FXで大金を溶かすという話を聞いたことは多いと思います。
FXの失敗についてネット検索すると、1000万円以上もの大金を溶かした体験談が数多くヒットします。
しかし、こういった体験談を読んでいても、
「具体的に1,000万円以上の資産をどうやってFXで溶かしたのか?」
と仕組みが分からない人もいるのではないでしょうか。
FXは投資方法の中でも、ハイリスクハイリターンになりやすい投資方法であることは間違いありませんが、資産を溶かす仕組みが原因であるケースも多いでしょう。
また、1,000万円以上といった大金の運用先にFXを検討している人は、最適でない可能性があります。
そこで、この記事では「FXで1,000万円を溶かす仕組み」を明らかにした上で、「なぜFXが最適でないのか」、「1,000万円以上の運用先に適している他の方法」についても紹介します。
FXで1,000万円を溶かす仕組み
なぜFXで資産を運用すると、1,000万円以上も資金があったにも関わらず、資金が溶けるように消えてしまうのでしょうか?
その理由はFXの仕組みにあり、取引の手法を間違えれば元手を失う可能性がある要素が主に3つあるからです。
- レバレッジによる自己資金以上の取引
- 最大25倍の高い倍率
- 通貨ペアによって異なる価格の上下
それぞれ詳しく見ていきましょう。
レバレッジによる自己資金以上の取引
FXは他人資本を利用して投資するレバレッジを効かせることが前提の投資方法です。
例えば、100万円を元手にお金を借りて500万円を投資する場合は、5倍のレバレッジを効かせていることになります。
つまり、運用資金が大きくなるため、自己資金だけで投資するよりも損失も増加しやすくなるのです。
また、お金を借りて運用しているため、元手よりも大きな損失が発生することも考えられます。
しかし、FXにはロスカットというシステムがあり、損失が一定の基準になると強制的に決済されます。
これはFXのセーフティーネットのようなシステムであり、損失が元手を上回らないようにロスカット基準を定めていれば、最悪でも借金することはありません。
しかし、基準を満たしたタイミングで発注されるので、相場の変動によっては注文が間に合わず、ロスカットの基準で決済ができない可能性もあります。
借金をするまではいかなくてもロスカットを何度も続けていれば損失は膨れ上がります。
よって、元手をほとんど溶かしてしまうような事態も考えられるのです。
最大25倍の高い倍率
リターンを大きくするにはレバレッジの倍率を高めるのが最適ですが、同時にリスクも大きくなります。
FXでは最大25倍のレバレッジ倍率をかけられます。
1,000万円を元手にするなら、最大で2億5,000万円の資金が動かせるということです。
国内では株式の信用取引にかけられるレバレッジ倍率は約3倍、仮想通貨のレバレッジ取引にかけられる倍率は2倍とされています。
他の投資方法と比較してもFXが突出してかけられる倍率が高いことが分かるでしょう。
また、各投資のレバレッジ倍率の上限は金融庁が投資家保護を考えて設定したものです。
株式や仮想通貨と比較して、FXは価格変動が小さくなりやすいのでレバレッジ倍率の上限が高く設定されています。
高いレバレッジで取引するほど、資産を大きく増やしやすくなりますが、同時に資産を大きく減らしてしまうリスクを背負うことになるのです。
通貨ペアによって異なる価格の上下
米ドル/円のように安定した通貨であれば値動きは安定しているため、高いレバレッジをかけたとしても資産は減少しにくいでしょう。
しかし、新興国通貨や、海外同士の通貨ペアを選択すると想定されるリスクが高まります。
トルコリラのような新興国通貨と日本円の通貨ペアは、FXにおいて金利収入が得られるスワップポイント投資の対象になります。
スワップポイントは2通貨間の金利差を投資の利益として受け取れるシステムです。
新興国通貨は金利が高いですが、不安定であるため、価格の変動によって金利収入を上回る大損をする可能性もあります。
FXは投資対象によって価格の上下幅が異なるので、リスクの高い投資先を選ぶとより早く資産が溶けてしまうことにつながります。
FXで1,000万円を溶かす人の特徴
FXで資金を溶かしてしまう3つの仕組みは上述した通りですが、人によっては仕組みが逆に追い風となり資産を大幅に増やすことができるでしょう。
つまり、溶かしてしまう理由は運用している人にあります。
そこで、FXで1,000万円を溶かす人の、主な特徴5つを解説していきます。
- ギャンブル感覚でやっている
- いきなり大金を投資してしまう
- 損切をせずロスカットしてしまう
- 経済指標などの市況を確認していない
- 感情に任せて取引をしている
それでは、1つずつ見ていきましょう。
ギャンブル感覚でやっている
FXは価格が上がると思えば買いポジションを取り、価格が下がると思えば売りポジションを取ることで利益が得られる仕組みです。
つまり、FXは完全に運任せでおこなった場合、50%の確率で得をし、50%の確率で損をする投資です。
根拠がないのにも関わらずポジションを取ったのであれば、それは投資ではなくギャンブルになります。
最初は偶然当たるかもしれませんが、いずれは外して損をするでしょう。
まずギャンブル感覚でやっている人は、FXはギャンブルという考え方を捨てましょう。
いきなり大金を投資してしまう
1,000万円以上の資産を溶かしてしまう一番の理由は、そもそも大金をいきなり投資してしまうことが最も大きな原因です。
最初は1万円程度の少額から始めて経験を積んでいけば、その過程で失敗することはあっても大金を失うことはないでしょう。
FXで多額の資金を問題なく動かせるようになるためには経験が必要です。
よって、最終的に大金を運用したい場合もまずは少額から投資するようにすれば、資金を溶かすリスクを大きく減らせます。
損切をせずロスカットしてしまう
FXはしっかり分析をおこなった上で投資をしたとしても、時には予想を外してしまうこともあります。
予想を外したときに損失を最小限にするために必要になるのが、自ら決済して損失を確定させる損切です。
FXは損切をおこなわなければ、損失が基準を満たした時点でロスカットによって強制的に決済されます。
「これから上がるかもしれない」と考えてポジションをキープしても、ロスカット基準を満たせば強制的に決済されてしまいます。
典型的に損をするFXトレードには利益を確定させるタイミングはよくても、損切をしないため損失額が大きくなり、利益を帳消しにしてしまうことが挙げられます。
損切のルールやタイミングをあらかじめ決めておき、損失を最小限にしていくことで、最終的に利益をプラスにしていくのがFXで利益を得る秘訣です。
経済指標などの市況を確認していない
FXには価格が動く要因がさまざまありますが、代表的な材料には雇用統計などの経済指標があります。
米ドル/円に投資するなら、アメリカの雇用統計や経済指標などにも目を通し、米ドルの価値の上下を予測してポジションを取るのが基本です。
よって投資する通貨の、経済の動向や金融市場の状況はFXをするなら常日頃からチェックしておく必要があります。
代表的な株価指数や為替レートの確認、金融ニュースを日ごろから読んでいる人であればFXにおける価格の予測もしやすいです。
FXで資産を増やしたいと考えている方は、上記のような習慣を身につけることが重要になります。
感情に任せて取引をしている
FXは、システムトレードと呼ばれる「プログラムを組んだ自動売買」が最適といわれることもあるほど、機械的に取引ルールを定めて徹底することが重要です。
通貨に関する分析ができており、損切などの取引ルールを決めている方でも油断しないでください。分析とルールがあっても、利益や損失の数字に一喜一憂し、感情的な取引をしてしまうトレーダーは資産を溶かすリスクが高まります。
例えば、10万円の利益が出れば利益確定というルールで取引をしたにも関わらず、根拠なくさらに上がると考えて利益を確定しない場合です。
反対に5万円の損失で撤退とルールを決めていたにも関わらず、実際に損失を出すのが惜しくなり、感情的に損切りしない場合も考えられます。
感情に任せて一度決めたルールを破る行為は投資のリスクを高めます。
実際にトレードを進める上で感情的になってしまうことが多い場合は、システムトレードを検討してもよいでしょう。
ただし、システムトレードを使いこなすためにはFXに関する知識はもちろん、場合によってはプログラミングの知識も必要になります。
よって、システムトレードを利用すれば誰でも簡単に利益が出せるわけではありません。
FXは1,000万円の運用先としては適切ではない理由
FXで資産を溶かしてしまう人の特徴について解説してきました。さらに、上記のような特徴を持った人は、共通して1,000万円以上の大金をFXで運用するのに適していない可能性があります。
FXが1,000万円の運用先としては適切ではないとされる理由は3つあります。
- ハイリスクハイリターンであるから
- 知識と経験が求められるから
- 資産運用の選択肢が広いから
ハイリスクハイリターンであるから
FXは他の資産運用と比較してもハイリスクハイリターンである投資方法です。
仮に20%の損失が発生したとき10万円の投資なら2万円の損失で済みますが、1,000万円の投資で20%の損失が発生すると200万円の損失になります。
投資額を間違えるだけで、初めての投資でこれだけの損失が発生する可能性もあるのがFXです。
基本的には少額から始めてリスクを低くして投資するのが基本になります。
つまり、1,000万円以上の資産があってもすぐに運用に回すことができません。
FXよりもリスクの低い運用先で、毎年5%程度の利回りが見込める投資をすれば、1,000万円の投資額であれば50万円程度の利益が期待できます。
一方で少額からFXを始めて、50万円以上の利益を得るのはリターンが低すぎて難易度が高いです。
ローリスクローリターンでも「ある程度の利益が期待できるなら十分だ」と考えるなら、他の投資先のほうが効率的です。
知識と経験が求められるから
FXで1,000万円を低リスクで安定して運用するためには、知識と経験が必要になるため自ら勉強していく姿勢が必要です。
資産運用に時間をかけたくない人にFXは向いていません。
時間と手間をかけて勉強を続けた人が、安定して高い成果を上げ続けられることを理解しておきましょう。
一方で、運用をプロに任せられるので、時間も手間もかかりにくい資産運用は存在します。
資産運用の選択肢が広いから
FXは少額からでも始めやすく、高いリターンが期待できるので、敷居が広く夢もあり話題になりやすい投資方法です。
しかし、1,000万円があるなら、敷居が高いことがネックになる優秀な資産運用先を見つけやすくなります。
こういった、最低投資金額が1,000万円で優秀な投資先というのは、門戸が狭いため話題になりにくいです。
資産運用は少額からでも始められますが、資金が多いほど選択肢が広がり有利です。
FXを選ぶ場合でも元手の1,000万円を溶かすことがあれば、その有利を自ら捨てることにつながります。
1,000万円があるなら運用先をFXと決めつけずに、広い視野で選択肢を検討するのがよいでしょう。
FX以外の1,000万円の運用先
FX以外1,000万円の運用先の候補は3つあります。
- 投資信託
- 不動産投資
- ヘッジファンド
それぞれ詳しく解説します。
投資信託
投資信託はファンドマネージャーと呼ばれる投資の専門家に運用を任せる資産運用です。
投資家は株式、債券などの大まかな投資対象を決めて、投資信託に投資すれば自動的にその投資対象に分散投資できます。利回りの目安は1~5%程度です。
証券会社に口座を開設すれば誰でも投資できるので、敷居も低く実践しやすいです。
また、1,000万円をとにかくリスクなく運用したいなら、元本確保型の投資信託もあります。
元本が確保されるので、投資先が破綻しなければ元本が返還される仕組みを持っています。
リターンは決して大きくありませんが、手間をかけずに安全に投資するなら投資信託が向いています。
不動産投資
不動産投資は物件を用意して住人を募集し、賃料収入を得ることで安定した利益を得られる代表的な投資方法です。
初期投資金額が大きいので銀行から融資を受けるのが一般的ですが、1,000万円があれば自己資金だけで始めるのも難しくありません。
物件の管理は管理会社に委託できるので、手間もかけることなく始められます。
利回りの目安は3~7%程度です。
高いリターンよりも安定した利益を獲得したい方は、不動産投資がおすすめです。
ただし、物件の選び方や節税の知識など、適切に運用するなら必要になる知識も多いので、FXと同様に勉強は必要になる資産運用になります。
ヘッジファンド
ヘッジファンドは、投資信託と同様にファンドマネージャーに運用を任せられる投資商品ですが、最低投資額と運用方針に違いがあります。
投資信託は100円以上1円単位で投資できますが、ヘッジファンドは基本的には1,000万円以上、高い場合は億単位の投資金額が必要です。
投資信託は株価などの指数に忠実に運用する相対収益を方針しているため、株価の下落が続くと同様に損をしてしまいます。
一方で、ヘッジファンドは絶対収益を方針としているため、市場の状況に関わらず利益を追求する運用が可能です。利回りの目安は7~20%程度です。
その年の相場によっては、30%の場合もあればマイナスとなる場合もあるため、中長期の投資で均すと良いでしょう。
専門家に運用を任せながら、投資信託よりも高いリターンを期待したい方におすすめの投資方法になります。
また、ヘッジファンドは証券会社から投資できず、運用会社に直接連絡する必要があります。
まとめ
FXに興味があり1,000万円が溶けてしまう仕組みを知りたいあなたは、以下のどちらでしょうか?
投資の目標からFXが適切な投資先である人
すでにFXをやっていてやめる理由を探している人
例えば、1,000万円を数年以内に1億円にしたいという高い目標のある方は、高いリターンが期待できるFXは有力な投資先です。
今回紹介した資産運用でこの目標を達成するのは難しいでしょう。
FX以外の投資方法を探すのではなく、資産を溶かす人の特徴を理解した上でFXの勉強から始めましょう。
一方で、自分では自覚していないかもしれませんが、すでにFXを始めていてやめる理由を探すために記事を閲覧した方は、ぜひこの機会に別の投資方法も検討することをおすすめします。