オルタナティブ投資とは?種類とメリット・デメリットを解説

オルタナティブ投資」という言葉を聞いたことがありますか?
投資の基本とされる「分散投資」を語るうえで、実はとても重要な要素の一つです。

聞きなれないかもしれませんが、オルタナティブ投資は決して難しい言葉ではありません。本記事で簡単にオルタナティブ投資の概要や種類、またメリット・デメリットについて確認しましょう。

オルタナティブ投資とは?

代替できる投資

オルタナティブ投資とはどのような投資なのでしょうか?概要を解説します。

上場株式と債券以外に投資すること

オルタナティブとは英語の「alternative(代替)」のことであり、直訳すれば「代わりの投資」という意味です。

では何の代わりなのでしょうか?端的にいえば「上場株式と債券の代わり」と考えて構いません。つまりオルタナティブ投資とは、上場株式と債券以外に投資することを指します。なお、上場株式と債券は「伝統的資産」と呼ぶことが一般的です。

機関投資家の多くがオルタナティブ投資を取り入れている

オルタナティブ投資は機関投資家の運用でよく用いられています。主なものを以下にまとめました。特に2つの大学基金(ハーバード、イェール)はオルタナティブ投資に積極的なようです。

機関投資家によるオルタナティブ投資の例
機関名オルタナティブ投資の比率主なオルタナティブ資産
GPIF
(2021年3月)
0.72%インフラ
未上場株式
不動産
ノルウェー政府年金基金
(2020年12月)
2.5%不動産
ハーバード大学基金
(2021年6月)
74%未上場株式
ヘッジファンド
不動産
イェール大学基金
(2020年6月)
72.5%ヘッジファンド
ベンチャーキャピタル
不動産

※GPIF=年金積立金管理運用独立行政法人
※参考元URLは、表内機関名にリンク

オルタナティブ投資の種類

資産の中身は何か

オルタナティブ投資は以下5つが代表的です。

  • 不動産・REIT
  • ヘッジファンド
  • 非上場株式
  • 金・原油などのコモディティ
  • デリバティブ(先物・オプション)

不動産・REIT

実物の不動産に投資し、家賃収入を得る方法です。また取得した物件を売却することで値上がり益を得られる場合もあるでしょう。
ただし、相対取引のため、基本的に買い手が現れないと売却はできません。一概にはいえませんが、実物の不動産は家賃収入を安定的に受け取る目的で取得するケースが多いでしょう。

REIT(リート)は「Real Estate Investment Trust」の略で「不動産投資信託」と訳されます。投資家から集めた資金で実物の不動産を取得し、その利益の9割超を投資家に分配する仕組みです。
つまりREITを介することで、実質的に不動産の大家になるといえるでしょう。REITは上場しているため、自由に売買が可能です。市場の状況にもよりますが、売りたいときは基本的にすぐ売れるでしょう。

両者はどちらも不動産に投資を行う方法ですが、大きく異なる点は銀行融資の可否です。実物の不動産は銀行から融資を受けられる可能性があります。不動産利回りよりも低い金利で借りられれば収益はプラスになるでしょう。

一方、REITを取得する目的だと銀行は基本的に融資しません。投資は自己資金に限られます。

また税制も異なります。実物の不動産から得られる利益などは「不動産所得」として扱われ、その税率はほかの所得と合わせて15~55%で決定されます(所得税5~45%、住民税10%とした場合)。一方REITの税率は株式などと同じく一律20%です(所得税15%、住民税5%)。

種類 上場 銀行融資 税制上の取り扱い
実物の不動産 非上場 受けられる 不動産所得
(15~55%)※1、2
REIT 上場 受けられない 上場株式等の譲渡所得
(20%)※2

※1.住民税を10%とした場合
※2.2037年までは所得税に2.1%の復興所得税がかけられる

ヘッジファンド

ヘッジファンドは株式や債券など、さまざまな資産で運用を行う運用会社です。主に富裕層や機関投資家から資金を預かっており、一般的にはあまり流通していません。
期間が異なりますが、上述したハーバード大学基金とイェール大学基金はどちらも資産の2~3割をヘッジファンドに預けていたようです。

大学基金のヘッジファンド投資割合
大学基金名 投資割合
ハーバード大学基金 33%
イェール大学基金 21.60%

※ハーバード大学基金は2021年6月末、イェール大学基金は2020年6月末

ヘッジファンドは「絶対収益」を追求する点に特徴があります。これは相場に依存しない収益を指し、具体的には「売り」取引を組み合わせることで絶対収益の実現を目指すケースが多いです。

絶対収益の一例として、ヘッジファンドの主要な運用戦略の一つ「アービトラージ」を確認しましょう。同一資産が異なる価格で取引されている際に、「安値の買い」と「高値の売り」を同時に仕掛ける戦略です。買いと売りという真逆のポジションを持つため、損益は互いに相殺されリスクはなくなり、両者の価格差が必ず利益になります。

商品Aに「100円の買い」と「102円の売り」を仕掛けたとき
商品Aの価格各ポジションの損益損益の合計
100円の買い102円の売り
103円+3円▲1円+2円
102円+2円±0+2円
101円+1円+1円+2円
100円±0+2円+2円
99円▲1円+3円+2円
98円▲2円+4円+2円
97円▲3円+5円+2円

アービトラージに限らず、ヘッジファンドは相場が上下どちらに動いても一定の利益を得られるような戦略を取るケースが一般的です。伝統的資産とは異なる利益機会が得られるでしょう。

非上場株式

上場していない株式に投資する方法です。非上場企業の株式は一般的に公開されていないため通常は投資できませんが、全く門戸が開かれていないわけではありません。その非上場企業と合意できれば株式を取得できるケースはあります。

非上場株式の魅力は「上場時の値上がり益」でしょう。非上場株式は上場すると取引が容易になるメリットから、一般的に価値の上昇が期待できます。上場前に取得できれば大きな利益の可能性があるでしょう。

また上場しなくても、非上場株式のまま新たに別の買い手に譲渡できるケースもあるでしょう。単純な保有でも、その非上場企業から配当金を受け取れる可能性もあります。

金・原油などのコモディティ

金や銀、また原油や小麦といったさまざまな商品を「コモディティ」と呼びます。株式のように値動きがあるため「値上がり益」が期待できる一方、配当金のような定期的な収入はありません。

コモディティはさまざまな要因で需給が変動し、価格形成に影響を与えます。例えば原油の場合、産油国で原油生産が抑制されれば受給が締まるため、一般に価格の上昇要因です。また天候不順で作物の生産が低下した場合、供給不足の懸念から小麦など農産物価格の上昇が想定されるでしょう。

デリバティブ(先物・オプション)

デリバティブは大きく「先物取引」と「オプション取引」に分かれます。

先物取引

原資産(そのデリバティブが参照している資産)の将来のある時点における受け渡し(または精算)を約束し、その期日が到来する前から取引を行う方法です。

「買い」だけではなく「売り」から取引を始めることもできるため、ヘッジファンドのように絶対収益を追及することもできるでしょう。

オプション取引

将来の「買う権利」と「売る権利」を取引する方法です。
前者を「コール」、後者を「プット」と呼びます。

例えば「1万円のコール」を買う場合、将来の原資産がどれほど値上がりしていても1万円で買うことができます。反対に「1万円のプット」を買う場合、将来の原資産がどれだけ値下がりしていても1万円で売り付けることができます。

ポイントは、オプション取引で買うのはあくまで権利という点です。例えば「1万円のコール」を買ったあと思惑が外れて原資産が5,000円になっていた場合、権利を行使する必要はありません。損失は「1万円のコール」を買うために支払った「オプション料」だけで済みます。原資産を直接買っていた場合、5,000円の損失が発生していたでしょう。

つまりオプションは「保険」のような使い方ができるのです。「値上がりが予想されるが、下がったときの損失は限定したい」という思惑があるとき、コールを買えば実現できます。予想通り値上がりすれば保険金のように値上がり益を得られ、思惑が外れれば掛け捨ての保険料のようにオプション料の負担だけで済みます。

その他のオルタナティブ投資

比較的新しいオルタナティブ投資と考えられているのが「暗号資産(仮想通貨)」です。ブロックチェーン技術により改ざん可能性がほぼないデジタルデータのことで、価値の保全性が期待できることから取引の対象となってきました。

また、「クラウドファンディング」はインターネットを介し不特定多数から資金を集める方法です。
募金のように使われるケースも多いですが、オルタナティブ投資に活用できるタイプも出てきました。例えば非上場株式に投資できる「株式型クラウドファンディング」や事業者に資金を貸し付けて利息を得る「貸付型クラウドファンディング」などが代表的です。

オルタナティブ投資のメリット・デメリット

メリット、デメリットを比較

ここでオルタナティブ投資のメリット・デメリットを確認しましょう。

オルタナティブ投資のメリット

オルタナティブ投資のメリットは大きく以下の2つです。

  • 利益機会が増える
  • 分散投資でリスクが下がりやすい

オルタナティブ資産は伝統的資産と異なる要因で値動きがあるため、利益の機会を増やせるメリットがあります。

株式や債券はどちらも企業に由来する資産のため、基本的にはどちらも景気の上昇が望ましいです。
しかし、オルタナティブ投資なら利益機会は景気上昇に限りません

例えば、仮に景気が低迷している状態でも、絶対収益を追求する「ヘッジファンド」なら利益を得られるかもしれません。「デリバティブ」を通じて自分で値下がり方向にポジションを持ってもいいでしょう。

分散投資時にリスクを下げる効果が高いメリットも見逃せません。
オルタナティブ資産はそれぞれ値動きの要因が異なるため、仮に全体的な下げ相場が来たとしても一様には下がらず、損失を限定する効果が期待できます。伝統的資産だけに投資している場合より、オルタナティブ投資も組み合わせたほうがリスクは下がるでしょう。

まとめると、オルタナティブ投資は利益機会を増やす「攻め」の面と、リスクを下げる「守り」の面の双方でメリットがあるといえるでしょう。

オルタナティブ投資のデメリット

オルタナティブ投資のデメリットは大きく以下の2つです。

  • 資金拘束が長いケースがある
  • 値動きが大きいケースがある

一概にはいえませんが、オルタナティブ投資は流動性が低く、売りたいときに売れないケースがあります。

例えば「実物の不動産」は買い手を見つけない限り売却できません。その点伝統的資産は、証券取引所がある上場株式はもちろん、債券も基本的にいつでも売却できます。すぐに現金化できないケースがあることは、オルタナティブ投資のデメリットといえるでしょう。

また一部のオルタナティブ資産は上場株式よりも一般に大きな値動きがあります。「コモディティ」や「暗号資産(仮想通貨)」などが代表的で、「デリバティブ」も原資産より大きな損益が発生するケースもあるでしょう。

もっとも、値動きの大きさはリターンにもつながるため一概にデメリットとはいえません。「ヘッジファンド」のように、むしろリスクが比較的小さいケースもあります。

個人がやりたいオルタナティブ投資は?

資産を着実に成長させる可能性

個人がオルタナティブ投資を始めるなら以下3つが向いているでしょう。

  • ヘッジファンド
  • 不動産投資

ヘッジファンド

個人がオルタナティブ投資を取り入れるならヘッジファンドはおすすめしたい商品です。運用は基本的にプロに任せられるため、個人でも取り組みやすいでしょう。

ただし、ヘッジファンドは基本的に富裕層や機関投資家向けに資産運用を提供しているため、最低投資額が大きい場合がほとんどです。ヘッジファンドごとに異なりますが、最低でも1,000万円以上預けられる方の選択肢といえるでしょう。

不動産投資

実物の不動産投資は、個人の方が銀行から融資を受けて投資できる、唯一の現実的な方法です。自己資金だけで投資するよりも実質的な利回りが向上するケースがあるため、オルタナティブ投資のなかでも優先的に検討すべきでしょう。

例えば、不動産利回り7%の物件に投資するとき、自己資金1,000万円で投資する場合は年70万円の家賃収入となり、利回りは変わらず7%です。ここに銀行から金利3%で2,000万円を借り計3,000万円で投資した場合、年間210万円の家賃収入となります。銀行に利息60万円を支払っても150万円残るため、自己資金1,000万円で実質的に15%もの利回りが得られることになります。

金はコモディティのなかでは比較的取り組みやすい資産です。人間が歴史的に価値を感じてきた物質で、地球上に存在する量が限定的なため供給が過大になりにくいことから、比較的安定した値動きとなるでしょう。

金は現物を保有するほか、金価格に連動するよう設計された金融商品(ETFなど)を通じて投資することができます。物質としての金に興味がないなら金融商品への投資で十分でしょう。

まとめ

オルタナティブ投資のポイント

本記事の内容を以下にまとめます。

  • オルタナティブ投資とは「上場株式と債券以外の投資」のこと
  • 機関投資家の多くがオルタナティブ投資を取り入れている
  • メリットは「利益機会が増える」、「分散投資でリスクが下がりやすい」こと
  • 個人は「ヘッジファンド」や「不動産」、「金」がおすすめ

オルタナティブ投資とは、端的にいえば「上場株式と債券以外の投資」のことです。不動産やヘッジファンドなどが該当し、多くの機関投資家で取り入れられています。上場株式や債券にはない利益機会があること、また分散投資していればリスクが下がりやすいことなどがメリットです。

個人がオルタナティブ投資に取り組むなら「ヘッジファンド」が候補として入ります。最低でも1,000万円以上の投資が求められるケースが一般的ですが、運用をプロに任せられるため初心者でもオルタナティブ投資を実践できるでしょう。
また銀行融資を受けられる「実物の不動産」や、コモディティのなかでは比較的値動きが小さい「」なども選択肢としては良いでしょう。

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