ヘッジファンドとは、どのような局面でも利益を追求するファンドのことです。
投資にはリスクが付き物で、必ずしも利益が保証されているわけではありません。
だからこそ、ヘッジファンドのように「どのような局面でも利益を追求する」というスタンスには頼もしく感じるのではないでしょうか。
しかし、利益を追求するということが、常に利益を生むことを意味しているのではありません。
そこで、この記事ではヘッジファンドで大損するケースやよくある失敗事例について解説します。
また、失敗を回避するコツについても紹介するので、ぜひ参考にしてヘッジファンドを上手に使いこなしていきましょう。
ヘッジファンドでの大損とは?
すべての投資に言えますが、ヘッジファンドでの大損も投資した金額よりも受け取った(受け取れる)金額が極端に少ないこと、つまり元本割れが大きい状態を指します。
ヘッジファンドは、どのような局面でも利益を追求するファンドです。しかし、「利益を追求する」のであって「利益を生み出す」のではないため、場合によっては損失が生じることもあります。
例えば1,000万円を投資して100万円の利益があっても、手数料などを差し引くと、投資した元本を下回ってしまうこともあるでしょう。
元本割れが大きな金額となった場合は、「大損」とみなして投資方針を変えるなどの対策が必要になります。
次の章では、「大損」につながりやすいケースとしてヘッジファンドでよくある失敗事例について紹介していきます。
ヘッジファンドでよくある失敗事例
ヘッジファンドで資産を上手に増やす方もいれば、減らしてしまう方もいます。よくある失敗事例としては次の5つが挙げられます。
- 詐欺案件
- 生活に必要な資金も投資する
- ヘッジファンド自体が損失を出す
- 途中で解約して高額な手数料や損失が発生する
- 目標利回りに届かない
それぞれ具体的にどのようなケースなのか、詳しく見ていきましょう。
詐欺案件
本来であればヘッジファンドは、利益を追求するために投資のプロが手間と時間をかけて運用する金融商品です。
しかし、ヘッジファンドの中には詐欺案件もあり、まったく運用をせず実態がないケースもあります。
このような詐欺商品に投資をしてしまうと、利益を期待できないどころか、投資した資金(元本)すら失ってしまう可能性があるでしょう。
詐欺案件かどうかは、ヘッジファンドの販売会社や運用会社を調べることである程度防ぐことができます。販売会社・運用会社ともに信頼ができ、過去の運用成績も満足ができるものであれば、詐欺である可能性は低いでしょう。
また、商品を紹介するホームページやカタログに次のような言葉が記載されていないかもチェックしてみてください。
- 「絶対に儲かります」
- 「毎月、配当金が入金されます」
- 「元本保証」
- 「ご友人をご紹介ください」
これらの言葉が記載されている場合、あるいは商品説明を受けたときに担当者からこれらの言葉を聞かされたときは、「詐欺なのでは?」と疑ってみてください。
どんなに優秀なプロが運用しても、投資は状況によっては損失が生じるものです。そのため、「絶対損をしない」といっている時点で、プロが運用していない商品であると判断できるでしょう。
生活に必要な資金も投資する
投資をしても、必ずしも利益が得られるとは限りません。そのため、常に「なくなっても構わない」と思える余裕資金を使って投資をすることが望ましいといえるでしょう。
しかし、「想定される利回りが高いから」「利益が高確率で出そうだから」といった理由で、老後資金や教育資金、住宅ローンの頭金などの目的で用意していた資金を投資に回してしまうケースもあります。
うまくいけばよいのですが、失敗し、資産を減らしてしまうことにもなりかねません。教育資金が大きく減り、子どもの進路をやむなく制限する必要が生じることもあるでしょう。
生活に必要な資金はもちろんのこと、教育や老後などの目的で貯めている資金も投資に使わないようにしましょう。
ヘッジファンド自体が損失を出す
ヘッジファンドの平均利回りは7~12%ほどとされてはいますが、これは「最低でも7%の利回りを得られる」という意味ではありません。「多くの投資家が7~12%の利回りを得ている」という意味なので、7%よりも低い利回りのケースもあれば、12%よりも高い利回りのケースもあります。
例えばノーベル経済学賞受賞者であるマイロン・S・ショールズやロバート・マートンが率いるヘッジファンドとして名を馳せたLTCM。このファンドは、優れた金融理論に基づき運用成績を上げていました。
しかし、1997年のアジア通貨危機や翌年のロシア通貨危機のダメージを受け、1998年には5.5億ドルもの巨額の損失を抱えて破綻しています。
もう一つの有名な事例としては、アメリカの大手投資銀行であるベア・スターンズは、サブプライムローンにより巨額の損失を被り、経営破綻しました。
ベア・スターンズの倒産はあまりにも急激に起こったため、アメリカ国内外に強いインパクトを与えています。
ヘッジファンドに投資をするときは、
「ヘッジファンド自体が損失を出す可能性」、場合によっては「ファンド自体が倒産し、価値がなくなる可能性」がある点にも注意が必要です。
生活に必要な資金は投入せず、使途が決まっていない余剰金を使ってヘッジファンドに投資することを原則としましょう。
途中で解約して高額な手数料や損失が発生する
自由なタイミングで売買できる株式や投資信託とは異なり、ヘッジファンドには解約時期が定められていることがあります。
ファンドが定めるタイミングで解約すれば手数料は低く抑えることができます。ただし、既定のタイミングを無視して解約すると、余計な手数料が発生し、損失につながることもあります。
なお、ヘッジファンドで解約タイミングを制限することが多いのは、投資家の資産を守る目的もあります。換金を制限することで投資コストを抑え、また、市場が混乱しているときも不用意に換金しないことでポジションの維持を可能にしています。
ヘッジファンドの契約をするときは解約タイミングについても確認し、途中で解約する必要が生じないように資金計画を立てましょう。
また、生活や教育資金などに使う予定のある資金を投入しないことでも、途中解約のリスクを減らすことができます。
特にファンドの運用結果が悪かった場合に、焦って解約してしまうと良くないパフォーマンスに加え解約コストで大損してしまう可能性があるので注意する必要があります。
目標利回りに届かない
ヘッジファンドでは、過去の運用実績などから目安となる利回りを紹介しています。投資家も運用実績などを参考にしてファンドを選ぶため、想定利回りに届いていないと失敗したと感じるかもしれません。
しかし、ほとんどのヘッジファンドは短期的に見ると価格が上下しますが、長期的に見ると上昇方向に成長しています。そのため、一時的に目標利回りに届かなくても、すぐに失敗と断定する必要はないでしょう。
ヘッジファンドで失敗しない基本
前の章で失敗事例を紹介しましたが、失敗しない可能性を高めることもできます。
ヘッジファンドで失敗しないためには、次の4つのポイントに留意して、慎重に投資を行っていきましょう。
- 商品をよく理解する
- 長期を前提に運用する
- 余裕資金で投資する
- 定期的に見直して投資判断をする
それぞれについて詳しく解説します。
商品をよく理解する
ヘッジファンドに投資をするときは、商品について深く理解することが必要です。
ただし、一般的な投資信託とは異なり、ヘッジファンドでは投資方針や戦略についての詳細な情報を公開していないことが多いです。
これは投資方針や戦略を秘匿することで競争力を優位に保っているからなのですが、投資家にとっては知りたい情報をすぐに入手できないというデメリットにつながります。
とはいえ、ヘッジファンドに関する情報を入手することが不可能というわけではありません。実際にヘッジファンドを購入する投資家に向けては、投資方針や戦略などの詳細情報を公開していることが一般的です。
インターネットでヘッジファンドの概要を見てすぐに購入するのではなく、ヘッジファンドの運用会社や販売会社の担当者と面談し、詳しい情報を入手してから投資するかどうかを決定するようにしましょう。
長期を前提に運用する
ヘッジファンドはどのような局面でも利益が出るように運用されますが、特定の短期間で利益が出るように運用されているわけではありません。
例えば投資期限が2025年であれば、2025年には利益が出るように運用されますが、それ以前のタイミングで解約すると利益があまり出ない、場合によっては元本割れになっている可能性もあります。
ヘッジファンドごとの商品特性にもよるが、短期で高利回りの商品はリスクを取った運用を行うため、損失が大きくなる傾向にあるなどの危険なものもあります。ヘッジファンドは基本的には中長期で運用することを前提としましょう。
余裕資金で投資する
先でも解説しましたが、ヘッジファンドには解約の制限が設けられていることが多く、好きなタイミングで解約できない可能性も高いです。また、解約しようと思ったタイミングで価格が下がっている可能性もあるでしょう。
使途が決まっている資金を使って投資をしていると、損失が生じるタイミングで解約しなくてはいけないという事態になりかねません。時期を見て、有利なタイミングで解約するためにも、使途が決まっていない余裕資金で投資をするようにしましょう。
定期的に見直して投資判断をする
この5年で利益を得られても、次の5年で利益を得られるとは限りません。「このヘッジファンドは常に優れた実績を上げているから」と妄信するのではなく、どんなに優れた実績を上げている商品であっても、定期的に運用成績をチェックして、投資を継続するかどうかの判断を行うようにしましょう。
とはいえ、「思うような成績ではないから」という理由で短期的に判断をしてしまうと、手数料が割高なタイミングで解約することにもなりかねません。長期的な視野を持ちつつ、柔軟にヘッジファンドの成績を判断するようにしましょう。
割高な解約手数料を回避したい場合は、各ヘッジファンドが定める解約タイミングごとに見直して調整することもおすすめです。
まとめ
ヘッジファンドはさまざまな局面で利益を生み出すように運用される投資商品ですが、大損をすることもあります。この記事では以下の内容を解説してまいりました。
- 元本が保証された投資商品ではないため、元本割れする可能性がある
- 詐欺商品であることや、運用会社が経営破綻して、投資家が大きな損失を被ることもある
- 解約時期を定められていることが多く、既定の時期以外で解約すると割高な手数料を請求されることもある
- 大損を回避するためにも、余裕資金を用いて長期的に運用することがおすすめ
- 運用の優位性を維持するために投資方針や戦略についての情報をインターネット等で公に公開していないことが多い
- 担当者に直接詳細内容について尋ね、疑問点を解消してから投資する
ヘッジファンドは他の金融商品と比べると高利回りのことが多く、上手に活用すれば資産を増やすことができます。しかし、リスクもあるので、投資する前に必要な情報を十分に入手して、商品の特徴を深く理解しておくようにしましょう。
また、解約タイミングによっては余計な手数料がかかることもあります。途中で解約せずに済むように、使途が決まっていない余裕資金を用いて投資することも大切です。