鎌倉投信の看板ファンド「結い2101」とは?評判と実力をチェック

国内ファンドの多くは大手金融グループに属する運用会社によって運用されています。大手金融グループに属さない運用会社を「独立系」といい、「鎌倉投信」は独立系運用会社の代表的な存在です。

鎌倉投信は看板ファンド「結い2101」の運用に集中しています。本記事では「結い2101」運用の特徴について、他の独立系ファンドと比較しながら詳しくご紹介します。

鎌倉投信とは

鎌倉投信とは

鎌倉投信の概要は以下の通りです。

会社名 鎌倉投信株式会社
代表 代表取締役社長 鎌田 恭幸 氏
設立 2008年11月5日
資本金 5億6,550円(含準備金)
所在地 〒248-0005神奈川県鎌倉市雪ノ下四丁目5-9
事業内容・投信委託業務(投資運用業)
・投資信託の販売(第二種金融商品取引業)
登録番号 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2293号
加入協会 一般社団法人 投資信託協会
一般社団法人 日本投資顧問業協会
一般社団法人 第二種金融商品取引業協会

独立系の運用会社

鎌倉投信は大手金融グループに属さない独立系の運用会社です。独立系では他に「レオス・キャピタルワークス」や「セゾン投信」、「さわかみ投信」などが有名です。

運用ファンドは「結い2101」1本

鎌倉投信の運用ファンドは「結い2101」のみです。運用会社はいくつかのファンドを運用するのが一般的ですが、鎌倉投信は1本の運用に集中しています。

結い2101の詳細は後述します。

他の金融機関では買えない「直販型」

普通、ファンドは運用会社と異なる「販売会社」が窓口となり販売されます。資産の保全は「受託会社(信託銀行)」が行い、運用会社は運用の指示に特化します。

しかし鎌倉投信は自身で販売まで行います(受託会社は三井住友信託銀行)。このように、運用会社が販売会社の役割も担うファンドを「直販型」といい、独立系の運用会社においてときどき採用されています。

直販型のファンドを買う場合、運用会社に直接口座を開設する必要があります。鎌倉投信は「特定口座」にも対応しているので、銀行や証券会社と同じく、利益や税金の計算は鎌倉投信が自動的に行います。

鎌倉投信の評判・口コミ

鎌倉投信の評判・口コミ

鎌倉投信の評判をチェックしてみましょう。

ツイッター上での評判5選

評判からわかること

SNSから、鎌倉投信の評判は概ね以下の2点が言えるようです。

  • 運用方針への共感
  • リターンには疑問符も

鎌倉投信の評判を確認すると、同社の運用方針や理念に対してポジティブな意見が多く見つかります。「いい会社」へ投資するという鎌倉投信の考え方は多くの共感を呼んでいるといえるでしょう。

全体的にポジティブな意見が多いですが、看板ファンド「結い2101」のリターンについてネガティブな投稿も散見されました。他のアクティブファンドやTOPIXと比較しリターンが高くないとする内容です。

「結い2101」の運用方針やポートフォリオを考えると、リターンだけを他のアクティブファンドや株価指数と単純に比較してはいけません。同ファンドは現金比率を高くし、価格変動を抑えた運用を目指しているためです。リターンは低くなりますが、代わりにリスクを抑えられる利点があります。

では、鎌倉投信は具体的にどのような運用を行うのでしょうか。次章で詳しくご紹介します。

鎌倉投信「結い2101」運用の特徴

鎌倉投信「結い2101」運用の特徴

鎌倉投信のファンド「結い2101」の運用方針を確認しましょう。

3つの運用コンセプト

「結い2101」は以下3つのテーマに見合う株式に投資を行います。

  1. 「人」 優れた企業文化を持ち、人材を活かす企業
  2. 「共生」 循環型社会を創る企業
  3. 「匠」 日本の匠な技術、感動的なサービスを提供する企業

上記3つのテーマはそれぞれ3つの評価視点があります。

1.「人」 人材を活かせる会社
  • 社員個人の尊重
  • 企業文化
  • 経営姿勢
2.「共生」 持続的社会を創造する会社
  • 顧客・取引先
  • 地域社会
  • 自然環境
3.「匠」 日本の匠な技術・感動的なサービスを提供する会社
  • 商品・サービスの優位性・独自性
  • 市場性・収益性
  • 変化への対応力・革新性

「結い2101」は上記3テーマ、9つの評価視点から銘柄を絞り込み、さらに各株式の割安割高の判断や財務健全性の評価、および流動性などを鑑みポートフォリオを構築します。

参考:鎌倉投信 目論見書

国内中小型株が運用のメイン

「結い2101」は時価総額1,000億円未満の株式を小型株、1,000億円以上~5,000億円未満の株式を中型株、5,000億円以上の株式を大型株と定義しています。「結い2101」は株式ポートフォリオのほとんどを中小型株式で構成している点に特徴があります。

「結い2101」は2021年4月末時点で62銘柄の株式を組み込んでいます。内63.2%を小型株、26.1%を中型株が占め、大型株は10.7%のみです。約90%が中小型株式で構成されている点が特徴といえるでしょう。

上位10銘柄は以下の通り。

結い2101の株式ポートフォリオ 上位10銘柄(2021年4月末時点)
銘柄 テーマ 比率 時価総額
タムロン 1.20% 631.36億円
LITALICO 1.20% 1,014.88億円
ライフネット生命保険 1.20% 718.85億円
ニッポン高度紙工業 1.20% 343.39億円
アニコムホールディングス 1.20% 803.33億円
前田工繊 共生 1.20% 1,106.52億円
サイボウズ 1.10% 1,294.68億円
トレジャー・ファクトリー 1.10% 131.07億円
オイシックス・ラ・大地 共生 1.10% 1,276.76億円
三浦工業 共生 1.10% 6,208.17億円

※時価総額は2021年5月21日終値ベース

参考:鎌倉投信結だより 第134号

10位の「三浦工業」のみ時価総額6,000億円超の大型株ですが、上位9位までは中小型株が占めました。

現金ポジションが大きい

「結い2101」は株式だけでなく、債券と現金でもポートフォリオを構成しています。それぞれの構成比は以下の通りです。

結い2101 資産別の構成比(2021年4月末時点)
株式 60.00%
債券 2.20%
現金等 37.80%

特徴的なのは現金ポジションです。資産全体の約4割の現金ポジションを持っており、一般的なファンドと比較するとかなり高い水準です。

これは一時的に高いわけではなく、「結い2101」は概ね4割程度の現金ポジションを維持してきました。

結い2101 現金ポジションの推移

2015年末 36.20%
2016年末 41.20%
2017年末 35.20%
2018年末 36.90%
2019年末 36.50%
2020年末 44.50%

これだけ現金ポジションが大きいとリターンが懸念されますが、「結い2101」は比較的良好なリターンを残してきました。選定した株式から得られるリターンがある程度大きいと考えられます。

「結い2101」のリターンについては、次章で他の独立系ファンドと比較しながら詳しく解説します。

鎌倉投信のリターン&他のファンドとの比較

鎌倉投信のリターン&他のファンドとの比較

鎌倉投信の看板ファンド「結い2101」のリターンを確認しましょう。直近のリターンは以下の通りです。

結い2101 直近のリターン(2021年4月末時点)
累積リターン
1か月 ▲2.0%
1年 18.40%
3年 9.60%
5年 36.70%
設定来(2010年3月29日) 120.50%

直近1カ月ではマイナスとなりましたが、概ね安定的なリターンを得てきたようです。

他の独立系ファンド&TOPIXとの比較

「結い2101」のリターンを他の独立系ファンドおよび「TOPIX(配当込)」と比較してみましょう。

比較する独立系ファンドは以下3つです。いずれも主に国内外の株式で運用されています。

  • セゾン投信(運用ファンド:資産形成の達人ファンド)
  • レオス・キャピタルワークス(運用ファンド:ひふみ投信)
  • さわかみ投信(運用ファンド:さわかみファンド)

それぞれのファンドおよびTOPIXのリターンは以下のようになりました。

独立系ファンド&TOPIXとリターン比較(2015年=100。2021年4月末時点)

独立系ファンド&TOPIXとリターン比較(2015年=100。2021年4月末時点)

上記期間中、鎌倉投信の「結い2101」のリターンは最下位となりました。市場平均のTOPIXも下回っています。評判にあった通り、大きなリターンを得ているとは言えないでしょう。

リスクは最低に

「結い2101」の特徴は大きな現金ポジションです。リターンは小さくなる傾向にありますが、リスクもまた小さくなる傾向があります。リスクについても独立系ファンドと比較してみましょう。

一般にリスクは「標準偏差(リターンのばらつきの大きさ)」で比較します。それぞれのリスクは以下のようになりました。

独立系ファンドとリスク比較(2021年4月末時点)
1年リスク 3年リスク(年率) 5年リスク(年率)
鎌倉投信(結い2101) 9.78% 10.90% 8.88%
セゾン投信(資産形成の達人ファンド) 11.61% 19.30% 17.02%
レオス・キャピタルワークス(ひふみ投信) 13.22% 17.90% 15.36%
さわかみ投信(さわかみファンド) 17.16% 18.35% 16.01%

参考:モーニングスター

上記のように、「結い2101」は独立系ファンドと比較しリスクが最低になりました。上記ファンドの中では最も安定的な運用ができているといえるでしょう。

手数料の比較

せっかくなので手数料についても比較してみましょう。これまで比較した独立系ファンドの「信託報酬(運用コスト)」は以下の通りです。

独立系ファンドと手数料(信託報酬)比較
信託報酬(税込)
鎌倉投信(結い2101) 年率1.1%
セゾン投信(資産形成の達人ファンド) 年率1.35%±0.2%程度
レオス・キャピタルワークス(ひふみ投信) 年率1.078%
さわかみ投信(さわかみファンド) 年率1.1%

独立系ファンドと比較した場合、「結い2101」の手数料(信託報酬)は平均的な水準といえるでしょう。

鎌倉投信のメリット・デメリット

鎌倉投信のメリット・デメリット

ここで鎌倉投信のメリットとデメリットをまとめましょう。

鎌倉投信のメリット

鎌倉投信のメリットは以下の通りです。

  • 低リスク運用
  • 高い透明性

鎌倉投信の看板ファンド「結い2101」は、上述の通り比較的低リスクで運用されます。リターンよりも安定性を重視する方にはメリットが大きいでしょう。

また情報発信に積極的で、透明性が高い点もメリットといえるでしょう。毎月発行される運用レポート「結いだより」は投資対象の選定基準や今後の運用方針について詳細に記載されています。

鎌倉投信のデメリット

鎌倉投信のデメリットは運用リターンが低い点にあるでしょう。

同ファンドは安定性を重視し現金ポジションを高く維持しているため、やはり高いリターンは期待しにくいです。他の独立系ファンドはもちろん、TOPIXのリターンも下回った点は、リターンを求める方にとってデメリットと言わざるを得ません。

今後現金ポジションを減らし株式の比率を上げてくる可能性はありますが、リターン重視の方は別のファンドを選択した方がいいでしょう。

ヘッジファンドも選択肢

ヘッジファンドも選択肢

運用会社には「ヘッジファンド」という形態もあります。鎌倉投信のような運用会社とどう違うのでしょうか。

ヘッジファンドとは

ヘッジファンドも鎌倉投信のように資産運用を行う運用会社です。異なるのは運用戦略で、一般に通常のファンドより高度な運用戦略を用います。

ヘッジファンドの運用戦略を一概に言うのは困難ですが、多くは「ショート(売り)」ポジションを持つ点に特徴があります。

鎌倉投信の「結い2101」のような一般のファンドは、通常買いしか行いません。銘柄の選別や入れ替えは行いますが、基本的には「値上がり益」と「配当益」だけが収益源です。

ヘッジファンドはショートポジションを持つことで「値下がり益」も得られます。通常の「買い(ロング)」も組み合わせることで、相場全体の方向性にかかわらず、常に一定の収益を目指します。このように、相場の影響を受けない収益を「絶対収益」と言います。

ヘッジファンドのメリット

上述のように、常に一定の収益を目指す「絶対収益」がヘッジファンドのメリットです。

通常のファンドは基本的に相場全体が上昇していないと利益になりません。一方、ヘッジファンドは絶対収益を追求するため、相場の影響は限定的です。

したがって、相場の上昇を待つ必要がなく、いつでも収益機会を得られる点はヘッジファンドの大きなメリットです。

ヘッジファンドのデメリット

ヘッジファンドのデメリットは購入資金が大きいという点にあります。

多くのヘッジファンドは最低投資額を大きく設定しており、数千万円からの受け入れというケースも少なくありません。これは、多くのヘッジファンドが投資家を広く集められない「私募型」という募集形態を取っているため、1人あたりの投資額を大きくしないと運用資金を維持できないためです。

一方、通常のファンドは100円~1万円程度で購入できます。「結い2101」は1万円以上、1円単位で購入できます。通常のファンドは投資家を広く集められる「公募型」で募集しているため、1人あたりの投資額が小さくても大きな運用資金を集められるためです。

ヘッジファンドに投資したい場合、最低でも1,000万円以上の資金を用意しておきたいところです。

ご興味のある方は、下記の記事もご参考ください。

まとめ

まとめ

本記事で紹介した鎌倉投信の概要を以下にまとめます。

  • 鎌倉投信は国内の独立系運用会社
  • 運用ファンドは「結い2101」1本
  • 直販型 購入には鎌倉投信の口座開設が必須
  • 株式は中小型株がメイン
  • 現金比率が高い 高いリターンになりにくいが比較的リスクは低い

鎌倉投信は国内の独立系運用会社で「結い2101」のみ運用しています。現金ポジションが大きい安定的な運用に特徴がありますが、大きなリターンは得にくいという特徴もあります。鎌倉投信は、主に安定的な運用を重視する方の選択肢になるでしょう。

また、資金が十分にある場合はヘッジファンドも選択肢です。通常のファンドにはない「絶対収益」追求のメリットを受けられるでしょう。

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