貯金5,000万円のサラリーマンはなぜ資産運用すべき?するなら何がいい?

預貯金で5,000万円を持つ場合、資産運用を検討しましょう。
本記事では、なぜ資産運用をおすすめするのかを解説します。また具体的なポートフォリオ(資産の組み合わせ)例についても紹介するので、5,000万円の使い道に悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください。

貯金5,000万円サラリーマンが資産運用するべき理由

資産運用に注目

貯金が5,000万円を超えるサラリーマンは、以下2点の理由から資産運用をおすすめします。

  • インフレで資産が目減りする
  • 選択肢が多く運用に有利

インフレで資産が目減りする

「インフレ」は物価の上昇という意味です。物の値段が上がり買えるものが少なくなるため、インフレは実質的にお金の価値を下げる効果があります。

例えば5,000万円あれば1万円の商品を5,000個買えます。ここで2%のインフレが起こるとどうなるでしょうか。商品は1万円から1.02万円に値上がりし、5,000万円では4,901個しか買えません。同じ商品・同じ5,000万円にも関わらず、買える数が約100個減少してしまいました。

このように、インフレにはお金の価値を下げる効果があります。ただし、インフレ以上にお金を増やせば防ぐことが可能です。上の例でいえば、5,000万円をインフレ率と同じく2%増やし5,100万円にすれば、1.02万円に値上がりしても変わらず5,000個を購入できます。

問題は低金利です。貯金ではインフレ以上の利回りが期待できません。インフレにともないお金の価値の減少が想定されるため、この状態を「実質マイナス利回り」といいます。

インフレはすべての方にとって関係がありますが、貯金額が大きいほど影響が大きいでしょう。貯金5,000万円が資産の大部分を占める場合、ある程度を資産運用に回しインフレ対策を講じるようおすすめします。

選択肢が多く運用に有利

株式など、資産運用に用いられる商品には最低投資額があります。100円程度から始められるものもありますが、中には最低でも数千万円の投資が求められる商品もあります。つまり、運用に回せる資金が一定以上ないと投資できない商品があるのです。

5,000万円あれば、たとえ全額を運用に回さずとも、多くの商品の最低投資額をクリアできるでしょう。選択肢が多く有利なため、5,000万円の貯金を持つ方には資産運用がおすすめです。

5,000万円運用シミュレーション

資産運用のシミュレーションを確認している

5,000万円を運用したらどれくらいの資産になるのでしょうか。それは「利回り」と「運用期間」によって異なります。以下に一覧にしてまとめたので、参考にご覧ください。

利回り&運用期間別 5,000万円運用シミュレーション
3%5%7%10%
5年5,796.4万円6,381.4万円7,012.8万円8,052.6万円
10年6,719.6万円8,144.5万円9,835.8万円1億2,968.7万円
15年7,789.8万円1億394.6万円1億3,795.2万円2億886.2万円
20年9,030.6万円1億3,266.5万円1億9,348.4万円3億3,637.5万円
25年1億468.9万円1億6,931.8万円2億7,137.2万円5億4,173.5万円
30年1億2,136.3万円2億1,609.7万円3億8,061.3万円8億7,247.0万円
35年1億4,069.3万円2億7,580.1万円5億3,382.9万円14億512.2万円
40年1億6,310.2万円3億5,199.9万円7億4,872.3万円22億6,296.3万円

上記の表から、利回りが大きいほど、また運用期間が長いほど資産が大きくなっていることがわかるでしょう。

大きな利回りの実現は難しいですが、運用期間を長く取るのは比較的簡単です。資産を効率的に増やすため、できるだけ長く運用するようにしましょう。

サラリーマンが資産運用を行なう場合の注意点

資産運用で失敗してすまったサラリーマン

サラリーマンが資産運用を行なう場合、以下の2点に注意しましょう。

  • 分散投資を心がける
  • 中長期間で預けられるものを選ぶ

分散投資を心がける

資産運用は「分散投資」が大切です。これは集中投資を避け、いくつかの銘柄に資金を分けて投じる運用方法をいいます。リスクを下げる効果があるため、特にまとまった資金を運用する場合は大前提ともいえるでしょう。

中長期間で預けられるものを選ぶ

サラリーマンは短期的な取引は向きません。このような取引はマーケットの監視時間が長くなりがちですが、多くのサラリーマンは就業規則で勤務時間中は取引できないためです。

サラリーマンが資産運用を行なう場合、中長期資金を預けられるものを選びましょう。

5,000万円の資産運用におすすめの資産・商品

5000万円を様々なアセットに振り分けている

5,000万円の運用を行なう場合は「ポートフォリオ」を考えることが大切です。資産の組み合わせを指し、例えば年金積立金の運用を行なうGPIFは、国内・国外の債券および国内・国外の株式に25%ずつ投資するポートフォリオを構築しています。

いくつかの資産で1つのポートフォリオを作ることで、自然と分散投資を行なうことになります。上述の通り分散投資にはリスクを下げる効果があるため、5,000万円というまとまった資金を運用する場合に向いているでしょう。

ここではサラリーマン向けに中長期資金を預けられる商品として、以下4つをご紹介します。ぜひポートフォリオの候補に加えてみてください。

  • 債券
  • 株式
  • 投資信託
  • ヘッジファンド

債券

「債券」は、発行者が事前の取り決め通りに利息と元本の支払う、一般的にリスクが低い商品です。国債が代表的で、これは国が発行者となり発行された債券をいいます。

債券には一般に満期があり、購入すると満期まで一定の利息を発行者から受け取れます。また満期においては、原則額面通りに元本が払い戻される仕組みです。

債券の主なリスクは「信用リスク」です。発行者が破綻してしまう可能性を指しており、その場合は利息や満期時点の元本が支払われる保証はありません。信用リスクが高いと考えられる債券ほど、利回りが高くなる傾向があります。

債券には外国の通貨を利用した「外国債券」もあります。日本円より高金利通貨を用いられることが一般的で、日本円の債券「円債(円建て債券)」よりも利回りが高いことが多いでしょう。外国債券の場合、信用リスクのほか「為替リスク」にも注意が必要です。

株式

「株式」は、企業が利益の一定の還元を約束し発行される商品です。利益の還元は「配当金」のほか「自社株買い(企業が株主から株式を買い取ること)」などで行われます。ただし、これらの還元が必ず実行される保証はありません。したがって、債券と比較しリスクは高いとされています。

株式は通常、証券取引所で売買します。取引は平日9~15時に行われており、高く売れれば値上がり益も期待できるでしょう。ただしサラリーマンの場合、ある程度中長期で保有し、就業中に売買しないよう注意が必要です。

証券会社によっては「外国株式」にも投資が可能です。外国債券と同じように、外国株式においても為替リスクに注意しましょう。

投資信託

投資信託は、株式や債券などの商品で運用される金融商品です。その特徴は内容によって異なります。
例えば株式で運用される場合は比較的リスクが高く、反対に債券で運用される場合は比較的リスクが低くなります。

投資信託をポートフォリオに組み入れる場合、その投資信託がどのように運用されているか、事前に確認して判断しましょう。

ヘッジファンド

ヘッジファンドも投資信託と同じく、いくつかの商品で運用される商品です。両者は似ていますが、以下の点で異なります。

投資信託とヘッジファンドの違い
投資信託ヘッジファンド
最低投資額100円~1万円1,000万円程度
運用方針「買い」のみ行なう「買い」も「売り」も行なう

ヘッジファンドは主に富裕層や法人を対象にサービスを提供しているため、最低投資額が大きく設定されています。ヘッジファンドごとに異なりますが、少なくても1,000万円以上は求められるケースが多いでしょう。

運用方針にも違いがあります。投資信託は原則「買い」しか行ないませんが、ヘッジファンドは「売り」も行ないます。値下がり時に利益が出る取引で、相場全体が下落傾向にあっても収益機会を残すことが可能です。

【ローリスク】サラリーマンにおすすめのポートフォリオ例1

低リスクを指さしている

ここから上述した商品を用い、具体的にポートフォリオを組んでみましょう。まずは比較的リスクが低いものをご紹介します。安定して運用したい方は以下のようなポートフォリオを組んでみてはいかがでしょうか。

  • 債券(円建て):40%
  • 債券(米ドル建て):30%
  • 投資信託(物価連動債券型):10%
  • ヘッジファンド(アービトラージ型):20%

ポイントは「債券の比率を高めている」点です。比較的リスクが低いとされる債券でポートフォリオの大部分を占めました。

安定して運用したい方がポートフォリオに外国債券を組み込む場合、「米ドル」が有力な候補となるでしょう。外国通貨の中では比較的リスクが低く、先進国としては金利も高いためです。

「物価連動債券型」投資信託とは

主に「物価連動国債」で運用される投資信託を指します。これは物価が上昇するほど満期時点の元本が上昇する仕組みを持つ国債のことで、インフレに備えられるメリットがあります。

金融機関によっては物価連動国債を直接販売しているケースもありますが、あまり一般的とはいえません。投資信託を通じて投資するほうが簡単にポートフォリオに組み込めるでしょう。

「アービトラージ型」ヘッジファンドとは

運用戦略の一つ「アービトラージ」を行なうヘッジファンドを指します。これは、同一資産が異なる価格で取引されているとき、安い価格で「買い」を仕掛けると同時に高い価格で「売り」を仕掛ける戦略です。

同一資産に「買い」と「売り」を仕掛けるため、理論上は価格変動によるリスクがなく、売買の価格差が必ず利益になります。参考に、アービトラージのシミュレーションを以下にまとめました。

同一資産に90円の「買い」と100円の「売り」を同時に仕掛けた場合
90円の買い100円の売り合計
80円のとき▲10円+20円+10円
90円のとき±0円+10円+10円
95円のとき+5円+5円+10円
100円のとき+10円±0+10円
110円のとき+20円▲10円+10円

アービトラージ型ヘッジファンドは比較的リスクが低い傾向にあるため、安定して運用したい方はポートフォリオに組み込んでみてはいかがでしょうか。

【ミドルリスク】サラリーマンにおすすめのポートフォリオ例2

リスクのバランスを取っている

中程度のリスク・リターンを狙いたい方は以下のようなポートフォリオを組んでみてはいかがでしょうか。

  • 債券(米ドル建て):20%
  • ヘッジファンド(アービトラージ型):20%
  • ヘッジファンド(マーケットニュートラル型):20%
  • 投資信託(国内株式型):20%
  • 投資信託(先進国株式型):20%

債券は米ドル建てのみに絞り、運用の大部分を「ヘッジファンド」と「株式型の投資信託」で構成しました。リスクが高くなりやすい個別の株式はポートフォリオから除外し、ミドルリスクでの運用が期待できます。

「マーケットニュートラル型」ヘッジファンドとは

運用戦略の一つ「マーケットニュートラル」を行なうヘッジファンドを指します。これは値上がりが期待できる銘柄に「買い」を仕掛けると同時に、市場全体に「売り」を仕掛ける戦略です。

株式のリターンは「個別銘柄のリターン」と「市場全体のリターン」から構成されます。このため、「優良な銘柄を見つけても市場全体が不調なら利益を得にくい」という課題があるのです。

そこで先物などを利用し、市場全体に「売り」を仕掛けます。こうすることで「市場全体のリターン」が相殺されるため、ファンドは市場全体の動向を注視する必要がありません。優良な個別銘柄の発掘に努めればいいのです。

マーケットニュートラルも「買い」と「売り」を同時に仕掛ける戦略のため、リスクは比較的低い傾向があります。中程度のリスクを先行する場合、ポートフォリオに組み入れを検討しましょう。

【ハイリスク】サラリーマンにおすすめのポートフォリオ例3

ハイリスクハイリターンを指さしている

リスクを取ってでも大きなリターンを狙いたい場合、以下のようなポートフォリオが参考になるでしょう。

  • ヘッジファンド(株式ロングショート型):20%
  • 投資信託(先進国株式型):30%
  • 投資信託(新興国株式型):20%
  • 株式(国内):20%
  • 株式(米国):10%

リスクを高めリターンを追求したい場合、株式の比率を高めるといいでしょう。これまでのポートフォリオと異なり債券を除外し、代わりに個別の株式を組み込みました。さらにヘッジファンドと投資信託も株式で運用される商品でポートフォリオを構成しています。

「株式ロングショート型」ヘッジファンドとは

運用戦略の一つ「株式ロングショート」を行なうヘッジファンドを指します。値上がりが期待できる銘柄には「買い」を仕掛ける一方、値下がりが期待される銘柄には「売り」を仕掛ける戦略です。

上述したアービトラージやマーケットニュートラルとは、異なる銘柄に対して「買い」と「売り」を仕掛けること、また同時に仕掛ける必要はないという点で異なります。

株式ロングショートは、値上がりと値下がりの両方向で積極的に利益を狙う戦略といえるでしょう。大きなリターンが期待できる反面、リスクも高い戦略です。より大きなリターンを追求したいならポートフォリオの候補に検討ください。

ヘッジファンドの戦略は多岐に分かれます。
他にも、株価に影響のある大きなイベントを活用するイベントドリブンといった戦略。さらに詳細なものとしては、株主の権利を使って企業価値の上昇を狙うアクティビスト(物言う株主)といったファンドもあります。

以下の記事では、割愛したほかの戦略や国内のおすすめファンドを詳しくまとめていますので、ぜひご覧ください。

まとめ

5000万円の紙幣

本記事の内容を以下にまとめます。

  • 資産運用をおすすめする理由は「インフレ対策」と「選択肢の豊富さ」
  • サラリーマンには中長期投資できるものが向く
  • 「ポートフォリオ」を構築し、分散投資を心がける

預貯金で5,000万円を超えている場合、インフレによる資産の目減りが懸念されます。資産運用でお金を増やし、目減りを防ぎましょう。5,000万円あれば選択肢は多いため、資産運用には取り組みやすいと思われます。

サラリーマンが資産運用を行なう場合、分散投資と中長期投資をおすすめします。特にまとまった資金の運用は特定の銘柄への集中投資を避け、複数の商品で「ポートフォリオ」を構築するよう意識しましょう。

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