投資を行う人が増加する中、ヘッジファンドという存在が注目を集めるようになっています。
ヘッジファンドは富裕層や機関投資家など、ごく限られた投資家から資金を募って投資を行っているファンドです。
さまざまな商品や投資手法を組み合わせて、「絶対収益」を目指します。
運用にかなりの自由度が認められているのが特徴です。
この「絶対収益」という言葉に魅かれて、現在ヘッジファンドへの投資を検討している人もいるのではないでしょうか。
しかし存在が知られるようになったとは言え、ヘッジファンドの実態については不明な点も多く、どのような点に気を付ければ良いのか分からないこともあるかもしれません。
ここでは、ヘッジファンドへ投資を行う前に是非確認しておきたい、注意するポイントについて紹介します。
ヘッジファンドに確認するべきポイントに入る前に、そもそもヘッジファンドに投資をする際には、ヘッジファンドを探す必要があります。ところがこれが、最初の大きな問題となります。
ヘッジファンドは他の投資商品で行われているような、大々的な宣伝をすることはありません。
なぜならば、ヘッジファンドが投資を行うための資金は、富裕層や機関投資家などごく限られた投資家から募るものだからです。
このような形を「私募」と言います。対して、投資信託のように広く一般人に宣伝などを行い、資金を集める形を「公募」と言います。
私募であるヘッジファンドは、自社の宣伝を行う必要がありません。
そのため、新たに投資を行おうとしている人がヘッジファンドを探し出して、接点を持つことは非常に難しくなります。
基本的には、資産家や金融関係者などから紹介してもらうような形で、ヘッジファンドの情報を得ることになります。
ヘッジファンドの名前や連絡先などの情報を得たら、ホームページや電話で問い合わせをしてみましょう。
「最初は資料だけで良い」という人もいるかもしれませんが、資料ではヘッジファンドの情報はほとんど何も分かりません。
やはり、実際に会ってみることが必要です。
ヘッジファンド側からしても、投資家を選定するという目的がありますので、対面でなければ詳しい情報を明らかにしようとはしません。
是非ヘッジファンドに積極的に足を運んで、色々な情報を引き出してみてください。
1、確認ポイント1~最低出資金~
ヘッジファンドへの投資前に確認すべきポイントの1つ目は、最低出資金の額です。
優良とされるヘッジファンドは、大抵の場合はこの金額を設定しています。
日本国内のヘッジファンドであれば、最低出資金が数百万円からのファンドもありますが、大きい場合は数千万円のこともあります。
海外のヘッジファンドでは1億円程度が最低出資金となっている場合もありますので、この最低出資金の金額が、そもそも投資できるかどうかの最大のハードルになるでしょう。
なぜこのように巨額の資金が投資家1人につき必要なのかというと、法的な登録の関係上、ヘッジファンドの投資家の人数には制限がかけられているためです。
そのため、1人1人からそれなりの金額を集めないと、ヘッジファンドとしての規模を維持・成長させられないのです。
2、確認ポイント2~レバレッジ~
自己の資金よりも大きな金額を運用することを「レバレッジをかける・レバレッジを効かせる」などと言います。ヘッジファンドは一般的に、レバレッジを大きめにかけた投資を行うことが特徴です。
レバレッジを大きくかけるということは、多額の収益を出せる可能性もありますが、逆に損をする時の金額も多額になるということです。
あまりにレバレッジが大きい時には、かなりリスクの高い危険な投資ということですので、必ず確認をしておくようにしましょう。
3、確認ポイント3~投資戦略~
投資戦略も、リスクの大きさを図るために是非確認しておきたいポイントです。
最初から投資戦略を詳細に明かしてくれるようなヘッジファンドは少ないかもしれませんが、どのような投資対象に投資をしているのかについては、大まかにでも把握するようにしましょう。
政情が不安視されている国の通貨や、あまり聞いたことがない少し特殊な商品が投資対象になっている場合には、リスクが高いと言えます。
さらに可能であれば、投資対象だけではなく、その対象に対してどのくらいの割合を投資しているのかについても確認しておきましょう。
4、確認ポイント4~ロックアップ期間~
解約を行うことができない期間のことを、「ロックアップ期間」と言います。
他の一般的な投資信託などでは、解約は基本的にいつでも好きな時にできて、現金に戻せます。しかしヘッジファンドの場合には、このロックアップ期間が長くとられていることが特徴です。
「半年に一度」や「四半期に一度」などと、解約のタイミングが定められていることもありますし、場合によっては1年や2年もの間、解約が禁止されているヘッジファンドもあります。
あくまで参考ですが、3カ月であれば短い方ですし、1年間だと長いと言えます。
例え自分自身の資産状況や世界の金融情勢がどのようになろうとも、この期間は解約ができませんので、必ず確認して充分に考慮することが大切です。
ちなみに、なぜヘッジファンドはロックアップ期間が長いのかというと、投資家の数が少ないことと関係しています。
ヘッジファンドは資金を募る投資家の数は少ない代わりに、1人1人から多額の資産を預かります。
そのため投資家が1人抜けただけでも、全体の投資額は大きく減少することになります。
ヘッジファンドは基本的に、4・5年間は投資家の資産を預かることを前提として戦略を立て、投資対象を決めています。
投資額が簡単に増減しては、戦略が定まりません。そのため、長めのロックアップ期間となっているのです。
5、確認ポイント5~ファンドマネージャー~
ヘッジファンドの運用成績は、最終的にはファンドマネージャーの個人的な手腕にかかっているといっても過言ではありません。
どのような経歴で、どのような実績がある人物なのか、可能な限り情報を引き出してみましょう。また、どのくらいの間実績を出し続けているのかという「期間」も重要です。
さらに、多額の資産を預ける以上は「ファンドマネージャーが信頼に足る人物かどうか」という、「人間性」も大切なポイントとなります。
顔写真を見せてもらったり、会話の中でファンドマネージャーの性格について聞いてみるなど、出来る限り「人間性」も把握しておくようにしましょう。
6、その他の注意点あれこれ
ヘッジファンドは、市場の価格がどのような状態であっても収益を上げようとする「絶対収益」を目指しています。
こうした姿勢から、「ヘッジファンドへの投資は元本が保証されている」と、誤解をしている人もいるようです。
しかし投資である以上、元本が保証されるということはありません。
「絶対収益」に関しても、目標とはしていますが必ず出せるわけではありません。
世界的な大暴落が起こった時など、損失を防げないこともあります。
実際に2008年のリーマンショックの際、収益を出すことができたヘッジファンドもありましたが、損失を出したヘッジファンドも多かったのです。
さらに、レバレッジをかけて取引を行っていることが多いため、損失時の額は多額となりがちです。こうした投資の大前提については、忘れないようにしましょう。
また、ヘッジファンドはさまざまな分析や投資手法、商品などを組み合わせて投資を行うとされています。
実際にも多くのヘッジファンドが、そうして利益を出しています。
しかし、特に実績を出し続けている海外ヘッジファンドの例を見ると、対象は株式などのごく伝統的なものが多く、その手法に関しても「割安なものを購入して、割高なものを売却する」という非常に王道的な投資スタイルです。
ヘッジファンドの能力は割安・割高なものを見極めることに割かれていて、行っていることはそれほど突飛なことではないのです。
このことから、いかにも利益を出せそうな独自の理論などを謳っていたり、投資対象が極めて特殊というような場合には、気を付けてよく確認する必要があると言えるでしょう。
7、信頼できるヘッジファンドを選ぼう
ヘッジファンドに投資する前には、最低出資金や投資戦略、レバレッジやロックアップ期間について確認するなどの注意点があります。
このようにして得られた情報と、自己の資産額との兼ね合いを考えて、あまりにリスクの高い投資の場合は避けることが基本です。
また、大切なのは、ファンドマネージャーの手腕や人柄も含めて信頼のできるヘッジファンドを選ぶことです。
出来るだけヘッジファンドに関する情報を集めるとともに、「投資は損をすることもある」という大前提を忘れないようにしてヘッジファンドを選び、投資を考えましょう。