ヘッジファンドは相場に大きな影響を与えるといわれています。

それは日本の株式市場も一緒です。近年は海外投資家の売買比率が6割を超え大きな影響力を持っています。

 

もちろん海外投資家の中には中長期投資家もいますが、短期的に大きな影響を与えるのはヘッジファンドなどの短期筋です。

ヘッジファンドは決算期に向けて売り注文(買い注文)を集中させて市場の混乱要因となるといわれています。

 

実際にヘッジファンドが相場にどのような影響を与えているのか、また決算期に向けてどのようなことが起こっているのか、特に「45日ルール」というヘッジファンドのルールがあります。

この45日ルールをメインテーマに相場に与える影響を見ていきます。

 

1、ヘッジファンドの決算時期

 

ヘッジファンドの決算時期は、ファンドごとに異なるので実は詳細が分かっていません。

ただ、海外の投資家なので四半期決算を採用しているといわれています。

つまり、3月、6月、9月、12月です。一般的には6月や12月が多いと言われています。

それはヘッジファンドの顧客の中心は欧米の年金基金や金融機関・大企業の資金運用部などが多いためです。これらの決算期が6月、12月になっているため、ヘッジファンドもそれに合わせているのです。

 

ただし、統計的にこの時期が多いというだけなので、あくまでも参考程度にとどめておくことが良いでしょう。

ヘッジファンドの運用は短期がメインです。

また、資金を確保するために現金化が容易な資産を好みます。

 

つまり、流動性が高い先物などのデリバティブを駆使するのです。

日本の株式市場においても、ヘッジファンドの決算売りが始まると日経225先物主導で下落することがあります。

これは、日経225先物の流動性が高いことが原因の一因です。

 

2、ヘッジファンド本体と個々のファンドの決算時期の違い

 

ヘッジファンドというのは、複数の投資家から資金を集めて、一般の投資家では実行するのが難しい投資手法を実行していくための仕組みです。

大口の資金だからできる投資手法もあるのです。

例えば、国際分散投資や100以上の個別株に分散するといった方法です。

 

それも、買いだけでなく売りも交え、先物などのデリバティブも積極的に活用していきます。

そのようなファンドの決算がなぜ必要かというと、法務・税務・財務の面で、関係当局や出資している投資家等に決算日までのファンド内容を精査した(監査機関が確認した)書面を提出する必要があるのです。

そのために決算時期が存在しています。

 

決算時期といっても、ヘッジファンド自体の決算時期と、ヘッジファンドが運用する個別のファンドごとの決算時期があります

1つのヘッジファンドといっても運用手法を1つに限っているわけではありません。

もちろんメインのファンドはあるでしょうが、投資対象を変えたファンド、もしくは投資手法を変えたファンドがあります。

特に資産規模が数千億円以上にも達するファンドでは複数あると考えた方がいいでしょう。

 

ヘッジファンド自体の決算は6月や12月が多いものの、個別では5月や8月、10月など様々です。

設定時期や投資家の都合によっても変わってきます。

ですから、ヘッジファンドに投資するときには個別ファンドの決算時期を知っておくことが大切です。

3、ヘッジファンドの45日ルールとは

 

では、 個別のヘッジファンド毎に決算時期が異なるのならば、ヘッジファンドの決算時期を意識する必要はないのでしょうか。

実はこれは重要なことなのです。ヘッジファンドには「45日ルール」というものが存在します。

これは、ヘッジファンドに解約を申し込むときには、決算日の45日前までにしなければならないというルールです。

 

例えば決算が多いとされている12月なら、11月中旬までに解約を申し込まなければなりません。

ですから、ヘッジファンドマネージャーは投資家からの解約に備え10月頃からポジションを減らし始めます。

とくにファンドの運用成績が悪い場合は、45日前の期限が近づくにつれ、投資家から解約が相次ぐ可能性が高くなります。

ヘッジファンドは、解約に伴い投資家に資金を返す必要があるため、運用しているポジションを決済して現金を用意しなければならないのです。

 

ファンドの成績がそこまで悪くなく、解約があまりないと見込んでいる場合でも、決算前に解約が殺到してしまえばファンドの停止や焦げ付き騒ぎを起こしてしまうリスクがあります。

決算直前で資金ショートになるというリスクを回避するためにも、まとまった現金を用意しておかねばならないのです。

そうなると株価などが、特に理由がなくても急落することも起こるのです。

日経225先物などの急落も起こることがあります。

 

そして11月中旬を過ぎれば、一時止まっていたトレンドが動きだし、年末にかけて上昇するというクリスマスラリーが起こることが多くなります。

このようにヘッジファンドの決算期は相場に大きく影響します。

特に、原因がよくわからない急落が起こることがあります。

例えヘッジファンドとの関わりがない場合でも決算の時期や相場に影響する時期などは知っておいた方がいいでしょう。

4、45日ルール各月の傾向

 

45日ルールというものが存在しているのがわかりました。

それでは決算月から45日を逆算してみます。

特に多いといわれている四半期決算の3月、6月、9月、12月を決算月としてみると決済売りの時期が見えてきます。

2月、5月、8月、11月となります。それぞれの月の傾向を見ていきましょう。

 

まず、2月です。2月はあまり45日ルールが意識されない月です。

新年度が始まったばかりで解約というのも少ないのでしょう。

しかし、実は2月も株式市場は例年、下落している傾向があります。1月は1月効果と呼ばれるアノマリーがあります。

これは1月のパフォーマンスが他の月よりも高くなりやすい現象のことをいいます。

税金対策としての売りが年末に出る一方で、年明けには新規の投資資金が流入しやすいほか、大型株に比べて小型株が上昇しやすいともいわれています。

 

そして2月はこの1月効果がなくなります。

また日本でも「節分天井・彼岸底」といわれ、2月の下落は正月のご祝儀相場が一服するためと解釈されていますが、実はヘッジファンドの決算前であることも下落要因の一つなのでしょう。

 

5月はヘッジファンドの45日ルールの売りが顕著に現れる月です。

よく「セルインメイ(Sell in May)=株は5月に売れ」と言われます。

日本では5月初頭に大型連休を控えています。

国内での取引がなくなる中で、海外市場がよく動くことが多くなります。

 

5月の中旬というのが、ちょうど半期の決算前に当たります。この時期に、ヘッジファンドのポジション縮小から始まった売りが日経225先物でまとまった売りを誘い、日経平均株価が大きく下落する時があります。

 

8月の決算売りもあまり意識されていません。

もともと8月は夏枯れ相場で、株式の売買があまり行われないためです。

この時期は7月から海外市場ではサマーラリーと呼ばれる株式市場が上昇するアノマリーが知られています。

ただし、8月中旬はまたもや日本はお盆の時期で取引が薄くなります。

45日ルールと重なっている時期でもあり、売り仕掛けが入りやすい時期でもあります。

また、例年円高が進みやすくなります。

 

11月は、海外の企業の年度決算が11月末、12月末に集中しているので、この決算期を見通してのポジション縮小が起こりやすい時期です。

それは10月から始まります。例年10月中旬から11月にかけて外資系ヘッジファンドの顧客の解約が相次ぎます。

一番解約が多い時期ですので急落には気をつけなければなりません。

5、ヘッジファンドの決算による急落は必ず起こるのか

 

ただし、好調な市場環境であれば45日ルールをそれほど気にする必要はないでしょう。

それはヘッジファンドで成功報酬を計算するときは実現損益ではなく、評価損益に基づき計算されるからです。

ですからポジションを全部解消する必要はありません。

 

あくまで、運用結果が芳しくない時に投資家からの解約に備えてポジションを解消するのです。

よって、決算期に向かってヘッジファンドが売り注文(または買い注文)を集中させて市場の混乱要因となるということが必ず起こるわけではないということは理解しておきましょう。

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