資産運用をしていると「さわかみ投信」の名を聞くこともあるでしょう。
投信会社(投資信託の設計、運用を担う会社)の1つで、大手金融機関に属さない「独立系」の先駆的な存在です。
この記事にたどり着いた方は、独立系の投信会社とはいったいどんな特徴を持っているか気になっている方も多いのではないでしょうか?
そこで、本記事ではさわかみ投信とその主力商品「さわかみファンド」の評判について紹介します。運用成績についても解説するので、さわかみ投信が気になっている方はぜひ参考にしてください。
さわかみ投信とは
まずはさわかみ投信の概要を押さえましょう。
日本株独立系ファンドの先駆け
さわかみ投信は「さわかみファンド」だけを運用する投信会社です。運用開始は1999年8月24日で、独立系投信会社の草分け的な存在といえるでしょう。
- さわかみ投信(さわかみファンド):1999年8月24日
- セゾン投信(セゾン資産形成の達人ファンド):2007年3月15日
- レオス・キャピタルワークス(ひふみ投信):2008年10月1日
- 鎌倉投信(結い2101):2010年3月29日
- ポートフォリア(みのりの投信):2013年4月30日
アクティブ運用 平均を超えるリターンを目指す
さわかみファンドはいわゆる「アクティブ運用」を行う投資信託「アクティブファンド」です。一般に組入銘柄を選別し、「ベンチマーク(投信ごとに定められる運用目標)」を超えるリターンを目指すファンドを指します。
反対にベンチマークとの一致を目指す運用を「パッシブ運用」といい、パッシブ運用を行う投資信託を「パッシブファンド」、特に特定の指数に一致して連動する投資信託を「インデックスファンド」といいます(インデックス=指数)。
さわかみファンドはベンチマークを設けていませんが、2021年8月末時点で資産のほとんどは日本株で運用されています。したがって、基本的には日本株価指数の「日経平均」や「TOPIX(東証株価指数)」を超えるリターンを目指すものと考えられるでしょう。
バリュー銘柄のバイ&ホールドが運用戦略
さわかみファンドの運用手法は「バリュー銘柄のバイ&ホールド」です。「バリュー銘柄」は割安銘柄、「バイ&ホールド」は買った銘柄を長期保有する戦略を指します。つまり、大まかにまとめれば「割安銘柄に長期投資」がさわかみファンドの運用戦略といえます。
- バリュー銘柄:割安銘柄のこと。理論的な価値(=バリュー)より株価が安い銘柄
- バイ&ホールド:長期投資のこと。さわかみファンドの場合、割安解消まで保有
さわかみ投信の評判・口コミ
ここでSNSの投稿からさわかみ投信の評判を確認してみましょう。
ファンドのファンは多い
さわかみ投信の評判や口コミを調べたところ、経営理念や運用哲学に共感する投稿が多く見られました。さわかみファンドを船に、長期投資を航海に例えるメッセージが人々の心を掴んでいるようです。
私が株を始めた頃、澤上さんが日経CNBCによくでておられて、とても影響を受けました。お陰さまで株を続けることができたと思っています。とても感謝しています。
— ナツメグ (@tNkUEqG8YDLD6qT) July 3, 2021
さわかみ投信の新聞全広が好き。社員が一行でメッセージ。人生観、国家観、社会観があるなかで、直販部A氏。『このような広告を出す会社をどう思いますか?』。
— 1839号室 (@room_1839) September 16, 2021
→託したくなるでしょ。#さわかみ
運用成績にネガティブな評価
ただ、運用成績についてはネガティブな意見が散見されます。さわかみファンドがアクティブファンドということもあり、リターンは厳しい目で見られているのかもしれません。
・退任のご挨拶/沢上篤人https://t.co/WmIhAZBEg1
— ひっきー@やさ株管理人 (@hiccky0928) July 3, 2021
運用成績は…でしたが、間違いなく、独立系直販投信の礎を築いたお方です。マネー誌などでも投資に対する考え方を勉強させていただきました。
さわかみ投信の船は、これからどんな航海をしていくのでしょうか?
さわかみファンド(青)、TOPIX(ピンク)をアウトパフォームしているけど、同期間のひふみ投信(緑)のパフォーマンスを見てしまうと、さわかみ投信を買う理由がないなぁ。 pic.twitter.com/jrsfX5BJ80
— らんぶる (@ramblelazy) July 2, 2021
さわかみファンドの運用成績については次章で詳しく確認しましょう。
さわかみファンドの運用成績
ここではさわかみファンドの運用成績について具体的にご紹介します。
22年で3倍のリターンを得た
さわかみファンドの基準価額は2021年8月31日で31,477円です。運用開始は1999年8月24日なので、同月同日で最も遡れるのは1999年8月31日。その日の基準価額は9,980円でした。この間分配金は1円も出ていないので、累積リターンは基準価額から単純に計算可能です。まとめると以下のようになります。
- 1999年8月31日:9,980円
- 2021年8月31日:31,477円
- 累積リターン:+215.4%(約3.15倍)
- 実績利回り:+5.35%
さわかみファンドは22年間で3倍以上のリターンを残したようです。利回りに直すと5%以上あり、一見すると悪くなさそうです。
次は「日経平均」と運用成績を比較してみましょう。
累積リターンの比較
直近5年までの累積リターンを日経平均と比較すると、直近1年間は日経平均を超えるリターンを残しましたが、3年および5年では日経平均をわずかに下回ってしまいました。
1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | |
---|---|---|---|
さわかみファンド | 27.11% | 6.67% | 10.09% |
日経平均 | 21.39% | 7.10% | 10.71% |
期間リターンの比較
2018~2020年における各年の期間リターンを確認すると、いずれの年でも日経平均を下回っています。
2018年 | 2019年 | 2020年 | |
---|---|---|---|
さわかみファンド | ▲17.23% | 14.75% | 11.06% |
日経平均 | ▲12.08% | 18.20% | 16.01% |
リスクの比較
リターンは日経平均を下回ってしまいましたが、リスクは日経平均より小さくなりました。さわかみファンドは現金(コール・ローンなど現金同等物)ポジションも持つため、リスクは比較的下がる傾向にあるでしょう。
1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | |
---|---|---|---|
さわかみファンド | 14.49% | 18.44% | 15.29% |
日経平均 | 17.06% | 19.09% | 16.11% |
- 株式:93.32%
- 現金:6.68%
リターンをリスクで割ってみると、直近1年間は日経平均を顕著に上回りました。リスクに対して大きなリターンを稼いだといえそうです。
ただし、期間を3年、5年と長くすると日経平均との差はほぼ消えてしまいます。リスクは低いようですが、リターンも同様に下がってしまうようでは優秀な成績を残したとはいえません。
1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | |
---|---|---|---|
さわかみファンド | 1.87 | 0.36 | 0.66 |
日経平均 | 1.25 | 0.37 | 0.66 |
日経平均とリターンに大きな差はない
さわかみファンドの成績を日経平均と比較したところ、直近1年間は優秀だといえそうです。日経平均より小さなリスクで大きなリターンを稼ぎました。しかし長期間だと大きな差は見られません。
アクティブファンドは「信託報酬」が高い傾向にあります。信託報酬は運用中の費用を指し、投資家が日々負担しています。アクティブファンドは「信託報酬が高い代わりに好成績を目指す」という構造で成り立っているため、その成績は厳しく見られるでしょう。
さわかみファンドの信託報酬は1.1%で、アクティブファンドとしては決して高くありません。しかし日経平均と連動するインデックスファンドには0.154%のものもあります。パフォーマンスが同じならコストが低い銘柄を選ぶほうが合理的のため、低いリターンはさわかみファンドの課題といえるでしょう。
ヘッジファンドでの運用も検討の余地あり
さわかみファンドを検討している方は「ヘッジファンド」も選択肢に含めてみましょう。特に以下に当てはまる方はヘッジファンドが向いています。
- 市場平均を超える利回りを目指したい
- 運用をプロに任せたい
- 1,000万円以上を中長期(5~15年)預けられる
ヘッジファンドとは
ヘッジファンドは運用会社の1つです。さわかみ投信のように誰でも買える「公募型」と異なり、投資家を限定して募集する「私募型」という特徴があります。
投資家を限定しているため、1人あたりの最低投資額は大きくなります。ヘッジファンドによりますが、1,000万円以上は求められるでしょう。
また出資や解約に制限があることも一般的です。一概にはいえませんが、出資や解約タイミングは四半期に1度だけ可能なケースが多いです。出資から一定期間は解約できない「ロックアップ期間」が設けられていることもあります。
ヘッジファンドへの出資は中長期になるため、1,000万円を長く預けられる方だけが選びましょう。
ヘッジファンドの魅力
ヘッジファンド最大の魅力は「絶対収益」の追求です。これは相場の影響を受けない収益を指します。
さわかみファンドのようなアクティブファンドは一般的に「ロング(買い)」しか行いません。したがって、いかにファンドマネージャーが優秀でも、相場全体が値上がりしなければ利益獲得が難しいです。
一方ヘッジファンドは「ショート(売り)」も織り交ぜます。値下がりが予想できるときはショートで利益を得られるため、相場の上昇を待つ必要がありません。つまりファンドマネージャーの手腕次第でいつでも利益を得られるのです。
以下にヘッジファンドが用いる代表的な運用戦略をまとめました。
株式ロングショート | 値上がりが期待される株式を買う一方、値下がりが期待される株式を売る戦略。「ロング(買い)」「ショート(売り)」双方で収益機会を得られる。 |
---|---|
マーケットニュートラル | 値上がりが期待される株式をロングし、同時に市場全体にショートを仕掛ける戦略。収益は原則ロングで狙い、ショートは市場リスク相殺のために行なう。市場要因を排し、個別株独自のリターンを抽出できる。 |
アービトラージ | 同一資産が異なる価格で取引されているとき、安い価格のロングと高い価格のショートを同時に仕掛ける戦略。理論上、両者の価格差が必ず利益になる。 |
ヘッジファンド選びで確認したい3つのポイント
ヘッジファンドは一般に運用に関する情報は公開していません。ただし窓口担当者と面談を行うことで基本的な情報は開示されます。面談では以下3つのポイントを確認し、出資の判断をしましょう。
- 運用戦略
- 実績利回り
- 手数料と契約期間
運用戦略
ヘッジファンドは通常の公募ファンドにない独自の運用を行い、その戦略はヘッジファンドによってさまざまです。運用戦略によって収益機会やリスクが異なるため、必ず事前に確認しましょう。
実績利回り
過去にどれくらいの利益があったかも大切なポイントです。最大下落率など、過去の値動きも一緒に必ず確認しておきましょう。
手数料と契約期間
ヘッジファンドの手数料も重要です。出資時および解約時、また資金を預けている間の手数料について詳しく確認しておきましょう。
まとめ
本記事の内容を以下にまとめました。
- さわかみ投信は独立系投信会社の草分け
- 運用戦略はバリュー銘柄のバイ&ホールド
- 直近1年間は好成績 長期では市場平均と同じ程度
さわかみ投信は1999年から「さわかみファンド」」を運用している、独立系投信会社の草分け的な存在です。主に国内の割安銘柄に投資し、割安が解消されるまで保有し続ける「バイ&ホールド」を行います。
運用成績は、直近1年間は好成績といえるでしょう(2021年8月末時点)。日経平均より小さいリターンで大きな利回りを残しました。しかし長期で見ると大きな差はありません。市場平均と同程度の成績だとアクティブファンドとしての価値を見出しにくく、口コミではネガティブな評価も見られます。
さわかみファンドを検討している方はヘッジファンドも比較してみてください。「絶対収益」を追求する運用会社で、公募型ファンドでは得られない収益機会があります。1,000万円以上を中長期で預けられる方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか?