医師に資産運用が必要になる4つの理由とは?リスク別運用法を解説

医師の年収は高く、その平均は約1,169.23万円です(令和元年賃金構造基本統計調査より)。これだけの収入があれば、そのまま働くだけでもお金の問題はなさそうですが、それは間違いです。

実は医師には働いて稼ぐ収入に加えて、資産運用が必要なケースが多くあります。

本記事では、「なぜ医師に資産運用が必要なのか、その理由」を解説します。そして、理由を踏まえて、「医師の事情に沿った運用方法」についても詳しくご紹介していきます。

医師に資産運用が必要な4つの理由

医師に資産運用が必要な4つの理由

どうして医師に資産運用が必要なのでしょうか。以下4つの理由があります。

  1. 退職金が少ないケースがある
  2. 税&社会保険負担が重い
  3. 収入も多いが支出も多い
  4. 働けなくなるリスクもある

それでは、これらについて一つずつ詳しく見ていきましょう。

1:退職金が少ないケースがある

年収と退職金は比例しません。退職金は法律で義務付けられているものではなく、あくまで任意に支払われるためです。したがって、勤め先の病院によっては退職金が支払われないケースもあります。

また、医師の異動の多さも退職金が少ない要因です。退職金は1つの病院に長く勤めるほど積み上がります。しかし医師は数年で勤め先が変わるケースが多く、退職金が少なくなりやすい構造になっています。

これらの理由から、医師は多くの退職金が望めないケースが多いため、自分で老後の資金を用意する必要があります。それも、現役時代の生活水準を維持するためには相当の老後資金が必要でしょう。

相当の老後資金を作る場合、低利の預貯金は向きません。大きなリターンが望める資産運用が望ましいといえるでしょう。

2:税&社会保険負担が重い

日本の税率は累進課税で、高年収ほど税の負担が重くなる仕組みになっています。最高税率の約55%(所得税+住民税)が適用されている医師も多いでしょう。

さらに社会保険料の負担もあります。厚生年金保険料は月収63.5万円以上、健康保険料は月収135.5万円で上限の負担となります。これらに該当する医師は少なくないでしょう。仮に2つの社会保険料を上限まで支払うと仮定すると、年間では約170万円にもなります。

※東京都(介護保険2号) 折半分 令和3年3月以降

医師はなんら対策をしないと、税と社会保険の負担が重いままです。資産運用には税や社会保険の負担を減らせるものがあるので、それらの活用が望ましいでしょう。

3:収入も多いが支出も多い

医師は高年収ですが、一般に支出も多い職種です。医師会・学会の会費や高額な医学書など、さまざまな支出があります。一部は勤め先の病院が負担するケースもありますが、多くは医師が自費でまかなっているのが実情です。

資産運用でリターンを得られれば多額の支出を補うことができるでしょう。

4:働けなくなるリスクがある

医師は一般に激務です。加齢や健康上の問題で働き方を改めなければならないケースは少なくないでしょう。もちろん様々な事情で自らやめたいと思うこともあるでしょう。

その場合、収入の低下が想定されます。収入低下に備えた資金を用意しておく方が望ましいです。

銀行預金で備えてもいいですが、やはり低金利がネックです。そのため資産運用で、ある程度のリターンを得て、リスク対策しておくことが重要になってきます。

ここまでの内容を見て「さっそく始めなければ」と行動に移す前に、資産運用を失敗しないよう確認すべき点があります。

そこで次の章では、資産運用を始める前に理解しておくべき大原則を、「注意点」として解説していきます。

医師が資産運用で気を付けたい5つのポイント

医師が資産運用で気を付けたい5つのポイント

資産運用といってもその方法はたくさんあります。医師はどのように資産運用を行えばいいのか、5つの注意点をご紹介します。

1:時間が取られないものを選ぶ

医師は基本的に忙しいので、資産運用に充てられる時間は多くないのが実情でしょう。

資産運用に時間を取られて、本業がおろそかもしくは体調を崩しては本末転倒です。

資産運用はできるだけ時間が取られないものを選びましょう。

2:短期トレードは避ける

激務の医師がマーケットを常に監視し続けることは困難です。

FXや株式などを短期的に取引を繰り返すFXや株式などの手法は現実的ではないでしょう。

短期的な取引ではなく、中長期の資産運用を心がけるといいでしょう。

中長期的な具体的な方法については、後程解説していきます。

3:過度なリスクを取りすぎない

医師に限りませんが、過度なリスクテイクは失敗の元です。

特に高収入の医師の場合、大きなリスクは不要なケースが多いと思われます。不必要なリスクを取りすぎないようにしましょう。

投資において、リスクとリターンは比例関係にあります。大きなリターンを求めるほど、大きなリスクを取ることになります。どれくらいのリターンを実現したいか冷静に考え、そのリターンを達成できる必要最低限のリスクを取るべきです。つまり、まずはどれくらいのリターンが必要なのかを考えることが大切です。

必要なリターンは資産目標から逆算しましょう。例えば1,000万円を10年間で2,000万円にしたい場合、1年あたり7.2%のリターンが必要です(1,000万円×1.072^10年)。この場合、年7.2%のリターンを達成できそうな運用方法のうち、最も小さいリスクのものを選びます。

4:利益をいちいち引き出さない。「複利」で高効率運用を

資産運用は「複利」を活かすと効率的です。

複利とは、投資で得られた利益を再投資し、さらに大きな利益を得る方法です。参考に1,000万円を年5%のリターンで複利運用した場合のシミュレーションを以下にまとめます。

1,000万円を年利5%で複利運用した場合のシミュレーション
1年目 2年目 3年目 4年目
元本 1,050万円 1,102.5万円 1,157.6万円 1,215.5万円
利益額 +50万円 +52.5万円 +55.1万円 +57.9万円

1,000万円の5%は50万円です。単純に考えれば毎年50万円を得られるイメージですが、複利では年々利益額が大きくなります。1年目では50万円の利益ですが、4年目では57.9万円の利益となりました。10年目では77.6万円、20年目では126.3万円にまで利益が大きくなります。

これは、運用額が毎年増えているためです。前年の利益を含め運用されるため、同じリターンでも利益額が指数関数的に大きくなります。

複利の実現には利益の再投資が必要です。資金が必要なら仕方ないですが、利益を得るたびに出金せず、できるだけ再投資しましょう。

5:家計の見直しも同時に行う

資産運用だけでなく、家計収支の見直しにも目を向けましょう。基本的に医師は高年収なので、家計の見直しで十分な資産を用意できるケースももちろんあります。

クレジットカードの明細や家計簿アプリを使い、支出の高いものや毎月固定で出ていくっものから見直すと効率的です。

医師が選びたいローリスク~ミドルリスクの資産運用

医師が選びたいローリスク~ミドルリスクの資産運用

上述の通り、高収入の医師は基本的に大きなリスクは不要です。野心的な目標を立てるのでない限り、ローリスクからミドルリスク程度の資産運用が適しているでしょう。

ローリスクorミドルリスク?どちらを選ぶべきか

一概にはいえませんが、1%前後のリターンを目指すならローリスクの商品で十分です。1,000万円を年1%のリターンで運用した場合のシミュレーションは以下の通りです。

1,000万円を年1%で運用した場合のシミュレーション
5年後 10年後 15年後 20年後 30年後 40年後
1,051.0万円 1,104.6万円 1,161.0万円 1220.2万円 1,347.8万円 1,488.9万円

また、5%前後のリターンを狙う場合、ミドルリスクの商品が適しています。シミュレーションは以下の通りです。

1,000万円を年5%で運用した場合のシミュレーション
5年後 10年後 15年後 20年後 30年後 40年後
1,276.3万円 1,628.9万円 2,078.9万円 2,653.3万円 4,321.9万円 7,040.0万円

上述のシミュレーションを参考に、どちらを選ぶべきか考えましょう。

但し、日本銀行は2%/年のインフレ(物価上昇)を目標としているため、1%の増加では資産は実質目減りし続けていることになります。そのため、できれば2%以上を目指すことが好ましいと言えるでしょう。

では、具体的にリスクごとにおすすめの資産運用をご紹介します。

【ローリスク】債券

ローリスク運用の代表格が債券です。国や企業が、利息の支払いと満期時点で元本の返済を約束して発行しています。満期まで保有する場合、発行者が破綻しない限り元本の保全性が高い商品です。

債券で1%のリターンを狙う場合、国内債券(国債)は選択肢が多くありません。企業が発行している債券(社債)から選ぶことになるでしょう。

海外債券の場合は選択肢が多くなりますが、為替リスクに注意が必要です。1%程度なら米ドル建て債券で十分見つかるでしょう。数%の金利が付く新興国債券は為替リスクが大きいので注意が必要です。

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【ローリスク】保険

1%程度のリターンなら保険も選択肢に入ります。特に貯蓄機能に特化した「個人年金保険」が主な選択肢です。

保険のリターンを高めるためには、以下の2点がポイントです。

  1. 満期金の受け取りをできるだけ遅くする
  2. 保険料を一時払いにする(あるいはできるだけ短い期間で払い込む)

上記はいずれも「複利」効果を高めるためリターンが上昇します。

【ミドルリスク】不動産投資

実物の不動産を取得し、家賃収入を得る方法です。資金が十分にあるなら自己資金で不動産を取得するケースもありますが、銀行融資を受けることが一般的です。医師なら一般に信用力が高いため、低金利で融資を受けられる可能性が高いでしょう。

【ミドルリスク】投資信託

投資信託は、株式や債券など、さまざまな資産で運用される金融商品です。銀行や証券会社で販売されています。

ある程度リターンを求める場合は株式で運用される投資信託を選ぶべきですが、株式だけで運用されるタイプはリスクが大きくなるケースがあります。株式以外にも、債券や不動産など、いくつかの資産を組み合わせて運用される「バランス型」が主な選択肢になるでしょう。

「確定拠出年金」を通じて買うと節税に

投資信託を直接買うのではなく、確定拠出年金を通して買うと節税につながります。投資額の全額が所得控除になるためです。税負担が重い医師にとっては特に検討したい方法です。

その代わり、リタイアまで引き出すことができないので注意が必要です。また投資できる額に上限があるので、多くの資金は運用できない点も注意点です。

確定拠出年金には以下の2種があります。

  1. 企業型
  2. 個人型(iDeCo)

「企業型」は勤め先の病院が確定拠出年金を導入しており、かつ加入資格を満たしている場合に加入できます。勤め先の病院に「企業型」確定拠出年金がない場合、「個人型(iDeCo)」に加入しましょう。

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【ミドルリスク】ヘッジファンド

ヘッジファンドに資金を預け、投資の専門家に資金を運用してもらう方法です。投資信託に似ていますが、さまざまな運用方法を行う点で異なります。

例えばヘッジファンドの代表的な運用方法に「株式ロングショート」があります。値上がりしそうな株式を買い、値下がりしそうな株式に売りを仕掛ける戦略です。売りも行うことで下落相場でも利益獲得が期待できます。一方、通常の投資信託は売りを行わないので、下落相場では一般に値下がりします。

ヘッジファンドは株式ロングショート以外にもさまざまな運用戦略を行います。通常では得られない投資信託以上の利益獲得の機会がある点がヘッジファンドの強みです。

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まとめ

まとめ

本記事の内容を以下にまとめます。

  • 医師は退職金が少ない、税負担が重いなどの理由から資産運用が望ましい
  • 時間が取られない運用方法を
  • ローリスク~ミドルリスクが望ましい

医師は高収入ですが支出も多く、また退職金が少ないという事情があります。資産運用で備えておく方が望ましいでしょう。

資産運用を行う場合、時間が取られないものを選ぶ必要があるでしょう。またリスクが大きすぎる方法も避けた方がいいです。必要なリターンを最低限のリスクで実現できるよう心がけましょう。

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