「もの言う株主」として近年メディアでもよく目にするようになったアクティビストやアクティビストファンド。
企業の株式を一定以上保有することで企業への提言を行い、経営に関わり企業価値を向上させることを目的とする投資家やファンドのことを指します。

 

アクティビストファンドに投資することにはどのようなメリットがあるか、アクティビストの投資方法などを交えながら解説します。

1、アクティビストファンドとは?投資信託との違い

 

アクティビストファンドとは、企業の株式を大量保有し、株主としての権限を利用して企業の経営方針の変更や配当の増額、取締役の交代などを企業に要求することで、業の価値向上と株価の上昇を目指す「もの言う株主」(アクティビスト)が組成するファンドのことを指します。

 

アクティビストファンドへの投資と似たものとして投資信託があります。
投資信託は投資家から募った資金を投資信託会社が運用し、企業の株式や公社債を購入します。
運用によって得られた利益を資金元である投資家に還元するという仕組みです。

アクティビストファンドへの投資も、基本的な仕組みは投資信託と同様です。

 

アクティビストファンドと投資信託の違いは、企業の株式を大量保有することがあるかどうかにあります。
投資信託では、法律により一企業の議決権の50%を超える株式の保有が禁じられています。
株主総会で意見を伝えることはあるものの、アクティビストのように経営に関わるところまで関与することはありません。

2、株価の上昇に関与できる

 

アクティビストファンドへ投資することのメリットの1つに、アクティビストは経営に関与できることが挙げられます。
通常、個人投資家では企業の株式を経営に関与できる量まで買い込むことは難しいですが、アクティビストファンドは豊富な資金力を活かして株式の保有率を高め、株価が上昇するような提案を企業に対して行います。

 

具体的には、企業が過剰なキャッシュを保有しないよう配当の引き上げや自社株買いを要求すること、不採算事業を撤廃することなどが挙げられます。
こうした改革案を発表することで市場は好感を持ち株価が上昇、アクティビストファンドはある程度のところで売り抜けば利益が得られるという仕組みです。

 

企業側としても株式の保有率が高いアクティビストの言うことは無視できません。
従来はそうした状況を良いことに株主の利益だけを追求した要求を行い、要求が通らなければ資金力を活かし他の株主から株式を買い集め買収する「敵対的買収」や訴訟などを行い、企業から無理やり利益を搾り取ろうとする動きも見られました。

そのためアクティビストファンドは良くない印象を持たれることもありましたが、近年は企業と対話し企業の長期的な成長を目指すファンドが増えています。

 

友好的なスタンスで企業と向き合うことで他の株主からも賛同が得やすく、株式の保有率が低くても要求が通りやすいというメリットがあります。
企業の成長を後押ししながら株主の利益を積極的に実現する、ウィンウィンの関係を築くことができることはアクティビストファンドの持つ武器の1つです。

3、ガバナンスへの関心が高まっている

海外投資家の呼び込みや市場の活性化、国際競争力の向上を目的として、日本では2015年にコーポレートガバナンス・コードが導入されました。
上場企業が守るべき、企業統治に関する指針を示したもので、実施もしくは実施しない場合の説明が義務付けられています。

 

従来、企業の経営方針や統治体系といった情報は企業内にとどまりがちで、企業の内部留保が膨らんでいるとされていました。
コーポレートガバナンス・コードはそうした状況を変え、株主が権利を実行できる環境を整えることを目的として作られたもので、社外に2人以上の取締役を置くことや株主との対話が指針として挙げられています。

 

こうした動きの中で存在感を高めているのがアクティビストファンドです。
企業価値を高めることを目的としたアクティビストファンドは、企業統治に対してもアドバイスを行います。
そのため、日本企業が抱える問題を解決するアクティビストの活躍余地はこれから増していき、投資するメリットも大きいと言えるでしょう。

4、積極的なバリュー投資ができる

 

バリュー(お買い得)投資とは、市場における株価が本来企業の持つ価値よりも低迷している企業に対して行う投資です。
通常のバリュー投資は、割安な株式を購入し、市場がその価値に気づき株価が上昇するまで待ち、利益を得ます。

 

しかし、アクティビストファンドであれば企業に対して積極的な関与が可能なため、企業が持つ資金を企業の成長や株主への還元に使うよう働きかけます。
市場がまだ気づいていない価値を、現状よりもさらに高めるよう働きかけるため、市場が気づくときには価値はさらに上昇し、その分株価の上昇も見込めます。

 

そのため、通常のバリュー投資よりも高い利益を得ることが期待できると言えます。
企業側としても、アクティビストファンドは市場に埋もれている価値を発掘し発信するよう呼び掛けてくれる存在であるため、ウィンウィンの関係にあります。

5、アクティビストファンドに投資する際の注意点

 

アクティビストファンドに投資する際には、ファンドが企業と敵対関係になる心配がないかをよく確認する必要があります。
アクティビストファンドは企業に株価を上昇させるための要求を通し、利益を得ます。
つまり、要求が通らなければアクティビストファンドが持つメリットがなくなります。

 

さらに、一度要求が通らず企業と敵対関係になってしまえば、それ以降に企業と友好的な関係を築き、要求を通しやすくすることは難しくなるでしょう。

また、従来アクティビストファンドがあまり良い印象を持たれていなかった理由としては、先に述べたように無茶な要求や買収を行うファンドのほか、はじめから企業の価値向上は目的とせず、株式を大量保有したうえで購入した時の金額よりも高い金額での買い取りを企業や他の株主に対して迫る「グリーンメーラー」と呼ばれるファンドがいたというものがあります。

 

もちろん企業と敵対関係を築いたり、市場を顧みないようなアクティビストファンドは減少しましたが、投資をする際には信用がおけるファンドであるかどうかよく確認するようにしましょう。

6、注目度が増しているアクティビストファンド

 

日本においてアクティビストファンドは、あまり良いイメージを持たれていなかった時代を超え、現在は企業と友好的な関係を築き企業価値を高め、株主に利益を還元できる存在として国内外から注目されています。
日本のアクティビストファンドが海外に後れを取っている状況であるのは事実であり、海外のアクティビストファンドが需要の高まっている日本市場に続々と参入しています。

 

アクティビストの行動は素早く、今市場に残されている余地がなくなる速度も速いため、アクティビストファンドに投資するのであれば早い方が良いと言えます。
まだまだブルーオーシャンと言える市場の中で、信頼のおけるアクティビストファンドへの投資を検討してみてはいかがでしょうか。

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