法人資産は個人資産と違って一般的に高額になるケースが多いです。

そのため、法人資産が5憶円を超えている企業も珍しくありません。

しかし、抱えている金額が多ければ多いほど、その使い道に困る人もいるのではないでしょうか。

法人資産の使い道は大きく分けて「事業拡大に利用する」「それを元手にして運用する」の2つがあります。

 

なかには、企業経営で儲けたお金なのだから、事業拡大に優先して使うべきだと考える人もいるでしょう。

しかし、どれだけ経営が順調な企業でも資産運用をおろそかにしてはいけません。

そこで、この記事では多額の法人資産を抱えている企業が資産運用しなければいけない理由や、ポートフォリオの事例について紹介します。

1、法人企業が資産運用をしたほうがよい理由とは

 

法人企業が資産運用をしなければいけない一番の理由は、「お金は放っておいても増えることはない」ことです。

当たり前のことですが、現金は所有しているだけでは増えません。

たしかに、銀行に預ければ一定の利息がつくこともあります。

銀行預金も手元にある資金を預けて利息収入を得るという意味では立派な資産運用方法の一つです。

 

しかし、バブル期ならいざしらず、日銀によって低い金利が設定されている時代では大きな利息収入は期待できません。

そのようなときに銀行預金以外の資産運用を積極的に行って、手元にある資金を増やしておくことは企業において重要なことです。

また、法人ならではの資産の活用方法としては、事業拡大に利用するというものもあります。

しかし、リスク管理という観点から考えると資産運用をまったく行わないというのは問題です。

 

時代の変化や市場の状況によって、これまで同様の経営がうまくいくという保証はどこにもありません。

もしも、事業拡大が失敗してしまったら資産運用という観点から考えると失敗です。資産運用の基本は分散投資だといえます。

これは企業経営においても当てはまる考え方で、特定の事業に偏り過ぎた経営を行ってしまうと、その事業がうまくいかなくなったときに大変です。

そうした事態を避けるためにも、余裕のある法人資産があるならば資産運用をしておいて、収入源を複数確保しておくことも大切だといえます。

2、具体的な資産運用方法の種類とは

 

法人資産を運用するにあたって、大切なのは運用先です。運用先にはさまざまなものがありますが、5億円もの法人資産を持っているのであれば大抵のものには手が届きます。

まず、法人の資産運用としてよく利用されるのが土地や建物などの「不動産」です。

不動産の収入源は駐車場や賃貸住宅などの賃貸料、購入時よりも値上がりしたときに売却して得られる譲渡益などがあります。不動産が法人企業の資産運用として向いている理由は、利用状況によっては資産運用ではなくて事業用にも使える点です。

自社にとって有効活用できる場所の不動産を取得すれば、資産運用と事業拡大用のどちらの用途でも利用できます。

 

次に資産運用としてよく利用されるのが、株式や投資信託などの有価証券や債券といった金融商品です。

法人企業が金融商品を所有する利点は、換金性が高いことだといえます。

不動産だと、売却を検討してから実際に売却金が手に入るまで数カ月程度かかることが一般的ですが、金融商品であれば数日程度で換金可能です。

 

金融商品と聞くと、リスクが高いイメージを持っている人もいるかもしれません。

しかし、一口に金融商品といってもリスクの比較的高い株式からリスクの比較的低い債券までさまざまです。

企業の成長戦略に合わせて、さまざまな金融商品を組み合わせていくことでリスクを抑える工夫ができます。

 

また、一般的にあまり資産運用の方法としては注目を集めない預金ですが、それなりのメリットもあります。

預金のメリットはリスクが低いことで、基本的には預けている銀行が倒産しない限り元本割れをすることはありません。

その一方で、定期預金に預けても上述した資産運用方法と比べて期待できるリターンは少ないです。

安全性を求めるのであれば、定期預金を多めに取り入れたポートフォリオを作成するとよいでしょう。

3、法人資産5億円のポートフォリオ事例

 

法人資産5億円を活用して資産運用するのであれば、まずは現預金をどの程度手元に残しておくかを検討することから始めるべきです。

掛け商売などが基本となっている企業であったとしても、いざというときに現金が手元にないと事業に支障をきたす可能性があります。

 

そのため、現預金として残す資産をまずは決めておきましょう。

現預金として残しておくべき金額は事業内容によって異なりますが、ここでは総資産の4割にあたる2億円と仮定します。

すると、残りの3億円で資産運用することになりますが、ここで大切なのは「どの程度リスクを取るか」です。

たとえば、安全性を高めたいのであれば債券を多めに購入するという方法もあります。

資金力に余裕がある場合は、リスクを承知のうえで株式の比率を増やしてもよいでしょう。バランスの良さを求めるのであれば、一つの事例として「安定運用型ヘッジファンド1億5000万円」「米ドル建て投資1憶5000万円」という運用方法もあります。

4、資産運用のメリット・デメリットとは

 

法人による資産運用のメリットは、純粋に資金が増えることだけではありません。

収入源を増やしておくことで、主力事業が不調に陥ったときに補填するリスク管理においても重要です。

さらに、資金が増えることで融資額が拡大されたり、投資家からの評価が良くなったりして資金調達という面でも良い影響がでるでしょう。

その他にも、株や債券といった投資で利益を上げたときにかけられる税率は法人税とは異なります。

結果的に、投資をしていたほうが税金は安くなったというケースも多いので、節税対策としても有効です。

一方、資産運用における最大のリスクは、損失が発生する可能性のあることです。

 

これは、どの運用方法においてもいえることで、たとえ安全性の高い預金を選んだとしても銀行が倒産してしまう可能性はゼロではありません。

損失リスクを回避するために有効な手段だといわれているのは分散投資です。

特定の投資対象に資金が偏ってしまうと、評価額が下がったときに大きな損失が発生してしまいますが、複数に分散させると一般的にダメージは小さくなります。

 

分散投資をするときのコツは、できるだけ種類の異なる運用方法を選ぶことです。

たとえば、運用先を株式のみと決めてそのなかで複数の銘柄を選ぶのではなく、株式と不動産と債券という具合に選ぶとよいでしょう。

5、ヘッジファンド型投信とは

 

資産運用の方法としてはヘッジファンド型の投資信託を利用するというものもあります。

ヘッジファンドとは投資家たちからお金を集めて運用する、いわば資産運用のプロが集まっている集団です。

ヘッジファンドは投資で利益を上げることを目的としているので、さまざまな商品を扱っています。たとえば、株式が下がったら利益が出る商品を投資信託に組み込む場合もあるのです。

 

人気のある投信信託としては「マネックス・フルトン・チャイナ・フォーカス」「スパークス・日本株・L&S」「マクロ・トータル・リターン・ファンド」が挙げられます。

 

マネックス・フルトン・チャイナ・フォーカスはその名のとおり、中国株やその周辺国の株式を主に売り建てることによって、利益を得ることを目的にしています。

基準価格は1万8408円(以下、すべて基準価格は2018年10月26日時点)です。

 

スパークス・日本株・L&S(基準価格2万857円は日本の上場株式をメインに売買している投資信託で、中長期的な成長を目指しています。

 

マクロ・トータル・リターン・ファンド(基準価格9883円)は日本を含む世界中の株式や債券などを投資対象とする投資信託です。

このようにヘッジファンド型投資信託にはそれぞれ特色があります。

ここ数カ月ほどは、どのファンドも米中貿易摩擦の懸念などから下落傾向が続いていますが、目的に合った投資信託を探してみるとよいでしょう。

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