投資の世界では、資金をどのように分散させるかの内訳を「ポートフォリオ」と呼んでいます。
資金を1カ所にとどめておいても増えることはありません。とはいえ、1つの投資先に資金をつぎこんでもリスクが高まります。
リスクヘッジのためには複数の信頼できる投資先に資金を分散し、着実に利益を出すことが大切です。
そして、資金が大きくなればなるほど、ポートフォリオを考える作業は大変になります。
相続資産などで、急に大金が手に入る可能性はゼロではありません。
投資について基礎的な知識を学んでおき、いざというときに備えましょう。
この記事では、「遺産相続で1億円が入ってきた」と仮定して、ポートフォリオの作り方を解説していきます。
1、1億円が舞い込んできた!高額資産の主な運用方法とは?
遺産相続により1億円などの大金が舞い込んできた場合、それを資金にして運用を始めるケースが少なくありません。
「商売を始める」「会社を立ち上げる」などの選択肢もありますが、現在の仕事を辞めるつもりがないならこれらの選択肢は消えます。そこで、「投資」という形で遺産を運用していく人がたくさんいます。
投資にはさまざまな種類があり、代表的なのは「株式」です。
ただし、株式は儲かっているときの配当金こそ高いものの、市場が急落するリスクも踏まえておかなければいけません。
新たな投資先として注目を集めている「仮想通貨」にも、株式と同様のリスクはあります。
「不動産」も人気のある投資先です。
不動産の価値は株式に比べると急落する確率が低く、収支を計算しやすいのは大きなメリットです。
そのぶん、多額の資金が必要なのは懸念材料ですが、満足できる額の遺産があればこの点は解消できます。
ただし、不動産取引には登記などをはじめとする法律の知識が求められるため、投資家も基礎は学ばなければいけません。
そのほか、債券などで企業に融資するのも資産運用の方法のひとつです。
ただし、あらゆる投資先にはリスクも隠れているため、資金を1カ所に偏らせると大きな損失が生まれることもあります。
資金が高額になるほどリスクを分散させるために、緻密なポートフォリオを考えましょう。
2、そもそも遺産とはいくらくらいもらえるものなのか?
日本では、遺産相続の額は時代とともに増えていく傾向があります。
背景として、「定年を延ばして働く人が多い」「資産運用の種類が増え、老後に始める人が珍しくなくなった」などの要因が挙げられます。
2016年、内閣府の調査によれば、65歳以上の世帯主がいる家庭の平均貯蓄額は「2499万円」です。
また、2013年に旭化成ホームズ株式会社が行った調査では、高齢者の財産総額の平均は4743万3000円でした。
そのうち、不動産だけに限っても評価額の平均は3047万6000円にものぼります。
つまり、総資産で2000万~5000万ほどの遺産を相続するケースは一般的だといえるでしょう。
遺産が1億円を越えることも、決して珍しくはないのです。
せっかく遺産が入ってきても、額が多すぎると持て余してしまいがちです。
ローンなどが残っている人は返済にあてるのもひとつの方法ですが、それでも多額の遺産が手元に残ってしまう確率は高いでしょう。
そこで資産運用を行おうとしても、あわてて投資先を探したのでは失敗するリスクが増えます。
また、心ない企業、人物などにだまされて不良物件に投資させられてしまうこともありえます。
遺産相続する予定の人は、できるだけ早い段階から投資の知識を身につけておく必要があるのです。
3、遺産相続にはメリットとデメリットがある!
高額の遺産が発生した場合、相続にはさまざまなメリットがあります。
まずは、「経済状況が楽になる」のは大きなメリットです。特に、家族がいて生活費がかかる人、借金がある人などにとっては遺産を充当することができます。
また、「財産が増える」のもメリットです。現金に限らず、家や土地、債券なども立派な財産であり、生活が潤います。
ただし、遺産相続には数々のデメリットもあるので、手続きは慎重に行いましょう。
第1に、遺産を相続すると「相続税」がかかります。
資産価値のない不動産を相続する場合などは、物件に見合わないだけの税金を支払わされるケースも少なくありません。
場合によっては相続放棄をするのもひとつの決断です。
第2に「遺産分割」の面倒さです。
相続の権利を持つ人が複数いる場合、分割はトラブルの原因になりがちです。これまで仲のよかった親類が、遺産をきっかけに豹変することも十分にありえます。
遺産にまつわるデメリットを解消するには、資産運用によって額を増やすことが解決策になりえます。
生前から資産運用によって財産を増やしておけば、残された家族が相続をめぐって仲違いをする可能性を減らせるでしょう。
4、ポートフォリオはどうすればいい?具体例3つ
遺産の運用方法を決めるためには、ポートフォリオを考えます。ポートフォリオには絶対的な正解はないものの、ポイントとしては「リスクを偏らせない」ことを意識しましょう。
1つめの例として、「国内外の企業に分散させる」パターンが挙げられます。
国内の企業に投資先を集中させてしまうと、再び経済が不況におちいったときに大打撃を受けてしまいます。
ただし、国内が不況になっても逆に景気が高騰する外国はあるでしょう。
国内にこだわらず、海外の優良企業にも投資をしておけばリスクヘッジが図れます。
2つめの例は、「投資の種類を分散させる」パターンです。
比較的リスクの高い株式や不動産だけでなく、大企業の債券もポートフォリオに加えるなどしてバランスをとりましょう。
3つめの例は「ヘッジファンドや信託を利用する」パターンです。
ヘッジファンドとは、景気の上下に関係なく利潤を追求し続ける投資のプロです。
投資について知識のない素人が自力で資産運用をするより、ヘッジファンドに預けるほうが安全ともいえます。
ただし、ヘッジファンドにも質はいろいろあるので、依頼先はじっくり見定めなくてはいけません。
優良ファンドのもとでなら、堅実に資産を増やしやすくなります。
5、資産運用におけるリスク分散方法はどうやって行う?
より詳しくリスクヘッジを語るならば、まず「ロングとショートの両立」は欠かせません。
株式の世界では「買い」を「ロング」、「売り」を「ショート」と呼びます。
上昇中の銘柄に関しては積極的にロングを行い、下落すればショートを選ぶのが株式の基本です。
しかし、スキャンダルや天災といった予想もつかない要因で下落することもあるのが、株式の怖さです。
また、上昇とも下落ともつかない銘柄に、いずれかのフラグを立てるのはギャンブルになってしまいます。
そこで、資産運用においてはロングとショートを同時に使い分け、リスクを少しでも分散させるようにします。
また、「積立」など、投資方法にも工夫をしましょう。
1億円の遺産を一括で投資してしまえば、失敗したときも元手はゼロです。
再び利益を取り返そうにも資金がありません。しかし、月々の積立にしておけば、損害を少なく抑えられます。
似た方法が「ドルコスト平均法」です。
ドルコスト平均法では、投資先の市場価値の変動に合わせて、自動的に投資額が調整されていきます。つまり、市場が下落したら投資額も少なくなるため、判断の遅れによる大損害を未然に防げます。
そのほか、投資する通貨や国、業界を分散させればリスクも減っていく仕組みです。
いかなる優良銘柄であっても依存せず、複数の投資先を並行して確保するようにしましょう。
6、オススメの投資先2社
投資を任せるファンドとして、オススメの1社は「三菱UFJ国際投信」です。
グローバルに投資活動を行なっており、情報量の多さが魅力です。逐次、市場のレポートを公開しているなど投資家に対して開かれたファンドだといえるでしょう。
もう1社は「日興アセット」です。
このファンドの特徴は、新興国に対するリサーチ力です。将来的にのびしろがある国、企業をいち早く押さえ、投資活動を行なっています。長期的な資産運用を考えている人にはぴったりです。
7、1億円の遺産相続は現実にありえる!明確なポートフォリオが重要
遺産相続は人生における大きな分岐点になりえます。
1億円以上の高額を相続する可能性もあり、その後は資産運用に頭を使うことでしょう。
しかし、資産運用は一朝一夕で行えるものではありません。
常日頃から情報をリサーチし、優良な投資先を見極めておくことが大切です。
そして、投資ではリスク分散が基本です。受け継いだ遺産を管理し、次の世代に残すためにも明確なポートフォリオを考えましょう。
ヘッジファンドを利用するなど、「ギャンブル」にならない投資が理想的です。