投資家が失敗する7つのパターンと最低限心がけたいポイントとは?

「投資に興味はあるが失敗はしたくない」。
これから資産運用を始める誰もが思うことではないでしょうか?

投資にはリスクがあるためどうしても損をしてしまう可能性はありますが、なかには避けられたはずの損失も起こり得ます。これらの多くは投資家が事前に把握できていないことが原因だと考えられるでしょう。

本記事では投資家のよくある失敗を3つの具体例と7つのパターンに分けて解説します。

投資で失敗しないためにも、資産運用に取り組む前に本記事をぜひご覧ください。

投資家のよくある失敗

積み上げたものを崩してしまう失敗

個人投資家に考えられるよくある失敗として、まずは具体的に以下3つのケースを紹介します。

  • 安全だと勘違いした仕組債で失敗
  • バイオ株をフルレバレッジで信用買いし大損
  • 高利回りにつられた新興国債券、為替コストで実質マイナス

安全だと勘違いした仕組債で失敗

金融機関の窓口では「早期償還条項付」や「株価連動」などと書かれた債券が販売されているケースがあります。これらは「仕組債」と呼ばれる商品で、通常の債券とは商品性が異なるリスクの高い商品です。

条件にもよりますが、一般的な債券は発行体が破綻しない限り満期まで保有すれば基本的に損しません。
しかし、仕組債の利益の源泉はデリバティブ取引にあるため、状況によっては大きな損失が発生する可能性があります。

「債券」と名付けられていること、また銀行などで幅広く販売されていることもあり、リスクを理解せずに安易に投資してしまうケースが少なくないようです。証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)によると、2021年だけで仕組債に関する紛争解決手続きは42件も行われました。

バイオ株をフルレバレッジで信用買いし大損

ときどき特定の銘柄が市場の関心を集め株価が急騰するケースがあります。新薬の開発を目指すバイオ株はその筆頭で、開発が一段階進むだけでストップ高というケースも珍しくありません。

そういった急騰劇は一時的なケースも多いですが、今後の値上がりを妄信し信用取引で買えるだけ買ってしまうことがあります。この状態を一般にフルレバレッジといい、大きなリスクを伴う行為です。

特にバイオ株はもともと値動きが大きく、大きな値下がりも頻発します。例えば2019年1月に治験で有意な結果を得られなかった「サンバイオ<4592>」は売りが殺到し、5日間で株価がおよそ80%も下落しました。もしフルレバレッジで買っていたら多大な損失を被っていたでしょう。

高利回りにつられた新興国債券、為替コストで実質マイナス

外国債券は日本では得られない高金利が魅力です。特に新興国のものは金利が高い傾向にあり、銘柄によっては2桁もの金利が付いているケースもあります。

しかし円を外貨に交換する際の手数料「為替コスト」を考慮すると実質的な利回りは下がります。特に新興国は為替コストが高い傾向にあるため注意しましょう。

例えば楽天証券におけるトルコリラの為替コストは片道1.5円です(2022年2月27日時点)。トルコリラは2022年2月27日時点でおよそ8.4円のため、レートが変動しない限り9.9円で買ったものを6.9円で売ることになり、往復でおよそ30%もの手数料が発生します。金利や満期の条件によってはマイナスとなる可能性も十分あるでしょう。

投資家が失敗する7つのパターン

落ち目に遭遇する投資家

よくある具体例を見てきましたが、それではなぜ投資家は失敗してしまうのか?7つの典型的なパターンから探ってみましょう。

1.話題の資産運用に飛びつく&反射的に売買する

株価が急騰した銘柄やSNSなどで話題の資産運用は一見魅力的に見えます。これまで暗号資産(仮想通貨)やシステムトレード(自動売買)、また太陽光発電などが話題を集めてきました。

しかし、高いリターンが期待できるものには相応のリスクがあります。これらの資産運用を行い、思わぬ損をしてしまった方は少なくないでしょう。いかに話題であっても投資を即決せず、冷静に考えることが大切です。

2.運用方針を明確化できていない

資産運用では過度なリスクテイクはもちろんリターンの不足も望ましくありません。しかし運用方針を明確にしていない場合、どれくらいのリスク・リターンがふさわしいか判断できないためこれらの事態を招いてしまう可能性があります。

利益確定や損切りのルールを決めないことも失敗しやすい要因です。特に取引経験が浅いうちは場当たり的な取引になりやすく、利益は小さく損失が大きい取引を繰り返してしまう可能性があるでしょう。

3.金融機関の提案や広告をうのみにする

金融機関は資産運用に関する情報を多く提供していますが、そのとおりに投資を実行していては危険です。一般に金融機関の担当者は営業方針(ノルマ)が課されているため、その消化のために提案が行なわれる可能性がゼロではありません。

もちろん本当にあなたを思って提案してくれる担当者もいるでしょうが、金融機関は転勤も多いため担当者が変わることも多いです。なにより提案をうのみにしていては知識が身に付きません。

金融機関の提案や広告は参考にとどめ、投資の前には自分でも調べるよう癖付けるようにしましょう。

4.コストを加味していない

資産運用はコストがかかるケースも少なくありません。新興国の為替コストのように、なかには利回りを超えるコストが発生することもあります。

表面的な利回りは広告などでも触れる機会が多いですが、投資判断の際はコストを差し引いた実質的な手取りで考えるようにしましょう。

5.過度にレバレッジをかける

資産運用のなかには信用取引のようにレバレッジをかけられるものがあります。レバレッジとは自己資金以上の取引を指し、信用取引の場合は自己資金の約3.3倍までの金額で取引が可能です。

レバレッジをかけた取引は資金効率がよく、また売り(ショート)から取引を始められるメリットもあります。しかし、レバレッジをかけた取引は自己資金を超える損失が発生する可能性をはらむリスクの高い取引です。

レバレッジの倍率は任意に調整できるため、過度にレバレッジをかけ過ぎないようにしましょう。

6.「毎月分配型」の投資信託を買う

投資信託は分配金として運用資金の一部を投資家に配るケースがあり、これを毎月行うものを「毎月分配型」と言います。

毎月お金を受け取れるのは一見魅力的ですが、投資信託の分配金は運用資金から支払われるため、実質的に少しずつ売却しているに過ぎません。基本的に値下がり時も分配金は支払われるため、元本まで取り崩しているケースには注意が必要です。

特に長期運用を計画している方にとって毎月分配型は向かないでしょう。運用資金を払い出してしまうため複利(ふくり)がうまく働かないためです。

複利とは、得られた利益を再投資し、運用資金を大きくすることでさらに大きな利益を得る方法を言います。
通常の投資信託は投資信託内で自動的に再投資しているため複利が働きます。
しかし、毎月分配型は運用資金を出金してしまうため複利が働きません。

複利の差は長期運用になるほど大きくなります。毎月分配型を選んではいけないわけではありませんが、長期運用したい方は避けたほうがよいでしょう。

7.マイナス利回りの債券ファンドを買う

債券ファンドとは一般に債券だけで運用される投資信託を言います。債券は一定の金利収入が得られる比較的安全性の高い商品で、債券ファンドも投資信託のなかではリスクは低めです。

しかし近年は世界的に金利が低い状況にあり、債券ファンドのポートフォリオ利回りがマイナスとなっている可能性があります。その場合、債券価格が上昇しなければ基本的に利益を得られません。さらに投資信託の運用コスト「信託報酬」も差し引かれるため注意が必要です。

債券ファンドは比較的リスクが低いことから選ばれやすい商品でもありますが、利回りの状況については購入前にチェックしておきましょう。

失敗しないために最低限心がけたい3つのポイント

突然の出来事に備えるためにできること

ここまで紹介した失敗例は、いずれも気を付けていれば避けられるものばかりです。このような失敗を避けるため、投資の際に気を付けたいポイントを紹介します。

ポイント1:投資前に対象を調べる

商品の種類にかかわらず、投資前には必ず自分で調べるようにしましょう。その商品で利益を得られる仕組みや過去の実績などが主なチェックポイントです。

例えば株式の場合、株主はその企業から利益の一部を受け取れる権利を持つため利益を得られます。取引所の売買を通じて値上がり益を得られるケースもあるでしょう。
不動産投資の場合は入居者から得られる賃貸が主な利益の源泉です。

このように、まずは大まかにでもその商品で利益を得られる仕組みを理解しましょう。内容が複雑で理解できないものは投資を避けたほうが無難です。間違っても広告や助言をうのみにしてはいけません。

ポイント2:リスクを把握する

資産運用にリスクがあることは多くの方が知るところだと思います。投資する際には、さらに踏み込んで「どんなリスクがあるか」までチェックしておきましょう。

どのようなシチュエーションで損失となるのかがわかれば、少なくても想定外の損失の多くは避けられます。事前の投資判断の材料にもなるため、投資の際にはリスクの把握に努めましょう。

資産・商品別の主なリスク

参考に代表的なリスクを以下にまとめました。あくまで一般的なものにとどまるため、投資の際は個別にリスクをチェックしましょう。

株式価格変動リスク株価が投資時よりも下落し損失となるリスク
信用リスク上場企業が破綻し、株式の価値が大きく棄損するリスク
債券金利変動リスク(価格変動リスク)市場金利が上昇することで相対的に債券の金利が低くなり、価格が下落するリスク
信用リスク債券の発行体が破綻し、債券の価値が大きく棄損するリスク
不動産空室リスク入居者が埋まらず、想定よりも利回りが下落するリスク
流動性リスク買い手が現れずに売れない、あるいは極端に低い価格でないと売れないリスク
海外資産為替リスク日本円に対し現地通貨の価値が下落するリスク
カントリーリスク投資地域で紛争や政変などが起こり、投資対象の価値が下落するリスク

ポイント3:コストをチェックする

コストについてもチェックしておきましょう。魅力的な利回りが提示されている商品はコストを加味していないケースが少なくありません。

コストは購入時・保有中・売却時の3つをチェックすることが基本です。ほかに税金についても把握しておくことが望ましいでしょう。

自信がないならプロに運用を任せる

餅は餅屋に任せる選択もあり

ここまで投資家によくある失敗や失敗しないために注意したいポイントを解説しましたが、なかには自力での運用にハードルを感じた方もいるかもしれません。

もし自分で運用することに自信がない場合、運用をプロに任せられる商品を選んでみてはいかがでしょうか。

プロに任せられる商品

運用をプロに任せられる商品はいくつかありますが「投資信託」が代表的でしょう。投資信託は不特定多数から集めた資金をファンドマネージャーが一括して運用する商品です。

同じく投資家の資産を運用するものに「ヘッジファンド」があります。いずれも運用のプロに銘柄の選定や売買を一任できるため、知識がない方でも簡単に資産運用に取り組めるでしょう。

ヘッジファンドとは

ヘッジファンドは機関投資家や富裕層向けに資産運用を提供している運用会社です。投資信託は個人から少額の資金も受け入れていますが、ヘッジファンドは基本的にまとまった資金のみ受け付けています。ヘッジファンドによりますが、最低投資額はおよそ1,000万円以上になるでしょう。

なぜヘッジファンドがいいのか

ヘッジファンドは低いリスクで高い利回りを得たい場合に向くとされています。理由は多くのヘッジファンドが「絶対収益」を追求する点にあるでしょう。

絶対収益とは相場の影響を受けない収益のことです。ヘッジファンドは高度な運用戦略を駆使し、相場全体の上昇・下落を問わず一定の利益を目指します。

投資信託のように単に買いだけを行う場合、リスクとリターンは比例関係にあります。そのため、低リスクで高い利回りを得られることは基本的にありません。

しかし、特殊な運用を行うヘッジファンドではリスクを抑えつつ高い利回りを得られる可能性があるのです。

ヘッジファンドの主な戦略

ヘッジファンドはどのような戦略で低リスクかつ高い利回りを得ているのでしょうか?

その代表的な戦略は「エクイティヘッジ(マーケットニュートラル)」です。これは市場全体よりも値上がりが期待できる銘柄を買うと同時に、市場全体に売りを仕掛ける戦略を指します。

例えば値上がりがTOPIX(東証株価指数)を必ず1%上回るA銘柄を発見できたとしましょう。このとき、確実に利益を得るにはA銘柄を買うだけでは不十分です。TOPIXが3%と下がるとき、A銘柄は2%下落しているためです。

そこで同時にTOPIX先物の売りを仕掛けた場合、A銘柄は2%のマイナスですがTOPIX先物の売りで3%のプラスとなるため、差し引き1%の利益となります。TOPIXがどのような値動きとなっても、理論上A銘柄が持つ1%のリターンを必ず獲得できることになります。

リラティブバリュー」もヘッジファンドが低リスクで高利回りを目指す際に行う戦略です。これは一時的なミスプライシングによって発生した価格の乖離に着目し、割安な銘柄への買いと割高な銘柄への売りを同時に仕掛ける戦略です。

例えば本来100円で取引されるB銘柄とC銘柄が一時的にそれぞれ95円・105円となった場合、B銘柄に買いを仕掛けC銘柄には売りを仕掛けます。理論上ミスプライシングはいずれ解消されるため、両銘柄の価格差10円が利益となります。

少し詳しく解説しましたが、自分でできると思った場合は、やってみても良いかもしれません。
ただ、情報収集や学習に膨大な時間がかかり、失敗する可能性もありますので、自信がない場合はプロに任せるのが早いでしょう。

ヘッジファンドの実績

こういった戦略は、実績を見ても一定の効果があるとわかります。
日興リサーチセンターの「ヘッジファンド概況(2022年1月)」によると、直近1年間におけるエクイティヘッジとリラティブバリューのリスクはいずれもTOPIX(配当込)を下回りました。リターンをリスクで割った数値はTOPIXを上回ったため、リターンを損なわずに低リスクで運用できたといえます。

運用戦略別 ヘッジファンドの実績(直近1年間)
戦略 リターン リスク リターン/リスク
エクイティヘッジ 6.13% 7.92% 0.77
リラティブバリュー 6.65% 2.08% 3.2
参考)配当込TOPIX 7.05% 12.04% 0.59

※2022年1月時点

これらはあくまで過去の実績ですが、ヘッジファンドが低いリスクで高い利回りを得たい場合に、向いていると言える一つの証といえるでしょう。

まとめ

失敗を経験する前に、できることをやろう

本記事の内容を以下にまとめました。

  • 仕組みやリスク、コストについて把握していないと投資は失敗しやすい
  • 広告や助言をうのみにせず、しっかり事前にチェックする
  • 運用に自信がないなら投資信託やヘッジファンドが選択肢
  • 低リスクで高利回りを目指すならヘッジファンドがおすすめ

資産運用にはリスクやコストがあり、それらの把握を怠る投資家は失敗しやすいでしょう。

本記事で紹介した仕組債やレバレッジ取引の失敗も、事前に商品の仕組みやリスク・コストについて知っていれば避けられたと考えられます。投資の際は金融機関などの広告やアドバイスをそのまま実行するのではなく、いったん自分で冷静に判断することが大切です。

もし運用に自信がないなら投資信託やヘッジファンドが選択肢です。ファンドマネージャーが私たちに代わって資産運用を行うため、自力で全て行うよりもハードルは下がるでしょう。
比較的低リスクで高い利回りを得たい場合は絶対収益を追求するヘッジファンドがおすすめとなる選択肢です。

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