近年、資産運用の場でヘッジファンドは存在感を増しています。
しかし、ヘッジファンドは富裕層向けの投資を行っているため、一般的な個人投資家にはその実態はよくわかりません。
ヘッジファンドとはどのようなものでしょうか。
ヘッジ(Headge)は、英語で「避ける」という意味です。
そして、ファンドとは投資家から集めた資金を運用することで、利潤を生み出し、投資家へ分配することを目的にしています。
しかし、これらの言葉からヘッジファンドの実態を捉えることは難しいでしょう。
以下ではヘッジファンドは何であるかを理解するために、仕組みや運用方法を解説し、投資リスクについて検討します。
1、高額の投資を行うヘッジファンドとは
ヘッジファンドとは投資対象を限定し、高額の投資を行う会社です。
さまざまな投資方法や手段を駆使して、市場全体の景気に左右されることなく、利益を得ることを目的に投資を行います。
ヘッジファンドのヘッジとは、相場や不景気による資産の目減りを「避ける」ことを指しています。
ヘッジファンドでは一般的に資金を小口投資家から求めていません。
高額な投資資金を持った富裕層や機関投資家から資金をヘッジファンドは集めています。
そのため投資家からの信頼を得るために、運用投資家は自らの財産をファンドに投資しているのが一般的です。
ヘッジファンドでは、極めて高いレバレッジでの取引も珍しくありません。
レバレッジとは、借入金や社債などによって資本額を多くすることで投資利益を大きくすることです。
投資した自己資本に対してだけでは大きな利益を得ることは難しいです。
大きな利益を得るためにヘッジファンドでは他人資本を多く投入します。
そのため、運用損失が自己資本よりも遥かに大きくなってしまう場合があります。
また、ヘッジファンドは投資資金を安定的に運用するため、出資された資金を運用1年目で返還しないのが一般的です。
ヘッジファンドでは投資利益も運用資金として捉えているため、出資金とともに支払は限られた時期にしか行われません。
通常、ヘッジファンドの投資家は、投資の解約を行い出資金の返還を求めるには、ヘッジファンドの決算日の45日前までに申し出なければなりません。
2、ヘッジファンドと投資信託の違い
ヘッジファンドは、複数の投資家からお金を集め、高額の投資を行う点では投資信託と同じといえます。
その点では投資信託と違いなくみえるかもしれません。
ですが、ヘッジファンドは私募ファンドで、多くの場合に公募投信を行っている投資信託とは異なります。
公募投信とは、50人以上の多数の投資家を不特定に募集する投資資金の集め方です。
公募投信では銀行や証券会社などを利用して、広く投資希望者を募れます。
一方、私募投信は的確機関投資家と50人未満の少数の投資家を対象にした、投資資金の集め方です。
公募投信では一般的に広く誰からも投資を受け付けますが、ヘッジファンドでは機関投資家や富裕層など、個人や法人で大きなお金を用意できる、限られた先から投資を募っています。
一般的な投資信託よりも求められる投資額大きく、最低投資単価が100万米ドル以上であるヘッジファンドは少なくありません。
また、ヘッジファンドでは運用会社が決めた絶対利益を目指して資産運用を行います。
ヘッジファンドでは当初契約した利益を運用によって生み出し、投資家に支払わなければなりません。
それに対して、投資信託の運用利益は相対的利益なので、市場や相場の変動に応じた利益が投資家に支払われます。
つまり、ヘッジファンドが投資額の20%の利益を保証したとすると、それ以上の運用実績があった場合、それは全てヘッジファンドの利益になります。
一見すると、お金を投資しているのに運用利益を全て得られないことは、腑に落ちないかもしれません。
しかし、投資家にとって高い利率を恒常的に生み出すことのできるヘッジファンドは非常に魅力的で、運用成績を出し続けているヘッジファンドには多くの資金が集まります。
3、ヘッジファンドの資金運用方法
ヘッジファンドがどのような運用方法を行っているかは、投資信託との比較から考えるとよくわかります。
まず、投資資金の運用方法をヘッジファンドは運用会社自身で決定します。
仮に日経平均株価の、年間見込み上昇率が3%しかない場合にであっても、20%の絶対利益を約束したのであれば、ヘッジファンドは運用利益が20%を超える運用方法を模索し実行しなければなりません。
そのため、自ら定めた目標を達成するため、ヘッジファンドはオフショア投資やレバレッジの利用を積極的に行います。
また、ヘッジファンドでは投資信託では利益を生み出すことが難しい場合でも、先物取引や信用取引などを利用し、リスクヘッジをしながら利益が得られる積極的な資金運用を行うのが普通です。
ヘッジファンドでは投資家から集めた投資資金を複数の投資商品に分けることで、万が一のリスクに対処できるように運用を行っています。
4、ヘッジファンドへの投資方法
日本では投資を行う際には証券会社などの金融機関を介して行われるのが一般的です。
ヘッジファンドへの投資も証券会社を介して行えます。
ですが、国内の証券会社ではヘッジファンドの商品をそのまま扱うことはできません。
そのため証券会社の商品として取り扱えるように、金融商品には幾分変更が行われています。
運用利率はヘッジファンドに直接投資を行うよりも下がってしまいます。
また、海外の金融機関や証券会社を通して、ヘッジファンドに投資を行うことも可能です。
しかし、証券会社や金融機関を解すると、手数料が発生します。
より効率良い投資を行うのであれば、ヘッジファンドと直接に契約をすると良いでしょう。
多くのヘッジファンドは、金融機関を通しての公募を行っていません。
ですが、十分な資産を保有しているのであれば、直接にヘッジファンドにアクセスすることで投資契約を結べます。
5、投資リスクの検討
ヘッジファンドを利用する際に、まず確認しなければいけないリスクが、資金の流動性についてです。
ヘッジファンドは私募投信で投資資金を集めているので、ヘッジファンドの商品を取引する市場は一般的ではありません。
そのため、投資した資金を回収するにはヘッジファンドとの契約を終了し、自己資金の返還を受ける必要があります。
しかし、ヘッジファンドは大規模な解約リスクを避けることを目的に、契約の解約制限を設けています。
大口の投資家が一挙に投資契約を解約すると、ヘッジファンドが倒産する可能性があるからです。
投資する前に、ヘッジファンドとの契約が資金流動性のリスクをどの程度背負っているかを、把握しておく必要があります。
価格変動のリスクは、ヘッジファンドの投資戦略によっては大きな変動になり得る場合があります。
投資する場合には、どの程度までならばリスクが許容度できる価格変動なのかを把握しておくことが大事です。
また、その際ポートフォリオの組成にも注意しなければなりません。
ポートフォリオの組成が良くないと損失の分散ができないからです。
十分に投資商品の分散が行われているかヘッジファンドか、把握しておくことが大切です。
最後に、カウンターパーティーのリスクを見逃さないことが重要です。
カウンターパーティーのリスクとは、取引相手の倒産リスクのことです。
取引相手が倒産してしまうと、保有していたデリバティブ商品などの時価額が、一気に失われるかもしれません。
6、ヘッジファンドを利用するならリスクの事前調査が大切
ヘッジファンドは多くの資金を集め、より高い利益を得るために投資を行っています。
その会社運営は投資信託と近いようにもみえますが、ヘッジファンドでは運用目標を経済指標に連動させません。運営会社自身で投資家への絶対利益と運用目標を決定します。
また、絶対利益を得るためにレバレッジや先物投資などさまざまな投資手法を用いるとともに、投資先を分散させることでリスクヘッジを行っています。
そのため、投資リスクは一般の株式投資よりも低いといえるでしょう。
しかし、投資リスクが無いわけではありません。
ヘッジファンドを利用する場合には、性質に応じたリスク管理や、ヘッジファンドの関連会社が持つリスクについて、よく把握した上で投資を行うことが大切です。