相場の変化に関わらず利益を追求するヘッジファンド。
1,000万円の資産の運用方法として、ヘッジファンドを検討している方も多いのではないでしょうか。
しかし、ヘッジファンドは一般的な証券会社では取り扱っていないことも多いので、始め方や詳しい特徴などが分かりにくいという難点があります。
そこで、この記事では1000万円をヘッジファンドで運用する申し込み方法を紹介します。
さらに、申し込む前に知っておきたい情報として、ヘッジファンドに投資するメリットやデメリット、ファンドを選ぶ際の注意点も解説します。
これらの情報で、ヘッジファンド投資を他の方法と比較検討しやすくなるでしょう。
他の投資方法にするか迷っている方もぜひ参考にしてください。
ヘッジファンド投資の申し込み方法
ヘッジファンドに申し込む方法としては、次の4つがあります。
申込窓口 | 方法 |
---|---|
直接投資 | ヘッジファンドを販売している会社に直接問合せる |
投資助言会社 | ヘッジファンドの販売をサポートする会社に問合せる |
プライベートバンク | プライベートバンクに口座を開設し、ヘッジファンドを購入する |
証券会社 | 証券会社に口座を開設し、ヘッジファンドを購入する |
それぞれの方法で申し込むメリットやデメリットについて見ていきましょう。
直接投資
ヘッジファンドを販売している会社に問合せ、必要な数量を購入する方法です。販売会社から直接購入するため、手数料が低く、無駄なコストがかかりにくいというメリットがあります。
自分で調べたヘッジファンドを購入するため、自分の意見だけで購入を決められることもメリットといえるでしょう。また、販売会社に直接問合せるので、ヘッジファンドの特徴について詳しく知ることができる点もメリットです。
ただし、販売会社に直接問合せることを手間に感じる方には、向かない方法かもしれません。また、中間業者を挟まないため、最低投資額が大きく、まとまった資産がないと購入できないこともあります。
しかし、この点を除けば、もっともローコストでヘッジファンドに投資できる方法なので、より高い実質利回りを目指す方にはおすすめといえます。まとまった資産があり、なおかつファンドを見分ける目がある方は、直接投資も検討してみることができます。
投資助言会社
投資助言会社とは、その名の通り、投資に関する助言を行う会社です。どのようなスタンスで投資を行いたいのか、また、どの程度の利益を目指すのかなどを担当者に伝えると、適したファンドを紹介してもらうことができます。
投資助言会社では、主に海外のヘッジファンドを扱っています。海外のヘッジファンドは個人的に調べたり購入したりすることが難しいですが、投資助言会社を経由すれば比較的容易に購入できるという点はメリットといえます。
ただし、助言を受けるためには相応の報酬が必要です。助言料として手数料が上乗せされる形で支払います。とはいえ、証券会社やプライベートバンクを経由するよりは手数料が低めに設定されていることが多いので、コストを抑えて海外のヘッジファンドを購入したい方にはおすすめです。助言を含めてヘッジファンドとしての利回りが出せるのかどうか確認すると良いでしょう。
プライベートバンク
プライベートバンクとは、富裕層向けの金融関連サービスを提供する会社です。一人ひとりに合わせた提案をしてくれるので、担当者にファンドの銘柄から投資時期まで一任することもできます。
プライベートバンクは主に海外のサービスのため、取り扱うヘッジファンドも外国のものが多いです。外国のヘッジファンドに投資をしたい方には適した方法ですが、プライベートバンクを利用できる層は、金融資産だけで10億円以上あるなど、ある程度限られているため、利用したいと希望しても利用できない可能性がある点には注意をしておきましょう。
証券会社
証券会社でもヘッジファンドを取り扱っていることがあります。プライベートバンクとは異なって誰でも口座を開設できるだけでなく、最低投資額も数百万円程度と低めのことが多いため、利用しやすい窓口といえるでしょう。
ただし、手数料が高めに設定されているので、利回りが低い商品では利益が出にくい可能性があります。また、取り扱っているヘッジファンドの種類が少ないので、条件に合う商品が見つからない可能性もあるでしょう。
ヘッジファンドの特徴
証券会社やプライベートバンクでは、ヘッジファンド以外にもさまざまな金融商品を取り扱っています。その中でヘッジファンドを選ぶことにはどのような意味があるのでしょうか。
ヘッジファンドを特徴づける3つの要素について見ていきましょう。
限られた方しか利用できない
例えば、株式や投資信託は資金さえあれば購入することができます。
しかし、ヘッジファンドは招待制のこともあるため、資金があっても購入できないケースがあります。他の金融商品と比べて限られた方しか利用できない点は、ヘッジファンドの特徴といえるでしょう。
最低投資金額が高い
誰にでも開かれているヘッジファンドであっても、最低投資額が高く、資金的に手を出しづらい可能性があります。ヘッジファンドにもよりますが、10万ドル、100万ドルが最低投資基準のことも少なくありません。
例えば最低投資額が10万ドルのヘッジファンドであれば、手数料や為替レートにもよりますが、最低でも金融資産として1,000万円を保有していることが条件となるでしょう。金融広報中央委員会のデータによれば、2人以上の世帯で1,000万円以上の金融資産を保有しているのは39.5%ですが、3,000万円となると13.3%に限られます。
また、この金融資産には貯蓄型保険や個人年金なども含まれるため、すべてをヘッジファンドに投入するケースは少ないと考えられるでしょう。純粋に使途が決まっていない余剰金が1,000万円以上、1億円以上ある世帯はそう多くはないこと、ヘッジファンドに1,000万円以上、1億円以上を投資できる世帯はさらに少ないことがうかがえます。
費用体系
ヘッジファンドの手数料には、主に購入手数料と管理手数料、成功報酬の3つの種類があります。それぞれの相場は以下の通りです。
手数料の種類 | 相場 |
---|---|
購入手数料 | 購入額の2~5%ほど |
管理手数料 | 純資産の3~5%(1年あたり)ほど |
成功報酬 | 利益の20~50%ほど |
購入手数料とは、購入時に支払う手数料です。例えば1,000万円のヘッジファンドであれば20万~50万円ほどの購入手数料がかかります。なお、購入手数料は購入時に1回のみ支払う手数料なので、保有時に再び請求されることはありません。
一方、管理手数料はヘッジファンドを保有している限り、請求される手数料です。例えば1,000万円のヘッジファンドを購入した場合は、年間30万~50万円の管理手数料を支払うことになります。管理手数料は通常日割りで計算されるため、保有する期間が30日であれば30日分、1,000日であれば1,000日分発生します。
また、管理手数料は購入額ではなく純資産をベースに計算されるケースが多い点にも注意しましょう。1,000万円で購入したヘッジファンドであっても価格が値上がりし、その年の価値の平均が1,200万円であれば、1,200万円の3~5%かかることになります。そのため、価格が高額になると利益も大きく見込めますが、手数料もかさむので注意が必要です。
成功報酬とは売却して利益を確定したときに支払う手数料です。例えば1,000万円で購入したファンドの価格が上昇し、1,200万円のキャピタルゲイン(売却益)を獲得したとしましょう。手数料や税金を考えないならば、200万円の利益が生じたことになります。ヘッジファンドの種類や購入した窓口にもよりますが、成功報酬は利益の20~50%ほどのため、40万~100万円程度が差し引かれ、実際に受け取るのは100万~160万円ほどとなります。
なお、ヘッジファンドを直接購入した場合には、成功報酬は低くなる場合があります。利益をそのまま受け取ることができるため、証券会社やプライベートバンク、投資助言会社などの窓口を通すよりは効率よく資産運用できるでしょう。
1000万円をヘッジファンドで運用するメリット
多様な金融商品がある中で、ヘッジファンドを選ぶ魅力としては次の5つを挙げることができます。
- 時間と手間の節約
- 分散投資によるリスクヘッジ
- 高利回りが期待できる
- 個人では難しい多様な投資戦略
- 商品や経済状況を理解できる
それぞれの魅力について、詳しく解説します。
時間と手間の節約
ヘッジファンドであれば、運用はプロに任せられるので、時間と手間を節約できます。
しかし、自分で株式や投資信託を購入して運用する場合、こまめに価格をチェックして、売却・購入を繰り返す必要があります。
忙しい方や投資に手間をかけたくない方、売り時・買い時を見極めることが苦手な方にも適した資産運用方法といえるでしょう。
分散投資によるリスクヘッジ
ヘッジファンドは、特定の株式や債券に投資する商品ではありません。投資のプロが株式や債券などを組み合わせ、常に利益を生み出すように管理・運用しています。
つまり、1種類のヘッジファンドにだけ投資をしても、複数の金融商品に分散したのと同じリスクマネジメントができるのです。
高利回りが期待できる
ヘッジファンドは、投資のプロにより利回りが高くなるように運用されている金融商品です。他の金融商品の想定される利回りと比べても高水準なので、利回り追求型で投資をしたい方にも適しているといえるでしょう。
金融商品の種類 | 想定される利回り(税引き前、年利) |
---|---|
定期預金 | 0.00% |
投資信託 | 3~5% |
株式投資 | 1.3~2.2% |
FX | マイナス~20% |
ヘッジファンド | 7~12% |
なお、FXはうまくいけば年間利回り20%程度を期待することができます。しかし、マイナスが出ている方も多く、かならずしも利益が出るとは限らないため注意が必要です。
もちろん、投資信託や株式投資、ヘッジファンドもマイナスになる可能性はありますが、投資家全体の平均利回りはプラスです。一方、FXは投資家全体の平均利回りは±0ともいわれており、コンスタントに利益を上げるのは難しいと考えられるでしょう。
そのため、安定性を維持しつつ高利回りを期待したい方は、ヘッジファンドが良い選択肢となりそうです。
個人では難しい多様な投資戦略
ヘッジファンドはさまざまな投資戦略に基づいて運用されています。資金や経験、知識に限りがある個人投資家には実施が難しい投資戦略も多く、プロならではの手腕を期待できるでしょう。
ヘッジファンドの運用時に実施されることがある主な7つの投資戦略を紹介します。
投資戦略 | 概要 |
---|---|
ロングショート | 割安な銘柄を購入し、割高な銘柄を売却する戦略。購入と売却を組み合わせることで高利回りを期待できる。なお、一般的な投資信託では購入のみを行うので、割高な銘柄を保有し続けて利回りの伸びを阻害することがある。 |
イベントドリブン | 企業の合併や買収、業務提携などのイベントを利益獲得のチャンスにする投資戦略。イベント時には株価が市場価値を反映せずに割高・割安になりやすいため、投資のチャンスになりうる。 |
マルチストラテジー | 複数の投資戦略を組み合わせること。ヘッジファンドでは基本的にマルチストラテジーを実施し、利益を追求する。 |
アービトラージ | 金利差や価格差に注目して利益を獲得する戦略。割安な投資対象の購入と割高な投資対象の売却を実施し、両者の価格差が近づいたときに反対売買を実行する。 |
グローバルマクロ | 世界中の株式や債券、コモディティなどに資産を分散する投資戦略。日本国内など特定の国の経済が不安定になっても、利益獲得を目指せる。 |
CTA | 先物取引で利益獲得を目指す戦略。マネージドフューチャーズとも呼ばれる。価格が上昇・下落のどちらに動いても利益を目指せる。 |
リラティブバリュー | 類似する株式や社債などのうち、割高なものを売却、割安なものを購入する投資戦略。類似した商品は価格も同程度に収まることが多いという考え方に基づく利益獲得手法。 |
商品や経済状況を理解できる
ヘッジファンドを購入するときは、ヘッジファンドの販売会社などの担当者と面談し、商品の特性についての詳しい説明を受けることが一般的です。
また、今までの運用結果やマーケット情報、投資対象となる企業の情報なども紹介してもらうことができるため、最新の経済状況などを独自の観点で学ぶことができます。
1000万円をヘッジファンドで運用するデメリット
ヘッジファンドにはメリットもありますが、デメリットもいくつかあります。特に次の5つのポイントについては、投資前に考慮しておきましょう。
- 投資条件が厳しい
- ファンド倒産の可能性がある
- 契約と解約のタイミングが不自由
- 手数料が高め
- 契約の手間がかかる
それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
投資条件が厳しい
ヘッジファンドは誰でも投資できる商品ではありません。最低投資額が1,000万円以上、1億円以上というものも少なくなく、自由に使える資産がないときには投資することはできません。また、招待制のヘッジファンドも多く、資金面で問題がなくても、購入できないことがあります。
手数料が比較的割高であることも、投資しづらい状況を生むかもしれません。例えば最低投資額が1,000万円であっても、購入時に20万~50万円の手数料が必要となるため、ぎりぎりの予算しかない場合には購入できない恐れもあります。
ファンド倒産の可能性がある
ヘッジファンドは、ヘッジファンドを運用する会社によって管理されています。運用する会社が倒産したときなどは、ヘッジファンドの存続も危うくなり、場合によっては強制的に払い戻しが実施されるかもしれません。ファンドの価格が下がった状態で倒産するときには、多大な損失を被ることにもなるでしょう。
なお、定期預金などには1口座あたり1,000万円までの預金とその利息を保護する「預金保険制度」がありますが、ヘッジファンドには保険制度はありません。最悪の場合、投資した資金全額を失うこともあるので、購入する前にファンドの運用方針やリスクマネジメントについて詳細に確認・理解しておくようにしましょう。
契約と解約のタイミングが不自由
例えば株式は取引市場が開いているときであれば、いつでも購入・売却することが可能です。しかし、ヘッジファンドは契約するタイミングや解約するタイミングに制限があり、自由に売買できないことが一般的です。
そのため、今すぐ解約して現金が必要だというケースに対応することができません。ヘッジファンドに投資をするときは、特に使途が決まっていない余剰金を利用するようにしましょう。
手数料が高め
ヘッジファンドは投資のプロが運用する金融商品のため、手数料が割高に設定されています。例えば1,000万円分のヘッジファンドに投資をし、3年後に1,200万円で売却したとしましょう。運用期間中の平均資産額は1,100万円、税金については考慮しないとします。
購入手数料が購入額の2~5%であれば20万~50万円、管理手数料が平均資産額の3~5%であれば99万~165万円(3年分)、成功報酬が利益の20~50%であれば40万~100万円かかると概算できます。
手数料だけで全部で159万~315万円もかかるため、利益は多くて41万円、場合によっては損失が生じる可能性もあると考えられます。
手数料が気になる場合は、成長性の高いヘッジファンドを選ぶことはもちろん、自分でやった場合のリスクや時間・教育コスト比較することが必要でしょう。
契約の手間がかかる
証券会社で投資信託として簡単に購入できるヘッジファンドもありますが、販売会社に問合せて担当者と面談し、必要書類を提出して契約するタイプのヘッジファンドも少なくありません。契約に手間がかかるものであれば、投資に踏み出しづらく感じるかもしれません。
とはいえ、投資金額が高額なので、担当者から直接話を聞いて慎重に判断できる点は、逆にメリットになるのではないでしょうか。
ヘッジファンドを選ぶ際の注意点
ヘッジファンドを選ぶときは、次の3つのポイントに注目しましょう。
- 直接問合せをして確認する
- おいしすぎる話を鵜呑みにしない
- ファンドを選ぶ基準を明確に持つ
それぞれについて詳しく解説します。
直接問合せをして確認しよう
ヘッジファンドの販売会社や運用会社に直接以下のポイントを確認しましょう。
- 手数料
- 運用方針
- 投資先
- 運用成績
まずは手数料について詳しく確認します。一般にヘッジファンドは手数料が高めで、利益が出ても手数料で相殺される、場合によってはマイナスになることも珍しくありません。購入時や管理時、売却時にそれぞれどの程度の手数料がかかるのか問合せておきましょう。
また、運用方針と主な投資先についても確認しておきます。どのようなタイミングで売買を行うのか、特定の指数に連動するのか、どの投資先が候補になっているのかなど、知りえる限りの情報を確認しておきましょう。
そして、今までの運用成績についても確認しましょう。実際に投資している人たちは平均でどの程度の利益を上げているのか。また、何年ほど運用している人が多いのかなど、可能な限り情報を確認しておくといいでしょう。
おいしすぎる話を鵜呑みにしない
投資はリスクがあるものです。どんなに運用成績が良いヘッジファンドでも、必ずリスクはあり、損失が生じる可能性はあります。
担当者がまるでリスクがないかのようにアピールするときは、少し疑うほうが良いかもしれません。誠実なヘッジファンド販売会社であれば、ポジティブな面よりもネガティブな面、つまり、想定されるリスクについて詳しく解説するはずです。
ヘッジファンドの中には詐欺もあります。購入する前に運用会社や販売会社自体の実績も確認し、信頼することができるのか確認しておくようにしましょう。
ファンドを選ぶ基準を明確に持つ
自分の中で投資に対する明確な基準があると、ヘッジファンドを比較検討しやすくなります。リスクはどの程度まで許容できるのか、何を投資対象としたいのかなど、明らかにしておきましょう。
また、基準に合うヘッジファンドがひとつもないときは、「投資をしない」という選択をすることも大切です。大切な資産を有効活用するためにも、投資やファンドに対して明確な基準を持っておきましょう。
まとめ
1,000万円をヘッジファンドで運用する方法や注意点について解説しました。この記事の要点は以下のポイントにまとめられます。
- ヘッジファンドは他の金融商品と比べて高利回りの傾向
- ヘッジファンドは最低投資額が高く、招待制のこともあるので、誰もが購入できるわけではない
- ヘッジファンドは手数料が高めに設定されている
- 管理手数料も高めのことが多いので、長期運用する際にはこまめに運用成績を確認する。価格の伸びが管理手数料を下回るときは、早めに売却するなどの対策が必要になる
- ヘッジファンドの中には詐欺商品もあるため、運用会社や販売会社の信用性を確認してから購入する
ヘッジファンドは最低投資額が高く、招待制のこともあるため、誰もが気軽に購入できる商品ではありません。しかし、その分、高利回りのことも多く、上手に活用すれば資産を大きく増やすことも可能です。
少しでもリスクを軽減するために、ヘッジファンドを購入する前に手数料や運用方針、投資先などについて詳しく確認し、担当者に疑問点をすべて尋ね、不安を解消しておくようにしましょう。