FXに興味を持っている人であれば、「ヘッジファンド」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。

しかし、ヘッジファンドが具体的にどういう集団なのかについては全くわからないという人も少なくありません。

 

FXをやるのであれば、ヘッジファンドについて詳しく知っておかないと多大なリスクを被る恐れもあります。

ここではヘッジファンドの定義や相場への影響、リスク回避の方法などについて解説していきます。

1、ヘッジファンドとは?

FX相場に与える影響を知る前に、まずはヘッジファンドのことを押さえておきましょう。

(1)ヘッジファンドは顧客から預かった資産を運用する機関投資家

「ヘッジファンド」は、莫大な資産を元手にトレードを行う機関投資家のひとつです。

「ファンド」とは、投資信託などで知られているように、投資から集めた資金をプロが株式や債券などに投資して運用する商品全般を指します。

 

投資事業組合が作られることもあり、リターンを投資家に分配することが一般的です。

(2)ヘッジファンドは為替/デリバティブなどハイリターン・ハイリターンの投資をする

ヘッジファンドは特にハイリスク・ハイリターンを目指した取引をすることが多く、投資対象は金融派生商品(ディリバティブ)や為替などにも及びます。

ヘッジファンドの最大の特徴は、マーケットが上昇相場でも下降相場でも利益を追及しているということです。

(3)ヘッジファンドはショート(売り)でもロング(買い)でもリターンを出す投資方針

「ヘッジ(回避する)」という名称は、下降相場でショート(売り)ポジションを立てることに由来しています。

もちろん実際はリスクヘッジのためだけにショートポジションを立てるのではなく、積極的に利益を狙ってトレードを行っています。

 

ヘッジファンドはロング(買い)ポジションでもショートポジションでも利益を出せるため、マーケットが好況でも不況でもあまり関係がありません。

そのためヘッジファンドのリターンについては「絶対的リターン」という呼び方がされます。

(4)ヘッジファンドは金融庁の規制外。レバレッジを効かせたハイリスク投資が可能

一般の金融機関と違って、ヘッジファンドは監督官庁に細かい届け出の義務がなく、また規制も非常に少ないという特徴があります。

これはファンドの資金を「私募形式」で集めるためで、投資対象や投資手法にも制限がありません。

そのため、ハイリスク・ハイリターンの過激ともいえるトレード手法が可能になるのです。

2、世界の有名なヘッジファンドを3つ紹介

世界中の有名なヘッジファンドも知っておきましょう。

(1)ブリッジウォーター・アソシエイツ

世界中に存在するヘッジファンドの中でも、最大規模を誇るのが「ブリッジウォーター・アソシエイツ(Bridgewater Associates)」です。

運用総額は16兆円以上にも及び、創業したレイ・ダリオはヘッジファンド界の帝王といわれています。

(2)AQRキャピタル・マネジメント

次に大きなヘッジファンドは「AQRキャピタル・マネジメント(AQR Capital Management)」で、7兆円を超える資金を運用しています。

(3)LTCM

過去のヘッジファンドでは、破綻した「LTCM」が有名です。

ソロモン・ブラザーズのジョン・メリウェザーを中心に、ノーベル経済学賞受賞者のマイロン・ショールズやロバートマートンなどが加わっています。

 

金融工学と統計学を駆使し、ドリームチームと呼ばれるほどのメンバーが揃っていましたが、アジア通貨危機とロシア財政危機であっさりと破綻してしまいました。

3、ヘッジファンドがFX相場への及ぼす影響

 

莫大な資金を動かすヘッジファンドは、相場にも大きな影響を及ぼします。

為替市場にも大きな影響力を持っており、個人のFX投資家も十分に注意を払う必要があります。

(1)FXの急落相場はヘッジファンドが原因のケースが多数

FXをやっていると一度は急激な相場の下降を経験しますが、ヘッジファンドの存在が急落の原因になっているケースが非常に多くあります。

 

例えば、個人のロングポジションが集中している価格帯を狙い、急激な売り崩しを仕掛けてくるような場面です。

個人の資金では耐え切れずに次々とロングポジションをクローズせざるを得なくなり、売りの連鎖が誘発され、価格は一気に下がります。

 

ヘッジファンドは十分に価格が下がったところでポジションを決済し、莫大な利益を手にするというカラクリです。

(2)急落後の「戻し方」でヘッジファンドが関わっているか判断

「雇用統計」などの重要指標でも、こういった動きが頻繁に発生します。

一瞬にして過剰なほど下がり、その後少しだけ価格を戻すというのが典型的な動き方です。

 

ここでは、急落の後の「戻し方」に注目する必要があります。

一般に、急激な下落の後には「安すぎる」と判断した投資家たちによって徐々にロングポジションが増えて価格が戻っていくのが自然な動きです。

 

しかし、一瞬でそれなりの戻し方をするような場合は、ヘッジファンドによる買戻し(ショートポジションのクローズ)と考えて良いことがほとんどです。

なお、急落後に価格が戻らずうろうろしているような場合は、本物の下落である可能性が高く、次の動きを慎重に見極めることが大切です。

4、FX相場でヘッジファンドが関わっている場合の3つの対策

 

個人投資家の資金量では、ヘッジファンドなどの機関投資家に到底太刀打ちできません。とはいえ、手をこまねくわけもいきません。

具体的な対処法を紹介します。

(1)スットップ注文なしでの売買は避ける

そのため、個人投資家はあらかじめヘッジファンド特有の動きに備えてリスク回避の準備をしておくことが大切です。

FXを安全に行うための基本は「ストップ注文無しで売買をしない」ということです。

ストップ注文は「逆指値」とも言われ、「ロングポジションが○○円まで落ちたら損切りの決済をする」「ショートポジションが○○円まで上がったら損切りの決済をする」という注文を入れておくことです。

(2)成行注文で決済できない"追証"の発生は絶対に避ける

スキャルピングやデイトレードなど、短期売買を中心にトレードをしている個人投資家は、成り行き注文で売買をする人が少なくありません。

もちろん、取引の手法は人それぞれですし、エントリーの段階ではあまり問題になりません。

 

しかし、何の前触れもなく急騰・急落が発生するというのが相場の怖さです。

急騰・急落で思惑と逆の方向に進み、値動きが激しすぎて手動で決済ができないことも珍しくありません。

損失を出すどころが、最悪の場合は「追証」が発生してしまいます。

(3)OCO注文・IFO注文の指値決済でリスク回避

薄利を狙い成り行き注文で決済を行うスタイルの人は、「最悪の場合のリミッター」という感覚でストップ注文を入れておくことが大切です。

決済を指値で行う人の場合はOCO(オー・シー・オー)注文、エントリーも全て指値で行う人の場合はIFO(アイ・エフ・オー)注文を入れておけば安心です。

5、閑散相場のヘッジファンドへの対策3つ

 

ヘッジファンドの影響は、なにも相場が派手に動いている時に限りません。

個人投資家は閑散相場でもヘッジファンドの動きに警戒する必要があります。

(1)ストップ刈りを警戒する

特に気をつけておきたいのが「ストップ狩り」です。

ドル円(USD/JPY)の100.0円の上下など、分かりやすい価格帯で頻繁にストップ狩りが発生します。

 

例えばドル円の現在価格が102.5円だった場合、多くの個人投資家は100.0円をサポートラインと判断して、少し下の99.5円や98.0円などにストップ注文を出しておく傾向があります。ヘッジファンドはこれを狙い、一瞬で97.5円まで売り崩しを行います。

 

ヘッジファンドはこの5円(500pips)下で買い戻しを行いますが、この間で「狩った」個人投資家たちの損失がそのまま利益になるため、一瞬で500pipsのほとんどが利益になるのです。

(2)閑散相場特有のヘッジファンドの動きには警戒

こういった動きは、いかにヘッジファンドといえども市場の流動性が低い閑散相場でしかできません。

参加者の多い時間帯では、単にヘッジファンドの損失に終わってしまうからです。

値動きの激しい状態だけではなく、閑散相場のヘッジファンドの動きについても注意しておくことが必要です。

6、FX相場でのヘッジファンドへの対策は"リスク回避"

 

このように、ヘッジファンドは為替相場に大きな影響力を持っているため、個人投資家のトレードにも大きなリスクを及ぼす可能性があります。

トレードで利益を出すためには、大きなリスク要因のひとつであるヘッジファンドについての知識を整理しておくことが非常に大切です。

FXトレードは利益を伸ばし・損失を限定。ヘッジファンドの動きを予め知る

トレードの基本は「利益を伸ばし、損失を限定する」ということにありますが、ヘッジファンドの動きについての理解が不十分な場合、損失はどこまでも膨らんでいく恐れすらあります。

せっかく資産を増やそうと思ってFXにチャレンジしても、かえって資産を減らしてしまうようでは本末転倒です。

 

これを機にヘッジファンドへの理解を深め、安定して利益をあげることを目指しましょう。

おすすめの記事