高いリターンを期待できるヘッジファンドへの投資は、個人投資家の間でも注目を集めつつあります。
しかしヘッジファンドは、証券会社などを通し公募で投資家を集める信託投資とは異なり、私募で投資家を募ります。
このため情報を集めること自体も簡単ではありません。
加えて、海外のヘッジファンドであれば投資に必要な金額も非常に高額であり、最低出資金でも1億円を越えるようなところもあります。
ただし、これは海外のヘッジファンドの場合であり、国内の比較的小規模なヘッジファンドであれば、数百万円程度から投資できるところも存在します。
この記事ではそんなヘッジファンドについて解説を行い、実際に投資するにあたって、優良なヘッジファンドを探すためのコツもご紹介していきます。
1、そもそもヘッジファンドとは
優良なヘッジファンドを見つけ投資するためにも、まずはヘッジファンドの特徴など最低限必要な知識を備えるようにしましょう。
投資信託などの投資方法と、ヘッジファンドも基本的な部分は変わりません。
自分は出資者として資金を提供し、運用のプロである資産運用会社あるいはヘッジファンドに、お金の運用を任せることになります。
ではヘッジファンドと投資信託のどこに違いがあるのかというと、出資者の募集方法と、集まった資金の運用スタイルに違いがあるのです。
この二点の特徴は、ヘッジファンドへの投資を考える上で必ず抑えておくようにしましょう。
2、ヘッジファンドは私募で投資者を集める
まず、ヘッジファンドの特徴の一つは、「私募」で投資家を募集するという点にあります。
投資信託であれば、主に証券会社や銀行といった窓口を通して購入することで投資が可能です。
これは誰でも投資信託を購入さえすれば投資が可能な「公募」の形態となっています。
少額からの投資も可能なため、投資までのハードルが低いことも特徴です。
一方でヘッジファンドの場合は、証券会社などの窓口は通さず私募で投資家を集めます。
その対象も資産のある富裕層や機関投資家などの大口投資家とすることが多く、最低出資額も高額であるため、投資までのハードルは高くなっています。
最低出資金が1,000万円からというところも少なくなく、ヘッジファンドによっては1億円が必要な場合もあります。
ただし、それでもハードルは投資信託よりは高くなるものの、国内のヘッジファンドであれば、数百万円程度からの投資を受け付けているところもあります。
個人投資家であっても自己資産に合ったヘッジファンドを見つけることで、投資を行うことは十分可能であると言えるでしょう。
ちなみに人数的な面では、公募の場合は499人まで投資家を集めることができます。
499人を超える場合は抽選によって決められます。
公募では、投資する側は1万円などの少額から投資可能で、簡単に投資を行うことができますが、集める側である証券会社などには高い規制が設けられています。
公募の場合、決算内容について公開が定められていることに加え、資産運用についての目論見書も提示しなくてはなりません。どのような資産運用が行われるか。また、その結果がどうなったかを決算で把握できる公募は、投資側は安心して投資できる仕組みであると言えます。
一方で私募の場合は、49人までしか投資家を集めることができません。
情報があまり出回らないことに加え、この募集人数の少なさという面でも、私募のヘッジファンドへの投資は難易度が高くなっています。
また、私募の場合は決算の公開は定められておらず、目論見書を提示する必要もありません。
このため投資家は、自身の判断でヘッジファンドが優良かどうかを見極めなくてはなりません。
3、ヘッジファンドは利益を追求する
もう一つ、ヘッジファンドと投資ファンドの大きな違いとして、利益を追求する方法の相違を挙げることができます。
無論、どちらも利益を求めることは変わりません。しかしヘッジファンドでは、絶対リターン型(絶対収益型)という利益の追求方法を取っています。
この方法では資産運用によって純粋に利益を上げることだけを追求し、その際に競争相手を定めたり、運用の上で株価指数などのベンチマークを設けることがありません。
例えば、世界情勢などの影響で市場全体が大幅に下がっていたとしても、ヘッジファンドは市場動向に関係なく自己の価値を上げることだけを目指します。
一方で投資信託の場合は、相対リターン型(相対収益型)と呼ばれる方法を取っています。
こちらは資産運用のパフォーマンスにおいて競争する相手を定めて、そこより上回る利益を出すことを目指します。
加えて株価指数や債権指数といったベンチマークを設けて資産運用を行い、その指標が上昇すれば、パフォーマンスも向上しているということになります。
このため相対リターン型の場合は、市場全体が下がっている状態では投資信託の価値も下がることになります。
こうした利益追求方法の特徴は投資判断の重要なポイントになるため、ヘッジファンドに投資を考える際にはしっかりと理解しておくようにしましょう。
4、優良なヘッジファンドを見分けるために、投資理論の確認をしよう
投資信託などと比べれば、ヘッジファンドへの投資は必然的に大口の投資になってきます。
このため投資の際には、信頼できる優良なヘッジファンドを見分けることが必要です。
その判断の基準の一つとして、まず対象のヘッジファンドの投資理論について確認をする必要があります。
ヘッジファンドは先述したように、自己の利益の追求だけを考えて資産運用を行います。
これを成功させるためには、確立された投資理論を備えていなくてはなりません。
例えば仮想通貨など、ただ単に流行りの投資対象などに流れで投資を行っていくヘッジファンドの場合、大きな損失をしてしまう可能性も少なくありません。
投資理論には、バリュー投資やグロース投資といった様々な種類が存在します。
例えばバリュー投資は、割安株投資とも言われていて、簡単に言えば銘柄の安い時に投資をして、投資対象の価値が上がるのを待つ投資理論です。
一方のグロース投資は成長株投資とも言われていて、こちらはどんどん成長を続けている銘柄に投資を行い、銘柄の成長に乗って利益を上げていく投資理論です。
こうした投資理論にはそれぞれにメリットやデメリットが存在しているため、ヘッジファンドがどのような投資理論を採用しているかは、重要な判断材料となります。
5、安定したパフォーマンスを発揮しているかどうかも重要
投資理論が確立されているヘッジファンドであっても、パフォーマンスが安定していなければ意味はありません。
年々順調なパフォーマンスを出しているヘッジファンドであれば問題はありませんが、稀に非常に高いパフォーマンスを叩き出しているヘッジファンドも存在します。
この時、気をつけなくてはならないのは、ヘッジファンドがレバレッジをかけているか否か、という点です。
レバレッジとは、簡単に言えばリスクを負うことで、より大きな資金運用を行うことです。
投資がうまく行けば、本来使用できる資金以上の利益を上げることができるため、非常にリターンは大きくなります。
ただし、投資に失敗した場合は、その分損失も大きなものになってしまいます。
急激にパフォーマンスを上げているヘッジファンドの場合は、このレバレッジを利用して利益を上げている可能性が高くなります。
安定した運用方法とは呼べないため、投資をする際には損失が発生するリスクが有ることも念頭に置かなくてはいけません。
また、レバレッジなどではなく、単に投資対象の分野が好調だった結果、パフォーマンスが上がることもあります。
この場合は、その分野の好調が一時的なものなのか、それとも継続的に期待できるものなのかの判断が大切です。
一時的なものの場合は、翌年にはヘッジファンドのパフォーマンスも共に低下することが予想されます。
6、ロックアップ期間についても確認しておこう
ヘッジファンドは少人数から大口の投資を集めるため、投資家が好きなタイミングで解約できてしまうと、資産運用に大きな影響が出ることになります。
ロックアップ期間とはそうした事態を防ぐため、ヘッジファンド側が投資家に対して定める資金移動の拘束期間を指します。
投資信託では自由なタイミングで資金の増資や解約ができるため、この違いには注意が必要です。
概ねのヘッジファンドでは年に一回解約や、増資を行える期間を設けています。
ヘッジファンドによっては四半期に一回などタイミングが異なることもあるため、自分が投資を行おうとしているヘッジファンドがどのようなロックアップ期間を定めているかは、必ず確認を行いましょう。
7、よく調べてからヘッジファンドへの投資を行う
投資信託などとは異なり、絶対リターンを追求するヘッジファンドでは、投資に成功することで高いリターンを期待することができます。
しかし一方で、投資金額の高さや、投資信託とは異なるロックアップ期間の存在など、注意をしなければならないことも多く存在します。
ヘッジファンドへ投資する際には、そのヘッジファンドが掲げる投資理論や年々のパフォーマンスについて情報を集めて分析し、信頼できるヘッジファンドかどうかをしっかり見極めるようにしましょう。