遺産は人生でまとまった金額を受け取る数少ない機会でもあります。家族が遺した大切な資産をどう活用するか、大金を前に悩んでしまう方は少なくないでしょう。
いざというときに慌ててしまわないよう、本記事で遺産の平均額と使い道について確認しましょう。また遺産で資産運用をする場合の注意点とおすすめの商品についても紹介します。
遺産の平均は2,114万円
三菱UFJ信託銀行が楽天インサイトに委託して行った調査によると、遺産相続の平均額は2,114万円となったようです(調査期間:2018年11月27日~2018年12月3日)。
各金額別の分布は以下の通り。おおむね500~2,000万円の遺産を受け取る方が多いようです。
全体 (n=664) | 男性 (n=341) | 女性 (n=323) | |
---|---|---|---|
100万円未満 | 9.00% | 9.10% | 9.00% |
100~200万円 | 11.10% | 11.40% | 10.80% |
200~300万円 | 8.00% | 7.90% | 8.00% |
300~500万円 | 8.60% | 6.50% | 10.80% |
500~1,000万円 | 19.00% | 15.20% | 22.90% |
1,000~2,000万円 | 17.00% | 18.50% | 15.50% |
2,000~3,000万円 | 8.90% | 8.50% | 9.30% |
3,000~5,000万円 | 7.80% | 8.80% | 6.80% |
5,000~1億円未満 | 6.50% | 7.90% | 5.00% |
1億円以上 | 4.10% | 6.20% | 1.90% |
遺産の使い道5パターン
遺産の使い道はおおむね以下5つのパターンに分かれるでしょう。
- 消費する
- 貯金する
- ローンを返済する
- 保険の払い込みを終わらせる
- 資産運用する
1.消費する
買い物や旅行、マイホームの取得などに使ってしまうパターンです。お金の使い道が決まっている方の選択肢といえるでしょう。
2.貯金する
銀行預金などに預けておくパターンです。低金利のため利回りは期待できませんが、元本保証なので安心して預けられる点がメリットでしょう。使い道が決まっていない場合に、一時的な資金の預け先としても使えます。
3.ローンを返済する
住宅ローンなどの残債を繰上返済するパターンです。借入元本を減らせるため、その後の利息や返済の負担を減らせる効果があります。
4.保険の払い込みを終わらせる
民間保険の保険料に充てるパターンです。保険会社や商品・契約によって異なりますが、民間の保険は保険料をまとめて支払うことができる場合があります。その後の保険料負担がないため、家計収支に余裕が生まれるでしょう。
特に新規契約時に保険料を一括で払い込む「一時払い」は、保険期間を通じて支払い続ける「全期払い」と比較し保険料が安くなるメリットがあります。
5.資産運用する
株式など、値動きのある商品・資産に投資するパターンです。目的は貯金と似ていますが、元本が保証されておらずリスクがあり、その分リターンが期待できる点に違いがあります。
遺産の使い道に迷うなら資産運用がおすすめ
使い道に迷う場合、「使い道が決まるまで貯金しておく」と誰もが思うでしょう。しかしやはり低金利なので、2,000万円を預貯金にしておくことに抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか。
もし遺産をしばらく使う予定がないのなら資産運用を検討してみてはいかがでしょうか。リスクはありますが、預貯金以上の利回りが期待できるメリットがあります。
2,000万円を4,000万円に増やせるチャンスがある
資産運用を選択肢に含めない場合、当然ですが使い道は2,000万円の範囲内で決めなければなりません。しかし2,000万円を運用しお金を増やせば使い道の幅が広がります。一定の利回りと運用期間があれば倍の4,000万円にすることも夢ではないのです。
利回り別 2,000万円運用シミュレーション
「倍にするなんて不可能」と思うかもしれませんが、運用期間を長くすれば倍にするために必要な利回りはそう高くなりません。
例えば1年で倍にするためには100%の利回りが求められますが、10年なら7.2%、20年なら3.6%の利回りで達成できます。参考に、倍にするために必要な利回りを期間別にまとめました。
5年 | 14.40% |
---|---|
10年 | 7.20% |
15年 | 4.80% |
20年 | 3.60% |
30年 | 2.40% |
以下は倍の4,000万円にこだわらず、「一定の利回りで一定期間運用した場合、2,000万円がいくらになるか」をまとめた表です。利回りが高いほど増えるのは当たり前ですが、運用期間を長くすることでもお金が増えていることがわかるでしょう。
10年 | 15年 | 20年 | 30年 | |
---|---|---|---|---|
1% | 2,209.2万円 | 2,321.9万円 | 2,440.4万円 | 2,695.7万円 |
3% | 2,687.8万円 | 3,115.9万円 | 3,612.2万円 | 4,854.5万円 |
5% | 3,257.8万円 | 4,157.9万円 | 5,306.6万円 | 8,643.9万円 |
7% | 3,934.3万円 | 5,518.1万円 | 7,739.4万円 | 1億5,224.5万円 |
10% | 5,187.5万円 | 8,354.5万円 | 1億3,455.0万円 | 3億4,898.8万円 |
遺産で資産運用する場合の注意点
遺産で資産運用を行なう場合、以下3点に注意しましょう。
- 10カ月以内に相続税を納める
- 投資経験がないなら無理をしない
- 分散投資を心がける
10カ月以内に相続税を納める
遺産を受け取ったら、相続発生(死亡日)の翌日から10カ月以内に相続税を納めなければなりません。遺産の全額を自由に使えるわけではないため注意しましょう。
相続税は大まかに以下の手順で計算します。
- 被相続人(死亡者)の遺産全体で相続税の全体を計算
- 算出した相続税を、実際の配分割合で按分し、各相続人の相続税を算出
- 「配偶者の税額軽減」など、相続人それぞれの控除を差し引く
例えば配偶者と子2人で相続する場合の相続税の全体が100万円で、配偶者が半分、子がそれぞれ4分の1ずつ相続する場合、配偶者の相続税は50万円、子は25万円ずつ相続税を納めます。
遺産で資産運用を行なう場合、相続税を除いた金額で行なうようにしましょう。
- 財産を相続したとき|国税庁(外部サイト)
投資経験がないなら無理をしない
これまで投資した経験がない場合、いきなり資産運用に踏み切る必要はありません。知識を集めながら、「どれくらいのリスクなら取れるのか」冷静に考えてみましょう。次章でおすすめの商品をリスク別に紹介するのでそちらも参考にしてください。
分散投資を心がける
資産運用を行なう場合、なにか特定の銘柄に集中投資せず、分散投資を心がけましょう。いくつかの銘柄に分散して投資することでリスクを下げる効果が期待できます。
遺産2,000万円の運用におすすめの方法5選
遺産の運用におすすめの商品として以下5つをご紹介します。
- 【ローリスク】普通社債(シニア債)
- 【ローリスク】劣後債(CoCo債)
- 【ミドルリスク】投資信託
- 【ミドルリスク】ヘッジファンド
- 【ハイリスク】個別の株式
【ローリスク】普通社債(シニア債)
企業が発行する一般的な債券のことです。融資の次に弁済順位(発行者が債務を支払う順番)が高く、その中でも特に弁済順位が高いものを「シニア」と呼ぶことがあります。
債券は発行者が利払いと元本の償還が約束されています。発行者が破綻しない限り利回りが確定しているため、一般に低いリスクで運用可能です。
【ローリスク】劣後債(CoCo債)
弁済順位が低い債券のことです。万が一発行者が破綻した場合、普通社債よりも損失が大きくなるでしょう。その見返りとして、普通社債よりも高い利回りが設定されています。
似たものに「CoCo債(ココ債)」があります。「偶発転換社債」を指し、発行者の財務が一定水準以下まで悪化した場合に、元本の一部または全部が削減されるか、あるいは株式に転換される仕組みです。こちらも普通社債よりも利回りが高い特徴があります。
【ミドルリスク】投資信託
複数の投資家から資金を集め、株式や債券など複数の銘柄を買い、1つにまとめた商品です。投資信託だけで分散投資されているため、それぞれ個別に投資するよりもリスクが下がる傾向にあります。
リスク度合いは組み入れ銘柄次第です。株式の比率が高ければ比較的高リスクとなり、債券の比率が高ければ比較的低リスクとなります。
【ミドルリスク】ヘッジファンド
投資信託と同じく、投資家から資金を集め、代わりに運用する商品または運用会社そのものを指します。投資信託と異なり一般には流通しておらず、最低投資額も1,000万円程度と高く設定されている点が特徴的です。
ヘッジファンド最大の特徴は「絶対収益の追求」でしょう。相場の影響を受けない収益構造を指し、「売り」を組み合わせることで下落相場でも利益の機会があります。ファンドマネージャーの腕次第でいつでも利益を獲得できる点が強みです。
【ハイリスク】個別の株式
個別の株式に直接投資する方法です。個別の株式は比較的値動きが大きく、リスクが比較的高い反面大きな利益が期待できます。分散投資は心がけるべきですが、短期的に大きく資産を増やしたい場合は有望な選択肢となるでしょう。
まとめ
本記事の内容を確認しましょう。
- 遺産の平均は2,114万円 「500~2,000万円」がボリュームゾーン
- 使い道に悩むなら資産運用がおすすめ
- 運用は相続税を除いた金額で行なう
- 自身のリスク許容度に合わせ、分散投資を前提に運用する
遺産の平均額は2,114万円で、「500~2,000万円」の遺産を受け取る方が最も多いようです。使い道はいくつかありますが、特に決まっていないなら資産運用を検討しましょう。
遺産で資産運用を行なう場合、相続税に注意しましょう。自分のリスク許容度に合わせた商品を選択し、複数の銘柄に分散投資を行なうことが基本です。