
投資をするうえで重要なのは、低PER銘柄の「安さ」だけに飛びつかず、業績トレンドと時価総額を合わせて判断することです。
この記事では、4ステップのスクリーニングと、万年割安株と一時的に売られた成長株を見分ける具体的なチェックリストを、実務で使える手順としてわかりやすく解説します。
「日経平均は上がっているのに自分の持ち株が伸びない」と感じる方に向けた実践ガイドです。
- 万年割安株とお宝候補の見分け方
- PER推移と業績トレンドを使ったスクリーニング手順
- 時価総額と流動性による絞り込み
- ポートフォリオでの組み入れ方とリスク管理
低PER株投資で失敗しないための銘柄選定の軸
日経平均株価が高値を更新する一方で、自分の保有株はさえない…。
そんな状況に、もどかしさを感じている方も多いのではないでしょうか。
今の市場には低PERの銘柄が多く、一見すると割安でお買い得に見えます。
しかし、本当の「お宝銘柄」を見つけるためには、PERの数字だけを鵜呑みにしないことが何よりも重要です。
このセクションでは、銘柄選定で失敗しないための基本的な考え方として、「なぜ今、割安に見える銘柄が多いのかという背景」を理解し、「PERという数字に潜む罠」、そして「成長トレンドと時価総額を組み合わせる重要性」という3つの軸を解説していきます。
なぜ今、多くの銘柄が割安に見えるのか、その背景
現在の株式市場で多くの銘柄が割安に見えるのは、特定の大型株に資金が集中し、多くの中小型株が物色の対象から外れていることが大きな理由です。
つまり、「会社の業績が悪いから売られている」のではなく、「市場の資金の流れから取り残されている」銘柄が数多く存在するのです。
例えば、2024年に入ってからの日経平均株価の上昇は、東京エレクトロンやファーストリテイリングといった、ごく一部の値がさ株によって牽引されている側面が強いです。
海外投資家などの巨額の資金は、まずこうした流動性の高い大型株に向かいます。
その結果、業績が堅調な中小型株であっても、資金が回ってこずにPERが低いまま放置されるという「歪み」が生じています。
| 資金が集中しやすい銘柄の特徴 | 資金が及びにくい銘柄の特徴 |
|---|---|
| 半導体関連などの大型株 | 中小型株、特に内需関連の銘柄 |
| 日経平均への影響度が大きい銘柄 | 好決算でも「材料出尽くし」として売られる銘柄 |
| 海外投資家からの資金流入が多い銘柄 | 個人投資家が主な取引主体の銘柄 |
このように、PERの低さは必ずしもその企業の価値が低いことを意味しません。
「市場全体の構造」が原因で割安になっているケースもあると理解することが、お宝銘柄探しの重要な第一歩になります。
数字の罠、PERの低さだけを信じてはいけない理由
PER(株価収益率)とは、株価が1株当たり純利益の何倍まで買われているかを示す指標で、企業の割安度を測るためによく使われます。
しかし、このPERの低さだけを信じて投資すると、「バリュートラップ」と呼ばれる罠にはまってしまう危険性があります。
PERが低い銘柄には、大きく分けて2種類あります。
1、何らかの理由で一時的に市場から評価されていない「将来のお宝候補」。
2、事業の成長が止まってしまい、将来性が見込めない「万年割安株」です。
例えば、PERが8倍だからといって安易に購入したものの、5年経っても株価が全く上がらない、というケースは後者の典型例です。
ランキングの下から順番に買うような探し方は、こうした万年割安株を選んでしまう可能性を高めます。
| 「万年割安株」の典型的な特徴 | |
|---|---|
| 業績の停滞 | 売上や利益が長年にわたり横ばい、もしくは減少傾向にある |
| 投資への姿勢 | 新規事業への投資に消極的で、内部留保や安定配当を重視しがち |
| 事業環境 | 所属する業界全体が成熟期を迎え、今後の大きな成長が見込みにくい |
| 株価の動き | 大きな悪材料がなくても、市場全体の上げ相場から取り残される |
したがって、PERの低さという表面的な数字だけで判断してはいけません。
その背景にある企業の成長性や事業環境をしっかりと分析し、なぜPERが低いのかという理由を見極めることが、失敗を避けるための鍵となります。
成長トレンドと時価総額を組み合わせる重要性
では、万年割安株を避け、本当のお宝候補を見つけるにはどうすればよいのでしょうか。
その答えは、PERに加えて「業績の成長トレンド」と「時価総額」という2つのフィルターを組み合わせて判断することです。
この2つの視点が、銘柄選定の精度を格段に高めてくれます。
まず「業績の成長トレンド」です。
過去3年から5年の決算を確認し、売上高や営業利益が右肩上がりで成長を続けているかを見ます。
利益がしっかりと伸びているにもかかわらずPERが低いのであれば、それは業績悪化ではなく、市場からの注目度が低いだけ、という可能性が高まります。
次に重要なのが「時価総額」です。
個人投資家の強みは、運用資産が巨大な機関投資家が参入しにくい時価総額300億円〜1,000億円程度の銘柄に投資できる点にあります。
この規模の企業は、まだプロの投資家のレーダーに捕捉されていないことが多く、将来大きな「見直し買い」が入る可能性があります。
| フィルター | なぜ重要なのか |
|---|---|
| 業績の成長トレンド | PERが低い理由が、業績悪化ではなく一時的な要因であることを見極めるため |
| 時価総額(300億〜1,000億円目安) | 機関投資家が見逃しがちな領域で、将来の大きな株価上昇が期待できるため |
このように、PERの低さという条件に「安定した成長性」と「機関投資家が気づいていない規模感」という要素を加えることで、選ぶべき銘柄の候補を効果的に絞り込めます。
この組み合わせこそが、お宝銘柄を見つけ出すための羅針盤になるのです。
【実践編】低PERのお宝銘柄を見つける探し方4ステップ
お宝銘柄探しで最も重要なのは、低PERという数字だけに飛びつかず、体系的な手順で銘柄をふるいにかけることです。
具体的な探し方を4つのステップで解説します。
まず最初に除外すべき万年割安株のパターンを理解し、次に過去とのPER比較と業績推移で有望株の原石を探します。
その後、時価総額という個人投資家ならではの視点を加え、最後に購入ボタンを押す前の最終確認チェックリストで確認するという流れです。
この4ステップを踏むことで、感覚的な投資から脱却し、再現性の高い銘柄選定ができるようになります。
ステップ1 - 最初に除外すべき「万年割安株」の典型パターン
万年割安株とは、PERなどの指標上は割安に見えるものの、成長性が乏しいために長期間株価が上がらない銘柄を指します。
例えば、過去10年間、売上高がほぼ横ばいで、営業利益も微増か横ばいを続けている企業は、典型的な万年割安株の候補です。
こうした企業は安定しているように見えますが、株価を押し上げる将来の成長ストーリーを描きにくいという特徴を持ちます。
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 業績 | 売上・利益が長年横ばい、または微減傾向 |
| 業界 | 構造的に成長が見込みにくい成熟産業や斜陽産業 |
| 企業姿勢 | 成長投資に消極的で、内部留保をため込む傾向 |
| 株価 | 大きな変動がなく、市場全体の上げ相場から取り残されがち |
証券会社のスクリーニングで「低PERランキング」を上から順番に見ていく方法は、こうした万年割安株を選ぶリスクが高まるため、必ず避けるべきです。
ステップ2 - 「過去とのPER比較」と「業績推移」で有望株の原石探し
有望な銘柄を見つけ出す上で重要なのは、現在のPERという「点」で判断するのではなく、過去からのPER推移という「線」で評価することです。
例えば、あるIT企業のPERが3年前は50倍だったにもかかわらず、現在は業績が伸び続けているのに15倍まで低下しているケースを考えます。
これは、会社の稼ぐ力は衰えていないのに、市場の評価だけが一時的に厳しくなっている可能性を示唆しており、お宝候補となり得ます。
| 確認項目 | チェックポイント |
|---|---|
| 過去3~5年のPER推移 | 高い水準から現在の低い水準へ低下しているか |
| 過去3~5年の業績推移 | 売上高、営業利益が右肩上がりを継続しているか |
| PER低下の理由 | 業績悪化ではなく、相場全体の地合い悪化や一時的な懸念材料によるものか |
| 組み合わせ | 「業績↑、PER↓」のパターンに合致するか |
SBI証券や楽天証券のツールで過去の業績と株価指標の推移を確認し、「業績が成長しているのに評価だけが下がっている」銘柄をリストアップすることが、このステップのゴールです。
ステップ3 - 機関投資家が見逃す「時価総額」という着眼点
時価総額とは、「株価 × 発行済み株式数」で計算される企業の規模を示す指標であり、これが個人投資家の強力な武器になります。
なぜなら、運用資産が数千億円規模の機関投資家は、時価総額が例えば300億円程度の小さな会社に投資しにくいという構造的な制約があるからです。
仮に投資しても自社の運用資産全体への影響はごくわずかで、大量に買えば株価を不当につり上げてしまいます。
この「プロが見過ごしがちな領域」にこそ、お宝銘柄が眠っています。
| 項目 | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 時価総額 | 300億円 ~ 1,000億円 | 機関投資家が本格参入しにくく、個人投資家が優位性を持ちやすい |
| 流動性(売買代金) | 1日数千万円以上 | 売りたい時にスムーズに売却できるかを確認するため |
| ポテンシャル | 「低PER+成長+中小型」の組み合わせは、見直し買いが入った際の株価上昇率が大きい |
時価総額が小さいというだけで投資対象にはなりませんが、「好業績の低PER株」という条件に「中小型の時価総額」というフィルターを加えることで、将来大きく化ける可能性を秘めた銘柄に絞り込めます。
ステップ4 - 購入ボタンを押す前の最終確認チェックリスト7項目
有望な銘柄候補が見つかったら、最後に客観的な指標で最終確認を行うことが、感情的な投資判断を避けるために不可欠です。
これまで見てきた「PER水準」「業績トレンド」「時価総額」に加えて、企業の収益性やポートフォリオ内での位置づけまで含めた、7つの項目で最終チェックを行います。
| No. | チェック項目 | 確認の視点 |
|---|---|---|
| 1 | 直近のPERは市場平均・同業他社より低いか | 相対的な割安度の確認 |
| 2 | 過去3~5年の売上高・営業利益は増加トレンドか | 成長が継続しているかの確認 |
| 3 | 営業利益率は大きく崩れていないか | 稼ぐ力の安定性の確認 |
| 4 | 3~5年前と比べて、PERはどの程度低下しているか | 評価のギャップの大きさの確認 |
| 5 | 時価総額は今後の成長余地がある規模か | 将来の株価上昇ポテンシャルの確認 |
| 6 | 1日の売買代金は十分か | 流動性リスク(売りたい時に売れないリスク)の確認 |
| 7 | ポートフォリオ全体での投資比率は適切か | 1銘柄への過度な集中を避けるリスク管理 |
この7つの問いすべてに自信を持って「はい」と答えられる銘柄だけを投資対象とすることで、銘柄選定の精度を格段に高めることができます。
ポートフォリオで輝かせるための分散投資とリスク管理術
有望な低PER成長株を見つけ出す「攻め」の視点も大切ですが、長期的な資産形成のためには、築き上げた資産をいかに守るかという「守り」の視点が最も重要です。
どんなにお宝に見える銘柄でも、一つのカゴにすべての卵を盛るのは賢明ではありません。
ここでは、資産全体のリスクをコントロールしながらリターンを狙うためのコア・サテライト戦略、1銘柄への過度な集中投資を避ける具体的な投資ルール、そして冷静な判断を支える出口戦略の事前準備について、順を追って解説していきます。
これらの管理術を身につけることで、より安心して株式投資と向き合えるようになります。
資産を守りながら増やす「コア・サテライト戦略」の考え方
コア・サテライト戦略とは、ご自身の資産を「守りのコア(核)」と「攻めのサテライト(衛星)」という2つの役割に分けて運用する投資手法です。
土台を安定させることで、安心してサテライト部分での挑戦ができます。
具体的には、資産の70〜80%を占めるコア部分には、TOPIXやS&P500といった株価指数に連動するインデックスファンドを配置し、市場全体の成長を安定的に享受することを目指します。
そして、今回探しているような低PER成長株は、より高いリターンを狙うサテライト部分に、資産の10〜20%程度の範囲で組み入れましょう。
| 項目 | コア資産 | サテライト資産 |
|---|---|---|
| 役割 | 資産全体の土台作り | ポートフォリオの成長加速 |
| 割合の目安 | 70〜80% | 10〜20% |
| 具体的な商品例 | インデックスファンド(TOPIX、全世界株式など) | 低PER成長株、テーマ株など |
| 期待リターン | 市場平均並み | 市場平均を上回る |
| リスク | 相対的に低い | 相対的に高い |
この戦略を取り入れることで、万が一サテライト部分の銘柄が期待外れの結果に終わっても、資産全体が大きく傷つく事態を避けられます。
守りを固めつつ、攻めの機会をうかがうバランスの取れたポートフォリオを構築することが可能です。
1銘柄への過度な集中を防ぐ具体的な投資ルールの設定
有望な銘柄を見つけると、つい多くの資金を投じたくなりますが、それは非常に危険な行為です。
どんな優良企業であっても、予期せぬ悪材料で株価が急落する可能性はゼロではありません。
そこで重要になるのが、1銘柄あたりの投資額に上限を設けるという自分だけのルールです。
例えば、「1銘柄への投資額は、株式投資に回す資金全体の10%まで、かつ金融資産全体の5%以内」といった具体的なルールをあらかじめ設定します。
このルールがあれば、特定の銘柄の失敗がポートフォリオ全体に与えるダメージを限定的にできます。
| ルールの項目 | 設定例 | ルール設定の目的 |
|---|---|---|
| 1銘柄への投資上限 | 投資資産の10%以内、かつ総資産の5%以内 | 特定銘柄の暴落による致命的なダメージの回避 |
| 同一セクターへの集中度 | 投資資産の30%以内 | 業界特有のリスク(規制強化など)の分散 |
| ナンピン買いのルール | 下落時に買い増しは原則1回まで | 計画性のない安易な買い増しによる損失拡大の防止 |
投資判断に感情が入り込む隙を与えないためにも、このようなルールを作り、機械的に守ることが大切です。
ルールこそが、長期的に市場で生き残るための羅針盤となります。
感情的な売買を避けるための出口戦略の事前準備
株式投資では「いつ買うか」と同じくらい、「いつ売るか」の判断が重要です。
特に株価の変動が大きい低PER成長株の場合、購入する前に利益確定と損切りのシナリオ、すなわち「出口戦略」を決めておくことが、感情に流されないための鍵となります。
具体的な方法として、購入時に「株価が購入時の2倍になったら半分を売却する」「購入の根拠とした成長ストーリーが崩れたら、含み損益にかかわらず売却する」「購入価格から20%下落したら機械的に損切りする」といった複数のシナリオを手帳やメモアプリに書き出しておきましょう。
売却の条件を明確にしておくことで、株価が急騰して欲が出たときや、急落して恐怖を感じたときでも、事前に決めた計画に沿って冷静に行動できるようになります。
まとめ
この記事では,低PER銘柄のお宝株の見つけ方を実務的に解説しました。
最も重要なのはPERだけで判断せず、業績トレンドと時価総額を必ず組み合わせて判断することです。
- PERの変化を過去3〜5年で見る視点
- 売上高・営業利益の右肩上がりという業績トレンド
- 時価総額300〜1,000億円前後での絞り込みと流動性確認
- コア・サテライトを用いた分散投資とリスク管理
日々のチェックは通勤時間や週末にスクリーニングツールで過去3〜5年のPER推移と売上・営業利益の推移を確認し、本文の7項目チェックリストで候補を絞ることから始めてください。


















