新しいビジネスを展開するベンチャー企業。大きな利益を稼ぎ出すケースもあり、「投資したい」と感じている方もいるのではないでしょうか。
しかしベンチャー企業は上場企業と異なり、証券会社へ口座開設しても投資できません。
どうすれば個人がベンチャー企業へ投資できるか、本記事ではその方法を3つご紹介します。
ベンチャー投資とは
そもそもベンチャー投資とはどのような投資を指すのでしょうか。概要を簡単に確認しましょう。
新ビジネスを展開する未上場企業への投資
ベンチャー投資はその名の通り、「ベンチャー企業」への投資を指します。明確な定義はありませんが、一般に新しいビジネスを展開する企業をベンチャー企業といいます。
問題は、ベンチャー企業は「未上場企業」という点です。上場していれば取引所で誰でも投資できますが、未上場企業となると簡単ではありません。未上場企業の多くは定款で株式の譲渡に制限を設けているためです。つまり、未上場企業の株式は基本的に流通しておらず、個人が投資するチャンスは限られています。
ベンチャー投資で利益を得られる仕組み
ベンチャー投資における典型的な利益のチャンスは以下の2つです。
- IPO(Initial Public Offering。新規上場)
- M&A(Mergers and Acquisitions。企業の合併および買収)
「IPO」は新規上場を指します。ベンチャー企業が上場企業として新たなスタートを切ることですが、ベンチャー投資家にとっては資金回収のチャンスです。上場後に売却し、利益を狙います。
もう1つは「M&A」です。投資先ベンチャー企業に対してほかの企業がM&Aを仕掛けたとき、保有株を買い取らせることで利益を狙います。
上場企業への投資と異なり、ベンチャー投資は自由に株式を売却できません。そのため上記2つの方法が主な利益獲得のチャンスとなります。IPOやM&Aが行われる保証はありませんが、実現すれば大きな利益を得られるでしょう。
個人がベンチャー投資を行うメリット
個人がベンチャー投資を行うメリットは以下の3つです。
- 大きなキャピタルゲインが期待できる
- 税の優遇「エンジェル税制」を受けられる
- 経営に参加できる
大きなキャピタルゲインが期待できる
上述の通り、投資先ベンチャー企業にIPOやM&Aなどが起きた場合、一般に大きな利益が期待できます。これらはベンチャー企業株式の譲渡で得られる利益ですが、譲渡による利益を「キャピタルゲイン」といいます。大きなキャピタルゲインはベンチャー投資における代表的なメリットです。
なお、投資したベンチャー企業からは決算期に配当金を受け取るケースもあります。配当金のように、投資で得られる定期的な収入を「インカムゲイン」といいます。
税の優遇「エンジェル税制」を受けられる
「エンジェル税制」による税の優遇を受けられる点も、個人がベンチャー投資を行うメリットです。投資額を所得から控除できる処置で、個人のベンチャー投資家を「エンジェル」というためこのように呼ばれています。
エンジェル税制は、以下のような条件を満たすベンチャー企業への投資が対象です。
- 設立10年未満(株式の譲渡益から控除する場合は5年未満)の中小企業
- 外部からの投資を1/6以上受け入れている
- 大規模法人グループに属していない
- 風俗営業等に該当する事業を行っていない
条件を満たしている場合、損失が出た場合も優遇処置があります。個人がベンチャー投資を行う場合、事前にエンジェル税制の対象となるかチェックしておきましょう。
- エンジェル税制の概要等|国税庁(外部サイト)
経営に参加できる
ベンチャー投資を行うと、そのベンチャー企業の経営に参加できるメリットがあります。議決権が与えられるためで、株主総会を通じて経営に意見を反映させることが可能です。
ただしベンチャー企業の場合、創業者が議決権の過半数を持つケースが多いでしょう。経営に参加する権利はありますが、会社を思い通りに動かせるわけではない点には注意が必要です。
ベンチャー投資のデメリットは?
ベンチャー投資のデメリットは主に以下3つが考えられます。
- 上場企業と比較し高リスク
- 流動性が低い
- 経営面の協力も必要
それぞれ確認しましょう。
上場企業と比較し高リスク
ベンチャー企業は新しいビジネスを展開している企業です。経営が成熟しておらず、事業面・財務面いずれも不安定と言わざるを得ません。上場企業と比較し、経営破綻のリスクは高いといえるでしょう。ベンチャー投資の代表的なデメリットです。
流動性が低い
流動性の低さもベンチャー投資の典型的なデメリットです。自由に現金化できない点に注意しなければなりません。
上述しましたが、未上場企業は一般に株式の譲渡に制限を設けています。ベンチャー企業も例外ではなく、株式の売却は会社の許可を得なければなりません。また上場企業と異なり、そもそも買い手が極端に少ないという問題もあります。
ベンチャー投資は基本的に、IPOやM&A以外の現金化が難しいため注意しましょう。
経営面の協力も必要
ベンチャー投資の場合、経営との距離が近くなることもあるでしょう。場合によっては出資者として助言を行うケースも想定されます。
経営に参加できることはメリットでもありますが、人によっては負担になりかねません。ときに経営への協力が強いられる点はベンチャー投資のデメリットといえるでしょう。
個人がベンチャー投資に成功するコツ
どうすれば個人がベンチャー投資に成功できるのでしょうか。ベンチャー投資のメリット・デメリットから、本記事では以下3つの方法をピックアップしました。
- 経営の知識を身に付ける
- 投資対象を厳しくチェックする
- 余裕資金で行う
経営の知識を身に付ける
経営の知識を身に付けることがベンチャー投資に成功するコツといえるでしょう。上場企業も含め、株式への投資は経営への参加を意味します。ベンチャー投資の前に、経営の知識をある程度身に付けておくことが大きなアドバンテージになります。
投資対象を厳しくチェックする
投資対象を厳しく選別することも大切です。漫然な投資判断では優良な投資案件を見つけることはできません。
財務諸表のチェックはもちろん、そのベンチャー企業が属する業界の動向や競合も含め総合的に将来性を判断しましょう。
余裕資金で行う
ベンチャー投資は流動性が低く、自由に売却することができません。長期投資を前提とし、必ず余裕資金で行いましょう。
個人がベンチャー投資を行う方法
未上場企業であるベンチャー企業への投資方法は限られていますが、以下3つの方法なら個人でも可能です。
- 直接出資
- 株式投資型クラウドファンディング
- ヘッジファンド(PEファンド)への出資
それぞれポイントを押さえましょう。
直接出資
ベンチャー企業と直接交渉し株式を取得する方法です。資金調達したいベンチャー企業と結びつける以下のような場を利用すると効率的でしょう。いずれも運用会社などの法人向けが多いですが、なかには個人向けもあります。
- ピッチ・交流会:ベンチャー企業がプレゼンし資金調達を図る場
- マッチングサイト:ベンチャー企業と投資家を結びつけるウェブサイト
なお、直接出資はベンチャー投資の中でもハードルが高い方法です。比較的まとまった資金が必要で、ベンチャー企業の分析もすべて自分で行わなければなりません。初心者にはあまり向かない方法といえるでしょう。
株式投資型クラウドファンディング
インターネット上で多数の個人から資金調達を行う「クラウドファンディング」の1つで、投資家が直接株式を取得する点に特徴があります。
株式投資型クラウドファンディングは少額から出資可能で、投資先はクラウドファンディング事業者の審査を通過したベンチャー企業に絞られます。直接出資よりハードルは下がるでしょう。
ヘッジファンド(PEファンド)への出資
未上場株(PE:Private Equity)で運用するヘッジファンドへ資金を預ける方法です。ヘッジファンドは運用会社の1つで、投資家に代わって資産運用を行います。
ベンチャー企業は情報が少なく、その投資判断は簡単ではないでしょう。上述した方法を用いれば個人でも直接可能ですが、ハードルの高さは否めません。
「ベンチャー企業に魅力を感じるが銘柄選びに自信がない」という方はヘッジファンドを利用するといいでしょう。
まとめ
本記事の内容を以下にまとめました。
- ベンチャー投資は未上場のベンチャー企業へ投資する方法
- IPOまたはM&Aによる大きなキャピタルゲインが魅力
- 個人のベンチャー投資は「直接出資」or「株式投資型クラウドファンディング」
- 運用を任せるなら、間接的に「ヘッジファンド」
未上場企業であるベンチャー企業には通常投資できません。個人が投資するには直接交渉で合意を得るか、または株式投資型クラウドファンディングに限られるでしょう。
ただしベンチャー投資は上場企業への投資と比較しリスクが高いです。自信がない方はベンチャー企業へ投資するヘッジファンドを検討してはいかがでしょうか?