日本でも投資を行う人が増えており、中にはヘッジファンドやアクティビストファンドなどの言葉を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
ヘッジファンドは絶対収益を目標としており、さまざまな分析や戦略を駆使して投資を行う投資会社です。
アクティビストファンドもヘッジファンドの一種ですが、その戦略においてはヘッジファンドと異なる部分もあります。
どちらも基本的には富裕層や機関投資家を対象として資金を募る私募の形をとっているため、一般投資家が投資に参加する機会はこれまでほとんどなく、ファンドの実態についてはあまり知られていませんでした。
しかし最近では、資金の一部をヘッジファンドに投資する投資信託商品も出ているため、ファンドの戦略や特徴についてよく知っておくことは大切です。
こちらではアクティビストファンドの特徴について、他のヘッジファンドと比較しながら紹介します。
アクティビストファンドの活動が活発になり始めたのは、アメリカで1990年代後半からです。
比較的歴史は新しいものの、企業側が時代と共に株主の意見に耳を傾けるようになってきた中で、アクティビストファンドもその存在感を増してきました。
アクティビストファンドは一定の割合以上の株式を取得することで、企業に対する発言権を得ようとします。
そして、株式の取得後には株主としての権利を行使し、企業に対してさまざまな経営戦略などを提案します。
そうすることで企業の価値を高め、株価を上昇させて利益を得ることを目指しているのです。
提案した経営戦略などが企業に受け入れられれば良いのですが、もし要求が受け入れられなかった場合、途端にその企業に対して買収などを仕掛けることもあるのがアクティビストファンドの特徴です。
しかし近年では、全てのアクティビストファンドがそのように企業に対して強硬な姿勢に出るわけではなく、友好的に話し合いを続け、企業と自社双方にとってウィンウィンの関係を目指すアクティビストファンドもあります。
1、アクティビストファンドとヘッジファンド1~収益に対する姿勢~
アクティビストファンドとヘッジファンドには、1つ大きな共通点があります。
それが収益に対する姿勢です。双方ともに、絶対収益を目標として投資を行います。
絶対収益とは、市場が全体的に値下がり傾向にある時であっても収益を出そうとすることです。
この点、年金基金などの機関投資家と比較すると違いが良く分かりますが、機関投資家は相対収益を目指しています。
相対収益というのは、ベンチマークとなる市場の数値よりも、上の成績であれば良しとする考え方です。
市場が全体として値下がりしている時であれば、下がること自体は仕方がないものとします。
その代わり、市場全体の下げ幅よりも小さく抑えるのです。
また、アクティビストファンドとヘッジファンドの資金の募集方法は、両方とも、ごく限られた富裕層や機関投資家からのみ募集する私募という形です。
一般的な機関投資家のように広く資金を募る公募という形をとると、投資の方法に法的な規制がかかります。
例えば、デリバティブ取引や空売りなどは規制されてしまいます。
私募であればこのような規制はありません。
アクティビストファンドもヘッジファンドも、さまざまな手法や戦略を駆使して投資を行うことで、絶対収益を目指します。
2、アクティビストファンドとヘッジファンド2~企業への働きかけ~
絶対収益という共通項があるため、アクティビストファンドもヘッジファンドの一種と言えます。
しかし、両者には違いもあります。それが、企業への働きかけを行うかどうかです。
ヘッジファンドの場合、投資をしている企業に対して自ら積極的に働きかけることはしません。
株を取得しても、株価が上がるのを待っているだけです。
そもそも多くのヘッジファンドは、自社が目立つような行動を避けようとします。
それは、自社の投資手法や戦略などが漏れてしまうのを防ぐためと、富裕層の重要な資産を預かっているヘッジファンドの性質上の理由からとされています。
一方でアクティビストファンドは、企業に対して働きかけることで企業価値を上げ、その結果、自社も利益を出そうとすることが特徴です。
企業同士の合併や、不振事業の売却、株主還元の強化やコーポレート・ガバナンスの改善などを積極的に提案・要求します。
そのような行動が、テレビなどでニュースになることも厭いませんし、場合によってはむしろ進んでニュースに取り上げられようとすることもあります。
3、アクティビストファンドとヘッジファンド3~投資戦略~
両者が用いる投資戦略として、主に5つがあります。
どの戦略を用いるかはアクティビストファンドかヘッジファンドかによって明確に分かれるわけではなく、また、ファンドごとでも用いる戦略は異なりますが、最初に紹介する3つの方法は、主にヘッジファンドがよく用いる投資戦略です。
1つ目は、「株式ロングショート戦略」です。値上がりしそうな株式を購入し、一方では値下がりしそうな株式を空売りしておきます。
2つ目の戦略は、「グローバル・マクロ戦略」です。世界中の株や債券・為替など、幅広い商品に分散投資を行います。特に、市場に歪みが生じて本来の適性価格になっていない時に投資をすることで、利益を出そうとします。
最後の3つ目は、「CTA/マネージドフューチャーズ戦略」です。システムを使用して統計的分析を行い、株価予測をすることで利益を出そうとします。
以下の2つはアクティビストファンドが主に用いる戦略です。
「レラティブ・バリュー戦略」は、価値で判断した時に割安なものを購入し、割高なものを売る方法です。
市場が常に適正な価格を示すわけではありません。
時には明らかに本来の価値よりも低くなっているものや、高くなっているものが生じます。
そこに着目して、利益を出そうとする戦略です。市場価格を適正水準に是正する役割もあります。
そして、「イベント・ドリブン戦略」は、まさにアクティビストとして企業に働きかけたり、破綻した企業の再建などのイベントを利用することで、利益を出そうする戦略です。
4、アクティビストファンドとヘッジファンド4~投資を行う期間~
ヘッジファンドは一般的に、短期売買が中心と言われています。株価が下がり基調になれば、すぐに反応して売却しようとしますし、上がり基調になれば、さらに購入しようとします。
そうして短期の売買を繰り返すことで利益を積み重ねていきます。
一方でアクティビストファンドは、それほど短期の売買を繰り返すわけではありません。
なぜならば、企業に働きかける期間が必要となるからです。企業に改善案などを提案して、その結果が市場価格に反映されるまでは、ある程度の時間が必要です。
そのため、投資期間は短くとも半年から1年間となるのが基本的です。
ちなみに「企業に働きかけるため」という同じ理由から、アクティビストファンドの投資対象は、ごく少数に厳選されたものとなります。
ヘッジファンドのように、色々な商品を広く組み合わせて分散投資を行うということはあまりありません。
対象が広くなると、それぞれについて目が行き届かなくなり、企業に働きかけることができなくなるためです。
経営陣の質が低かったり、コーポレート・ガバナンスの水準が低いなど、改善点がある企業をターゲットとし、その企業の株を取得した上で改善を働きかけ、株価が上昇した時点で売却しようとするのが、アクティビストファンドの基本的な姿勢です。
5、「企業に働きかける」ことで利益を目指すアクティビストファンド
利益を出すため、積極的に企業に働きかけるという特徴を持っているのが、アクティビストファンドです。
アクティビストファンドの投資はヘッジファンドと比較すると、比較的に中長期にわたっての投資を、少数の厳選された企業に対して行う形をとります。
企業の価値を高めるためにはそれぞれの投資対象に目が行き届かなければならず、また、価値の上昇が市場価格に反映されるまでに時間も必要だからです。
「絶対収益」という共通項はあるものの、ヘッジファンドとアクティビストファンドは、企業側から見るとだいぶ異なる存在と言えるでしょう。