投資信託で大損してしまう理由を2つに分けて、9つの事例で解説。大損しないための予防方法や、投資信託と似た投資法で代替できるヘッジファンドについても紹介。
「投資信託は分散投資しているためリスクが低い」と聞いたことありませんか。しかし実際には大きく損をしてしまう方がいます。リスクが低いはずの投資信託でなぜ大損してしまうのでしょうか。
そこで本記事では投資信託で大損してしまう理由を大きく2つに分け、それぞれ具体的な失敗例9つを紹介しながらわかりやすく解説します。
記事の後半では、大損を予防する5つの方法も紹介していますので、投資信託で損したくない方はぜひご一読ください。
投資信託で大損してしまう2つの理由
投資信託で大損してしまう理由は大きく以下の2つに分けられます。
- 銘柄選びに失敗している
- 売買タイミングに失敗している
まずはそれぞれ簡単に解説します。
理由1:銘柄選びに失敗している
大損する可能性が高い投資信託を買ってしまうケースです。
多くの投資信託は分散投資されているため、株式など個別銘柄に集中投資するよりはリスクが下がります。ただし、すべての投資信託のリスクが低いわけではありません。中にはむしろリスクを高めているものもあります。
また値上がりしにくい仕組みを持つ投資信託もあります。具体的な銘柄選びの失敗例は次節で確認しましょう。
理由2:売買タイミングに失敗している
購入や売却を行うタイミングに失敗しているケースです。
銘柄を正しく選んでいても、売買のタイミングによってはうまく利益を得られません。そればかりか大損をしてしまう可能性もあります。
どのようなケースが売買タイミングの失敗にあたるか、こちらも後で詳しく解説します。
【解説】銘柄選びに失敗している4例
ここからは上述の2つの理由について、より具体的な例を確認しましょう。まずは「銘柄選びの失敗」について紹介します。このケースでは以下4つの例が考えられるでしょう。
- リスクが高い投資信託を選んでいる
- 値上がりしにくい仕組みの投資信託を選んでいる
- コストが高い投資信託を選んでいる
- 1つの投資信託に集中投資している
それぞれ詳しく解説します。
例1.リスクが高い投資信託を選んでいる
大損してしまう銘柄選びの代表的な例が、高リスク投資信託を選んでいるケースです。例えば以下のような投資信託が考えられます。
- レバレッジ型
- 通貨選択型
レバレッジ型(ブル型・ベア型)
レバレッジ型はあえてリスクを大きくしている投資信託です。先物などのデリバティブ取引を組み込み、元の数倍の値動きになるよう運用されています。
代表的なものが「ブル型」や「ベア型」と呼ばれる投資信託です。ある指数の何倍かの値動きになるよう運用されるタイプで、ブル型は指数の数倍、ベア型は指数と反対の値動きの数倍になるよう運用されます。
日経平均のブル型・ベア型を例に取り、以下にまとめました。
日経平均:+1% | 日経平均:▲1% | |
---|---|---|
日経平均・ブル型2倍 | 2% | ▲2% |
日経平均・ベア型2倍 | ▲2% | 2% |
上記では日経平均が1%を上がるとき、ブル型では倍の2%増え、ベア型では反対に2%下落することを表しています。倍の値動きになることからリスクが大きく、大損の可能性が高くなるので注意しましょう。
通貨選択型
為替取引を組み込んだ投資信託です。主要な投資対象に為替の値動きが加わるためリスクが大きくなります。
例えば「日経平均・米ドル型」という通貨選択型投資信託の場合、以下のような値動きになります。
日経平均:+1% 米ドル円:+1% | 日経平均:▲1% 米ドル円:▲1% | |
---|---|---|
日経平均型 | 1% | ▲1% |
日経平均・米ドル型 | 2% | ▲2% |
上記では「日経平均の値動き+米ドル円の値動き」となります。単純に日経平均だけに投資する投資信託よりも値動きが大きくなる点に注意が必要です。
特に新興国通貨を組み込むタイプでは大きな値動きとなるため注意しましょう。
例2.値上がりしにくい仕組みの投資信託を選んでいる
値上がりしにくい仕組みを持つ投資信託を選んでいるケースも、代表的な銘柄選びの失敗例です。以下のような投資信託が該当します。
- 毎月分配型
- カバードコール型
毎月分配型
分配金として毎月お金を受け取れる投資信託です。一見よさそうですが、投資信託の値段「基準価額」が上がりにくくなるデメリットがあります。
基準価額は以下のように計算します。分子が「純資産総額」となっている点がポイントです。
基準価額=純資産総額÷総口数
上記の式から、純資産総額が大きくなるほど基準価額は上がるとわかります。しかし分配金はその純資産総額から支払われるため、分配金を支払うほど基準価額が下落します。毎月分配型が値上がりしにくい理由です。
「複利」の点からも毎月分配型は値上がりしにくいと説明できます。複利とは利益を再投資し、さらに大きな利益を得る運用方法です。
分配金を支払わない投資信託は得られた利益を自動的に再投資しているので複利運用を行っています。しかし毎月分配型は利益を払い出してしまうので再投資できず、複利運用できません。
つまり、同じ運用を行う場合、毎月分配型は値上がりしにくいといえます。
カバードコール型
「カバードコール型」も値上がりしにくい投資信託の代表です。オプション取引を組み合わせているタイプで、「〇〇プラス」や「α(アルファ)」という名前が付いていることが多いです。
これは値上がり益を放棄し、代わりにオプション取引によるプレミアム(オプション料)を得る投資信託です。値上がり益を受け取れませんが、一定のインカムゲインを得ることができます。
※インカムゲイン:配当など定期的な利益(⇔キャピタルゲイン:値上がり益)
値上がり益を放棄しているため、投資対象が下落した後はプレミアムを受け取り続けないと基準価額が上がりません。その間も値下がりのリスクはあります。カバードコール型が値上がりしにくい理由です。
例3.コストが高い投資信託を選んでいる
運用コストが高い投資信託も大損の可能性があります。コストは純資産総額から支払われるため、基準価額の下落要因だからです。
特に以下2つのタイプが高コスト投資信託の代表例です。
- アクティブ型
- ファンド・オブ・ファンズ
アクティブ型
積極的に運用し、市場平均を超えるリターンを目指す投資信託です。銘柄の調査や積極的な売買などを行うため、どうしてもコストが高い運用になってしまいやすいです。
ファンド・オブ・ファンズ
複数の投資信託で運用される投資信託を指します。運用コストが二重にかかるデメリットがあります。ファンド・オブ・ファンズ自体の運用コストに加え、ファンド・オブ・ファンズが組み込む投資信託の運用コストがかかるためです。
例4.1つの投資信託に集中投資している
1つの投資信託しか選ばない場合も大損の可能性が大きくなります。いくつかの銘柄に分けて買った方がより分散投資効果が働くためリスクが下がります。
上述したファンド・オブ・ファンズを買うことで同様の効果が得られますが、自分で直接投資信託を選んだ方が二重コストとなりません。
【解説】売買タイミングに失敗している5例
ここからはもう1つの大損してしまう理由「売買タイミングの失敗」について具体例を紹介します。このケースでは以下5つの例が考えられるでしょう。
- 資金全額で一括購入した
- 勧められるままに購入した
- 下がったらすぐに売ってしまった
- 売却代金ですぐに別の銘柄を買い付けた(乗り換えを行った)
- 損切りを全くしなかった
それぞれ解説します。
例1.資金全額で一括購入した
最初から運用資金の全額を使って投資信託を購入するケースです。資金のすべてが当初からリスクにさらされるため大損の可能性が高くなります。
例2.勧められるままに購入した
銀行など、対面金融機関の担当者に勧められるまま買い付けるケースです。どのような運用を行うかきちんと理解してからでないと大損の可能性は高いと言わざるを得ません。
対面金融機関の担当者には基本的に営業目標(いわゆるノルマ)があります。したがってその提案は基本的に営業目標を反映されたもの、つまり手数料が高い投資信託を勧められやすいといえます。
対面金融機関を一律に否定するものではありませんが、投資信託を担当者から提案された場合はきちんと理解してから判断しましょう。
例3.下がったらすぐに売ってしまった
値下がりしたときにすぐ売ってしまうケースです。損失を確定するため大損を避けられるともいえますが、これを繰り返してしまうと大損という可能性が考えられます。
投資信託は基本的に中長期で保有する商品です。長く持つほど上述した「複利」の効果が高くなるメリットもあります。短期的な値動きで売買を判断しないようにしましょう。
例4.売却代金ですぐに別の銘柄を買い付けた(乗り換えを行った)
投資信託を売り、その売却代金ですぐに別の銘柄を買い付ける方法を「乗り換え」といい、頻繁に繰り返すと大損の可能性が高くなります。
乗り換えは売却と購入という真逆の投資行動を、同じ時期に行う点に問題があります。例えば相場全体が高いときは売りだけを行うべきですし、反対に安いときは買いだけを行うべきです。買いと売りを同時に行う乗り換えは「高値の買い」または「安値の売り」を誘発しやすいといえるでしょう。つまり、大損の可能性が高くなります。
乗り換えは慎重に判断しましょう。
例5.損切りを全くしなかった
損切りは損失を確定させるためマイナスの状態で売ってしまうことです。損切りを全くしないケースでも大損の可能性が高くなってしまいます。
これまで投資信託は中長期投資すべきだと解説してきました。上述したように複利の点から長期投資の方が有利だからです。
ただし「今後値上がりしないだろう」と考えるなら保有する意味はありません。損切りし、値上がりが期待できるまで待つ、または別の銘柄へ乗り換えた方が合理的です。
大切なのは「今後上がるかどうか」です。今保有している銘柄に値上がりが期待できるなら保有しましょう。ただし、値上がりに期待できないなら損失の額にかかわらず損切りをお勧めします。
投資信託で大損しない予防方法は?
ここまで解説した投資信託で大損する理由とその具体例を踏まえ、ここではその予防法について確認しましょう。以下5つの方法をお勧めします。
- 銘柄を分散させる
- 低リスク&低コスト投資信託を選ぶ
- 投資タイミングを分散させる
- 長期投資を前提にする
- 損切りルールを作る
それぞれ簡単に解説します。
方法1.銘柄を分散させる
1つの投資信託ではなく、いくつかの投資信託を買うだけで大損の可能性を減らせます。
その際、運用方法や投資対象が重複しないよう選びましょう。同じような運用だと分散投資の効果がうまく働きません。
方法2.低リスク&低コスト投資信託を選ぶ
リスクが低く、またコストが低い銘柄を選ぶことでも大損を避けられる可能性が高くなります。
どちらも兼ねている投資信託の代表が「債券型インデックスファンド」です。リスクが比較的低い債券の指数に連動する投資信託で、アクティブ型と異なりコストが低いメリットがあります。
債券指数には以下のようなものがあります。
ただしリターンが低いデメリットもあります。分散投資の1つに加えるといいでしょう。
方法3.投資タイミングを分散させる
大損を避けるなら投資タイミングを分散させることも有効です。運用資金の全額を一度に投資するのではなく数回に分けて買うといいでしょう。長期の積立投資もお勧めです。
方法4.長期投資を前提に
投資信託はできるだけ長く持ちましょう。上述した複利の効果が高まるため効率的にお金を増やしやすくなり、大損を避けやすくなります。
方法5.損切りルールの設定も
長期投資を前提にすべきですが、場合によっては損切りもしないといけません。
損切りのポイントは「今後値上がりするかどうか」ですが、もし判断が難しい場合はルールを定めましょう。「10%以上下がったら損切り」といったように、判断しやすいルール設定がお勧めです。
運用を一任したいならヘッジファンド
投資信託で大損を避けるには「銘柄選び」と「売買タイミング」に気を付ける必要がありますが、自信がないなら「ヘッジファンド」もお勧めです。運用をヘッジファンドに一任できるため、銘柄や売買の判断を迷うことがありません。
ここではヘッジファンドについて解説します。
投資信託とヘッジファンドの違い
投資信託も運用を一任する面を持っていますが、ヘッジファンドとは運用内容が異なります。簡単にまとめると以下のような違いがあります。
- 投資信託:運用資金の全額で「買い」のみ行う
- ヘッジファンド:「買い」のほか「売り」を行う
一般的な投資信託は運用資金の全額で「買い」のみ行います。したがって相場の影響を強く受けます。相場全体が上昇傾向なら値上がりし、反対に下落傾向なら値下がりするといえるでしょう(レバレッジ型などを除く)。
一方ヘッジファンドは「買い」のほか「売り」の取引を行います。相場全体が上昇傾向のときはもちろん、下落傾向でも「売り」で利益の獲得を目指します。このように、相場に依存せず一定の利益獲得を目指す運用方法を「絶対収益の追求」といいます。
通常の投資信託より収益機会が多い点がヘッジファンドのメリットといえるでしょう。
運用資金に余裕がある方の選択肢
ヘッジファンドの注意点は、最低購入(出資)額が大きいということです。最低でも1,000万円以上を求められることが一般的で、それ以下の金額ではお金を受け入れてくれません。
ヘッジファンドごとに異なるため一概にはいえませんが、運用資金に余裕がある方だけが選べる選択肢といえるでしょう。
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「銘柄選び」&「売買タイミング」が大損を避けるポイント
本記事の内容を以下にまとめます。
- 投資信託で大損する原因は「銘柄選び」か「売買タイミング」の失敗
- 大損する可能性が高い銘柄を避ける&分散投資も
- 長期投資を前提に売買&場合によっては損切りも
- 資金に余裕があるならヘッジファンドも選択肢
投資信託の中には大損する可能性が高いものもあります。また正しい銘柄を選んでも売買タイミングが悪ければやはり大損の可能性は否めません。
本記事で紹介した予防方法を実施すれば大損の可能性は少なくなります。資金に余裕があるならヘッジファンドも選択肢に含め、正しい資産運用を行いましょう。