「銀行に1,000万円以上預けてはいけない」と聞いたことはありませんか?
これは「ペイオフ」を前提にしていると思われます。どうして銀行に1,000万円以上預けてはいけないのか、気になっている方もいるでしょう。
そこで本記事ではペイオフの仕組みを解説し、銀行預金が1,000万円以上になったときの対策をご紹介します。
ペイオフ(預金保険制度)とは
ペイオフのことをよく知らない方のため、まずは概要を押さえましょう。
預金保護のため銀行が加入している保険
銀行におけるペイオフとは「預金保険制度」を指します。「保険」と名の付く通り、銀行が破綻に備えて加入する保険制度です。
万が一銀行が破綻してしまうと、私たちの預金がきちんと払い出されないかもしれません。これを防ぐため、銀行が保険料として「預金保険機構」にお金を毎年積み立てています。預金保険機構は万が一の際、積み立てたお金を使って私たちの預金の保護を図るのです。
- 預金保険機構 預金保険の概要(外部サイト)
銀行破綻時に1,000万円まで保護される
ペイオフで保護される金額には限度があり、1,000万円までの元本とその利息までです。これを超える場合、破綻銀行の状況によってはカットされる可能性があるため注意しなければなりません。
これが「銀行に1,000万円以上預けてはいけない」といわれる理由です。対策については次章「銀行預金が1,000万円以上になったら?」をご覧ください。
ペイオフ対象の預金
金額だけでなく、預金種類にも注意しましょう。そもそもペイオフ対象外の預金があるためです。以下にまとめました。
- 外貨預金
- 譲渡性預金
- 金融債など
特に「外貨預金」は店頭で広く募集されているため利用している方も多いかと思います。ペイオフ対象外という点は覚えておきましょう。
銀行預金が1,000万円以上になったら?
銀行預金が1,000万円以上となりペイオフ対象外のお金ができたらどうすればいいのでしょうか。
一般に、銀行破綻リスクは決して高くありません。したがって銀行預金が1,000万円を超えペイオフ対象外の預金があるとしても、そう深刻に考える必要はないでしょう。
ただ、それでもなんらかの対策をしたいという方には以下2つの方法をご紹介します。
- 銀行を分散させ、全額をペイオフの保護下に入れる
- 資産運用を行い、インフレに備える
銀行を分散させ、全額をペイオフの保護下に入れる
預金全額をペイオフの対象としたい場合、異なる銀行に預金を分散させましょう。ペイオフで保護される元本の金額は「1つの銀行あたり1,000万円」のためです。同一銀行だと口座を分けていても合算されてしまうので注意しなければなりません。
いくつかの銀行に預金を分け、それぞれの銀行で預金額を1,000万円以下に抑えれば全額をペイオフの保護下に入れることができます。
金利が高い銀行の例
せっかく預金を分けるなら少しでも金利が高い銀行をおすすめします。以下にまとめました。
全国の平均金利は、定期預金で0.002~0.003%(1ヵ月~10年定期)で、普通預金で0.001%です(2021年9月8日時点)。上記はいずれも平均より高い金利が付くでしょう。
- 日本銀行 預金種類別店頭表示金利の平均年利率等について(外部サイト)
資産運用を行い、インフレに備える
もう1つの方法は資産運用です。銀行預金から資産運用に資金を振り分けることで、預金額をペイオフの範囲にとどめることができるでしょう。
「インフレ」に備えられる点でも資産運用はおすすめできます。インフレは物価上昇を指し、資産の価値を下落させます。預金でもインフレ率以上の金利が付けばいいのですが、低金利の今では期待できません。
ではどのような資産運用をすべきでしょうか。さまざまな種類がありますが、本記事では「債券」と「ヘッジファンド」を候補として取り上げます。債券は銀行預金に近しい仕組みがあり、ヘッジファンドは比較的安定的なリターンを追求する仕組みを持つためです。
それぞれの詳細について、次章以降で確認しましょう。まずは債券について解説します。
銀行預金が1,000万円以上になったら「債券」を検討したい理由
ここでは、なぜ銀行預金が1,000万円を超えた方に債券がおすすめしたいのかを解説します。
元本の償還と利払いを発行者が約束
銀行預金から資産運用を始める方に債券が候補に挙がる理由は、仕組みが定期預金と似ているためです。発行者が破綻しない限り、定期預金と同じく金利収入があり、満期が来れば額面通り償還されます。資産運用の経験がない方でも理解しやすいでしょう。
債券のリスク
債券の主なリスクは発行者の破綻リスクです。債券は利払いと償還金を発行者が約束していますが、発行者が破綻してしまえばその保証はありません。
銀行預金にはペイオフがありますが、債券は発行者の破綻に備える保証制度はありません。債券を選ぶ場合、発行者の信用力には注意しましょう。
利回り2%以上が期待できる債券
問題は、やはり低金利です。債券も低金利の影響を受けるため、全体的に金利水準は下落傾向にあります。しかし、なかには銀行預金よりも大きな金利が設定されている債券もあります。ここでいくつか確認しましょう。
なお、日銀はインフレ率の目標を2%としています。以下のような債券なら2%以上の利回りが期待できるでしょう。
- 劣後債
- 米ドル債
劣後債
債券の発行者が破綻した場合、発行者のお金は債権者に分配されます。「劣後債」は、その順番が普通債(通常の債券)よりも遅い債券です。仮に発行者が破綻したとき、普通債よりも損失の額は大きくなるでしょう。
このリスクがある分、劣後債は普通債よりも高い金利が設定されます。例えば2021年9月に発行条件が決まった「ソフトバンクグループ」の劣後債は2.4%の金利が設定されています。
- 発行者:ソフトバンクグループ(第3回無担保劣後社債)
- 金利:2.4%
- 年限:7年(償還日:
- ソフトバンクグループ プレスリリース(外部サイト)
ちなみに直近発行されたソフトバンクグループの普通社債(第56回無担保普通社債。年限7年。2019年9月発行)は1.38%でした。市場金利の水準が異なるため一概に比較できませんが、やはり劣後債のほうが高い金利が設定されているようです。
米ドル債
「米ドル債」は利息や償還金が米ドルで支払われる債券です。基本的な仕組みは同じですが、日本よりも金利水準が高い傾向にある米ドルを用いることで高い金利が期待できます。
例えば三菱UFJフィナンシャルグループが2021年7月に発行した米ドル債は2.309%の金利が設定されました。
- 発行者:三菱UFJフィナンシャルグループ(US606822BX18)
- 金利:2.309%
- 年限:11年
- 三菱UFJフィナンシャルグループ 社債・資本性証券情報(外部サイト)
米ドル債は高い金利が期待できますが、為替リスクがあるため注意しましょう。
さらにリターンを目指すならヘッジファンドも検討の選択肢に
銀行預金からの資産運用に振り替える場合で、かつ債券以上のリターンを求めたい場合はヘッジファンドも選択肢として視野に入れましょう。その理由を説明していきます。
安定+高リターンがヘッジファンドの魅力
銀行預金から資産運用へ資金を移す方がヘッジファンドを検討したい理由は、ヘッジファンドはリターンに対して比較的リスクが低い傾向にあるためです。
ヘッジファンドの運用方針はさまざまですが、多くに共通しているのは「絶対収益の追求」です。これは相場の影響を受けない収益を目指す方針を指し、多くは「売り」取引を活用し実現を図ります。これにより、相場リスクを下げながらリターンを追求できるのです。
ヘッジファンドの実績
ヘッジファンドが実際に安定してリターンを得ているのか、実績を確認しましょう。
日興リサーチセンターによると、2021年7月時点におけるヘッジファンドの直近1年間の成績(運用戦略別)は以下の通りです。「マネージド・フューチャーズ」と「マクロ」を除き、リターン÷リスクの数値はいずれもTOPIXを上回りました。ヘッジファンドの多くは市場平均よりも低いリスクで高いリターンを得られたことがわかります。
1年リターン | 1年リスク | リターン÷リスク | |
---|---|---|---|
株式ロングショート | 25.33% | 7.83% | 3.23 |
マルチ・ストラテジー | 13.95% | 4.88% | 2.86 |
イベント・ドリブン | 25.43% | 7.12% | 3.57 |
マネージド・フューチャーズ | 9.89% | 5.34% | 1.85 |
マクロ | 10.38% | 5.34% | 1.94 |
債券アービトラージ | 9.73% | 2.71% | 3.59 |
アービトラージ | 9.05% | 2.61% | 3.4 |
リラティブバリュー | 15.00% | 4.08% | 3.68 |
破綻債券 | 22.39% | 4.78% | 4.68 |
参考)TOPIX(配当込) | 29.79% | 14.97% | 1.99 |
- 日興リサーチセンター ヘッジファンド概況(外部サイト)
あくまで過去の実績ですが、ヘッジファンドが安定して高いリターンを得ている1つの証拠にはなるでしょう。
絶対に損をしないわけではありませんが、安定して比較的高いリターンを得たいならヘッジファンドを検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
- ペイオフは銀行が破綻したとき、預金保険機構が預金を保護する仕組み
- 元本1,000万円とその利息まで保護
- 1,000万円を超えたら「銀行を分ける」または「資産運用」が有効
- 資産運用なら「債券」または「ヘッジファンド」が候補
ペイオフは預金を保護するための保険制度です。万が一銀行が破綻した場合、預金保険機構が私たちの預金を保護します。
ペイオフは1銀行あたり元本1,000万円とその利息までしか保護されません。したがって銀行預金が1,000万円を超えた場合、預金をいくつかの銀行に分けるか、あるいは資産運用に回し預金額を下げることで全額をペイオフの保護下に入れることができます。資産運用はインフレに備えられるメリットもあります。
銀行預金から資産運用に移す場合の資産運用は、仕組みや安全性から「債券」と「ヘッジファンド」が候補になりそうです。インフレを上回る程度のリターンを目指す場合は債券を、さらに大きなリターンを目指す場合はヘッジファンドを検討してみましょう。