REITは不動産で運用される投資信託です。上場しているため株式と同じように取引でき、気軽に不動産に投資できる特徴を持っています。
ところがこのREIT、「あまりおすすめではない」「投資してはいけない」といったようなネガティブな声も聞かれます。メリットもある商品ですが、どうしてREITをおすすめしない声があるのでしょうか。
そこで本記事ではREITのデメリットを4つ紹介し、おすすめされない理由について解説したいと思います。もちろんメリットについても紹介し、どんな人が向き不向きなのかをまとめた中立な記事を目指します。REITを検討している方はぜひご覧ください。
REIT(リート)をおすすめしない4つのデメリットを確認
REITがあまりおすすめされない理由は以下4つのデメリットにあると考えられます。
- 元本保証ではない
- 複利が得られない
- 値動きが大きめ
- 地震などの災害リスクがある
それぞれ解説します。
デメリット1:元本保証ではない
REITは他の金融商品と同じく元本保証はなく、損をする可能性があります。必ず利益を得られるわけではない点が最初のデメリットです。
デメリット2:複利が得られない
複利が得られない点もREITのデメリットです。複利とは利益を再投資し、さらに大きな利益を得る方法を指します。
具体的な数値を当てはめて複利の効果を確認しましょう。仮に年10%の利回りがある商品に100万円投資し、得られた利益を再投資し続けると以下のようになります。年々利益が大きくなるところがポイントです。
0年目 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | |
---|---|---|---|---|---|
運用金額 | 100万円 | 110万円 | 121万円 | 133.1万円 | 146.4万円 |
その年の利益 | ─ | +10万円 | +11万円 | +12.1万円 | +13.3万円 |
一般的な投資信託は利益を再投資するため、上記のような複利で効率よく運用されます。しかしREITは利益の90%以上を分配金として払い出し、再投資は行いません。したがって、REITは、一般的な投資信託のように、複利運用で効率的にお金を増やせないのです。
デメリット3:値動きが大きめ
もう1つのデメリットは値動きの大きさです。比較的大きな値動きがあるためリスクが大きい点に注意しましょう。
参考に、2019年8月末~2021年7月15日までの値動きを株式と一緒にグラフで確認してみましょう。どちらもプラスにはなっていますが、2020年初頭にコロナショックで大きく下落していることが分かります。
(画像=著者作成)
この間の最大上昇幅と最大下落幅は以下の通りです。株式と同程度の値動きがあることが分かると思います。
変化 | 株式(TOPIX) | REIT(東証REIT指数) |
---|---|---|
最大上昇 (単月) | 11.12% (2020年11月) | 7.9% (2020年5月) |
最大連続上昇 | 22.06% (2020年11月~2021年3月) | +29.18%~ (2020年11月~) |
最大下落 (単月) | ▲10.3% (2020年2月) | ▲20.93% (2020年3月) |
最大連続下落 | ▲19.59% (2020年1月~2020年3月) | ▲31.05% (2020年2月~2020年4月) |
- Tokyo Stock Exchange REIT 過去のレート - Investing.com
- TOPIX 過去のレート - Investing.com
株式は一般にリスクが大きい資産で、REITも同じくらいの値動きがあるといえます。安定的な運用をしたい方にとっては大きなデメリットといえるでしょう。
デメリット4:地震など災害リスクがある
REITは実物の不動産で運用されます。地震などの災害で不動産に損害が出ると大きな値下がりが考えられます。
震災被害の多い日本では無視できないリスクといえるでしょう。
そもそもREIT(リート)とは
REITのデメリットを紹介しましたが、そもそもREITとはどのような商品なのでしょうか。冒頭で軽く説明していますが、よく分からないという方のため改めて概要を押さえましょう。
不動産運用に特化した投資信託
REITは「「Real Estate Investment Trust」」の略で、直訳すれば実物不動産投資信託となります。その名の通り、実際の不動産(オフィスビルやマンションなど)で運用される投資信託のことです。
投資家から集めた資金で不動産へ投資し、得られる家賃収入を投資家に還元する仕組みを持っています。
上場している
REITは上場している点にも特徴があります。株式と同じく、証券取引所でリアルタイムに売買が可能です。
REIT(リート)の種類
REITはいくつか種類があり、保有する不動産のタイプが異なります。代表的なものは以下の通りです。
- オフィスビル系:企業が入居するオフィスビルへ投資
- レジデンス系:マンションなどに投資
- 複合系:さまざまなタイプの不動産へ投資
一般に「オフィスビル系」は景気変動の影響を受けるためリスクが大きく、「レジデンス系」はリスクが小さいとされています。「複合系」はその中間という位置付けです。
REITは上記以外にもさまざまな種類があり、それぞれに異なる特徴があるため注意しましょう。
REIT(リート)のメリットは?
冒頭REITのデメリットについて紹介しましたが、メリットもあります。ここでは以下2つを紹介します。
- インカムゲインは安定的
- 運用をプロに一任できる
メリット1:インカムゲインは安定的
REITは安定的なインカムゲインがメリットです。定期収入のことで、REITでは分配金を指します。主にREITが得た家賃収入から年に2回投資家へ支払われます。
なぜREITの分配金は安定的といえるのでしょうか。それは、REITは基本的に固定賃料で不動産を貸し出すためです(変動賃料を取るREITもあり)。賃貸契約の急な変更があまりないため、分配金も安定的に支払われるのです。
ただし絶対に賃料が下がらないわけではありません。コロナ禍では賃料の減免などがあり、REITの分配金が引き下げられた事例もあります。また空室リスクもあるため、必ず固定の分配金を受け取れるわけではありません。
安定的なインカムゲインはREITの代表的なメリットですが、例外もあることは覚えておきましょう。
メリット2:運用をプロに一任できる
資産運用をプロに任せられる点もREITのメリットです。
自分で不動産投資を行う場合、物件の選別にハードルを感じるでしょう。どのような視点で選べばいいのか、経験や知識がないと判断できないと思います。
REITが取得・運用する物件は不動産投資のプロが選別し決定しており、その収益は投資額に応じて投資家に分配されます。ノウハウがなくても高度な不動産投資を行うことができる点はREITのメリットといえるでしょう。
向いている人・向いていない人
これまで紹介したことを踏まえると、REITは以下のような方に向いているといえます。
特徴 | 理由 |
---|---|
株式取引の経験がある人 | REITと株式の売買は似ているため |
銘柄の分析ができる人 | 銘柄ごとに運用内容が異なり商品性質が異なるため |
ある程度の値動きを許容できる人 | REITの値動きは比較的大きいため |
上記に当てはまる方はREITをおすすめできます。資産運用の1つに加えてみてはいかがでしょうか。
反対に該当しない方はREITに向いていないでしょう。特に「値動きの大きさ」について許容できない方は別の方法をおすすめします。
REIT(リート)投資を行う場合の注意点やコツ
もしもREITに投資する場合、以下2つのポイントに注意しましょう。
- REITの投資物件をチェックする
- 金利上昇に気を付ける
ポイント1:REITの投資物件の詳細項目から、ヒントを得る
REITは保有物件について、HPで以下のような情報を公開しています。
- 物件の名前・住所
- 取得時期
- 建築時期
- 取得価格
- 評価額
- 稼働率
これらの情報をチェックすれば、そのREITがどこにどんな物件を持っているか確認できます。投資判断のヒントになるため必ずチェックしましょう。
NAV倍率で割安・割高の判断を確認
保有物件と一緒に「NAV倍率」も確認しておきましょう。そのREITの割安度を測る数値で、以下のように計算されます。
※「NAV」は純資産総額。REITの総資産から負債を引いたもの
※「投資口価格」はREITが取引所で取引される価格。株式の株価に相当
NAV倍率はそのREITの投資口価格が純資産総額の何倍になっているかを表し、数値が低いほど割安と判断できます。銘柄選びの参考にしてください。
ポイント2:金利上昇に気を付け、リスクヘッジを行う
REITは一般に金利上昇時に値下がりしやすいとされています。利息負担が増え、REITの収益が圧迫されるためです
REITは投資家から集めたお金以外に借り入れも利用しています。つまり、金利が上がるとよりたくさんの利息を支払う必要があるため実質的な利回りが下がってしまいます。
上記のような思惑が市場で働き、金利が上昇すると一般に売りが出やすいといわれています。REIT投資の際は金利動向にも目を光らせておき、対策を講じるようにしましょう。
「LTVが低い=借金が少ない」銘柄は金利上昇に強い
金利上昇に備えたい場合、「LTV」が低い銘柄を探すといいでしょう。「Loan To Value」の略で、総資産に対する借金の割合を表します。これが低いREITは借金の比率が低く、金利の影響が少ないといえます。
LTVは以下のように計算されます。
LTV=借入金÷総資産
REITのような不動産投資にとって借金は必ずしも悪いことではありませんが、あくまで金利上昇に備えたいならLTVが低い銘柄をおすすめします。
金融株との組み合わせが効果的
REITと一緒に金融株を買うことでも金利上昇に備えられます。金融株は金利上昇時に株価が上がりやすいためです。
金融機関はお金を貸す側です。つまりREITと反対に金利の上昇が好業績につながります。したがって金利が上がると金融株も買われやすく、一般に値上がりする傾向にあります。REITの弱点を補うことが期待できるでしょう。
「安定収益」×「プロ一任」ならヘッジファンドも選択肢
上述の通り、REITは収益が安定していること、また運用をプロに任せられることがメリットでした。しかし値動き自体は大きく、トータルではリスクが低いとはいえません。
運用をプロに任せつつ安定的な収益を得たいなら「ヘッジファンド」をおすすめします。以下2つの特徴を持つためです。
- 相場の影響を受けない「絶対収益」
- プロが高度な戦略で運用を行う
それぞれ解説します。
相場の影響を受けない「絶対収益」
ヘッジファンドは「絶対収益」を追求する特徴があります。相場の影響を受けない収益を指し、ヘッジファンドは相場がどのような状況でも一定の利益獲得を目指します。
参考に、ヘッジファンドの直近1年間のリターン・リスクを、運用戦略別に以下にまとめます。
リターン | リスク | |
---|---|---|
株式ロングショート | 33.58% | 7.15% |
イベントドリブン | 30.58% | 6.10% |
マネージドフューチャー | 12.69% | 5.63% |
アービトラージ | 11.39% | 2.45% |
参考)TOPIX(配当込み) | 25.61% | 15.82% |
いずれの戦略でもTOPIXよりリスクが低くなりました。中でも「株式ロングショート」と「イベントドリブン」は半分程度のリスクでTOPIXより大きなリターンを得ています。ヘッジファンドが安定的な利益を稼いだ1つの事例といえるでしょう。
相場の影響を受けず一定の収益を得たい方はヘッジファンドに向いているといえます。
プロが高度な戦略で運用を行う
ヘッジファンドは運用会社の1つで、REITのようにプロが資産運用を行います。投資家は知識や経験がなくても、入念の分析や複数の手法を組み合わせる、専門的な情報リサーチといった高度な運用戦略の成果を受け取ることが可能です。
まとめると、ヘッジファンドは「安定的な収益をプロに実現してもらう方法」といえるでしょう。必ず利益を得られるわけではありませんが、資金の預け先の1つに検討してみてはいかがでしょうか。
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まとめ
最後に本記事の内容を確認しましょう。
- REITがおすすめされないのはデメリットがあるため
- デメリットは「複利がない」「比較的大きな値動き」など
- REITへの投資は銘柄の分析&金利上昇の対策がポイント
REITにはデメリットがあるため、全員におすすめできる商品ではありません。メリットもありますが、損をする可能性だって当然あります。
これらメリット・メリットをしっかり理解し、許容できる方だけがREITへの投資を行いましょう。なお検討の際はヘッジファンドもぜひ選択肢に入れてください。