経済学者や市場予想屋は、エコノミストと呼ばれます。
エコノミストは、金融業界のプロとして、株式市場の動向を先読みすることが仕事です。
一般の投資家のなかには、エコノミストの分析予想レポートを参考にして、実際に資産を運用する人もいます。
またエコノミストは、テレビやラジオなどのメディアに出演したり、本を執筆したりすることも仕事です。
「エコノミストは、どのようにして金融業界の先行きを予測しているのか」「エコノミストの分析予測は、本当に当たるのか」「そもそもエコノミストとはなにか」など、普段メディアなどで目にする機会が多いエコノミストという職業について、詳しく解説します。
エコノミストの予想に従うべきかどうか迷っている投資家も参考にしてください。
1、エコノミストとは
「エコノミストとはどのような仕事をしているのか?」
具体的な仕事内容を紹介します。
(1)経済動向の分析が主な業務
エコノミストは、経済の動向を調べて分析することで、将来を予測します。シンクタンクや研究機関などに、経済学者や研究者として所属しているケースが一般的です。
エコノミストになるための資格は特にありませんが、ほとんどが大学で経済学を学んだ経歴を持っています。
エコノミストの仕事のひとつは、世界経済の動向に目を光らせて情報収集し、分析することです。
集めた情報を効率良く分析するため、パソコンスキルも有している場合があります。
(2)証券エコノミストはレポート作成や、投資家へ伝える
証券会社のエコノミストは、経済市場の分析レポートを作成し、顧客である投資家へ伝えることが仕事です。
シンクタンクに所属するエコノミストは、幅広い層の人々に経済情報を広めるため、各メディア媒体を通して情報を発信します。
(3)ストラジストとアナリスリストの仕事内容
エコノミストと似た名称に、ストラテジストやアナリストがあります。いずれも金融業界の専門家を指す名称です。
ストラテジストは、戦略を立てる人のことを指します。証券会社や投資信託に所属しているケースが多く、株式や債権などのあらゆる金融商品を扱って、投資戦略を考えることが仕事です。
アナリストとは、企業の経営状況を精査して、将来的な株価の推移を予測する職業です。
エコノミスト、ストラテジスト、アナリストとそれぞれ肩書は違っても、市場経済の先行きを予測するという目的はどれも同じです。
2、エコノミストの分析予想はどんな仕事?
エコノミストは、株式市場の現状を分析して、将来を予想します。
しかし、的中することは稀です。これは、株価の予測をすることの難しさを物語っています。
(1)エコノミストの適正株価予想は希望的観測
エコノミストのなかでも経済学者は、膨大な企業情報や経済状況を加味した上で、適正な株価を導き出します。
適正な株価とは、言い換えるとエコノミストの主観に基づいた株価のことであり、希望的観測です。
これは人々が必ず合理的な行動を取るという、経済学の大前提があるためだと言われています。
(2)予想を的中させるのは至難の業
市場予想屋と呼ばれる人も、エコノミストです。マーケットエコノミストとも呼ばれる彼らは、金融政策などの情報を元にして、株価などの変化を予想します。しかし予想を的中させることが難しいことには、かわりありません。
エコノミストが考える理想的な株価は、実際の株価と一致することもあります。
しかし多くの場合では、かけ離れてしまうものです。
そのため「エコノミストの分析予想は当たらない」と、いわれることがあります。
3、エコノミストの分析予想が当たらない理由
なぜエコノミストの分析予想はあたらないのか。理由を紹介していきます。
(1)投資家心理により株価が左右されるため
データに現れない要素によって、株価が左右されることがあるからです。
それは投資家心理といわれています。
投資家心理は、データには現れない不確定要素です。そのためデータ分析をするエコノミストでは、株価変動を言い当てることはできません。
(2)投資家心理を先読みして株価予測をする
ではアナリストが、株価予想の根幹としている経済分析は無駄なのでしょうか。
確かに、経済分析をするだけでは机上の空論で終わってしまい、将来的な経済状況を予測することは不可能です。
投資家心理などの不確定要素を加味する必要があります。
例えば、「将来的に株価上昇が見込める業界の企業であれば、現状、特に上昇材料が無くても、将来的に株価は上がる」という投資家心理を先読みするのです。
投資家心理を先読みするには、世間のトレンドをチェックしておかなければなりません。
特に新聞やテレビなどのマスメディアは、集団心理を形作るキッカケとなることが多い媒体なので重要です。
また経営者の動向に注目することも、大切だといわれています。
彼らの発言などによって、投資意欲がかき立てられれば、投資が集中する可能性があるからです。
4、予測が当たらなくてもエコノミストがメディア・経済誌に出演できる理由
一般的に「エコノミストの分析予想は的中率が低い」とよく言われます。
しかしテレビやラジオなどには、多くのエコノミストが論客として出演しているのも事実です。
エコノミストの仕事は経済や市場を分かりやすく解説する能力
なぜ予測が外れたエコノミストでも、テレビなどに出演し続けることができるのでしょうか。それは株価予想を的中させることが、最大の目的ではないからです。
メディアがエコノミストに求めるのは、論理的でわかりやすく、経済について解説できる能力です。
多くの人が視聴するマスメディアの場合、誰が見ても理解できるように、経済動向について説明しなければなりません。
実は、ロジックにのっとって経済の動きをわかりやすく、ユーモアを持って説明できる人は、ごく少数の限られた人たちなのです。
そのため、たとえ株価の先行きを読み違えたエコノミストであっても、需要が生まれることがあります。
5、エコノミストの仕事内容
エコノミストの仕事は、経済を先読みして、レポートにまとめて、投資家などへ発信することです。
さらに経済動向をわかりやすく論理立てて説明することもします。
そして、テレビなどのメディアへ出演して経済の説明をするときには、予測が当たるか外れるかより、わかりやすく説明できるかどうかということが重視されがちです。
書籍を出版しているなど権威あるエコノミストにはメディアから好まれる
メディアは、できるだけ権威のあるエコノミストに出演してほしいと思うもの。
権威がある人物が解説すれば、説得力が生まれるからです。権威をはかるひとつのバロメーターが、書籍を出しているかどうか。
内容の予測があたっているかどうかは、あまり問題になりません。より多くの著書があるエコノミストが、優遇される傾向にあります。
エコノミストにとっても、メディアの露出が増えることはメリットだといえるでしょう。露出が増えれば認知度が上がるため、公演依頼が増えたり、本が売れたりするからです。
6、エコノミストの当たらない分析予想でも役立つ理由
エコノミストの当たらない予想でも、投資家にとっては役立つ情報となります。
(1)自分が立てた経済予測の判断材料となるから
あまり当たらないエコノミストの分析予想でも、株取引をする人にとって役立つことがあります。自分の予測が正しいかどうかを確認できるからです。
株取引をする人は、自分なりの市場予想をしています。その予想に従って株の売買をおこなうからです。しかし、自分の予測が正しいのかどうか、判断できないときがあります。そのようなときに比較できる対象があると、自分の立ち位置を確認できるのです。
(2)当たらない予測でも論理的な分析は需要がある
比較対象となるエコノミストの分析予想は、論理的でなければいけません。そのロジックを、自分なりに論破することができれば自信につながるし、ロジックの穴を見つけることができなければ自分が間違っていたと考えられます。
つまり、他人の意見と比べることで、自分の意見が正しいことを証明するのです。そのため、自分の意見とは全く異なる内容であるほど、役に立ちます。新たな発想を呼び起こすキッカケとなるからです。
7、エコノミストの正体
株価予想は難しいもの。それは経済のプロでも、一般の投資家でも同じです。未来のことは誰にもわかりません。
そのような状況のなか、論理的に株価予想を組み立てるのがエコノミストです。
もちろん、予想を完璧に的中させ続けることなど不可能でしょう。
しかし、だからといってエコノミストの仕事が無意味かというと、そうではありません。エコノミストの予想ロジックは、ある程度、誰でも納得できる形になっています。それはある意味でスタンダードな指標となるはずです。
投資家は、自分の考えとエコノミストが示す指標を比較して、自身の市場予測を修正できます。
また一般の人は、経済そのものを理解するための視点を、指標から読み取ることができるでしょう。
予測が当たるかどうかは、大きな問題ではありません。
つまりエコノミストの正体は、経済の指標となるロジックを構築する人のことだといえるのです。