投資信託は儲かるのかどうかを、金融庁発表のデータを元に検証。利益を出す3つポイントやリスクを抑えて、投資信託以上に高リターンを実現する方法についてもまとめています。
主要な金融商品の1つ「投資信託」。
証券会社以外に銀行でも幅広く販売されていますが、「本当に儲かるの?」と疑問に思う方は多いでしょう。
インターネットで調べてもいいですが、客観性に欠けるデータはかえって誤った認識を持ってしまうかもしれません。
そこで本記事では、投資信託で本当に利益を得られるのかどうか公的な調査から平均リターンを紹介し解説したいと思います。
投資信託とは?
投資信託は金融商品の1つです。投資家から資金を集め、運用会社が代わりに資産運用を行います。
投資信託といってもさまざまな種類があり、一概に投資信託の特徴を述べることはできません。その投資信託の運用内容で特徴が全く異なるためです。
つまり、投資信託は単なる箱に過ぎず、重要なのは箱の中身です。何に投資しているのか必ずチェックしましょう。
次章で投資信託の資産タイプ別にリターンランキングを紹介するので、そちらも参考にしてください。
投資信託は儲かるの?平均リターンをチェック
では本記事の本題、「投資信託は儲かるのか」について確認しましょう。
結論からいうと、うまく活用できれば投資信託は収益化できると考えられます。。なぜそういえるのか、金融庁公表のデータをご紹介します。ここでの「儲かる」とは「プラスの運用、収益化しやすい」という意味で解説していきます。
全体の平均リターンは3.2%
金融庁によると、全投資信託における過去5年平均リターンは年率3.2%です(2020年末時点)。平均がプラスなので銘柄の選択を間違えなければ、投資信託はおおむねプラスしやすい商品と言えるでしょう。
【資産タイプ別】リターンランキング
同調査は資産タイプ別のリターンも公表しています。主な資産タイプ別にリターンをランキングすると以下のようになりました。
- 国内株式:6.0%
- 先進国株式:5.8%
- 先進国債券(適格債):1.0%
- 国内債券:0.5%
最も高い利益を得たのは「国内株式」で、5年間で約33.8%資産が増えた計算です。次の「先進国株式」もほぼ同水準のリターンとなりました。
「国内債券」と「先進国債券」で運用される投資信託も、水準は低いですが利益を確保できたようです。
投資信託は儲かる!ただし、リスクには注意
この調査を単純に引用すれば、すべてプラスの結果となっているため「投資信託は儲かる」といっていいでしょう。ただし、これらはあくまで過去の実績で、将来のリターンが約束されているわけではありません。
投資信託はリスクがあるため、絶対に利益を得られるわけではないという点は覚えておきましょう。
儲かっている人の割合
今度は別のデータを活用し、投資信託を持っている方のうち、どれくらいの方が評価益となっているか確認しましょう。
金融庁によると、投資信託を持っている方のうち運用損益がプラスになっている方の割合は約30%でした(2020年3月末)。多くの方が損をしている状況ですが、これは2020年2~3月にコロナショックが起こり、「多くの資産が値下がりしたタイミング」での集計だったことが原因だと思われます。
- 2019年3月末:66%
- 2020年3月末:30%
- 金融庁 安定的な資産形成に向けた金融事業者の取組み状況(外部サイト)
現在では主要株価指数の多くが値を戻しているため損益状況は改善されているでしょう。本記事執筆時点で全社ベースの集計はありませんが、主要な金融機関における投資信託保有顧客の損益状況をみると多くの方がプラスに転じていることがわかります。
- 野村證券:92%
- 大和証券:82.3%
- 三菱UFJ銀行:87%
- 三井住友銀行:71%
- みずほ銀行:85%
【資産タイプ別】投資信託が儲かる仕組み
なぜ投資信託で利益を得られるのか、実はよくわからないという方は意外に多いのではないでしょうか。端的にいうと、「投資信託が保有する資産が値上がりするとその投資信託も値上がりするため、投資家は利益を得られる」という仕組みになっています。
つまり、投資信託が値上がりするかどうかは、その投資信託が投資している資産が値上がりするかどうかにかかっています。ここで、投資信託の資産タイプ別に、それぞれの値上がり要因を確認しましょう。
国内株式型
国内株式で運用される投資信託の値上がり要因は以下の通りです。
- 株価の上昇
- 配当金
国内株式型の投資信託は、投資している銘柄の株価が上昇すると値上がりします。どのような銘柄に投資しているのか確認するといいでしょう。また投資している銘柄から受け取る配当金も値上がりの要因です。
海外株式型
海外の株式で運用される投資信託は以下の要因で値上がりします。
- 株価の上昇
- 配当金
- 円安
株価の上昇と配当金は国内株式型と同じです。違いは為替で、円安になるほど海外株式型の投資信託は値上がりします(為替ヘッジ型は除く)。
どのような銘柄に投資しているかのチェックは大切ですが、加えて為替の動向についても確認するといいでしょう。
国内債券型
国内債券で運用される投資信託の値上がり要因は以下の2点です。
- 債券価格の上昇(市場金利の低下)
- 利息
債券も株式と同じく、債券価格があります。債券価格は市場金利(例えば10年国債金利)が低下するほど上昇する傾向があるので、将来の金利低下が予想されるときに買うといいでしょう。
また配当金と同じく、保有している債券から得られる利息も値上がりの要因です。
海外債券型
海外の債券で運用される投資信託は以下の要因で値上がりします。
- 債券価格の上昇(市場金利の低下)
- 利息
- 円安
国内株式型と海外株式型の関係と同じく、こちらも国内債券型に為替の影響が加わるイメージです。投資している債券価格が上昇するほど、また円安になるほど値上がりします。
そのほかの資産タイプも、基本的には「投資先銘柄の価格上昇」と「配当金や利息」で値上がりし、海外資産の場合はさらに「円安」でも値上がりします。その投資信託が値上がりする仕組みを事前に確認し、銘柄選びに役立てましょう。
投資信託で利益を出すポイント
投資信託で利益を出すにはいくつかのポイントがあります。ここでは以下の3点を押さえましょう。
- 長期投資を心がける
- 分配金を受け取らない
- 手数料を減らす
長期投資を心がける
最初のポイントは長期投資を心がけることです。投資信託は「複利運用」を行っていますが、長く運用するほど得られる利益が大きくなるためです。
投資信託は運用で得られた利益を再投資しています。再投資後は運用元本が大きくなるため、次回の利益がさらに大きくなります。これを複利運用といいます。
100万円を3%で複利運用するケースで考えてみましょう。100万円に対する3%は3万円のため、初回の利益は3万円です。これを再投資し103万円で運用を行うと、103万円の3%は3.09万円のため、初回より0.09万円利益が大きくなりました。これを繰り返すと、10回目の利益は約3.91万円、20回目の利益は約5.26万円となり、得られる利益が指数関数的に上昇していきます。
投資回数 | 運用元本 | 得られる利益 | 累積利益 |
---|---|---|---|
1回目 | 100万円 | 3万円 | 3万円 |
2回目 | 103万円 | 3.09万円 | 6.09万円 |
3回目 | 106.09万円 | 3.18万円 | 9.27万円 |
… | |||
10回目 | 130.39万円 | 3.91万円 | 34.39万円 |
… | |||
20回目 | 175.35万円 | 5.26万円 | 80.61万円 |
このように、複利運用は長期運用するほど得られる利益が大きくなります。したがって、複利運用を行う投資信託はできるだけ長期運用した方が利益を得やすいのです。
分配金を受け取らない
分配金とは、投資信託が利益の一部を投資家に分配するお金のことです。上述した複利を行うには利益を再投資する必要がありますが、投資信託が分配金を支払うと再投資できないため複利運用ができません。
複利運用の効果を高めるためには分配金を受け取らないようにしましょう。分配金を支払わない投資信託を選ぶか、あるいは「再投資コース」で購入すると分配金を自動的に再投資してくれます。
手数料を減らす
できるだけ手数料が低い投資信託を選ぶのもポイントです。同様のパフォーマンスを出す商品であれば手数料は低いほど、利益を出しやすくなります。
投資信託の主な運用手数料は「信託報酬」といい、投資信託ごとに異なります。事前に確認し、できるだけ手数料の低い投資信託を選ぶようにしましょう。
投資信託の選び方
投資信託の銘柄選びでは信託報酬も重要ですが、いきなり信託報酬で選んではいけません。信託報酬だけではその投資信託のリスクを測れないためです。意図せず高リスク銘柄に投資してしまうケースや、想定よりも乏しいリターンしか得られない可能性があります。
そうならないためにも、個人のリスク許容度に応じた投資信託の選び方を理解しましょう。
リターン重視なら株式型
多少のリスクを取ってもリターンを重視したい場合、株式で運用される投資信託を選びましょう。一般的に高いリターンが期待できます。上述した資産タイプ別リターンランキングでも株式型が上位に並びました。
安定重視なら債券型
反対に安定的な運用を望むなら債券で運用される投資信託を選びましょう。大きなリターンは期待できませんが、低いリスクで運用できるでしょう。
ただし、債券型の投資信託もリスクがあります。絶対に損をしたくないなら銀行預金など、元本保証の商品を選びましょう。
安定かつリターンを追求できるヘッジファンド
ここまでは、投資信託が儲かるのかどうかについて説明してきました。投資信託は、プロに運用してもらうことで手間を大きく減らせる(時間を節約できる)商品です。
そこで、似た仕組みでプロに運用してもらえる「ヘッジファンド」も併せて紹介していきます。運用会社の1つですが、通常の投資信託よりも高度な運用戦略を用いることで、安定的かつ高いリターンを得られる可能性があります。
ここでは、ヘッジファンドの概要についても押さえておきましょう。
ヘッジファンドとは
ヘッジファンドは「私募型」の運用会社です。通常の投資信託は「公募型」といい、銀行や証券会社で幅広く投資家を募っています。一方私募型のヘッジファンドは広く投資家を集めず、少数の投資家からのみ資金を受け入れます。
公募型で投資家を募集すると運用手法が限定されます。ヘッジファンドはあえて私募型を選択し、運用の裁量を優先しているのです。
ヘッジファンドが市場の影響を受けない理由
ヘッジファンドにはさまざまなタイプがありますが、多くに共通するのは「絶対収益の追求」を行う点です。絶対収益とは市場の影響を受けない収益を指します。
ヘッジファンドが絶対収益を追求できる理由は「売り」取引にあります。投資先の値下がりで利益を得られる取引で、これを通常の「買い」と併用することで市場全体が下落傾向であっても収益機会を得られるのです。
通常の投資信託は原則「買い」しか行わないため、市場全体が下落傾向にあると基本的に利益を得られません。下落相場でも利益を出せる点は、ヘッジファンドの大きな強みといえるでしょう。
運用戦略別リターン一覧
本記事は「投資信託が儲かるのか」について解説してきました。その流れで、ヘッジファンドについても儲かるのか検証してみましょう。
日興リサーチによると、運用戦略別のリターンは以下のようになりました。TOPIX(配当込み)と比較し、ヘッジファンドが低いリスクで高いリターンを獲得できていることがわかります。
リターン | リスク | 戦略の概要 | |
---|---|---|---|
株式ロングショート | 30.57% | 7.35% | 割安銘柄に買いを、割高銘柄に売りを仕掛ける戦略 |
アービトラージ | 9.97% | 2.44% | 同一資産が異なる価格で取引されているとき、安い価格では買いを、高い価格では売りを同時に仕掛ける戦略 |
イベントドリブン | 28.46% | 6.36% | 買収など株価に重要な影響を与える事象の発生を予想し売買を行う戦略 |
(参考)TOPIX(配当込み) | 27.34% | 15.67% | ─ |
投資信託での運用もいいですが、ヘッジファンドでの運用もぜひ検討してみてください。
投資信託は儲かる リスク許容度に合わせて選択を
本記事の内容は以下の通りです。
- 投資信託は儲かる 過去5年の平均リターンは3.2%
- 投資信託は、その投資信託の保有資産が値上がりすると儲かる
- リターン重視なら株式型、安定重視なら債券型
投資信託には利益を得られる仕組みがあり、利益を出してきた実績もあります。したがって、投資信託は儲かるといえるでしょう。
ただし、やはりリスクはあります。絶対に利益を得られる保証はありません。資産タイプ別にご紹介した値上がり要因をしっかり理解し、投資の判断を行いましょう。