なぜ株は難しいのか?3つの理由と初心者におすすめの株式投資法

「株式は難しい」そんなイメージがあるせいか、株式取引はなかなか私たちに浸透しません。日本銀行(外部サイト)によると、2021年3月末時点でアメリカの家計は株式が37.8%を占めますが、日本はわずか10%に過ぎません。

なぜ株式は難しいのでしょうか。

本記事は、株式が難しいとされる理由を3つご紹介します。

初心者におすすめの投資法「長期分散バリュー投資」についても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

株が難しいとされる3つの理由

株が難しいとされる3つの理由

なぜ株式への投資は難しいというイメージがあるのでしょうか。さまざまな理由が考えられますが、以下3つが代表的な理由でしょう。

  • 銘柄を選ぶ必要がある
  • 投資タイミングを判断する必要がある
  • 感情が冷静な判断の邪魔をする

それぞれ解説します。

銘柄を選ぶ必要がある

「銘柄選び」は株式投資最初のハードルでしょう。2021年9月13日時点で、国内には3,700以上の銘柄が上場しています。海外まで含めればさらに多くの銘柄に投資でき、選択肢はまさに無限大です。

豊富な選択肢は本来喜ばしいことですが、初心者は選択肢が多すぎるとかえって選べない「選択のパラドックス」に陥りやすいと思われます。株式の難しさの1つといえるでしょう。

投資タイミングを判断する必要がある

銘柄を選ぶだけでも大変ですが、候補を絞り込んでもまだ株式投資はできません。次は投資タイミングを選ばなければなりません。

どんなに高成長している企業であっても、株価がすでに十分高いと判断されるときは買うべきではありません。また株式市場全体が下落すると思われるときも、基本的には投資を避けるべきです。

つまり「いい銘柄を選んで買えばいいわけではなく、タイミングも重要」だといえます。これは売りにおいても同様です。これもまた株式投資を難しくする要因の1つといえるでしょう。

感情が冷静な判断の邪魔をする

値動きに感情的になり、冷静に判断できなくなりがちな点が株式投資を最も難しくしているかもしれません。

株式投資は冷静に、客観的に行なうことが望ましいとされています。事前にルールを決める方もいるでしょう。しかし、いざ資産が上昇(または減少)すると、事前に決めたルールを忘れて場当たり的な売買をしてしまう傾向があります。

値上がりすれば「もっと上がる」と思い込み、値下がりすれば「さらに下がる」と反射的に売り、評価損になれば今度は「いつか上がる」と頑なに保有し続ける。こういった売買が典型的なパターンです。

これらの行動の問題は技術が蓄積しない点です。毎回違う投資行動を取ってしまうため検証が難しく、反省を生かせません。また妄信的に保有を続けることは大損の可能性をはらんでいるため避けたほうが無難です。

難しいかもしれませんが、株式はできるだけ冷静に売買を行うようにしましょう。

やってはいけない株式投資

やってはいけない株式投資

株式投資では感情的な売買は避けるべきだと上述しました。ここではもう少し具体的にやってはいけない投資方法を確認してみましょう。一般に、以下のような売買は望ましくないとされています。

  • 集中投資
  • 塩漬け
  • ナンピン
  • パニック売り

それぞれ解説します。

集中投資:1つの銘柄だけを買うこと

1つの銘柄に資金を集中させるとリスクが大きくなりがちです。万が一その企業が破綻してしまえば資産のすべてを失うでしょう。

株式投資は、いくつかの銘柄に資金を分ける「分散投資」を前提に考えましょう。

塩漬け:値下がり株を持ち続けること

値下がりし評価損となった株式を、損がなくなるまで持ち続けることです。資金が拘束されること、また投資判断を放棄しがちな点で望ましくありません。

株式投資では、損益よりも「今より値上がりするかどうか」のほうが大切です。仮に損失でも、さらに値下がりが想定されるなら売らなければなりません。常に将来の値動きをイメージし、値上がりが期待される銘柄のみ保有しましょう。

ナンピン:値下がり株を買い続けること

値下がりし評価損となった株式を、さらに買い増しすることです。取得単価を下げる効果があり、評価損から脱しやすくなります。

ナンピンの問題点は選択肢を狭めている点です。ほかに魅力的な株式がある可能性を考えず、1つの銘柄ばかりに資金を投じてしまうのは合理的ではありません。

別の銘柄と比較し、より値上がりが期待される銘柄にのみ買いを行いましょう。

パニック売り:値下がり時、反射的に売ってしまうこと

投資した銘柄が値下がりしたときに反射的に売却してしまうことです。

株価は一時的に大きく下落することがありますが、多くの場合は平均的な水準に戻ってくることが知られています。これを「回帰性」といいます。あまりに短期的な判断をしないようにしましょう。

ただし、避けるべきはあくまで反射的な判断であり、売ってはいけないわけではありません。冷静に分析し、「さらに値下がりが期待される」と判断したときはきちんと売りましょう。

初心者には「長期分散バリュー投資」がおすすめ

初心者には「長期分散バリュー投資」がおすすめ

やってはいけない投資法については解説しました。ではどのような投資を行なえばいいのでしょうか。

投資手法はさまざまあり一概にはいえませんが、投資初心者には「長期分散バリュー投資」をおすすめします。

長期分散バリュー投資とはどのような投資方法なのでしょうか。「バリュー投資」「長期投資」「分散投資」に分解して解説します。

バリュー投資は割安銘柄に投資する方法

「バリュー投資」とは割安銘柄に投資する方法です。割安とは、ある理論的な株価(企業本来の価値)に対し、実際の株価が安く放置されている状態を指します。

割安度を示す代表的な数値が「PER(株価収益率)」と「PBR(株価純資産倍率)」です。前者は1株あたりの利益で、後者は1株あたり純資産で株価を割り、算出します。

  • PER(株価収益率)=株価÷1株あたり利益
  • PBR(株価純資産倍率)=株価÷1株あたり純資産

PERは「買収資金回収にかかる年数」、PBRとは「解散価値」と言い換えられます。イメージしやすくするため、仮想のミニ企業を完全に買収するケースで考えてみましょう。ミニ企業は1株しか発行しておらず、利益10円・純資産200円・株価100円です。

このミニ企業を買収するには100円必要で、1年あたり利益10円はすべてあなたのものです。つまり10年で買収資金100円をすべて回収できます。PERは、まさにこれを表しています。このミニ企業のPERを計算すると以下のようになり、数値は10年と一致しました。

ミニ企業のPER=株価100円÷1株あたり利益10円=10(倍)

PBRも考えてみましょう。ミニ企業が持っている純資産は200円、つまりこのミニ企業を買収後すぐに解散したとき、会社に残る純資産200円はオーナーであるあなたのものです。買収金額は100円ですから、純資産の0.5倍の金額で買収できたことになります。PBRはこれを表しており、ミニ企業のPBRは以下のようになります。

ミニ企業のPBR=株価100円÷1株あたり純資産200円=0.5(倍)

このように、PERやPBRを使うと「企業の(買収)価値に対して株価が高いのか安いのか」を判断するヒントになります。いずれも「数値が低いほど割安」というように使いましょう。

銘柄の絞り込みには「スクリーニング」が便利

割安を測る指標はほかにもたくさんあります。いくつか組み合わせて使うべきですが、銘柄ごとに調べていくのは非効率です。銘柄の絞り込みには「スクリーニング」を使いましょう。

スクリーニングは銘柄検索ツールで、ネット証券や投資情報サイトなどで提供されています。指定した条件に合致した銘柄だけを絞り込む機能があり、銘柄探しに重宝するでしょう。

長期投資を前提に投資

「長期投資」はその名の通り、投資後すぐには売らず、ある程度長い期間保有しておく投資方法です。

株価は短期的に大きく動きますが、平均的な水準に戻ってくる「回帰性」については上述しました。長期投資を行うことで比較的小さいリスクで運用できるため、初心者に向いているでしょう。

利確&損切りルールは設ける

長期投資でも、いつかは必ず売却をしなければなりません。売りには「利益確定」と「損切り」の2種類ありますが、いずれも事前にルールを決めておくといいでしょう。

いくつかの銘柄に分散投資を行う

もう1つは「分散投資」です。やってはいけない投資法で触れたように、いくつかの銘柄に分けて投資を行う方法です。集中投資よりもリスクを下げる効果が期待できるでしょう。

まとめると「長期分散バリュー投資」は、「複数の割安銘柄にできるだけ長く投資する」という方法です。割安の仕組みは初心者でも理解しやすく、また長期分散投資でリスクが下がる点も初心者に向くでしょう。

初心者におすすめの証券会社

初心者におすすめの証券会社

株式投資を始めるには証券会社で口座を開設しなければなりません。ここでは以下2つのタイプに分け、2社ずつ計4社を紹介します。

証券会社の種類
総合ネット証券 株式のほか、投資信託や債券など、さまざまな商品を豊富に取り扱う。
例)SBI証券、楽天証券
スマホ証券 原則株式のみ取り扱う(わずかに投資信託を取り扱うケースも)。取引所を介さない「相対取引」で1株単位取引を提供していることが多い。
例)PayPay証券、LINE証券

4社の株式の取り扱いを以下にまとめました。

主要4社の株式取り扱い
国内株式の取り扱い 海外株式の取り扱い
SBI証券
(ネット)
国内上場株式すべて アメリカ、中国、韓国、ロシア、ベトナム、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア
楽天証券
(ネット)
国内上場株式すべて アメリカ、中国、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア
PayPay証券
(スマホ)
一部 アメリカ
LINE証券
(スマホ)
一部
※取引所取引は国内上場株式すべて

SBI証券

SBI証券は国内ネット証券首位の証券会社です。国内株式のほか、アメリカや中国など9カ国の外国株式を取り扱います。

PC向け取引ツール「ハイパーSBI(外部サイト)」は本来月に550円の利用料がかかりますが、条件を満たすと無料で利用できます。

楽天証券

楽天証券は主要国内ネット証券の一角です。SBI証券には劣りますが、6カ国の外国株式を取り扱います。

PC向け取引ツール「マーケットスピード(外部サイト)」は利用料無料です。株式取引を行うならぜひダウンロードしましょう。

PayPay証券

PayPay証券はスマホ証券の草分け的存在で、依然は「ワンタップバイ」という名前でした。初心者でも簡単に取引できるようシンプルな画面で設計されています。

PayPay証券は日本とアメリカ株式の一部に投資ができます。ただし取引所ではなく、PayPay証券を相手に行う「相対取引」です。取引所のルールに縛られないので1株ずつ取引することが可能です。

LINE証券

LINE証券はLINEと野村HDが共同で設立したスマホ証券です。いつものLINEで簡単に売買できる手軽さが人気です。

LINE証券は相対取引の「いちかぶ」のほか、通常の取引所取引の「現物取引」の両方に対応しています。ニーズに合わせて選びたい方はLINE証券がおすすめです。

自信がなくてプロに任せたい方はヘッジファンドも1つの選択

自信がなくてプロに任せたい方はヘッジファンドも1つの選択

これまで株式投資について解説しましたが、なかには自分で取引することに自信がない方もいるでしょう。

取引に自信がないなら「ヘッジファンド」を利用してみてはいかがでしょうか。ここではヘッジファンドの概要をご紹介します。

ヘッジファンドが良い理由

ヘッジファンドは運用会社の1つです。資産運用をプロに任せられるため、取引に自信がない方、また忙しく取引に充てる時間がない方におすすめです。

ヘッジファンド=「絶対収益」追求の運用会社

ヘッジファンドは「絶対収益」追求する点に特徴があります。相場の影響を受けない収益を指し、ヘッジファンドは「売り」取引を活用することで絶対収益の実現を目指します。

主な運用戦略

どうやってヘッジファンドが絶対収益を追求するのか、代表的な運用戦略「アービトラージ」を例に見てみましょう。

アービトラージは同一資産が2つ以上の価格で取引されているときに行なわれる戦略で、高い価格では「売り」を、安い価格では「買い」を同時に仕掛けます。理論上、両者の価格差が必ず利益になります。

例)同時期に、同商品が、異なる価格だった場合

このように、ヘッジファンドは「売り」取引を活用することで相場の影響を受けない絶対収益を追求します。必ず利益が出るわけではありませんが、「買い」のみでは得られない収益機会を持つ強みといえるでしょう。

ほかに「株式ロングショート」や応用させた「マーケットニュートラル」、また「グローバルマクロ」などが代表的な絶対収益追求の運用戦略ですが、いずれも「売り」取引を活用しています。

最低1,000万円から

ヘッジファンドは心強い存在ですが、最低投資額が比較的大きい点に気をつけねばなりません。一概にはいえませんが、1,000万円以上はないと資金を受け入れるヘッジファンドは見つけにくいです。

ヘッジファンドは運用資金に比較的余裕がある方の選択肢といえるでしょう。

まとめ

まとめ

本記事の内容を以下にまとめます。

  • 株の難しさは「銘柄選び」「投資タイミングの判断」「冷静な取引」にある
  • 初心者には「長期分散バリュー投資」がおすすめ
  • 運用に自信がないならヘッジファンドを検討

株式取引が難しいとされるのは、数ある選択肢から銘柄を選ぶ必要があり、さらにその投資タイミングの判断を冷静に行う必要があるためだと思われます。一朝一夕ではなかなか身に付かず、「株式投資は難しい」というイメージにつながっているのでしょう。

初心者の方は「長期分散バリュー投資」から始めてみてはいかがでしょうか。割安銘柄に投資する意義は理解しやすく、長期投資と分散投資でリスクも下がりやすいです。

運用に自信がない方、また運用に回す時間がない方はヘッジファンドも検討の余地があります。運用をプロに任せられるため、知識や時間がない方でも本格的な資産運用ができるでしょう。

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