「みのりの投信」の評判が悪いのはなぜ?運用成績と銘柄を確認

「ひふみ投信」のように、国内の独立系投資信託は評判が良いケースが多いです。
しかし同じく独立系投資信託の「みのりの投信」の場合、悪い評判も多く目にするかもしれません。

みのりの投信の評判の悪さは、おそらくその運用成績に由来すると思われます。
実際のところ、「悪い評判のイメージ通りやめておいた方が良いのか」それとも「期待できるファンドなのか」と気になる方も多いことでしょう。

そこで、本記事ではみのりの投信実績や評判から今後の見通しはどうなっているのかを解説していきます。現在運用中の方も、検討している方も投資判断にお役立てください。

みのりの投信の概要

ファンドの成績を確認するファンドマネージャー

まずはみのりの投信の概要を解説します。基本的なポイントを以下にまとめました。

設定日2013年4月30日
基準価額1万3,072円
(2021年12月17日)
純資産総額241.25億円
(2021年12月17日)
信託報酬1.595~1.925%

  • 300億円以下の部分:1.925%
  • 500億円以下の部分:1.815%
  • 1,000億円以下の部分:1.705%
  • 1,000億円超の部分:1.595%
設定来のトータルリターン+29.9%
(2021年11月末時点)

日本の中小型株式でアクティブ運用を行う投資信託

みのりの投信は独立系投信会社「ポートフォリア」が運用する投資信託です。

独立系とは国内の大手金融グループに属していないという意味で、他にひふみ投信の「レオス・キャピタルワークス」や結い2101の「鎌倉投信」が代表的といえるでしょう。

みのりの投信の主要投資対象は日本国内の中小型株です。
運用スタイルは市場平均を超えるリターンを目指す「アクティブ運用」で、目論見書(もくろみしょ)によると、独自の価値観「剛・柔・善」を満たす企業を選りすぐり投資するとしています。

みのりの投信のようにアクティブ運用を行う投資信託を「アクティブファンド」、それに対して市場平均と一致する運用を目指すファンドを「インデックスファンド」といいます。

先物の売りも併用し「全天候型」の利益を目指している

みのりの投信の大きな特徴は「先物の売り」も併用している点です。
下落時に利益を得られる取引で、2021年11月末では「東証株価指数(TOPIX)先物」を資産全体の36.3%分売り建てていました。

この取引により、みのりの投信は相場の下落方向と上昇方向のいずれにも収益機会を持つことになります。同投信が目指す「全天候型(相場の方向性を気にせず、いつでも買えるという意味)」の運用に一役買っているでしょう。

「マーケットニュートラル」のヘッジファンドに近い

個別の株式も買いながら先物の売りを仕掛けるのは、一見不合理な取引に見えるかもしれません。
しかし、手法そのものは珍しくなく、主にヘッジファンドが運用に用いる「マーケットニュートラル」と呼ばれる戦略に似ています。

例えば徹底したリサーチの結果、「TOPIXを必ず1%上回って値上がりする」Aという株式を見つけたとしましょう。
確実に利益を出すためには、単にA株式を買うだけでは不十分です。仮にTOPIXが2%下落したとき、A株式も1%下落しています。

そこで、このA株式を買うと同時にTOPIX先物に売りを仕掛けるとどうなるでしょうか。TOPIXが2%値下がりすると、TOPIX先物の売りで2%の利益を得られます。A株式は1%値下がりしますが、TOPIX先物売りによる利益と差し引き1%の利益が残る計算です。

この戦略のポイントは、仮にTOPIXを上回る銘柄を見つけられた場合に利益を確定できる点です。A株式は常にTOPIXを1%上回る条件だったため、このケースではTOPIXが上下どちらの方向に動いても確実に1%の利益を得られます

A株式(TOPIX+1%)にマーケットニュートラルを仕掛けた場合の利益
A株式の利益…イTOPIX先物の売りの利益…ロ合計(イ+ロ)
TOPIXが+2%3%▲2%1%
TOPIXが+1%2%▲1%1%
TOPIXが±0%1%±01%
TOPIXが▲1%±01%1%
TOPIXが▲2%▲1%2%1%

みのりの投信がマーケットニュートラル戦略を意識しているか目論見書等からは読み取れません。しかし、個別の株式の買いと同時に先物売りを仕掛ける戦略そのものは典型的な手法です。

みのりの投信の評判は?

悪い評判を確認する投資家

みのりの投信の評判は良くありません。
インデックスファンドより高い信託報酬(運用コスト)を取るアクティブファンドながら、運用成績が市場平均を下回ることに多くの方は不満を持っているようです(みのりの投信の実績については後述します)。

信託報酬0.15%のトピックスインデックスファンドにも負けている。投資方針が理解できない。

出典:10月26日23:12

みのりの投信に限らず、アクティブファンドが高い信託報酬を設定できるのは、市場平均よりも好成績が期待できるからです。そうでなければ投資家は低コストで市場平均と同じ程度のリターンが期待できるインデックスファンドを選ぶでしょう。

国内中小型株系インデックスファンドの信託報酬の例
  1. eMAXIS JPX日経中小型株インデックス:0.44%
  2. SMT JPX日経中小型株インデックス・オープン:0.44%
  3. インデックスファンドJPX日経中小型株:0.55%
  4. (参考)みのりの投信:1.595~1.925%

みのりの投信は、高い信託報酬に見合う運用成績を投資家に還元しなければ、今後も厳しい意見が寄せられると思われます。

みのりの投信の組み入れ銘柄

投信のポートフォリオマネジメント

アクティブファンドとなると、気になるのは組み入れ銘柄でしょう。
みのりの投信はどのような銘柄に投資しているのでしょうか。

組み入れ銘柄TOP10

最新の月報(2021年11月号)によると、みのりの投信の組み入れ上位10銘柄は以下のとおりです。いずれも時価総額が比較的小さい「中小型株」の銘柄が並びました。

みのりの投信 組み入れ銘柄TOP10
銘柄市場時価総額組み入れ比率
<2726>パルグループホールディングス東1731.1億円5.40%
<7599>IDOM東1758.9億円5.00%
<2685>アダストリア東1844.2億円5.00%
<7864>フジシールインターナショナル東11,256.2億円4.90%
<8358>スルガ銀行東11,177.0億円4.90%
<2305>スタジオアリス東1358.7億円4.30%
<6381>アネスト岩田東1378.2億円3.80%
<4996>クミアイ化学工業東11,077.5億円3.70%
<6363>酉島製作所東1268.4億円3.60%
<4540>ツムラ東12,510.0億円3.50%

※組み入れ比率は2021年11月末時点。その他は2021年12月17日終値時点

時価総額とは「株価×発行済株式数」で計算される数値で、一般に上場企業の規模を測る指標に使われます。ちなみに国内の最大は「トヨタ自動車」で、時価総額は約34.3兆円です(2021年12月17日終値時点)。

時価総額が大きい株式を「大型株」、中程度・小規模の株式をそれぞれ「中型株」「小型株」といいます。具体的な基準はありませんが、レオス・キャピタルワークスのひふみ投信は「3,000億円以上」を大型株とし、「300億円以上~3,000億円未満」を中型株、「300億円未満」を小型株としています。この基準で考えると、みのりの投信の組み入れ上位10銘柄に大型株は含まれません

実質的な株式組み入れは50%程度

中小型株は一般に大型株よりも値動きが大きいです。しかし「現金」と「TOPIX先物の売り」を考えると、みのりの投信には中小型株式ファンドに見られるような大きな値動きは起こりにくいでしょう。

みのりの投信は預かっている金額のすべてで株式を買っているわけではありません。2021年11月末時点では13.3%は現金で置いているようです。

さらにみのりの投信はTOPIX 先物の売りも行っています。これらを加味すると、みのりの投信は実質的に約50%程度しか株式を買っていません

みのりの投信 資産の内訳
日本株式…イ86.70%
TOPIX先物の売り…ロ36.30%
実質的な株式の組み入れ…(イ-ロ)50.40%
現金13.30%

※2021年11月末時点

みのりの投信はTOPIXの構成銘柄どおりに投資しているわけではないので、厳密にはTOPIX先物の売りで個別株式の買いが完全に相殺されることはありません。

しかしある程度の売りによる相殺の影響は受けると考えられるので、他の中小型株アクティブファンドよりは値動きが小さくなるでしょう。

みのりの投信の実績

過去の実績をメモ

みのりの投信はこれまでどのような実績を残したのでしょうか。過去のリターンを確認しましょう。

設定来で+29.9%

みのりの投信は2013年4月30日の設定から2021年11月末までの8年7カ月(8.58年)で29.9%の利益を残しました。1年あたりの利回りに直すと3.09%です。中小型株アクティブファンドとしては少し物足りない水準です。

2018年から下落し、運用成績が平均を下回る

みのりの投信は当初から成績が芳しくなかったわけではありません。2018年初までは、少なくとも中小型株の平均を表す「JPX中小型株指数」と同程度のリターンを得ていました。

しかし2018年以降、みのりの投信は右肩下がりとなります。JPX中小型株指数も2020年3月頃までは同じように値下がりしますが、以降は反発して高値を更新しています。一方みのりの投信は低迷したままです。

みのりの投信とJPX中小型株指数の比較チャート(2013.4~2021.11)

2017年以降の両者を比較すると、みのりの投信は一度もJPX中小型株指数を上回るリターンを残せていないことがわかります。特に2020年は20%近くも指数を下回ってしまいました。

みのりの投信 各年の運用実績
2017年2018年2019年2020年2021年(※1)
みのりの投信32.21%▲30.37%18.73%▲15.50%▲0.35%
市場平均(※2)33.68%▲21.24%24.21%3.98%9.13%
平均との差▲1.47▲9.13▲5.48▲19.48▲9.48

※1.2021年は11月末まで
※2.市場平均は「JPX日経中小型株指数」

みのりの投信は、高いリターンを得ているとはとてもいえません。

現金と先物売りポジションで値動きは小さめ

みのりの投信は「全天候型」の運用を目指しているため、リターンだけでなくリスクについても比較しましょう。投資信託のリスクは一般にリターンのばらつきの大きさを表す「標準偏差」で測ります。

直近5年までの両者のリスクを以下にまとめました。いずれの期間でもみのりの投信がJPX中小型株指数よりも小さいリスクとなっています。現金とTOPIX先物の売りポジションが、みのりの投信の値動きを小さくしている要因と考えられるでしょう。

みのりの投資 リスク(標準偏差)の比較
直近1年直近3年(年率)直近5年(年率)
みのりの投信10.09%16.68%15.43%
市場平均(※)12.73%20.74%17.48%

※市場平均は「JPX日経中小型株指数」

今後の見通し

今後の見通し

2021年11月末のポートフォリオを鑑みると、みのりの投信にとって最も理想的なシナリオは「TOPIXの下落&中小型株の上昇」です。
TOPIXは大型株の影響が大きいことから「大型株の下落&中小型株の上昇」と言い換えてもいいでしょう。このようなシチュエーションは相場全体が大型株主導で大きく値上がりして、横ばいになったところで見られることがあります。

反対に「TOPIXの上昇&中小型株の下落」はみのりの投信にとって最悪のシナリオといえるでしょう。先物の売りと中小型株の買いがどちらもマイナスに働いてしまいます。

これらの今後の値動きイメージを以下にまとめました。

みのりの投信 今後予想される値動きのイメージ
中小型株の上昇中小型株の下落
TOPIX(大型株)の上昇×
TOPIX(大型株)の下落

似たもので期待できそうな銘柄は?みのりの投信と他銘柄の比較

代替となる銘柄を探す

みのりの投信以外にこれは期待できそうだと思われる銘柄を、以下2つの視点で比較しながら3銘柄ずつご紹介します。

  • 日本の中小型株で運用するアクティブファンド
  • 先物取引を行う投資信託

日本の中小型で運用するアクティブファンドとの比較

みのりの投信と同じく、主に日本の中小型株に投資するアクティブファンドとして以下3銘柄をご紹介します。

リターンリスク
3年
(年率)
5年
(年率)
3年
(年率)
5年
(年率)
企業価値成長小型株ファンド29.81%32.91%25.42%22.31%
フィデリティ・テクノロジー厳選株式ファンド28.68%22.46%21.64%18.61%
東京海上・ジャパン・オーナーズ株式12.51%22.34%18.93%17.28%
参考)みのりの投信▲5.15%▲1.19%16.68%15.43%

※データの出典は、表内ファンド名にURLをリンク

「企業価値成長小型株ファンド(愛称:眼力)」はアセットマネジメントOneが運用する国内小型株アクティブファンドです。経営の健全性の他、株価指標の割安度や投資収益率などから銘柄を選別して運用しています。リスクは高めですが、大きなリターンも得られました

先物取引を行う投資信託と比較

次にみのりの投信と同じく先物取引を行う投資信託について、以下3銘柄を取り上げます。

リターンリスク
3年
(年率)
5年
(年率)
3年
(年率)
5年
(年率)
野村ワールドスターオープン21.07%15.35%16.93%14.23%
楽天ボラティリティ・ファンド(資産成長型)6.79%11.65%30.54%25.52%
マクロ・トータル・リターン・ファンド4.80%5.36%4.44%5.99%
参考)みのりの投信▲5.15%▲1.19%16.68%15.43%

※データの出典は、表内ファンド名にURLをリンク

「野村ワールドスターオープン」は世界のさまざまな資産に対し、先物やオプション取引を通して投資を行う投資信託です。みのりの投信とほぼ同程度のリスクでありながら、比較的大きなリターンを得られました。

ヘッジファンドとの比較

みのりの投信はぜひ「ヘッジファンド」とも比較してみてください。「売り」の取引を活用し、相場の影響を受けない「絶対収益」の追求を行う運用会社を指します。みのりの投信が目指す「全天候型」をより高度に目指しているイメージです。

前述した「先物取引を行う投資信託」は「ヘッジファンド型投資信託」と呼ばれます。ヘッジファンドがよく用いる運用戦略(例えば上述したマーケットニュートラル)の1つを採用したもので、基本的にはその戦略を繰り返します。

対して本来のヘッジファンドはより自由な運用が可能なため、複数の運用戦略の採用が可能です。もちろん得意な1つの戦略に特化する例もあるでしょう。アクティブ型やヘッジファンド型の投資信託より、多くの収益機会を得られることが強みです。

ただし通常の投資信託と異なり、ヘッジファンドは最低でも1,000万円程度の投資が求められます。資金に余裕がある場合はぜひ検討してください。

まとめ

農耕に例えた資産運用がうまくいっている様子

本記事の内容を以下にまとめました。

  • みのりの投信は国内中小型株で運用するアクティブファンド
  • TOPIX先物の売りも併用する
  • 成績が市場平均に負けているため評判が悪い

みのりの投信は独立系投信会社「ポートフォリア」が運用する国内中小型株で運用されるアクティブファンドです。「現金」と「TOPIX先物の売り」も持つことから、同じカテゴリのなかでは比較的小さい値動きが予想されます。

しかしこれまでの運用成績は芳しくなく、市場平均を下回っています
このため、みのりの投信の評判はあまり良くありません。同じく国内の中小型株式や先物で運用される投資信託などと比較し、慎重に投資を検討したほうがいいでしょう。1,000万円以上の資金を預けられるならヘッジファンドもおすすめです。

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