累積リターン508%(2021年5月末時点)の人気ファンド「ひふみ投信」。
それを多くの金融機関で買えるようにしたのが「ひふみプラス」です。前者は運用会社でしか買えませんでしたが、ひふみプラスは多くの金融機関で買うことができ、運用成績は同じです。
高い利回りを残していますが、今後の値動きはどうなるのか、多くの方が気になるところでしょう。
端的にいうと、ひふみプラスは今後も値上がりに期待できます。本記事ではその理由を簡単に解説します。ひふみプラスの実績や懸念点についても紹介するので、ひふみプラスの購入を検討している方はぜひご一読ください。
ひふみプラスは今後も値上がり期待できる
どうしてひふみプラスは値上がりが期待できるのか、ここでは以下3つの理由から説明します。
- 世界経済は成長継続
- 優れた銘柄選別力
- ゆとりある運用方針
それぞれ解説します。
理由1.世界経済は成長継続のため、株式ファンドには恩恵
ひふみプラスの値上がりに期待できる大きな理由は世界経済の成長です。IMF(国際通貨基金)は世界と主な地域・国の成長率を以下のように予測しました。
2021年 | 2022年 | |
---|---|---|
世界 | 6.00% | 4.40% |
先進国・地域 | 5.10% | 3.60% |
アメリカ | 6.40% | 3.50% |
ユーロ圏 | 4.40% | 3.80% |
日本 | 3.30% | 2.50% |
新興市場国と発展途上国 | 6.70% | 5.00% |
世界は2021年に6%、2022年は4.4%の高い経済成長が予測されています。JETRO(日本貿易振興機構)によると、世界経済成長率が6%に達するのは1980年以降で初めて。ひふみプラスが主に投資する日本やアメリカも高い成長が見込まれています。
ひふみプラスは株式ファンドなので、世界経済の成長による恩恵を受けられます。経済成長が続く限り、基本的には値上がりに期待してもいいでしょう。
理由2.優れた銘柄選別力で、市場平均を370%超上回る
ひふみプラスは投資銘柄の選別が優れている点もまた、今後も値上がりを期待できる理由の1つです。
冒頭お伝えした通り、ひふみプラスと同じ運用の「ひふみ投信」は、2008年の設定以来508.21%のリターンを残しました(2021年5月末時点)。この間、TOPIX(東証株価指数)は131.38%の上昇にとどまっています。市場平均を370%以上に上回ることができています。これは運用会社がいい銘柄に絞って投資できたことが大きいでしょう。
銘柄選別のノウハウはファンドマネージャーに蓄積されています。ひふみプラスの運用会社は独立系で、ファンドマネージャーは同社の社長でもあります。ファンドマネージャーが変わることは考えにくいため、今後も優れた選別眼が発揮されるでしょう。今後も値上がりに期待できるポイントです。
理由3.ゆとりある運用方針で、現金を柔軟に組み入れ
運用方針にゆとりがある点も期待できるポイントです。相場に不透明感があるときは現金比率を高め、リスクを下げる運用を取ることができます。
多くの一般的な投資信託は資産のほとんどを投資します。相場上昇時には値上がりが期待できますが、相場下落時ではどうしても値下がりしやすくなります。一方ひふみプラスは、相場不安時には保有資産を売却し、最大50%まで現金比率を高めます。
例えば北朝鮮問題が顕在化した2017年3月末では現金比率を15.5%まで引き上げています。またコロナショックが懸念された2020年2月末は31.2%まで引き上げました。
このように、ひふみプラスは相場の不透明感が強いときに資産を現金へ柔軟に逃避させ、リスクを下げる運用を行うことができます。株価は常に上昇するわけではないので、柔軟な運用は投資家のメリットになるといえるでしょう。
ポートフォリオの1つにおすすめ
上記3つの理由から、ひふみプラスは今後も値上がりが期待できるでしょう。
ただし、「資金のすべてを投資すべき」とまではいえません。個人のリスク許容度にもよりますし、相場全体が下落し続ければひふみプラスといえど値下がりは避けられないためです。
しかし、「ポートフォリオ」の候補にはなるでしょう。ポートフォリオとは資産の組み合わせのことです。いくつかの商品へ分散投資し1つのポートフォリオを作ります。
基本的には値上がりが期待できるので、資金の一部をひふみプラスに任せてみるのもいいでしょう。
ひふみプラスの組み入れ銘柄
参考にひふみプラスのポートフォリオを見てみましょう。2021年5月末時点では以下のような構成になっています。
- 国内株式:83.72%
- 海外株式:12.50%
- 海外投資証券:1.03%
- 現金等:2.75%
現在は現金比率が低く、ほぼ国内外の株式で構成されています。なお「海外投資証券」とは主に「不動産投資信託(REIT)」のことです。
組み入れ銘柄数は全部で281銘柄です。組み入れ比率TOP10は以下の銘柄です。
- 米マイクロソフト:1.61%
- エイチ・アイ・エス:1.42%
- SHIFT:1.35%
- HOYA:1.33%
- ミライトHD:1.30%
- ショーボンドHD:1.24%
- あいHD:1.19%
- 川崎重工:1.19%
- 東京応化工業:1.13%
- 光通信:1.11%
ひふみプラスの運用実績
ひふみプラスの運用実績は以下の通りです。設定来(2012年5月28日。「ひふみ投信」は2008年10月1日)ではTOPIXを上回っていますが、近年は下回っているようです。
1か月 | 3カ月 | 6か月 | 1年 | 3年 | 設定来 | |
---|---|---|---|---|---|---|
ひふみプラス | -1.51% | 1.71% | 2.81% | 23.78% | 17.51% | 398.72% |
TOPIX | 1.38% | 4.12% | 10.81% | 25.61% | 18.17% | 223.67% |
ひふみプラスに懸念されること
ひふみプラスは今後も値上がりに期待できますが、懸念点もあります。特に以下2点に注意する必要はあるでしょう。
- 大型株の組み入れが増えてきている
- 相場全体が下落傾向なら弱い
それぞれ解説します。
大型株の組み入れが増えてきている
大型株の組み入れが増えてきていることが最初の懸念点です。
ひふみプラスはもともと国内の中小型株式が運用のメインでした。一時的に大型株の組み入れが増えることはありましたが、基本的には超小型~中小型株式で運用を行っていました。高い運用実績はこれら中小型株式の運用によってもたらされたといえます。
しかしファンドが人気化して資金が集まるようになると、大型株の組み入れが増えるようになりました。中小型株式には大きな資金を投じにくいため、大型株の組み入れを増やしたのだと思われます。2017年6月には初めて海外株にも投資しました。
一般的に、大型株は中小型株式よりリターンが下がります。組み入れに大型株が増えることでリターンが下がらないか、懸念されるところです。
相場全体が下落傾向なら弱い
相場全体が下落傾向ならひふみプラスも下落しやすいといえます。ひふみプラスの、もう1つの懸念点です。
ひふみプラスは現金比率を50%まで高めますが、これは下落の影響を最大半分にまで抑えられるということです。つまり、損失の影響を限定できるものの、損をすることもある点に注意が必要です。
上述の通り、世界経済は成長継続が見込まれているので相場全体も上昇傾向ではありますが、下落時には成績が悪化する可能性が高いといえるでしょう。
相場下落時も収益を得られるヘッジファンド
相場下落時に成績が悪化するのはひふみプラスだけではありません。一般的な投資信託の多くは相場下落時に好成績を残せないでしょう。
ただし、運用会社の1つ「ヘッジファンド」は相場下落時にも利益を得られる仕組みを持っています。ここではヘッジファンドについて解説します。
ヘッジファンドは「売り」も行うため、下落時にも利益
ヘッジファンドが相場下落時に利益を得られるのは「売り」の取引を行うためです。これは単に保有株を売るという取引ではなく、「空売り」や「先物のショート取引」など、値下がりによる利益を得る取引のことです。
「売り」取引により、ヘッジファンドは相場下落時でも利益を獲得できます。一方、一般的な投資信託は「買い」しか行わないため、相場の下落は基本的に損失になります。
一般的な投資信託より多くの収益機会を得られる点がヘッジファンドの強みです。
相場に影響を受けない主なヘッジファンドの運用戦略
ヘッジファンドの運用をよりイメージしやすくするため、代表的な運用戦略を3つご紹介します。
- 株式ロングショート
- アービトラージ
- アクティビスト
それぞれ簡単に解説します。
株式ロングショート
株式ロングショートは、以下2つの取引を同時に行う戦略です。
- 割安株の買い
- 割高株の売り
本来の価値より安い株価で取引されている銘柄を買い。反対に高い株価で取引されている銘柄に売りを仕掛けます。両者の株価が本来の価値に修正されていく際に利益が期待できます。
前者の取引は一般的な投資信託でも行いますが、これだけでは相場下落時に利益獲得が難しくなります。株式ロングショートは割高株への売りを同時に仕掛けることで、相場下落時でも利益の獲得を目指すことができます。
アービトラージ
アービトラージは、以下2つの取引を同時に行う戦略です。株式ロングショートに似ていますが、同一資産に対して「買い」と「売り」を仕掛ける点に違いがあります。
- 同一資産を安い価格で買い
- 同一資産を高い価格で売り
アービトラージは前提として、同時に2つ以上の価格で取引されている資産を見つける必要があります。該当資産が見つかれば、「安い価格での買い」と「高い価格での売り」を同時に仕掛けます。理論上、2つの価格差が必ず利益になります。
アクティビスト
アクティビストは経営陣へ株主提案を行い、株価の上昇を狙う戦略です。上記2つは市場取引を通じて利益獲得を目指しますが、アクティビストは市場外から株価上昇を働きかける戦略といえます。
アクティビスト戦略を簡単にまとめると以下のようになります。
- 株式を一定以上買い集め、議決権(発言力)を強める
- 自社株買いなど、株価上昇につながる施策実施を提案する
- 施策実施後、株価が上昇すれば売り抜ける
アクティビストは株主の権利「株主提案権」と「議決権」を活用した戦略です。株価上昇の余地がある銘柄を見つける分析力が求められるほか、株式(議決権)を集める資金力や既存株主(経営陣など)との調整力が問われます。
まとめ:ひふみプラスは今後も期待できる
本記事の内容を以下にまとめます。
- ひふみプラスは今後も値上がり期待できる
- 大型株が増えていることは懸念点
- ポートフォリオの1つにおすすめ
世界経済の成長や銘柄選別力から、ひふみプラスは今後も値上がりが期待できます。相場不安時に現金を高く維持する戦略にも安心感があります。
ただし大型株が増えていること、直近ではリターンがTOPIXに劣っていることなど、懸念点もあります。資金のすべてを投じるのではなく、ポートフォリオの一部に検討するといいでしょう。
これまでのようなリターンを求める場合は、ヘッジファンドを選択肢として考えてみてはいかがでしょうか?
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