銀行の「大口顧客」はいくらから?大口の基準と優遇サービスの紹介

「銀行の大口顧客ってどれくらいお金持ちなの?」

素朴な疑問ですが、気になる方も多いことでしょう。
もしくは、自分は大口顧客として何か優遇を受けることはできるのか知りたい方もいるのではないでしょうか?

明確な基準はありませんが、銀行の大口顧客向けの商品や調査から大口顧客の基準を探ることはできます。

そこで、この記事では銀行の大口顧客の定義を説明し、一般顧客にはない銀行の大口顧客向けのサービスについて、どのような優遇があるのか、具体的な例も解説していきます。

是非ご参考ください。

銀行の大口顧客は資産1,000万円~1億円以上から

銀行顧客それぞれの異なる資産

銀行の大口顧客は資産1,000万円~1億円以上ある方だと考えられます。やや幅がありますが、なぜそう言えるのか理由を確認しましょう。

「大口定期預金」は1,000万円からが一般的

私たちにもなじみのある定期預金ですが、実は「大口定期預金」という大口顧客向けのタイプもあります。1,000万円以上の預け入れを対象としたもので、一般に通常の定期預金より金利が高いです。

定期預金は1円から預けられるため、1,000万円以上は確かに大口といえるでしょう。大口定期預金から考えれば、資産1,000万円以上なら大口顧客といえるかもしれません。

金融資産の平均額は1,436万円

しかし大口定期預金を利用できるとしても、銀行の大口顧客としてはもの足りないように感じられるかもしれません。

事実、1,000万円は金融資産の平均を下回ります。金融広報中央委員会によると、2人以上世帯の金融資産の保有額は平均で1,436万円となりました(2020年)。中央値の650万円は上回りますが、大口とまでは言えないでしょう。

【2人以上世帯の金融資産保有額】
平均額1,436万円
中央値650万円

引用:金融広報中央委員会 家系の金融行動に関する世論調査

富裕層は金融資産1億円から

ではどれくらいの資産があると、いわゆる「お金持ち」といえるのでしょうか。
野村総合研究所は、純金融資産(金融資産の合計から負債を引いた額)が1億円以上の世帯を「富裕層」としています。1ドル=100円とすれば、1億円もの純金融資産は100万ドル相当のまさに「ミリオネア」です。

では富裕層はどれくらいの割合で存在するのでしょうか。野村総合研究所によると、2019年では純金融資産5億円以上を持つ「超富裕層」を含め132.7万世帯あると推計され、これは全世帯(5,402.3万世帯)のわずか2.5%にも届きません。富裕層1人に対し、そうでない方が39人いる計算です。みなさんが想像するお金持ちのイメージに合致するのではないでしょうか。

【純金融資産別の世帯数】
分類名と資産額世帯数割合
超富裕層(5億円以上)8.7万世帯0.16%
富裕層(1億円以上)124万世帯2.30%
準富裕層(5,000万円以上)341.8万世帯6.33%
アッパーマス層(3,000万円以上)712.1万世帯13.18%
マス層(3,000万円未満)4,215.7万世帯78.04%

引用:野村総合研究所

これらから、大口顧客と言えるのは、銀行の定期預金サービスの条件から言えば1,000万円以上からです。また、富裕層の顧客は1億以上なので、大まかに1,000万~1億以上から大口顧客と言ってもよいのではないでしょうか?

銀行の大口顧客になるとどんな優遇がある?

専属担当者がつく特別サービス

銀行に大口顧客と認められるとどのような優遇があるのでしょうか。一般的なもの、およびホームページなどで公開されているものからご紹介します。

専属の担当者が付く

銀行の大口顧客になると専属の担当者が配属されるケースがあります。面談時も銀行のカウンターではなく個室などが用意される場合もあるでしょう。

さらに一定の条件を満たした方には富裕層専用のコンシェルジュサービスが紹介されることもあります。
例えば三井住友銀行の「エルダープログラム」は主に預金1,000万円以上の高齢者を対象としたサービスで、選任のコンシェルジュと専用デスクに相続などの相談が可能です。

参考:SMBCエルダープログラム専用普通預金 三井住友銀行

金利の上乗せ

金利の上乗せも大口顧客向けに提供される典型的な優遇といえるでしょう。上述した大口定期預金も、基本的に通常の定期預金より金利が高いです。

例えば三井住友信託銀行の場合、預金などの残高が1,000万円以上の顧客に対して金利を上乗せする「トラストプレミアステージ」を提供しています。しかし、前年ながら大幅な上乗せとは言えません。上乗せ金利は残高1,000万円以上で0.01%、3,000万円以上で0.02%にとどまります。低金利は大口顧客向けの上乗せ金利にも影響を与えているようです。

参考:定期預金金利上乗せ | 充実のサービス | 三井住友信託銀行

手数料の優遇

手数料の優遇も大口顧客への提供されることが多いでしょう。例えばりそな銀行は「りそなクラブ」というステージプログラムを通じて手数料を優遇しています。例えば2,000万円以上の資産を預けると「ダイアモンド」となり、他行ATM手数料などが無料になります。

参考:お取引内容で優遇をうける|りそなクラブ|りそな銀行・埼玉りそな銀行

銀行の大口顧客になったら注意したいこと

3つの注意点を確認

銀行の大口顧客になっても嬉しいばかりではありません。実は少し注意したいこともあります。簡単に確認しましょう。

金利の大きな上乗せは期待できない

少し上述しましたが、大口顧客になっても金利の上乗せにはあまり期待できません。金利がゼロに近い水準のため、多少上乗せされても焼け石に水です。

例えば、三井住友銀行は3,000万円の残高で0.02%の上乗せでしたが、3,000万円すべてに上乗せ金利が適用されても6,000円しか変わりません。

1,000万円以上の預金は「ペイオフ」の対象外

銀行預金は「ペイオフ(預金保険制度)」に守られているため、万が一銀行が破綻したときも預金は保護されます。

しかし、その上限は1,000万円とその利息までです。上限を超えた預金は保護の対象外のため注意しましょう(当座預金は1,000万円を超えた分も含め全額が保護の対象)。

引用:預金保険機構 万が一金融機関が破綻したとき

商品の提案が増える

銀行に限らないですが、大口顧客となれば商品の提案が増えるでしょう。銀行は預金商品以外にさまざまな金融商品を取り扱っています。興味があるものもあるでしょうが、そうでない商品やサービスの提案は苦痛かもしれません。

大口顧客となったあなたの担当者は、おそらく無理な提案はしないと思われます。
しかし、提案の内容がずれている場合やそもそも提案を受けたくない場合、お互いのためにその意思を伝えておいたほうがいいでしょう

銀行の大口顧客なら資産運用の検討も始めましょう

さまざまな可能性がある資産運用

大口顧客になるほど資産を持っているなら、預金だけにしておくのは少しもったいないです。金利が上乗せされても高い利回りが期待できないため、お金がほとんど増えません

そこで、資産運用を検討しましょう。リスクはありますが、預金以上の利回りが期待できるためお金を効率的に増やせる可能性があります。

参考として、1,000万円を運用した場合にどれくらいお金が増えるか、利回りと運用期間別に以下にまとめました。
1~5%といった利回りでも、運用期間が長くなると数倍になることがわかります。

【利回り・運用期間別】1,000万円運用のシミュレーション
利回り10年後20年後30年後
1%1,104.6万円1,220.2万円1,347.8万円
3%1,343.9万円1,806.1万円2,427.3万円
5%1,628.9万円2,653.3万円4,321.9万円
7%1,967.2万円3,869.7万円7,612.3万円
10%2,593.7万円6,727.5万円1億7,449.4万円

 

大口(1,000万円以上)の運用におすすめの商品

金融商品の多様性

ではどのような商品で運用すれば上記の利回りを得られるのでしょうか。具体的な商品を紹介します。

債券(期待利回り:1~3%)

債券は企業や国がお金を集める際に発行する証券で、仕組みは定期預金に似ています。

お金を集めるには何か見返りを用意しないといけません。
そこで、発行者は、見返りとして利息の支払いを約束し資金を集めます。そして満期が到来すれば元本は投資家の元へ返還(償還)されます。

つまり債券は投資家にとって、発行者が破綻しない限り定期預金とほとんど同じ効果を得られるのです。

主なリスクは発行者の破綻です。
発行者が破綻した場合、利息や元本の支払いは行われない可能性があり、損失を抱えるケースがあるでしょう。その分、預金よりは高い利回りとなることが一般的です。

債券は、発行者の破綻リスクが高いほど利回りが高くなります。
したがって、最も破綻リスクが低いと考えられる「国債」はあまり利回りに期待できません。1~3%の利回りを債券で得るなら、企業が発行する「社債」が主なターゲットとなるでしょう。

不動産投資(期待利回り:5~7%)

実物の不動産を購入し、貸し出すことで賃貸収入を得る方法です。

買い手が見つかれば売却益も期待できますが、収益の多くは賃貸収入が占めるでしょう。賃貸収入は契約に基づく安定的な収入のため、不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンと言われています。

主なリスクは空室リスクです。
入居者が見つからなければ賃貸収入は得られません。部屋が埋まらなければ想定した利回りを下回る可能性があるでしょう。立地や部屋のタイプに注意して物件を選ぶことが大切です。

不安な場合は不動産投資をサポートする事業者に相談するといいでしょう。不動産仲介会社なら物件選びのほか入居者の募集・契約まで依頼できます。物件の管理は不動産管理会社に依頼すれば入居者の管理や家賃の集金まで依頼可能です。

ヘッジファンド(期待利回り:5~10%)

ヘッジファンドは運用会社の一つで、主に富裕層や企業の資金を株式などで運用しています。広く流通していないため、銀行などの一般的な金融機関ではほとんど販売されていません。

ヘッジファンドの特徴は「絶対収益」を追求する点にあります。ここにおける「絶対」とは「必ず」といった意味ではありません。「相対」の対義語で、「何ものにも制限拘束されず、それ自体で存在する」といった意味です。

つまり、ヘッジファンドの絶対収益は、相場に依存しない収益のことを言います。

ヘッジファンドはどうやって絶対収益を確保するのでしょうか。
多くは「売り(ショート)」取引を活用し、確保しています。「買い(ロング)」しか行わない場合、上昇方向でしか利益を得られないため相場に依存しますが、売り(ショート)も行えば下落方向でも利益を得られます。相場が良いときも悪いときも収益機会が残る絶対収益を実現できるのです。

ヘッジファンドは一般向けの商品ではありませんが、大口顧客になるほど資金があれば銀行に相談してみもいいかもしれません。
大手の銀行なら富裕層向けのサービス「ウェルスマネジメント」や「プライベートバンク」事業を展開しているため、ヘッジファンドの仲介を受けられる場合もあるでしょう。

まとめ

本記事の内容を以下にまとめます。

  • 銀行の大口顧客の資産は1,000~1億円以上
  • 大口顧客は専属の担当者がつき、金利や手数料が優遇される
  • まとまった資金があるなら資産運用も検討したい

銀行の大口顧客に明確な基準はありませんが、最低でも1,000~1億円以上の資産を持っている必要がありそうです。大口顧客になれば専属の担当者がつくケースがあるほか、金利や手数料が優遇される場合もあるでしょう。

しかし、低金利の影響から、金利の上乗せに大きな期待はできません
選択肢として資産運用も考えたほうがいいでしょう。債券や不動産投資、ヘッジファンドなどで運用をおすすめします。

おすすめの記事