ドラマ「ハゲタカ」は、綾野剛さんが主役を演じる経済ドラマです。

主人公の鷲津政彦は、外資系投資ファンド「ホライズンジャパン・パートナーズ」の代表取締役。

ドラマでは、日本の弱った企業の不良債権を買いたたくなどして買収劇を繰り広げていく様子が描かれています。

ドラマの中で鷲津は、大きな負債を抱える企業のバイアウトを画策。多くの株式を手に入れた鷲津は、大株主として、怠惰な経営を続ける経営者一族に対し、強引な手段で対抗していきます。

 

現実の世界でも、ドラマさながらに大きな発言権を持つ株主は存在します。

そして、株主の発言や行動によって経営方針が変更するのは、実際に起こり得ることです。

このような株主のことを、一般に「もの言う株主(アクティビスト)」と呼び、穏健派と強硬派に区別できます。

鷲津は、穏健派と強硬派のどちらになるのでしょうか。実際に存在する「もの言う株主」の特徴と照らし合わせて紹介します。

 

ドラマ「ハゲタカ」の見どころは、主人公の鷲津政彦が繰り広げる大胆かつ痛快な買収劇にあるといえます。

そしてドラマの人気を支える土台は、豊富な経済の知識に裏打ちされた、綿密な脚本だといえるでしょう。

脚本のおかげで、登場人物のセリフ一つひとつから、経済や金融の業界に漂う雰囲気を感じ取ることができます。

そのため経済や金融、投資などに対して知識のない、いわゆる初心者の方でも気軽に楽しめるドラマとなっているのです。

2018年8月23日現在、ドラマ「ハゲタカ」のストーリーは、中盤に差し掛かったところ。今後も、専門的かつ娯楽的な展開に期待したいです。

1、ハゲタカファンドとは?

 

さて、ドラマのキーワードにもなっている「ハゲタカファンド」とは、現実に存在しているファンドなのでしょうか。

経営不振などで弱っている企業に対し、表向きは企業復活のために投資するという立場を保つことで、後にそれ以上の見返りを求めるファンドを「ハゲタカファンド」と称します。

そしてそのようなファンドは、現実に存在します。

 

表面上のこととはいえ投資をするのであれば良いことのように聞こえてしまいがちですが、現実にはギリギリまで利益を搾り取るため、一部の関係者からは嫌われているのです。

ドラマ「ハゲタカ」のなかには、銀行が抱える不良債権に対し、わずか1円という評価額をつけるシーンもありました。

ハゲタカファンドは、経営困難な企業の事実上の主導権を握ります。

そして現存する経営者や社員の意向には基本的に取り合わず、強硬な姿勢で再建計画を推し進める傾向が強いといえるでしょう。

2、ハゲタカファンドとヘッジファンドの共通点

 

富裕層から私募をつのるヘッジファンド。その運用形態はハゲタカファンドと似ているといいます。

まず資金の集め方。普通の投資信託の場合、公募で資金を集めるのですが、その特徴は最低投資額の低さだと言えるでしょう。安いところでは数万円から可能です。

 

対するヘッジファンドの場合、1000万円以上が最低限の投資額というケースが普通であり、なかには1億円以上の資金が必要だという場合も少なくありません。ハゲタカファンドもこれと同様で、高額な最低投資ラインが設定されています。

 

また運用手法にも共通点があります。

ヘッジファンドは利益を出すために、ありとあらゆる手段を講じるもの。株式や金利、為替などから派生した新しい金融商品、いわゆるデリバティブにも積極的に投資するなど、ハイリスク・ハイリターンな運用をおこなうこともあります。

その手法のなかには、いわゆるハゲタカファンドが講じる手法も含まれているでしょう。

これらの共通点から、ハゲタカファンドとヘッジファンドは似ているといえるのです。

3、もの言う株主(アクティビスト)とは?

 

もの言う株主とは、アクティビストとも呼ばれることがあります。アクティビストとは直訳すると「率先して行動する人」です。

株式を保有する上場企業に対して、経営に関する自分の考えを主張する株主のことを指します。

 

具体的には、独自に作成した案を、株主総会などの公の場で提出したり、企業に対して自分の息のかかった役員を送り込んだりすることもあります。

これらの行為は決して違法行為ではなく、株主の権利として認められているものばかりです。

 

ただし、株式をそれほど保有していない人が、このような主張をしても発言力は弱いでしょう。

しかし、ある程度の株式を保有する人の発言であれば、周囲は耳を傾けざるを得ません。

もの言う株主がこのような行動に出る理由は、企業再生が目的のひとつです。

しかしハゲタカファンドが、大量の株式を取得して物言う株主になると、経営の主導権を独占する傾向にあり、大規模なリストラや、事業縮小などの強硬な手段に出ることもあります。

 

ちなみに、もの言う株主の反対に「もの言わぬ株主」という株主も存在します。

もの言わぬ株主は、サイレントパートナーと呼ばれることもあり、かつての日本には多くいました。

もの言わぬ株主は、企業経営などに口出しはせず、反対票も投じません。

しかし最近では、金融庁の働きかけもあり、徐々にもの言う株主へシフトする流れにあるようです。

4、穏健派と強硬派、株主として性質の違い

 

もの言う株主は、穏健派と強硬派にわけられるといいます。

穏健派は、経営改革に関する提案などを目立たずに舞台裏でおこないます。現経営者に寄り添う形で、経営状態を向上させようとする傾向があるため、フレンドリーな存在だと思われているのです。

対して強硬派の物言う株主は、現経営陣と対立関係になることを問題にしません。

そのため株主総会などの公の場で、面と向かって対立姿勢を取ることがあります。

 

強硬派の手法のなかには、プロキシーファイトと呼ばれる戦略があります。

プロキシーファイトとは、日本では委任状争奪合戦とも呼ばれているものです。

株主総会で自分の主張を押し通すため、現経営陣などを相手取り、他の株主の委任状を争奪する競争を繰り広げることを指します。

穏健派でも強硬派でも、会社を再生させるという目的は共通しています。

しかしそのための手段が違えば、効果や受ける印象もことなるでしょう。そのため、どちらのスタンスを取ることが正しいかは難しい判断だといえます。

5、もの言う株主が影響力をもつ仕組み

 

世界的な大企業であろうとも、もの言う株主の影響は無視できません。

そのため、今後さらにもの言う株主の影響力は増大していく流れとなるでしょう。

もの言う株主が強い影響力を持つ理由については、株式市場の原理原則に由来するといわれています。

 

まず、もの言う株主が経営改善に関する発言や行動を起こすことで、企業は「改善努力をする」という姿勢を見せなければなりません。

すると株式市場が反応して、その企業の株価が上がることがあります。

市場は株価の変動を歓迎するので、もの言う株主を後押しするのです。

もの言う株主としても、保有する株式の価格が上昇することになれば、資産価値がアップすることになります。

そのため、どんどん発言や行動を起こすことになるのです。

6、鷲津の目的は?

 

ドラマ「ハゲタカ」の主人公である鷲津政彦の目的は、物語が途中であるため、明らかになっていません。

なぜ日本の不良債権ばかりをターゲットにしているのか、という疑問もありますが、ストーリーが展開することで今後判明するでしょう。

 

また、もの言う株主としての鷲津政彦のタイプを考えた時、そのスタンスは強硬派に近いといえるかもしれません。

それはドラマである以上、物語を盛り上げなければならず、必然的に派手な演出をせざるを得ないからです。

そうすると穏健派のような穏やかなスタイルより、激しく動く強硬派のほうが都合がよいといえるでしょう。

もし鷲津が経営陣に寄り添って企業再生を目指す穏健派のもの言う株主であったなら、これほど人気のあるドラマにはならなかったと思われます。

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