年収1000万円サラリーマンの税金対策10選!増税前後の違いも解説

年収1000万円のサラリーマンが行うことができる節税方法10種類を紹介。2020年以降に増税されて手取りの減少も解説。節税だけでなく、資産を増やす・防衛する運用も選択肢として考えましょう。

年収1,000万円になっても「思ったより手取りが増えない」と感じていませんか?高年収になるほど税金の負担が重くなるため、見かけほど手元にお金が残らないことにがっかりした方も多いでしょう。

さらに2020年以降、年収1,000万円のサラリーマンは増税の対象となりました。より重くなる税負担に憤る方は少なくないでしょう。今こそ節税策を実施し、手取りを増やすチャンスではないでしょうか。

そこで本記事では年収1,000万円サラリーマンにおすすめの節税策10選をご紹介します。

年収1,000万円プレイヤーは増税の対象に

年収1,000万円プレイヤーは増税の対象に

まずは年収1,000万円サラリーマンが増税された仕組みを確認しましょう。税制が改正され、2020年以降は年収1,000万円の給与所得者(いわゆるサラリーマン)は増税となりました。

ポイントは「給与所得控除」の上限引き下げです。サラリーマンの「みなし経費」として収入(給与額面)から差し引ける控除ですが、その上限が2020年以降220万円から195万円に引き下げられました。年収1,000万円は2019年以前から上限の対象者のため、25万円分所得が上昇してしまう計算です。

年収1,000万円の給与所得控除
  • 2019年以前:220万円
  • 2020年以降:195万円(▲25万円)

一方「基礎控除(原則全員に自動的に適用される控除)」は10万円引き上げられました。給与所得控除の引き下げ額25万円と差し引きし、結局年収1,000万円の方は15万円の所得上昇となります。このため税の負担が大きくなってしまうのです。

年収1,000万円 「給与所得控除」&「基礎控除」の額
2019年以前 2020年以降
給与所得控除の額 220万円 195万円
基礎控除の額 38万円 48万円
合計 258万円 243万円
▲15万円
引用

年収1000万円の税金はいくら?

年収1000万円の税金はいくら?

前章では控除の引き下げで年収1,000万円の方は15万円分所得が上昇してしまうことを解説しました。税負担が重くなりやすいため、なんらかの節税を検討したいところです。

ところで、「所得の上昇で結局どれくらい増税となるか」わからない方も多いと思います。そこでこの章では、年収1,000万円の方がどれくらいの増税になるのか、実際に税金を計算しながら理解しましょう。

なお、できるだけわかりやすく解説しますが、普段税金に触れない方には少し内容が難しいかもしれません。「節税策だけ知りたい」という方は次章へ進んでください。

税金計算の流れ

サラリーマンの税金は大まかに以下の流れで計算できます。

  1. 大まかな月収(標準報酬月額)から「社会保険料」を計算
  2. 給与収入から各種控除を差し引き、所得を計算
  3. 所得に税率をかけ「所得税」と「住民税」を算出

端的にいえば「(収入-控除)×税率」です。ここでは年収1,000万円の税金を以下の前提で計算します。

年収1,000万円サラリーマンの前提
  • 40歳独身(介護保険2号被保険者)
  • 給与所得以外の収入なし
  • 社会保険料は月収約83.3万円として計算
  • 「給与所得控除」「社会保険料控除」「基礎控除」以外の控除なし
    ※「社会保険料控除」は、社会保険料の全額が差し引かれる所得控除です。
引用

社会保険料の計算

まずは社会保険料を計算しましょう。給与から天引きされる「健康保険料(介護保険料含む)」と「厚生年金保険料」、および「雇用保険料」のことで、全額が「社会保険料控除」になります。

ここでは各都道府県の「保険料額表」から導きますが、源泉徴収票などで確認できる方はそちらを利用しても構いません。なお雇用保険料は年収の0.3%のため、年収1,000万円なら3万円です(一般の事業)。

社会保険料額表に大まかな月収(標準報酬月額)を当てはめると健康保険料と厚生年金保険料が導けます。年収1,000万円を単純に12カ月で割ると83万3,333円で、これを保険料額表(東京都)に当てはめるとそれぞれ以下のようになります。

年収1,000万円の社会保険料
  • 健康保険料(介護保険料含む):年約58万円(40等級)
  • 厚生年金保険料:年約71万円(32等級)
  • 雇用保険料:年約3万円
  • 社会保険料の合計:132万円

上記より、年収1,000万円の方は年間約132万円の社会保険料を支払っているとわかります。したがって、税金計算上は社会保険料控除として給与から132万円を差し引くことが可能です。

次からいよいよ税金を計算しましょう。まずは国税である「所得税」から解説します。

所得税(国税)

これまで解説した各種控除を用いると、年収1,000万円の方の所得は以下のようになります。前章で紹介した通り、2020年以降15万円分上昇していることがわかります。

年収1,000万円 所得の概算(所得税)
2019年以前 2020年以降
年収(額面) 1,000万円 1,000万円
給与所得控除 220万円 195万円
社会保険料控除 132万円 132万円
基礎控除 38万円 48万円
所得 610万円 625万円
+15万円

次に税率をかけて所得税を計算しましょう。以下の「所得税速算表」を用いると簡単に計算できます。

所得税速算表(2015年以降)
所得 税率 控除
194.9万円以下 5%
329.9万円以下 10% 9万7,500円
694.9万円以下 20% 42万7,500円
899.9万円以下 23% 63万6,000円
1,799.9万円以下 33% 153万6,000円
3,999.9万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円
引用

上記表に当てはめると、所得税は以下のように計算できます。2020以降では所得税が3万円上昇しました。

年収1,000万円の所得税
  • 2019年以前:610万円×20%-42万7,500円=79万2,500円
  • 2020年以降:625万円×20%-42万7,500円=82万2,500円(+3万円)

次に地方税である「住民税」を計算しましょう。

住民税(地方税)

住民税は大まかに「均等割」と「所得割」で構成されており、うち所得に応じて大きくなるのが後者です(東京都の場合、均等割は一律5,000円)。所得割の税率は各自治体で確認すべきですが、概ね10%です。

所得割の計算に用いられる所得は所得税上の所得とほぼ同じですが、一部控除の額に違いがあります。例えば「基礎控除」は所得税の計算より5万円低く、43万円です(給与所得控除および社会保険料控除は同額)。

引用

これらを踏まえると、住民税の計算に用いられる所得は以下のようになります。所得税と同じく、やはり15万円分所得が上昇していることがわかりますね。

年収1,000万円 所得の概算(住民税)
2019年以前 2020年以降
年収(額面) 1,000万円 1,000万円
給与所得控除 220万円 195万円
社会保険料控除 132万円 132万円
基礎控除 33万円 43万円
所得 615万円 630万円
+15万円

上記所得から、年収1,000万円の方の住民税は以下のようになります。住民税では1.5万円の増税となり、所得税と合わせると4.5万円の増税となりました。

年収1,000万円の住民税
  • 2019年以前:615万円×10%+5,000円=62万円
  • 2020年以降:630万円×10%+5,000円=63万5,000円(+1.5万円)
    ※「+5,000円」は均等割

まとめると、年収1,000万円の方の社会保険料・所得税・住民税は以下のようになります。年収に占める税金の割合は2019年以前から3割近くありましたが、2020年以降はさらに高くなってしまいました。手取りは、4.5万円も下がっています。

年収1,000万円 社会保険料&税額の概算
2019年以前 2020年以降
社会保険料 133万円 133万円
所得税 79.25万円 82.25万円
住民税 62万円 63.5万円
合計 274.25万円 278.75万円
年収1,000万円に対する割合 約27.43% 約27.88%
手取り額 725.75万円 721.25万円

年収1,000万円の方は税負担が大きいため、やはり節税の検討が望ましいでしょう。次の項で世帯年収1,000万(夫婦)の場合を確認したら、次章ではおすすめの節税策をご紹介します。

夫婦で世帯年収1,000万円の場合

節税策の紹介の前に、夫婦で年収1,000万円の世帯の税金も計算してみましょう。結論からいうと、共働き夫婦がそれぞれ500万円ずつの給与収入を得る場合、独身の年収1,000万円より税負担が小さくなります。

前節と同じ条件で比較すると、夫婦世帯は独身世帯と比べ所得が160万円小さくなりました。各種控除を2人分使えることが大きな理由です。

世帯構成別 年収1,000万円の所得の概算(所得税 2020年以降)
独身 夫婦(2人分)
年収(額面) 1,000万円 1,000万円
給与所得控除 195万円 288万円
社会保険料控除 132万円 151万円
基礎控除 48万円 96万円
所得 625万円 465万円
▲160万円

これを基に社会保険料・所得税・住民税をまとめると以下のようになり、独身よりも約48万円負担が減ることがわかります。

世帯構成別 年収1,000万円の社会保険料&税額の概算(2020年以降)
独身 夫婦(2人分)
社会保険料 133万円 151万円
所得税 79.25万円 27万円
住民税 62万円 48.5万円
合計 274.25万円 226.5万円
年収1,000万円に対する割合 約27.43% 約22.65%
手取り額 725.75万円 773.5万円
+47.75万円

独身で年収1,000万円を得るサラリーマンは、夫婦で稼ぐ場合より強く節税策が推奨されるでしょう。

年収1000万円サラリーマンにおすすめの税金対策

年収1000万円サラリーマンにおすすめの税金対策

これまで「年収1,000万円の方は税負担が大きいため節税策が望ましい」ことを解説しました。ここからは具体的に、おすすめの節税策をご紹介します。

まずは比較的利用しやすい以下5つを押さえましょう。

  • 企業型確定拠出年金
  • iDeCo(イデコ)
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • ふるさと納税

企業型確定拠出年金

勤め先が確定拠出年金を導入している場合に利用できる制度です。給与からお金を積み立てておき、60歳以降に受け取ります。積み立てたお金はリスクを取った運用もできますが「定期預金」などで確実に積み立てておくことも可能です。

ポイントは拠出金の全額が控除になる点です。例えば年間10万円積み立てれば所得税・住民税上の所得それぞれから10万円差し引くことができます。両税率の合計が30%なら1年で3万円の節税になる計算です。

将来受け取れるお金を積み立てながら、節税も同時に行なえる点が企業型確定拠出年金の強みです。

iDeCo(イデコ)

iDeCoは個人型の確定拠出年金を指します。勤め先に企業型確定拠出年金がない場合はiDeCoを選びましょう。仕組みは企業型とほぼ同じで、こちらも拠出金の全額が控除されます。

注意点は手数料です。企業型の場合は企業が手数料を負担していますが、個人型は手数料が各個人に発生します。企業型を利用できる場合、企業型の確定拠出年金を優先しましょう。

生命保険料控除

民間の生命保険に保険料を支払うと受けられる制度です。保険の種類に応じて3つの区分があり、所得税上では最大12万円、住民税上では最大7万円の控除を受けられます。

保障と節税を同時に受けられる点がメリットといえるでしょう。

地震保険料控除

地震保険への加入で受けられる制度です。所得税上では最大5万円、住民税上では最大2.5万円の控除が受けられます。

地震への備えと節税を同時に行なえる点が魅力です。

ふるさと納税

任意の自治体に寄付を行うと受けられる制度です。寄付額から2,000円を引いた額が所得税・住民税から直接差し引かれます。

本来の税額とほぼ同額の寄付を行うため、厳密には節税とはいえないかもしれません。しかし多くの自治体は「返礼品」を用意しているため、通常の納税よりもお得になります。返礼品としてお米などを受け取れば生活費の削減につながるため、結局は家計収支にとってプラスになるでしょう。

利用できるなら使いたい節税策

利用できるなら使いたい節税策

前章では基本的に「お金を出せば利用できる節税」をまとめました。ここでは利用シーンは限られるものの、条件を満たすなら利用したい以下5つの節税を紹介します。

  • 配偶者控除・扶養控除
  • 配偶者特別控除
  • 住宅ローン控除
  • 特定支出控除
  • 医療費控除

配偶者控除・扶養控除

所得のない一定の親族を扶養する場合に受けられる制度です。扶養される側に条件があるため全員が利用できるわけではありませんが、直接的な支出なしに控除が受けられるため節税効果が高い仕組みといえます。

条件と控除額は以下の通りです。控除額が比較的大きいため、利用できるなら積極的に利用したいですね。

配偶者控除&扶養控除 被扶養者の年齢と控除額
被扶養者の年齢所得税住民税
配偶者控除最大38万円最大33万円
70歳以上最大48万円最大38万円
扶養控除16歳以上~19歳未満38万円33万円
19歳以上~23歳未満63万円45万円
23歳以上~70歳未満38万円33万円
70歳以上58万円45万円

配偶者特別控除

上述の配偶者控除は配偶者に所得があると利用できませんが、配偶者の所得が133万円以下までは「配偶者特別控除」が利用できます。所得税上では最大38万円、住民税上では最大33万円の控除が可能です。

共働き夫婦でも適用できるケースがあるため確認してみましょう。

住宅ローン控除

住宅ローンを契約すると、入居から10年間控除を受けられる制度です。年末の住宅ローン残高の1%を所得税から直接控除し、控除しきれなかった分は住民税から直接控除されます。

消費増税率の引き上げおよび新型コロナウイルスの影響を鑑み、2022年末までの入居なら最長13年間控除を受けられます。マイホームを検討している方は今のうちに手続きを進めてみてはいかがでしょうか。

特定支出控除

「通勤費」や「転居費」など、サラリーマンが勤務に必要な一定の支出を行ったときに受けられる制度です。給与所得控除の最大1/2まで控除できます。

特定支出控除は、勤め先の証明書を添付し確定申告をしなければなりません。勤め先に証明書の発行を依頼できるなら利用したいところです。

医療費控除

医療費を年間10万円以上支払ったときに受けられる制度です。所得税、住民税ともに最大200万円まで控除できます。

医療費は自分だけでなく、一定の親族が支払った場合も対象です。対象にならないか、一度確認してみましょう。

高年収サラリーマンは節税と資産運用をセットで考えたい理由

高年収サラリーマンは節税と資産運用をセットで考えたい理由

以上、年収1,000万円の方におすすめの節税策をご紹介しました。サラリーマンが利用できる代表的なものはほぼ網羅できていると思います。

高年収サラリーマンはさらに資産運用も検討しましょう。本記事で10の節税策をご紹介しましたが、自営業者と比較しサラリーマンには節税の選択肢が多くありません。節税だけで大切なお金を守ることは難しいでしょう。

サラリーマンの節税策の少なさは資産運用で対策できます。税金以上に資産運用でお金を増やせば実質的にお金を守ることができるためです。節税策と同時に資産運用も行うといいでしょう。

ではどのような資産運用を行えばいいのでしょうか?次章で具体的にサラリーマンが利用しやすいおすすめの資産運用をご紹介します。

高年収サラリーマンにおすすめの資産運用

高年収サラリーマンにおすすめの資産運用

高年収サラリーマンは忙しく、資産運用に時間をかけられない方が多いでしょう。そこで運用を一任できる以下2つの資産運用をご紹介します。

  • 投資信託
  • ヘッジファンド

投資信託

運用会社に資金を預け、代わりに運用してもらう方法です。運用会社は投資者の資金を株式や債券などの資産に振り分け、その利益は投資者が受け取ります。銘柄の選別や投資の判断は運用会社が行うため、投資者は運用を一任することが可能です。

投資信託は銀行や証券会社などの金融機関で購入できます。多くの金融機関では1万円から、ネット系金融機関なら100円から購入できるでしょう。

「NISA」や「つみたてNISA」なら非課税で運用できる

投資信託は「NISA(ニーサ)」を「つみたてNISA」を通して購入すると利益が非課税になります。通常よりも有利に運用できるため積極的に活用しましょう。

ヘッジファンド

ヘッジファンドは運用会社の1つです。投資信託と同じように、ヘッジファンドに運用を一任する資産運用です。

投資信託とヘッジファンドには大まかに以下3つの違いがあります。

投資信託とヘッジファンドの違い
投資信託 ヘッジファンド
運用方法 相対収益の追求 絶対収益の追求
募集方法 公募型 私募型
最低投資額 100円 1,000万円程度

投資信託は銘柄を選別しますが、基本的に「買い」の取引しか行いません。市場平均よりも大きな利益(または平均と一致する利益)を追求しますが、市場全体が下落すると利益を得にくくなってしまいます。これを「相対収益の追求」といいます。

一方多くのヘッジファンドは「売り」の取引も併用し、市場全体が下落傾向にあっても一定の利益を追求します。このように、市場全体の影響を受けずに利益を狙う運用方法を「絶対収益の追求」といいます。投資信託にない、ヘッジファンドならではの強みです。

またヘッジファンドの多くは「私募型」で、「公募型」の投資信託と違い一般的な金融機関などで販売されていません。資金を預けたい場合、直接ヘッジファンドに問い合わせる必要があります。最低投資額も大きく、1,000万円以上の資金がないと受け入れてくれるヘッジファンドを探すことは難しいでしょう。

運用資金に余裕があるならヘッジファンドを、そうでないなら投資信託をおすすめします。

まとめ

まとめ

本記事の内容を以下にまとめます。

  • 年収1,000万円サラリーマンは増税され、さらに税負担が重くなった
  • 節税で税負担の軽減が望ましい。しかし、サラリーマンには選択肢が少ない
  • 高年収サラリーマンは資産運用でお金を増やす選択肢も持ちたい

年収1,000万円サラリーマンは2020年以降、所得税・住民税が増税されました。給与所得控除の引き下げが主な原因です。なんらかの節税策を行いたいところですが、サラリーマンには選択肢が少ないという課題があります。

高年収サラリーマンは節税と同時に資産運用でお金を増やす選択肢も持ちましょう。投資信託やヘッジファンドなら運用を一任できるため、忙しいサラリーマンにもおすすめです。

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