アクティビストファンドは端的に説明すると「物言う株主」です。

イベントドリブン型のヘッジファンドの一種とされています。

主に上場企業をターゲットとし、徹底したリサーチによって企業を選定したのち、株式を一定以上取得し、対象企業へ積極的に改善要求や提案を行います。要求や提案が実施されることによって、企業価値の向上を目指します。

 

アクティビストファンドは、時に敵対的なアプローチも用いて企業への要求を通し、利益の最大化を目指しています。戦略はターゲット企業の選定から始まり、さまざまな戦術を用いて要求を実現するのです。

では、アクティビストファンドはどのような戦略を用いて要求を実現しているのでしょうか?アクティビストファンドの戦略を見ていきましょう。

 

アクティビストファンドは、投資先企業に増配や自社株買いなどさまざまな要求を行い、本来の企業価値を引き出す、または改善によって企業価値を向上させる投資アプローチです。

ファンドの性質上、投資先企業との利益相反を心配をすることなく要求できる強みがあります。

基本的に対象企業に対しては友好的なアプローチであることが多いですが、場合によってはTOB(株式公開買い付け)や委任状争奪戦などの敵対的な行動をとるケースもあります。

 

ただし近年では、敵対的なファンドとして扱われることが投資活動に際しての妨げになる懸念もあり、経営陣との対話による友好的なアプローチをとるケースが多くなってきています。

 

バイアウトファンドとは一定以上の株式を取得して企業価値を高めた上でキャピタルゲインを得るという点で類似していますが、アクティビストファンドは一定以上の株式を取得するといっても5%程度、多くても20%程度です。

特に対話を重視した友好的な投資の場合には、議決権を多く持つ必要性がないことから、株式の保有割合も低くなる傾向にあります。

一方バイアウトファンドは、主に株式を過半数以上取得することで経営権を握り、バイアウトファンド自らが経営に参画し、企業価値を高めることでキャピタルゲインを得ます。

 

アクティビストファンドも経営陣を投資先の企業に送り込むようなケースはありますが、主に割安な株価だと判断される企業を選定し、積極的に改善要求や提案をすることで企業価値を高めようとします。

したがって、短期的なスパンでの株価上昇による利ざやを主目的としていることは傾向としてあるでしょう。

ただ、対象の企業へ関わる期間は比較的短い場合もありますが、数ヶ月程度の場合もあれば数年程度関わる場合もあります。

 

短期利益追及主義を助長するファンドとされる場合もありますが、必ずしもアクティビストファンドの要求が短期的利益でしかないとは言い切れず、長期的な利益につながる場合もあるため一概には言えません。

また近年では、長期的なスパンで企業価値の向上をはかるアクティビストファンドも増えてきています。

1、ターゲット企業の選定基準3選

具体的なアクティビストファンドへの投資戦略を紹介します。

(1)リサーチを徹底しターゲット企業の選定

アクティビストファンドの戦略として、まずは徹底したリサーチによってターゲット企業を選定することから始まります。

競合他社と比較して株価が芳しくない企業は、改善の余地があると判断できることから投資対象とされる傾向にあります。

資本構成に関しては、余剰キャッシュの見込まれる負債比率の低い企業は、余剰キャッシュを有効に活用し、増配や自社株買いを要求します。

(2)ガバナンスが徹底されておらず、株価が低い企業が投資先対象

また、企業の潜在的価値となる不動産などの、売却できる資産を多く持っている場合や、コーポレート・ガバナンスの水準が低く、経営陣の質も低いと判断できる企業もターゲットとされます。ガバナンス向上策の提案によって企業価値の向上をはかるのです。

M&A(合併・買収)などの場合、低いプレミアムで買収を提案されている企業をターゲットとすることもあります。

(3)業績不振・経営者の能力の低さなど課題のある企業が投資ターゲット

アクティビストファンドは主に業績などに問題のある会社をターゲットとする傾向にあります。

業績不振であるということは、改善の余地があると判断できるということでもあります。

したがって、企業価値の向上の余地のある会社を選定することを基本とし、割安だと判断できる会社へ投資しているのです。

また、アクティビストファンドの投資先は多くなく、一般的な投資家のように多くの銘柄を保有する分散投資のような手法はとりません。

ゆえに、より投資先への徹底したリサーチを重ねることにつながり、対象企業への習熟度は増し、ターゲット企業に対する提案の裏付けになるのです。

2、アクティビストファンドの主なワークフロー4つ

投資先企業への具体的なワークフローも紹介しておきます。

(1)投資先に対する経営改善の要求を通す。法廷闘争や敵対的TOBに発展することも

アクティビストファンドは、戦略を立て、そして様々な戦術を用いて要求を通すためのアプローチを試みます。

要求を通すために友好的なアプローチを用いる場合もあれば、要求が拒否された場合には敵対的アプローチへと移行し、最終的に法廷闘争にまで発展するケースもあるのです。

初期の段階から敵対的なTOB(株式公開買い付け)を行うようなアプローチを用いることもあります。

アクティビストファンドの戦略は多種多様であり、一括りにはできません。

(2)発行済株式の5-20%を取得するケースが一般的

主な流れとしては、株式を5%〜20%程度取得し、企業との私的交渉のための打診をします。

交渉が受け入れられた場合は企業との対話、提案という流れになります。

(3)投資先との交渉が不調の場合、メディアを巻き込み既存株主を味方につける

ただし、企業側が交渉拒否の構えの場合には、メディアなど、世間に要求内容などを発表し投資家などの支持を得ることで、企業へ圧力かけるような場合もあります。

それでも企業側が態度を軟化させないような状況ですと、アクティビストファンドは最終手段として敵対的アプローチをちらつかせる、または実行に移します。

(4)株主提案を可決するために委任状争奪戦(プロキシーファイト)を行うことも

具体的な敵対的手法としては、株主提案を可決させるために、経営陣と委任状を争奪する委任状争奪戦によって議席を獲得することや、またそれに伴い、株主提案を可決させるために、他のアクティビストファンドと共闘することによって議決権を増やし、要求を実現しようとします。

企業が要求に応じない場合には敵対的TOBを仕掛けることもあります。

企業が要求を受け入れず、妨害するような場合には、アクティビストファンド側が裁判に訴え、法廷闘争へと発展してしまうケースもあり得ます。

収益の最大化を目指すアクティビストファンドは、友好的なアプローチも、状況によっては敵対的なアプローチも用いて、段階的に戦術を切り替えながら、要求の実現を目指していると言えるでしょう。

3、アクティビストによる投資先企業への要求

 

アクティビストファンドは企業価値を高めるために、様々な要求を行います。

(1)コーポレート・ガバナンスや財務改善などの要求

徹底したリサーチを行っているため、コーポレート・ガバナンス関連だけではなく、財務などの企業における根本的な部分に対して改善要求、提案を行うことができます。

(2)増配・自社株買い・買収防衛策など企業価値向上のための要求

株主価値を高めるための資産の活用に関する、増配や自社株買い。

経営や財務の改善に関する、中核事業の成長戦略や設備の削減。

コーポレート・ガバナンスの改善に関する、買収防衛策の撤回や、独立した社外取締役の選任など、広範に渡って積極的な要求、提案をすることで企業価値の向上を目指しているのです。

4、戦略をもって収益の最大化を目指すのがアクティビストファンドの特徴

 

アクティビストファンドは、短期利益を狙う存在としてネガティブなイメージを持たれることもありますが、短期的な観点からだけでなく、中長期的な観点から企業価値の向上を目指すケースもあり、一概に短期的なリターンのみを狙っているファンドとは言えません。

 

友好的な対話による要求や、時に敵対的なアプローチを用いることで要求を実現させようとするアクティビストファンドは、ターゲット企業の選定から出口戦略まで、案件によって多種多様な戦略を駆使することで企業価値を高め、利益の最大化を目指しているのです。

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