資産運用は、大金になるほど選択肢が増えます。
メリットではありますが、運用を誤ると損失額も大きくなるため「どうすればいいのか…」と悩む方も少なくないでしょう。
そこで、本記事では「1億円の運用」をテーマに、資産運用の基本的な考え方を解説します。「ポートフォリオ(資産の組み合わせ)」の実例も紹介するので、まとまった資金の資産運用に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
1億円の資産運用とは
本記事では混乱を避けるため「1億円の資産運用」を以下2つに分けます。
- 1億円を元手にした資産運用
- これから1億円を目指す資産運用
それぞれ概要を解説します。
1億円を元手にした資産運用
1つ目は「1億円を元手にした資産運用」です。すでに運用資金として1億円を用意している方が検討すべき資産運用をご紹介します。本記事ではこちらを主に解説します。
これから1億円を目指す資産運用
もう1つは「これから1億円を目指す資産運用」です。つまりこれからお金を増やしたい方が検討すべき方法といえるでしょう。こちらについても記事の後半で解説を行います。
なお、本記事の最後には「1億円を元手に2億円を目指す資産運用」と「これから1億円を目指す資産運用」双方のシミュレーションを記載します。そちらも参考にしてください。
1億円を元手にした運用のポイントは「分散投資」&「インフレ対策」
「1億円を元手にした資産運用」の場合、以下2つのポイントに気を付けましょう。
- 分散投資を心がける
- インフレに気を付ける
それぞれ解説します。
1つの資産・銘柄への集中投資を避ける
分散投資とはその名の通り、いくつかの資産や銘柄に分散して投資を行う資産運用を指します。「1億円を元手にした資産運用」は分散投資を前提にしましょう。「信用リスク」があるためです。
多くの資産運用には「信用リスク(破綻リスク)」があります。投資対象の企業などが経営破綻し、元本のほとんどを失ってしまう可能性を指します。株式などのリスク資産はもちろん、銀行預金や債券といった低リスク資産でも気を付ける必要があります。
分散投資せず集中投資していると、万が一投資先が破綻した場合に1億円のほとんどを失ってしまいます。必ず分散投資を心がけましょう。
インフレにも注意!低すぎる利回りでは実質的に目減り
インフレとは物価の上昇を指します。物価が上がるということは買えるものが少なくなるということです。つまり1億円が実質的に目減りするということを意味します。
日本の「消費者物価指数(総合指数)」は1970年で31.5でしたが、2020年では101.8です。50年で約3.2倍、1年あたり2.35%のインフレが起こりました。1億円だと年間235万円目減りしたといえます。
もっとも、近年ではインフレは落ち着いています。2010年の消費者物価指数は96.5なので、1年あたりのインフレ率は0.54%です。それでも1億円だと54万円なので、決して少ない額ではありません。
インフレによる目減りを防ぐには、インフレ率以上の利回り(理想は3%以上)が必要です。インフレ率を下回る利回りだと目減りの方が大きくなってしまうため実質的マイナスです。あまりに低い利回りで運用しないようにしましょう。
ポートフォリオの実例を紹介
運用資産の組み合わせを「ポートフォリオ」といいます。いくつかの資産に分散投資を行い、1つのポートフォリオを作りましょう。
ここでは「1億円を元手にした資産運用」の参考になるよう、ポートフォリオの例をご紹介します。
伝統的ポートフォリオ:株式&債券
伝統的な資産「株式」と「債券」のみで構成されたポートフォリオです。基本的なポートフォリオで、「1億円を元手にした資産運用」でも有力な選択肢になるでしょう。
【運用例】GPIF(年金)は「株式:債券」=「1:1」
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、年金の余剰金「年金積立金」を運用しています。年金の支払いに使われなかったお金で、将来の世代のために資産運用されています。
引用:年金積立金管理運用独立行政法人 年金財政における積立金の役割
GPIFの運用は伝統的ポートフォリオがメインです。以下のような資産構成になっています。
- 債券(国内外):50%
- 株式(国内外):50%
国内外へ分散はありますが、株式と債券で1:1の構成です。2020年第3四半期には6.29%、2001年からは1年あたり3.37%の実績利回りを残しました。
引用:年金積立金管理運用独立行政法人 2020年度の運用状況
オルタナティブ運用:伝統的以外の資産を組み入れる
株式や債券以外の資産を含んだポートフォリオで運用する方法です。不動産などが一般的で、これら株式や債券以外の資産を「オルタナティブ(代替資産)」といいます。
「1億円を元手にした資産運用」では選択肢が多いため、オルタナティブ運用も視野に入れましょう。
【運用例】ノルウェー政府年金基金は不動産を組み入れ
ノルウェーの政府系ファンド「ノルウェー政府年金基金グローバル」も資産運用を行っており、ポートフォリオに不動産を組み入れています。2020年末時点のポートフォリオは以下の通りです。
- 株式(国内外):72.8%
- 債券(国内外):24.7%
- 不動産(国内外):2.5%
比率は小さいですが、不動産を組み入れたオルタナティブ運用を行っていることが分かります。1998年から2020年末まで、1年あたり6.3%の実績利回りを残しています。
1億円運用ならヘッジファンドも選択肢に!絶対収益型で高い分散投資効果
「1億円を元手にした資産運用」の場合、ポートフォリオの一部を「ヘッジファンド」に任せる方法も検討したいところです。高度な運用戦略を用いるため、高い分散投資効果が望めます。
ここではヘッジファンドについて概要を確認しましょう。
ヘッジファンドとは
ヘッジファンドは、絶対収益型で投資家の資産を運用するファンドを指します。
実例としては、世界的にはレイ・ダリオ氏率いる「ブリッジウォーター・アソシエイツ」が有名です。
絶対収益とは、市場が上がっても下がっても利益を出す(相場の影響を受けない収益を追求する)ことを目標とします。
例えば、代表的なヘッジファンドの運用戦略に「アービトラージ」があります。
同一資産が2つ以上の価格で取引されているときに、「安い価格の買い─高い価格の売り」をセットで仕掛ける取引です。理論上、2つの価格差が必ず利益になります。相場全体が値上がり(または値下がり)しても利益は変わりません。
このように、ヘッジファンドは高度な運用戦略を用い、相場の影響を受けない収益構造を持つのが強みです。
相関が低いため分散投資効果が高い
ヘッジファンドは相場の影響を受けないため、通常の資産と相関が低いといえます。したがって分散投資の効果が高いといえます。
相関とは資産の関連性を指します。「Aが好調(不調)ならBも好調(不調)」というように、異なる2つ以上の資産が互いに関係を持つことをいいます。
ポートフォリオは相関が低い資産で構成する方が効果的です。相関が高い資産で構成すると同じような値動きになってしまうため、上がるときはAとBのどちらも上がり、下がるときはどちらも下がるので、分散投資の意味が薄れてしまうためです。
もともと相場の影響を受けない運用を行うヘッジファンドは他の資産との相関も低いため、分散投資と相性がいいといえるでしょう。
最低出資額に注意
ヘッジファンドの注意点の1つに、最低出資額があります。最低でも1,000万円程度の出資が必要になるため、すべての方が利用できるわけではありません。
最低出資額はヘッジファンドごとに異なりますが、1億円ならある程度クリアできるでしょう。ただし、あまりに最低出資額が大きいヘッジファンドだと他の資産に分散投資できなくなるので注意が必要です。
これから1億円を目指すなら「積立投資」
これまでは「1億円を元手にした資産運用」をご紹介してきました。実は「これから1億円を目指す資産運用」の場合も、基本的なポイントは同じです。分散投資やインフレに気を付けながらポートフォリオを構築し、資産運用を行いましょう。
異なる点は「積立投資」が主な選択肢になるという点です。銀行の積立預金のように、少しずつ投資していく方法です。「貯めながら運用する方法」ともいえるでしょう。
運用資金に乏しいため、分散投資しにくい点にも注意が必要です。最低出資額が大きいヘッジファンドはもちろんですが、株式や債券でも最低投資額が障害になるでしょう。
積立投資で分散投資も行いたい場合、投資信託がおすすめです。多くの金融機関は1万円から、主要ネット証券なら100円から投資できるので、少ない積立金額でも分散投資を行いやすいメリットがあります。
ある程度運用資金が貯まったら選択肢も増えます。まずは投資信託の積み立てから1億円を目指しましょう。
1億円の資産運用シミュレーション
ここでは「1億円を元手にした資産運用」と「これから1億円を目指す資産運用」のシミュレーションをご紹介します。それぞれ利回り別に、どれくらいの期間で目標を達成できるか確認しましょう。
1億円を元手にした資産運用(1億円を2倍にするまで)
まずは「1億円を元手にした資産運用」のシミュレーションです。本記事では仮に「1億円を2億円にする」という目標を立て、目標達成にかかる期間を利回り別に計算しました。結果は以下の通りです。
利回り10%なら約7年で2億円に到達しました。利回りが6%なら約12年、3%まで落ちても約24年で2億円に到達します。
このシミュレーションからは、運用期間を長く取れる方は低い利回りでも目標に到達できることも分かります。運用期間を長く取れる方は多少リスクを落とし、安定的な運用を行う選択肢も取れるでしょう。
これから1億円を目指す資産運用
次に「これから1億円を目指す資産運用」のシミュレーションです。仮に年100万円の積立投資を行うと仮定し、利回り別に1億円が貯まるまでの期間を確認してみましょう。結果は以下の通りです。
利回り10%なら約26年で到達できます。1億円から2億円までは約7年で到達できましたが、運用資金0から1億円を作るにはそれなりの時間がかかってしまうようです。
積立額を増やすと1億円到達までの期間を短くできます。一括投資(頭金やボーナス投資)も併用しながら運用資金を増やすようにするといいでしょう。また利回りが低くなりすぎないよう、ローリスク商品ばかりで運用しないようにしましょう。
まとめ
本記事の内容を以下にまとめます。
- 1億円を元手にした資産運用は「分散投資」&「インフレ対策」が大切
- ポートフォリオは株式&債券が基本 オルタナティブやヘッジファンドも
- これから1億円を目指すなら「積立投資」を
「1億円を元手にした資産運用」は分散投資を前提にしましょう。集中投資は投資対象が破綻した場合に資産のほとんどを一気に失ってしまうためです。またインフレによる目減りを防ぐためにも、低すぎる利回りにならないようにも注意しましょう。
ポートフォリオは株式や債券などでの構築が基本ですが、相関の低い資産で構築するとより効果的です。相場の影響を受けにくいヘッジファンドは分散投資におすすめです。
一方「これから1億円を目指す資産運用」の場合、積立投資を前提に考えましょう。もちろん、分散投資やインフレ対策も大切です。
ヘッジファンドに関する情報は下記でも紹介しています。
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