【北米部門】EJF Debt Opportunities Fund
アメリカに籍を置く大手ヘッジファンド「EJFキャピタル」が運用する「デットファンド」が、北米部門で最優秀ヘッジファンドに選ばれました。EJFキャピタルはこのデットファンドだけで約4,000億円もの資金を運用しています。
デットファンドとは、相対的に信用力が低い企業に資金を貸し出し、運用するファンドです。
【欧州、中東&アフリカ部門】Omni Event Fund
イギリス領ケイマン諸島にある「Omniパートナーズ」の「イベントドリブンファンド」が欧州、中東&アフリカ部門で最優秀賞を受賞しました。同ファンドは約380億円の資金を運用しています。
イベントドリブンとは、企業の買収や合併など、将来の業績に重要な影響を与える出来事(イベント)の発生を投資機会にする戦略です。
日本のヘッジファンド事情
ここからは日本のヘッジファンド事情をまとめてみましょう。
多くが「私募型」で投資家を募集
上述しましたが、日本のヘッジファンドの多くは私募型で投資家を集めています。通常の投資信託のように広く投資家を募集できない代わりに、自由に運用できるメリットや事務コストを削減できるメリットがあります。
投資に必要な最低額は1,000万円以上
ヘッジファンドによって違いますが、国内ヘッジファンドは最低投資額を1,000万円としているものが多いようです。
海外ヘッジファンドだと5,000万円や1億円を最低投資額とするものもあります。1,000万円は決して少ない金額ではありませんが、ヘッジファンドとしては投資しやすい金額といえるでしょう。
日本のヘッジファンドを選択するメリット
ヘッジファンドの主流は欧米ですが、海外ヘッジファンドへ投資したい場合、英語でやり取りする必要があります。最低投資額も大きく、ハードルは比較的高いと言わざるを得ません。
日本のヘッジファンドを選択するメリットは、これらのハードルが低いという点です。日本語でやり取りができますし、1,000万円程度から投資することができます。
公開されている情報は乏しい 面談等で事前の情報収集を
私募型のヘッジファンドは、広告などで大規模に投資家を募集しないため、投資家にとっては事前に情報を集めにくいデメリットもあります。
ただし、ヘッジファンドへ投資したい方には個人面談などで情報を公開しています。国内ヘッジファンドへ投資を検討している方は一度面談をし、情報を得てから冷静に判断しましょう。
投資助言会社など仲介者を活用するのも手
ヘッジファンドへの投資は、自分で直接コンタクトを取る以外に、投資助言会社などの仲介者を利用する方法もあります。
仲介者は投資助言会社のほか、プライベートバンクやヘッジファンド専門の証券会社などがあります。仲介手数料が掛かる場合がありますが、投資の助言も受けられるメリットもあります。
優秀なヘッジファンドを見つける4つのチェックポイント
自分で優秀なヘッジファンドを見つける場合、直接面談などで以下5つのポイントをチェックしましょう。
過去の運用実績
大切な資金を預けるわけですから、過去の運用実績はチェックしましょう。
運用方針について
ヘッジファンドがどんな投資戦略を取るか確認しましょう。投資戦略はヘッジファンドの機密情報でもあるので、詳細には明かしてくれないかもしれません。大まかにでも、できるだけ情報を多く集めるようにしましょう。
報酬率、手数料
ヘッジファンドは運用成績に応じて手数料が決まる「成果報酬型」が基本ですが、投資する際に手数料が発生するものもあります。
優れた運用をしても、コストが高いと充分なリターンが残りません。過去の運用実績や運用方針とも比較しながら、納得できるコストになっているか確認しましょう。
資金のクローズ(拘束)期間
解約できないクローズ期間も確認しておきましょう。長期的な運用を前提としているヘッジファンドでは、運用効率を高めるため短期の解約に対応しない場合があります。
クローズ期間があるのか、あるならどれくらいか、事前に確認しておきましょう。
おすすめ国内ヘッジファンドランキングまとめ
本記事の内容を以下にまとめます。
- ヘッジファンドはさまざまな投資手法を用い絶対収益を追求する
- 直近1年間でリターンが高かった投資手法は「アービトラージ」
- ヘッジファンドの主流は欧米
- 国内では「Japan Act」「BMキャピタル」「フロンティアキャピタル」がおすすめ
- 最低投資額は概ね1,000万円 情報は直接面談か仲介者を利用し集める
ヘッジファンドの主流は欧米ですが、日本にも優秀なヘッジファンドはあります。海外ヘッジファンドと比較し、投資しやすいのはメリットといえるでしょう。