クオンツ運用で高利回りのヘッジファンド「ルネッサンステクノロジー」とは?

ルネッサンステクノロジー(RenaissanceTechnologies LLC)はニューヨーク州に拠点を置くアメリカのヘッジファンド会社です。

統計学や数理モデルを利用したクオンツ運用は、数あるヘッジファンドの中でも高い利回りを誇ってきました。

この記事ではルネッサンステクノロジーの概要と投資方法について解説していきます。

ルネッサンステクノロジーの概要

会社名 ルネッサンステクノロジー
(Renaissance Technologies LLC)
設立 1982年
創設者 ジェームズ・シモンズ
本社所在地 600 Route 25A
East Setauket, New York 11733
従業員数 約300人

ルネッサンステクノロジーは1982年にジェームズ・シモンズによって設立されました。1978年にルネッサンステクノロジーの前進となるMonemetricsが設立されているので、実質的な設立年は1978年です。ニューヨークのイーストセタウキットに本社を持つヘッジファンド会社で、Renaissance Institutional Management LLCという子会社も持っています。

本社の場所はGoogleマップからも確認できるので、実在している会社であることが分かります。ヘッジファンドはその性質から情報の公開が積極的におこなわれないので、特に海外ファンドの場合は、その実在を、はじめに調べることが重要です。

ルネッサンステクノロジーの投資戦略

ルネッサンステクノロジーの投資戦略

ルネッサンステクノロジーの投資戦略は、数理モデルを利用したクオンツ運用です。代表のジェームズ・シモンズは数学の研究者としても有名であり、自身の数学の研究を投資に応用しています。

クオンツ運用とは?

クオンツ運用とは、市場に関連するデータを基に統計学などの観点から運用ルールを決めて自動的に運用します。クオンツ運用は、実運用をAIに任せるので、運用モデルの作成を数学や統計学の研究者がおこなう仕組みです。

よって、AIによる感情を排した運用が可能になります。ルネッサンステクノロジーは感情に左右されない数学的観点から定めたルールに基づく運用でこれまで利益を上げてきました。

しかし、その具体的な投資戦略について知ることは困難です。なぜなら、クオンツ運用における運用モデルは秘匿する必要があります。運用モデルが知れ渡ればAIによる運用である以上、誰でも利益をあげられるようになるからです。そのため、ルネッサンステクノロジーの具体的な運用方法は開示されておらず、投資戦略は不透明となっています。

それでは、ルネッサンステクノロジーの運用モデルを作り上げた代表がどんな人物なのかを確認していきましょう。

ルネッサンステクノロジーの代表はどんな人?

ルネッサンステクノロジーの創設者はジェームズ・シモンズで、2010年まで代表を務めました。ジェームズ・シモンズの略歴について下記の表にまとめました。

年度 出来事
1938年 誕生
1958年 マサチューセッツ工科大学で理学士号を取得
1961年 カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得
1964年 国防分析研究所(IDA)の研究スタッフを務める
1968年 ストーニーブルック大学の数学部門の委員長に任命される
1976年 オズワルド・ヴェブレン幾何学賞を受賞
1978年 Monemetrics設立
1982年 ルネッサンステクノロジー誕生
2000年 自身の運用するメダリオンファンドの総資産が24億ドルに成長
2010年 ルネッサンステクノロジー代表を退任

参考:Axion 経済メディア

1978年にヘッジファンド会社を設立するまで、数学者として大きな功績を残してきたことが分かります。また、1993年にジェームズ・シモンズが運用するメダリオンファンドは1993年の総資産6,600万ドルから2000年には総資産24億ドルに急成長を遂げることとなりました。

2010年にはルネッサンステクノロジー代表を退任しましたが、メダリオンファンドの総資産はこの時点で100億ドルとなりました。2021年現在は新たな投資家の資産の受け入れを拒否しながら運用を続けています。

2021年現在の代表はピーターブラウンがCEOを務めています。ピーターブラウンは計算言語学を専門とするコンピューター科学者であり、1993年にIBMリサーチからルネッサンステクノロジーに入社しました。

ルネッサンステクノロジーの概要と投資戦略は上記の通りであり、ここからは具体的な利回りや運用成績を確認していきます。

ルネッサンステクノロジーの利回り

ルネッサンステクノロジーの利回り

ルネッサンステクノロジーの代表的なファンドであるメダリオンファンドは1988年~2018年の30年間で年率66%の平均利回り、手数料控除後も年率39%の平均利回りを獲得したファンドとなりました。

年率66%の利回りはヘッジファンド全体の利回りと比較しても驚異的な数字であり、手数料控除後に利回りが37%落ちるとしても39%の利回りはヘッジファンドの収益として破格の利回りです。

メダリオンファンドはヘッジファンドの中でもトップクラスの利回りを上げてきました。現在は新たな投資家から資産の受け入れを拒否していますが、再度募集されることがあれば多くの投資家から資産が集まることでしょう。

ルネッサンステクノロジーにはメダリオンファンド以外にもヘッジファンドがあります。こちらは新たな投資家を受け入れているので、投資方法について解説していきます。

ルネッサンステクノロジーの投資方法と最低投資額

ルネッサンステクノロジーの投資方法と最低投資額

ルネッサンステクノロジーのメダリオンファンドは、現在投資している投資家以外の資産の受け入れを拒否しているので新たに投資できません。

しかし、ルネッサンステクノロジーは新たな投資家のためにルネッサンス機関株式ファンド (RIEF) とルネッサンス機関分散型アルファ (RIDA)を運用しています。ただし、最低投資額は非常に大きく、1億円以上の資産が必要になるため個人投資家が投資するのは難しいです。

また、日本から海外のヘッジファンドに投資をするならヘッジファンドの契約書を難なく読める英語力が必要になります。投資助言会社を利用して投資する方法もありますが、仲介手数料がかかるため利回りが減少してしまいます。

最低投資額と投資のハードルを考えると現実的に投資するのは非常に難しいといえるでしょう。それでは、ルネッサンステクノロジーの実際の評判を確認していきます。

ルネッサンステクノロジーの口コミ・評判

ルネッサンステクノロジーの口コミ・評判は下記の通りです。

SNS上では実際にルネッサンステクノロジーに投資をしている投資家の声はなく、その運用手法に対して賛否両論の声がありました。新型コロナの影響でルネッサンステクノロジーの運用ファンドは損失を出しましたが、そのことについて言及する意見も多いです。

ルネッサンステクノロジーの創設者のジェームズ・シモンズの評判はよく、その著書に関する感想も多くあります。

ルネッサンステクノロジーへの投資自体が難しく、実態を知らない方が多いので、公開されている運用成績とクオンツ運用という投資手法、ジェームズ・シモンズの著書などからヘッジファンドを評価するしかないのが現状です。

最後に新型コロナウイルス相場でのルネッサンステクノロジーの動向を確認していきましょう。

コロナの影響によるルネッサンステクノロジーの動向

コロナの影響によるルネッサンステクノロジーの動向

ルネッサンステクノロジーのファンドは昨年のコロナ禍で20%の損失が発生しました。2021年1月のリターンは-9.5%となり、コロナ禍においてクオンツ運用は苦戦を強いられていることが分かります。

コロナによる株式市場の変動はこれまでに前例がない相場です。クオンツ運用がより長期を見据えているのであれば、コロナ相場による損失によってルネッサンステクノロジーのクオンツ運用が欠陥のある運用モデルとはいえません。また、コロナによる相場変動は過去のデータにはないため対応が難しいとも言えます。

しかし、コロナ相場の中でも利益を上げているヘッジファンドはあります。コロナ禍においてはルネッサンステクノロジーのヘッジファンドは優秀な投資先とはいえない結果となりました。不況からは上がるだけなので、長期で見据えた結果に期待です。

参考:Bloomberg

まとめ

ルネッサンステクノロジーのヘッジファンドについて解説しましたが、記事のポイントは以下の通りです。

  • 数理モデルとAIを利用したクオンツ運用で感情を排したトレードをおこなう
  • 創設者のジェームズ・シモンズは数学の研究者としても実績がある
  • メインとなるメダリオンファンドは新たな投資家の受け入れを拒否している
  • 新型コロナウイルスの影響でクオンツ運用は結果を出せていない

ルネッサンステクノロジーのヘッジファンドへの投資は難しく、コロナ禍である2021年現在の運用成績はけっしてよいものではありませんでした。

よって、ヘッジファンドへの投資を考えるなら投資がしやすい日本のヘッジファンドから検討するのがよいでしょう。

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