退職金がない会社で働く人が実行すべき3つの対策

多くの給与所得者にとって、退職金は人生でまとまった資金を手にする数少ないチャンスです。しかし、すべての会社で退職金制度があるわけではなく、中には退職金制度がない会社もあります。

退職する前に、退職金がないとどう困るのか、退職金にまつわる実情を事前に知っておくことはとても重要です。早く知って、早めに対策を講じるにはどうしたらいいでしょうか?

この記事では、まずは世の中の退職金支給の実態、そして退職金がないと起こる困難、そんな場合に実行したい3つの対策をひとつずつわかりやすく解説してきます。

退職金がない会社の割合は?

退職金がない会社の割合は?

まず、退職金がない会社がどれくらいあるか確認しましょう。

約2割の会社で退職金制度がない

厚生労働省の「就労条件総合調査(平成30年)」によると、退職金制度(一時金および年金)がある企業の割合は80.5%で、19.5%の企業では退職金の制度がないようです。

特に、会社の規模が小さいほど退職金制度がない割合が増えます。退職金制度がない会社の割合は、従業員1,000人以上の会社では7.7%ですが、30~99人の会社では22.4%まで上昇します。

従業員の数 退職金制度がない会社の割合
1,000人以上 7.70%
300~999人 8.20%
100~299人 15.10%
30~99人 22.40%
(参考)平均 19.50%

参考:平成30年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

この調査では従業員30人未満の会社は対象に含まれていません。より規模の小さい会社を含めると、さらに割合が増える可能性があります。

退職金は任意の制度。なくても違法ではない?

退職金の制度がないとしても、違法ではありません。退職金の支払いを義務付ける法律はないためです。退職金を支払うかどうかは、会社の裁量にゆだねられています。

なお、退職金制度を就業規定に設けている場合は、会社に支払いの義務があります。

退職金の平均は大卒で約2,000万円

定年時の退職金の平均額は、大卒・大学院卒で1,983万円です。そのうち、勤続35年以上で定年を迎えた方の退職金は平均2,173万円となりました。

高校卒の方も、大卒・大学院卒と比較すると金額は少ないですが、勤続年数が長いほど退職金が大きくなる傾向があるようです。

定年時の1人平均退職給付額
※勤続20年以上かつ45歳以上
大卒・大学院卒
(管理・事務・技術職)
1,983万円内、勤続35年以上2,173万円
高校卒
(管理・事務・技術職)
1,618万円内、勤続35年以上1,954万円
高校卒
(現業職)
1,159万円内、勤続35年以上1,629万円

退職金がないとどう困るの?

退職金がないとどう困るの?

退職金がないとどのような問題があるのでしょうか。

老後の備えが不足する可能性がある

退職金には「老後の備え」という面があります。

退職後は給与収入が途絶え、主な収入は年金になります。年金の額や生活水準にもよりますが、年金だけで生活できない場合、貯蓄を取り崩しながらの生活になります。退職金はその大切な原資といえます。

したがって、退職金がない場合は老後の備えが不足する可能性が高くなってしまいます。この点が、退職金がない場合に特に注意したい点です。

「2,000万円問題」 年金だけでは2,000万円の赤字となる問題

「2,000万円問題」を覚えているでしょうか。金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が、年金だけでは老後に約2,000万円の赤字になると試算し、センセーショナルに報道された事件です。

2,000万円の根拠は、高齢無職世帯では月に約5.5万円の赤字となるため、老後を30年と仮定して計算したものです。あくまでモデルケースなので、すべての方で2,000万円が赤字となるわけではありません。

ただし、やはり多くの方は退職後に収入が減少するでしょう。

2,000万円という数字にこだわらず、老後の生活費の確保が大切です。特に退職金がない方はなんらかの対策を講じる必要があります。

退職金がないときに実行すべき3つの対策

退職金がないときに実行すべき3つの対策

退職金がない場合、以下の3つの対策を検討してみてください。

この章では大まかに見ていき、次章からより具体的に解説します。

対策1:退職金のある会社へ転職する

退職金がある会社へ転職は、初めに検討したい対策というよりは根本を変える予防法になります。

退職金のある会社を見つけるのはそう難しくないでしょう。上で退職金がない会社の割合をお伝えしましたが、多くの会社では退職金制度があり、退職金がない会社の方が少数派であることがわかります。

給与などの条件も検討し、条件に合致すれば転職を検討しましょう。転職案件を代わりに見つけてくれる「転職エージェント」サービスの利用もおすすめです。

対策2:老後の生活費の貯蓄を行う

退職金に頼らず、自分で老後資金を用意する方法です。ここでは特に、銀行預金などリスクの小さい方法で確実に貯めていく方法とします。

たとえば老後の生活費として2,000万円を用意する場合、30年なら年間約60万円、40年なら年間50万円の貯蓄を行えば達成できます。

月給だけでは難しい場合、ボーナスなども併用しましょう。

対策3:余剰資金を運用する

まとまった余剰資金がある場合に、資産運用でお金を増やす方法です。株式など、リスクのある商品への投資することで、銀行預金よりも大きなリターンを得られる可能性があります。

たとえば年3%の利回りで30年間運用した場合、資産を約2.43倍にできます。約823万円あれば30年後に2,000万円の用意が可能です。以下に利回りと運用年数ごとに、資産をどれくらい増やせるかまとめました。

20年 30年 40年
年1%の利回り 1.22倍 1.35倍 1.49倍
年3%の利回り 1.81倍 2.43倍 3.26倍
年5%の利回り 2.65倍 4.32倍 7.04倍

3つの対策の大まかな内容はわかりましたでしょうか??

次の章からはそれぞれを具体的な方法に掘り下げて解説していきます。

どんな会社に転職すれば退職金がもらえる?

どんな会社に転職すれば退職金がもらえる?

退職金を求めて転職する場合、どのような会社へ転職すればよいのでしょうか。

従業員300人以上なら90%超で退職金あり

上述した通り、退職金は会社の規模が大きいほど充実している傾向があります。従業員300人超なら90%以上の会社が退職金制度を導入しているので、1つの目安になるでしょう。

退職金は減少傾向 転職後も自分で備えを

退職金のある会社へ転職できたとしても安心はできません。退職金の額は減少傾向にあるためです。過去の「就労条件調査」から推移を以下にまとめました。

定年時の1人平均退職給付額
※勤続20年以上かつ45歳以上
大学卒(管理・事務・技術職)平成15年就労条件調査平成20年就労条件調査平成30年就労条件調査
2,499万円2,280万円1,983万円

※平成30年は「大卒・大学院卒」

参考:就労条件総合調査|厚生労働省(外部サイトへ)

平成30年と15年と比較すると、約15年で退職金は平均500万円以上減っていることがわかります。転職先の退職金制度にもよりますが、老後の備えを退職金だけに頼るのも危険なようです。

ですので退職金のある会社へ転職できたとしても、貯蓄や運用など、自分で備える方法も同時に行うほうが望ましいでしょう。

老後の生活費の貯蓄におすすめの方法

老後の生活費の貯蓄におすすめの方法

老後の生活費の貯蓄はどのようにすればよいでしょうか。以下の3つをおすすめします。

iDeCo(イデコ)で定期預金

iDeCoを通じて定期預金に貯蓄する方法です。

iDeCoは個人型確定拠出年金の愛称です。原則60歳までお金を積み立て続け、その後お金を受け取ります。60歳までは解約できないので、より確実に老後資金を用意できます。

iDeCoに拠出するお金は全額が所得控除になり、給与などから引かれる税金を減らすことができます。単に定期預金へ積み立てるよりも、節税できる分有利です。

お金の受け取り方は一時金として受け取るか、あるいは年金形式(分割払い)で受け取ります。どちらの受け取り方でも税制上のメリットを受けられるので、受取時の手取りを増やしやすい傾向があります。

個人年金保険

個人年金保険にお金を積み立てる方法です。

個人年金保険とは、貯蓄に特化した保険を指します。満期まで保険料を支払い続け、満期時点で一時金を受け取るか、あるいは年金形式でお金を受け取ります。

個人年金保険も、年間2万円までの保険料は全額が、年間2万円を超える部分は支払った保険料の一部が所得控除になります。iDeCoほどではありませんが、こちらも節税の恩恵を受けられます。

解約は基本的にいつでもでき、その場合は「解約返戻金」が支払われます。しかし、契約してから一定期間は解約返戻金の額が低いことが一般的で、元本割れの可能性があります。契約前に元本を確保できる時期を確認しておき、すぐに使う可能性のあるお金は入れないようにしましょう。

参考:生命保険料控除|国税庁(外部サイトへ)

銀行預金

銀行預金も老後資金の貯蓄ではおすすめです。節税などの恩恵はありませんが、元本保証で使い勝手がよい点は魅力です。

銀行預金には「普通預金」と「定期預金」があります。普通預金は解約に制限がなく、いつでも出金可能です。定期預金は、満期前の解約を制限する代わりに普通預金よりも高い金利が設定されます。

なお、定期預金で満期前に出金する場合、「中途解約利率」という低い金利で利息が再計算されるペナルティーが一般的です。定期預金の上乗せ金利はなくなりますが、元本割れはありません。

もし、退職金のない会社のままで退職までに20年の場合、貯蓄だけで老後2000万を達成するには、毎月8.3万円ずつ貯金する必要があります。

人生の半ばでは様々な出費もあるため、なかなか難しいのではないでしょうか?

そのために、リスクも取りながら余剰資金で運用をすることは大きな力になるはずです。

この具体的な方法について次章では解説していきます。

余剰資金の運用におすすめの方法

余剰資金の運用におすすめの方法

余剰資金でリスクを取り運用する場合には、以下の4つの方法をおすすめします。

iDeCoで投資信託

iDeCoを通じて投資信託に投資する方法です。

iDeCoに積み立てたお金は、定期預金以外に投資信託でも運用が可能です。投資信託は株式や債券など複数の資産で運用される商品で、その資産が値上がりすれば投資信託も値上がりします。

通常、投資信託で得られた利益には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoでは非課税で運用できます。単に投資信託に投資するより効率的に運用できます。

もちろん、上述した所得控除の恩恵も受けられるので、老後資金に向けて投資信託を運用する場合にはおすすめです。

つみたてNISAで投資信託

つみたてNISAを通じて投資信託に投資する方法です。

つみたてNISAは投資信託に投資でき、その運用益が非課税になります。iDeCoに似ていますが、所得控除はなく、また定期預金での運用はできません。

一方、iDeCoでは原則60歳まで解約できませんが、つみたてNISAには解約の制限はありません。投資した年を含め20年間非課税の期間が続きますが、その途中でも自由に投資信託を売却でき、出金が可能です。

個別株式

自分で個別の株式に投資し、資産運用する方法です。

株式は比較的リスクが高い商品です。投資信託でも株式に投資する場合がありますが、基本的に複数の銘柄へ分散投資されており、比較的リスクは低くなります。

自分で個別の株式に投資する場合、1つの銘柄への集中投資が可能です。リスクが高くなる一方、高いリターンが狙えます。もちろん、複数の銘柄への分散投資も可能です。

国内株式は基本的に取引所の立会時間(平日9:00~11:30、12:30~15:00)で取引が可能です。証券会社によっては私設取引所(PTS)や相対取引(店頭取引)において時間外の取引を受け付けている場合もあります。

ヘッジファンド

絶対収益を追求するヘッジファンドに資金を預ける方法です。

ヘッジファンドは投資信託のように複数の資産・銘柄で運用します。異なる点は、単に銘柄を買うだけでなく、さまざまな運用戦略を用い、市場の影響を受けない収益獲得を目指す点です。市場の影響を受けない収益を「絶対収益」といいます。

たとえば「株式ロングショート戦略」を用いるヘッジファンドは、株式の買いだけではなく売りも仕掛けます。株式市場全体が下落傾向にある場合、買いだけを行う通常の投資信託は基本的に値下がりしますが、同戦略を用いるヘッジファンドは売りによる収益機会を得られます。

また「アクティビスト」を用いるヘッジファンドは、経営に参加できるだけの株式を保有し、株主提案を通じて株価上昇につながる施策の実施を働きかけます。単に株式市場で値上がりを待つだけではなく、積極的に株価上昇による恩恵を追求します。

さらに株式を買い集める「バイアウト」を用いる場合、いったん上場廃止となりますが、経営の主導権を握り企業価値を高め、再上場や第三者への売却で利益を獲得しようとします。この場合もやはり株式市場の影響はほぼ無縁です。

ここに紹介した運用戦略は一部で、ほかにさまざまな運用戦略がありますが、いずれも絶対収益の追求に共通点があります。通常の運用では得られないリターンの可能性やリスクを抑えた運用が期待できます。

退職金にかかわらず老後の準備を

退職金にかかわらず老後の準備を

本記事のポイントを以下にまとめます。

  • 退職金は主に老後の生活費になる
  • 退職金制度がある会社へ転職、または自分で貯蓄&資産運用で対策すること
  • 退職金は減少傾向 いずれにせよ貯蓄や資産運用はしておきたい

退職金は老後の生活費に充てられる大切な資金です。退職金がない場合は貯蓄や資産運用などの方法で老後に備えることが大切です。

退職金のある会社への転職も1つの手ですが、退職金が減少傾向にある昨今、やはり貯蓄や資産運用で備えを充実させる方法が望ましいでしょう。

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