不調に苦しむ人気ファンド「ジェイリバイブ」今後の見通しをチェック

日本の中小型株式で運用される「SBI中小型割安成長株ファンド ジェイリバイブ(以下、ジェイリバイブ)」は人気の投資信託の一つです。高いリターンを残した実績があるため、利回り重視の方は保有を検討しているかもしれません。

しかし、最近の運用成績は好調とは言い難く、資金の流出も見られます。ジェイリバイブに投資してもいいのでしょうか?

この記事では、ジェイリバイブを詳しく解説し、運用成績やポートフォリオなどから今後の見通しを分析していきます。

ジェイリバイブの概要

ファンドの全体図

ジェイリバイブの概要は以下のとおりです。

設定日 2006年7月31日
基準価額 4万4,610円(2022年1月24日)
純資産総額 55.3億円(2022年1月24日)
信託報酬 1.87%
設定来のトータルリターン 393.39%(2021年末時点)

ジェイリバイブは「SBIアセットマネジメント」によって2006年7月に設定された投資信託です。運用開始のおよそ2年後にリーマンショックに見舞われた不運な銘柄ですが、その後は回復に向かい、2012年以降の株高に乗り大きく値を伸ばしました。

設定来のトータルリターンは2021年末時点で393.39%となり、運用当初に買っていれば約4.9倍になっている計算です。リターンの詳細は後述します。

ちなみに、ジェイリバイブは金額指定で買えず、1口単位で買わなければなりません。
例えば、2022年1月24日の基準価額は4万4,610円なので、10口なら44万6,100円、20口なら89万2,200円と、購入金額にどうしても端数が出てしまいます。

そのデメリットを解消するため、2015年7月に「ジェイリバイブ2」が登場しました。販売会社にもよりますが、こちらは金額指定で購入金額を1円単位で指定して購入できます。
例えば、SBI証券では100円以上1円単位で購入金額を調整可能です。

同じ運用ながら信託報酬も少し低く設定されているため、今後購入する場合はジェイリバイブ2を検討すると良いでしょう。

「ジェイリバイブ」と「ジェイリバイブ2」の比較
ジェイリバイブ ジェイリバイブ2
設定日 2006年7月31日 2015年7月10日
金額指定 不可 可能
信託報酬 1.87% 1.85%
3年トータルリターン 48.07% 48.24%

※3年トータルリターンは2021年末時点

日本株のアクティブファンド

ジェイリバイブは日本株式で運用されるアクティブファンドです。アクティブファンドとは、投資する銘柄を選別し、ベンチマーク(運用目標)よりも高いリターンを目指して運用される投資信託を指します。

銘柄選別がうまくいけば大きなリターンを得られる可能性がありますが、必ずしもベンチマークを上回れるわけではありません。特に銘柄選別や売買にかかる費用から運用コストが大きくなりやすく、信託報酬も高い傾向にあります。

投資対象は「中小型×割安×高成長」の株式

ジェイリバイブの主要な投資対象は中小型株式です。中小型株式とは「時価総額」の規模が中~小規模の株式のことであり、時価総額とは「株価×発行済株式数」で算出される金額を指します。例えば株価1,000円、発行済株式数が1億株の場合、時価総額は1,000億円です。

時価総額が大きい株式のことを大型株といいますが、明確な基準はありません。ちなみにジェイリバイブが2021年末時点で組み入れている上位10銘柄の時価総額は330~2013億円でした(2022年1月25日時点)。

ジェイリバイブは、株価が下落した銘柄のなかから割安かつ業績が安定している銘柄に絞り込み投資を行うとしています。目論見書によると、「PER(株価収益率)」や「PEGレシオ」といった数値を絞り込みに利用しているようです。

※PER=株価÷1株利益
※PEGレシオ=PER÷1株利益の成長率

ジェイリバイブのファンドマネージャー

ファンドマネージャーが今後の方針を説明

ジェイリバイブの実質的な運用者「エンジェルジャパンアセット」について概要を確認しましょう。

実質的な運用は「エンジェルジャパンアセット」

ジェイリバイブはSBIアセットマネジメントの運用ですが、投資助言会社「エンジェルジャパン・アセットマネジメント(以下エンジェルジャパンアセット)」からの助言を受けています。直接の運用者はSBIアセットマネジメントとなりますが、実質的な運用者はエンジェルジャパンアセットといえるでしょう。

エンジェルジャパンアセットの概要
設立 2001年12月4日
助言資産 1,840億円
代表取締役 宇佐美 博高 氏

経営者と直接対面し銘柄を選別

エンジェルジャパンアセットは1人のファンドマネージャーではなく、複数人で構成されたチームで投資助言を行っています。

銘柄の分析では投資対象企業の経営者と直接面談することを重視しており、ジェイリバイブでは株価の水準や財務安定性のほか、企業経営者の理念や志を含めて総合的に判断しているようです。

助言するファンドの多くがファンド大賞を受賞

エンジェルジャパンアセットが助言を行う投資信託はジェイリバイブだけではありません。ほかに以下のような投資信託にも投資助言を行っています。

  • ジェイクール(SBIアセットマネジメント)
  • ジェイネクスト(SBIアセットマネジメント)
  • 日興グローイング・ベンチャーファンド(日興アセットマネジメント)
  • 成長応援日本株ファンド(明治安田アセットマネジメント)
  • 新成長株ファンド(明治安田アセットマネジメント)

※2022年1月25日時点

これらの多くが優秀な成績を表彰された経験があります。エンジェルジャパンアセットの銘柄選別は概ねうまくいっていると考えられるでしょう。

主な受賞履歴
ジェイリバイブ・R&Iファンド大賞2021最優秀ファンド賞(10年、国内中小型株式部門)
・第1回(2017年)QUICKが選ぶ中長期投資にふさわしい投信
ジェイクール ・第1回(2017年)QUICKが選ぶ中長期投資にふさわしい投信
ジェイネクスト・R&Iファンド大賞2020年優秀ファンド賞(国内中小型株式部門)
・第2回(2018年)QUICKが選ぶ中長期投資にふさわしい投信
新成長株ファンド ・リフィニティブリッパーファンドアワードジャパン2021(10年、株式型日本部門)

ジェイリバイブのポートフォリオ

ポートフォリオの中身を確認

ポートフォリオとは銘柄の組み合わせのことです。2021年末のマンスリーレポートによると、ジェイリバイブの上位10銘柄は以下のようになりました。

ジェイリバイブの組み入れ上位10銘柄
コード 銘柄 業種 比率
4980 デクセリアルズ 化学 3.80%
4368 扶桑化学工業 化学 3.80%
7729 東京精密 精密機械 3.60%
3676 デジタルハーツホールディングス 情報・通信業 3.50%
4298 プロトコーポレーション 情報・通信業 3.50%
7839 SHOEI その他製品 3.50%
3901 マークラインズ 情報・通信業 3.40%
2695 くら寿司 小売業 3.40%
6670 MCJ 電気機器 3.20%
2317 システナ 情報・通信業 3.10%

※2021年末時点(組み入れ銘柄数:52銘柄)

1位の「<4980>デクセリアルズ」はフィルム製品大手です。もともと「ソニーケミカル」という社名でソニーの化学部門を担っていましたが、2012年にソニーが売却し、現在の社名になりました。

ジェイリバイブが同社株を取得した時期はわかりませんが、2020年1月~2021年12月の2年間では同社の株価は順調に上昇しています。

デクセリアルズの2020年~2021年の株価
※Investing.comより作成

ジェイリバイブの運用成績

運用結果の確認

ジェイリバイブの運用実績を確認しましょう。

長期では「ひふみ」をも上回る好成績

ジェイリバイブの運用成績は以下のとおりです。

ジェイリバイブの累積リターン(トータルリターン)
年率 1年 3年 5年 10年
ジェイリバイブ 7.50% 13.98% 10.88% 22.14%
同カテゴリー平均 5.62% 15.13% 12.91% 18.58%

※2021年末時点

直近10年で見るとジェイリバイブの成績は好調で、カテゴリー平均を4ポイント以上も上回りました。この間は、同じく中小型株式で好成績ファンドとして知られる「ひふみ投信」のリターンも上回りました

ジェイリバイブ&ひふみ投信 直近10年間のリターン比較
ファンド名 年率リターン
ジェイリバイブ 22.14%
ひふみ投信 17.86%

※2021年末時点

短期では運用成績が悪化

直近10年間では大きなリターンを残していますが、実は近年に限るとリターンは芳しくありません
2019年は前年の下落もあり大きなリターンを残しましたが、2020年・2021年と利益率が2年連続で1ケタにとどまっています。特に2020年はカテゴリー平均を10ポイント以上も下回ってしまいました。

ジェイリバイブの期間リターン(トータルリターン)
2018年 2019年 2020年 2021年
ジェイリバイブ ▲30.18% 27.31% 8.18% 7.50%
カテゴリー ▲20.04% 22.00% 18.93% 5.62%

ジェイリバイブの今後は?

2022年の見通しはどうなる

国内の中小型株式が値上がりするなら、ジェイリバイブも値上がりするでしょう。

ジェイリバイブは2010~2021年の12年間で、各年のリターンがカテゴリー平均を下回った回数は4回しかありません。
また、ジェイリバイブのリターンからカテゴリー平均を差し引いた超過リターンの合計は71.1%で、1年あたり5.9%程度はカテゴリーを上回っています。実績から考えれば、中小型株式が上昇するならジェイリバイブも上昇するでしょう。

ジェイリバイブの超過リターンの差
リターン差
2010年 9.21%
2011年 ▲5.99%
2012年 4.12%
2013年 9.36%
2014年 26.03%
2015年 16.57%
2016年 ▲3.53%
2017年 10.31%
2018年 ▲10.14%
2019年 5.31%
2020年 ▲10.75%
2021年 1.88%

※ジェイリバイブのリターンからカテゴリー平均リターンを差し引いたもの

2022年の国内経済は前年を上回る成長が見込まれています。内閣府とIMF(国際通貨基金)の2022年における実質GDPの成長見通しはいずれも前年を上回りました。上場企業の業績も良好なものが期待されることから、基本的には国内の株式市場は概ね堅調に推移するでしょう。
ただし、株価は企業業績だけでは決まらない点には注意が必要です。

機関実質GDPの成長見通し
2021年2022年
内閣府
(2022年度 政府経済見通し)
2.6%3.2%
IMF
(2022年1月 世界経済の見通し)
1.6%3.3%

※内閣府は2022年1月17日、IMFは2022年1月25日の発表
※内閣府は年度

ジェイリバイブは「ヘッジファンド」と分散投資が良い見立て

どのような戦略で投資をするか検討

ジェイリバイブへ資金を預けるなら「ヘッジファンド」と一緒に行うと効果的でしょう。概要を説明していきます。

アクティブファンドとヘッジファンドの違い

ヘッジファンドもアクティブファンドと同じく、株式などに投資を行う運用会社です。両者の違いは運用方針、特に「ショートポジション」を持つかどうかに違いがあります。

ショートポジションとは、いわゆる「売り」の取引を指し、値下がり時に利益が出る取引です。ジェイリバイブ含め一般的なアクティブファンドはショートポジションを持ちませんが、ヘッジファンドの多くは「ロングポジション(買い)」と併せてショートポジションも持ちます。

この違いにより、ジェイリバイブは基本的に相場全体が上昇しなければ利益を得られませんが、ヘッジファンドは下落時も利益の獲得が可能です。

運用方針が異なるため分散投資の相性が良い

ジェイリバイブとヘッジファンドの運用方針の違いから、両者への分散投資は効果的だといえるでしょう。
同じ運用だと値動きが似たものになるため資金を分ける意義が薄れますが、異なる運用なら異なる値動きが期待できます。
互いに値動きをカバーし合うため、資産全体ではリスクを下げる効果が期待できるでしょう。

まとめ

これから資産が育つのを待つ様子

本記事の内容を以下にまとめました。

  • ジェイリバイブは国内の中小型株アクティブファンド
  • 実質的にエンジェルジャパンアセットが運用
  • 国内の経済見通しから考えればジェイリバイブは堅調な値動きが期待

ジェイリバイブは、エンジェルジャパンアセットの助言を受けながら国内中小型株式で運用されるアクティブファンドです。長期的には好調な成績を残しましたが、近年では伸び悩んでいます。

実績から考えれば、国内の中小型株式が好調ならジェイリバイブの成績も好調でしょう。内閣府およびIMFは2022年の実質GDP見通しを前年より引き上げているため、企業業績は好調なものが期待できます。

業績だけでは判断できませんが、基本的には堅調な株価推移が見通され、ジェイリバイブの成績にもよい影響を与えるのではないでしょうか。

ジェイリバイブへ資金を預けるなら同時にヘッジファンドへの投資も検討すると良いでしょう。両者は運用方針が異なるため分散投資の相性が良く、リスクの低下が期待できそうです。

おすすめの記事