投資信託「ゼウス(新光US-REIT)」の評判は?概要と今後の予想を紹介

ゼウス(新光US-REITオープン)は投信会社「アセットマネジメントOne」の主力商品の一つです。
多くの金融機関で販売されているため「ポスターを見たことがある」という方も少なくないでしょう。

ネット上では、リートとして高い分配金を出す良い投信という情報や、大損する可能性が高い投信などと評価され、「実際のところどうなの?」と気になる方も多いことでしょう。

そこで、本記事ではゼウスの概要をまとめ、ゼウスの運用と評判について徹底解説します。

また、気になるゼウスの将来についても考察を加えているので、ゼウスを注目している方はぜひ参考にしてください。

新光US-REIT(ゼウス)の概要

米国リート商品のゼウス

まずはゼウスの概要を簡単に確認しましょう。

設定日2004年9月30日
基準価額2,334円
(2021年12月15日)
純資産総額4,916.63億円
(2021年12月15日)
信託報酬1.68%
設定来のトータルリターン200.42%
(2021年11月30日時点)
分配金利回り12.85%(※)

※2021年12月15日時点で直近の分配金が1年間継続したと仮定

アメリカのREIT(リート)で運用される投資信託

ゼウスはアメリカの「REIT(Real Estate Investment Trust)」で運用される投資信託です。REITも不動産投資信託という投資信託の一形態で、実物の不動産で運用されています。ゼウスはさらにREITを一つにまとめた投資信託という仕組みになっています。

外資系の「インベスコ」が実質的に運用している

ゼウスは「アセットマネジメントOne」が運用していますが、実際の運用は「インベスコ・アドバイザーズ・インク」に委託しています。世界的な運用会社「インベスコ・リミテッド」の一員であり、その運用資産は1兆5,725ドルにも上ります(2021年11月末時点)。

ちなみにゼウスの正式名称「新光US-REIT」は、もともとゼウスが「新光投信」という投信会社に設定された名残として残っています(新光投信は2016年10月「アセットマネジメントOne」に統合されました)。

高い「分配金利回り」が有名

「分配金利回り」とは、購入額に対して分配金がいくら支払われるか表した数値です。以下の式に当てはめて計算しましょう。

分配金利回りの計算式
  • 直近の分配金×12か月分÷基準価額×100

ゼウスの場合、2021年12月の分配金は25円、2021年15日時点の基準価額は2,334円でした。上記の式に当てはめると12.85%と計算できます。

25円×12か月分÷2,334円×100=12.85347……
=12.85%

つまり、ゼウスを100万円購入すれば1年間に約12.85万円の分配金を受け取れるとわかります。

ただし分配金利回りはあくまで直近の分配金で計算しているため、将来の分配金を保証していない点に注意しましょう。分配金は変動する可能性があるため、どれくらい受け取れるか事前に把握することができません。ゼウスに関しては2010年8月に引き上げられて以来、一貫して分配金は引き下げられてきました

ゼウス 分配金の変遷
分配金の額
2005年9月~2010年7月60円
2010年8月~2012年7月90円
2012年8月~2016年12月75円
2017年1月~2018年3月50円
2018年4月~現在25円

新光US-REIT(ゼウス)の組み入れ銘柄

ポートフォリオ内訳の分析

投資信託はどのような銘柄で運用されているかがとても大切です。ここではゼウスがどのような銘柄で運用しているかチェックしましょう。

組み入れ銘柄TOP10

ゼウスの組み入れ上位10銘柄は以下のようになりました。全体の50%以上を占めている、ゼウスの主力銘柄です。

ゼウス 組み入れ銘柄TOP10
銘柄業種比率
エクイニクスデータセンター8.00%
プロロジス産業施設7.50%
アメリカン・タワーインフラストラクチャー7.10%
ウェルタワー医療施設5.70%
インビテーション・ホームズ住居5.50%
UDR住居5.10%
アバロンベイ・コミュニティーズ住居4.70%
ベンタス医療施設3.80%
ミッド・アメリカ・アパートメント・コミュニティーズ住居3.70%
デューク・リアルティ・トラスト産業施設3.50%
合計54.60%

※2021年10月5日時点

組み入れ1位の「エクイニクス」は世界でデータセンターを運営する代表的なREITです。大規模なサーバーを用意し、そこに接続する企業から賃料(利用料)を徴収し収益を得ます。デジタル化が進む社会では有望なビジネスモデルといえるでしょう。

業種別比率

ゼウスの全組み入れ銘柄を業種別に分けると以下のようになります。

ゼウス 業種別組み入れ比率
比率概要
住居21.70%賃貸のマンションや戸建て住宅など
産業施設16.20%物流施設など
インフラストラクチャー13.30%通信基地局用の鉄塔やエネルギー関連施設など
商業・小売12.00%ショッピングセンターやモールなど
データセンター9.50%データセンターやテクノロジー関連施設など
医療施設8.70%高齢者向け住宅や医療用オフィスビル、介護施設など
ホテル・レジャー4.80%シティホテルやリゾートホテルなど
特殊施設4.80%刑務所や娯楽施設など
森林3.30%植林地や種苗場など
オフィス2.90%オフィスビルや研究開発施設など
貸倉庫2.10%トランクルームやコンテナなど
複合施設0.80%複数の業種にまたがって投資

※2021年11月5日時点

アメリカのREIT市場の平均を表す「FTSE NAREIT All Equity REIT」の組み入れと比較すると、ゼウスは比較的安定的とされる「住居」や「インフラストラクチャー」の比率が高いようです。一概にはいえませんが、ゼウスの運用はアメリカのRIETで運用される投資信託のなかでは比較的小さい値動きになるでしょう。

FTSE NAREIT All Equity REITの業種別組み入れ比率TOP5
  1. インフラストラクチャー:16.0%
  2. 産業施設:12.92%
  3. 住居:11.39%
  4. データセンター:9.34%
  5. 医療施設:7.87%

※2021年11月末時点

ポートフォリオの配当(分配金)利回り

ゼウスのポートフォリオ(組み入れているREITの組み合わせ)から得られる分配金利回りは2.29%(2021年10月末)です。市場の平均利回りを表す「FTSE NAREIT All Equity REITsインデックス配当利回り」は2.76%なので、平均をやや下回っているようです。

ゼウスの分配金利回りは12.85%のため、ポートフォリオとのギャップが10%以上あります。少し乱暴にいえば、ゼウスは無理して分配金を支払っている状況といえるでしょう。組み入れているREITの価格上昇や円安・ドル高が起こらない限り、ゼウスは基準価額の下落が予想されます。

新光US-REIT(ゼウス)の実績

ファンドの運用実績を確認する投資家

運用実績は、組み入れ銘柄と並んで投資信託を評価する大切なポイントです。ゼウスの過去の運用実績を確認しましょう。

トータルリターンは設定来で約3倍

投資信託の実績は「トータルリターン」で測りましょう。「いくら支払い、いくら受け取ったか」を表す考え方で、以下の式で計算されます。

トータルリターンの計算式
  • (売却金額+受取分配金)―購入金額

※保有中の場合、「売却金額」を「評価金額」に差し替えて計算

投資信託は分配金を支払うと基準価額が下がる仕組みになっているため、売却金額と購入金額だけでは正確に実績を測れません。例えば100万円で買った投資信託を60万円で売ったとしても、40万円の分配金を受け取っているなら損益はゼロです。

投信情報会社のモーニングスターによると、ゼウスのトータルリターンは設定来で200.42%となりました(2021年11月末)。

ゼウス 直近のトータルリターン(年率)
  • 10年:13.28%
  • 5年:8.48%
  • 3年:11.26%
  • 1年:44.03%

※2021年11月末

累計分配金は基準価額の5倍

ゼウスのトータルリターンの大部分は分配金で構成されています。これまでの分配金の累積は1万1,848円(2021年12月5日時点)にまでなり、基準価額のおよそ5倍にまで積みあがりました。

これはゼウスのような「毎月分配型」の投資信託によく見られる傾向です。今売っても大きな金額にはなりませんが、受け取ってきた分配金を加味すれば多くの方がプラスを得られているでしょう。

新光US-REIT(ゼウス)の主なリスク

考えられるリスクを分析

ゼウスが持つ主なリスクは以下の2つです。それぞれ確認しましょう。

  • REIT価格変動リスク
  • 為替リスク

REIT価格変動リスク

REITは上場しており、株式と同じく日々変動しています。ゼウスが組み入れているREIT価格が下がると基準価額も下落するでしょう。もちろん、REIT価格が上昇すればゼウスの基準価額も上昇します。

為替リスク

もう一つの主なリスクは為替リスクです。ゼウスが組み入れている銘柄はすべてアメリカドル建ての資産のため、円高・ドル安が起こると基準価額が下落してしまいます。

例えばゼウスが10億ドル分のREITを組み入れているとき、1ドル=100円なら1,000億円ですが、1ドル=90円なら900億円にしかなりません。反対に1ドル=110円なら1,100億円にまで上昇します。

仮にREIT価格に変動がなくても、為替レートに変動があればゼウスの基準価額は変動するため注意しましょう。

新光US-REIT(ゼウス)の今後の予想は?

新光US-REIT(ゼウス)の今後の予想は?

ゼウスの今後の見通しについてポイントを以下にまとめました。

  • 2021年12月時点でアメリカは利上げを見込む局面
  • 借り入れも行うREITにとって金利上昇はネガティブな要因
  • 金利上昇より景気上昇が期待されるならプラス
  • 2024年9月に償還予定だが時価総額が維持されるなら延長が期待される

ゼウスの今後を予想する上で、重要なポイントはアメリカの金利にあるでしょう。アメリカは新型コロナウィルス感染拡大を受けて、2021年3月に従来1.5~1.75%あったFF金利(政策金利)を0.0~0.25%にまで引き下げました。

そして2021年12月、アメリカは利上げの局面へと足を踏み入れています。同月開催されたFOMC(公開市場委員会)は2022年中に3回の利上げについて言及されました。新型コロナウィルスで一時的に緩和していた金融政策を正常化させようとしています。

REITは投資家から集めたお金のほか借入金で物件を取得しています。金利が高いとREITが負担する利息も大きくなるため、金利上昇はREITの下落要因だといわれています。
例えばREITが100億円の融資を受けるとき、金利が1%上昇すれば利益を1億円押し下げるでしょう。

ただし、金利上昇時にREITが必ず下がるとも言い切れません。アメリカの不動産運用大手「COHEN&STEERS(コーヘン・アンド・スティアーズ)」は、アメリカのリートは金利上昇局面で高い収益を得られたと指摘しています。これには金利上昇局面では、一般的に景気の上昇が伴うことが関係しているでしょう。

金利上昇はREITにとってネガティブであることは間違いありませんが、景気の上昇はREITにとってポジティブです。金利上昇の背景に景気の上昇があるならプラスになると考えられます。
アメリカの中央銀行が景気動向に沿わない利上げを断行しない限り、REITはおおむね順調に推移していくでしょう。

なお、ゼウスの運用期間は2024年9月30日で終わる予定です。
ただし、投資信託は運用期間の延長は珍しくありません。特に純資産総額が大きいと延長される傾向があります。ゼウスは純資産総額が4,900億円を超えていますが、これは国内の16位です(モーニングスターでのファンド検索より:2021年12月15日時点)。
大きな投資信託なので、純資産総額が維持されれば運用期間は延長される可能性が高いでしょう。

新光US-REIT(ゼウス)の評判は?

評判をチェックする投資家

ゼウスの口コミをチェックすると、おおむねポジティブな評価が目立ちます。おそらく直近の好成績が関係しているでしょう。

(再掲)ゼウス 直近のトータルリターン(年率)
  • 10年:13.28%
  • 5年:8.48%
  • 3年:11.26%
  • 1年:44.03%

※2021年11月末

引き下げられた分配金にはネガティブな口コミも見つかります。ただし、分配金に満足しているといった評価もありました。分配金は投資信託の基準価額を下げるためトータルリターンには直接影響を与えませんが、やはり同ファンドは分配金を目当てに購入している方が多いのでしょう。

新光US-REIT(ゼウス)以外におすすめのファンドは?

新光US-REIT(ゼウス)以外におすすめのファンドは?

投資信託は比較が大切です。「リターン」と「コスト」の面でゼウスより優秀だと考えられる投資信託を3銘柄ずつ確認しましょう。

より高いリターンを残した米国REITファンド3銘柄

アメリカREITで運用する投資信託のうち、以下の3銘柄は2021年11月末時点において過去3年・5年・10年それぞれでゼウスより大きなリターンを稼ぎました。

ゼウスより高リターンを残した米国REITファンド
ファンド名分配金
利回り
3年5年10年
フィデリティ・USリートB11.76%12.97%9.79%15.12%
ダイワ 米国リート・ファンド(毎月分配型)11.52%14.56%10.77%14.81%
ダイワ・US-REIT(毎月決算) 13.32%14.78%10.80%14.78%
参考)ゼウス12.85%11.26%8.48%13.28%

※データの出典は、表内ファンド名にURLをリンク
※2021年11月末時点
※いずれも毎月分配型かつ為替ヘッジなし

過去10年間の場合、ゼウスを含めた4銘柄で「フィデリティ・USリート」が最も大きなリターンを得ました。過去5年・3年では「ダイワ・US-REIT(毎月決算)」が最も大きなリターンを得ています。

より低コストの米国REITファンド3銘柄

以下の3銘柄は投資信託のコスト「信託報酬」がゼウスよりも低く運用されています。いずれもコストが低くなりやすい「インデックスファンド」が並びました。

ファンド名分配金利回り信託報酬
NZAM・ベータ米国REIT0.47%
SMT米国REITインデックス・オープン0.61%
eMAXIS 米国リートインデックス0.66%
参考)ゼウス12.85%1.68%

※データの出典は、表内ファンド名にURLをリンク

インデックスファンドは信託報酬が安い傾向にありますが、分配金を出すものは多くありません。分配金を目当てに保有したい方には向かないでしょう。

まとめ

アメリカのビルが立ち並ぶ市場

本記事の内容を以下にまとめました。

  • ゼウスはアメリカのREIT(不動産)で運用される投資信託
  • この1年パフォーマンスは高く、評判も良い
  • 今後は「金利上昇<景気上昇」なら期待できる
  • リターンやコストに優れる銘柄に切り替える選択肢も持ちたい

ゼウスは「アセットマネジメントOne」の投資信託ですが、運用の指図は「インベスコ・アドバイザーズ・インク」に委託しています。
設定来のトータルリターンは200%を超えているため、ある程度長く持っている方の多くがプラスになっているでしょう。特にこの1年のトータルリターンは40%を超えており、口コミもポジティブなものが目立ちます。

今後はアメリカの金利動向が気になりますが、景気の上昇が伴うならアメリカの利上げでREIT価格が直ちに値下がりするとも言い切れないでしょう。

せっかくアメリカのREITに投資するなら別の投資信託にしてもいいかもしれません。リターンやコストなどの面でゼウスよりも優れた銘柄はきっと見つかるでしょう。

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