「公務員の副業禁止」は有名なルールですね。
では資産運用はどうでしょうか?投資で利益を得る行為は禁止されていないのでしょうか?
結論からいうと、公務員であっても資産運用できます。多少気を付けないといけないポイントはありますが、基本的な資産運用は十分可能といえます。
なぜ公務員も資産運用していいといえるのか、また気を付けるべきポイントとはなにか、本記事ではわかりやすく解説します。資産運用を検討している公務員の方はぜひご一読ください。
公務員の副業禁止と副業と見なされる資産運用例
なぜ公務員の方が資産運用していいのか、ここでは「国家公務員法」と「地方公務員法」を引用し解説します。
公務員の副業禁止は「職務専念義務」があるから
そもそも、なぜ公務員は副業が禁止されているのでしょうか。それは、公務員には「職務に専念する義務」が法で定められているためです。以下が該当の条文です。
国家公務員法101条 (職務に専念する義務) | 職員は…その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない…。 |
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地方公務員法35条 (職務に専念する義務) | 職員は…その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。 |
副業は上記の義務に違反すると考えられるため禁止されているのです。
副業=自営または営利企業への就職 資産運用はOK
ではどのようなことが副業に該当するのでしょうか。公務員の副業を制限する具体的な条文で以下のように定められています。
国家公務員法103条 (私企業からの隔離) | 職員は…営利を目的とする私企業…を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。 |
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地方公務員法38条 (営利企業への従事等の制限) | 職員は…営利を目的とする私企業…その他人事委員会規則…で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない…。 |
つまり、副業は「営利企業への就職」または「営利目的の自営」を制限しています。株式など一般的な資産運用はこれらの規定に該当しないと考えられるため、公務員であっても可能だといえるのです。
公務員NG!副業に該当してしまう資産運用
一般的な資産運用は公務員でも可能ですが、中には「自営」と見なされ、副業に該当してしまう資産運用もあるため注意しましょう。
どのような資産運用が副業に該当してしまうのでしょうか。人事院HPから抜粋し、以下にまとめました。
不動産投資 |
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太陽光発電投資 |
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上記のような資産運用は「自営」と見なされ、承認を得ない限り公務員は禁止されているため注意しましょう。
公務員に資産運用をおすすめする2つの理由
注意点はあるものの、基本的に公務員は資産運用が可能です。むしろ本記事では、以下2つの理由から公務員の資産運用による自助努力をおすすめします。
- 資産運用が唯一の副収入
- 退職金が減少傾向
それぞれ解説します。
理由1.資産運用が唯一の副収入
冒頭からお伝えしているように、公務員は副業が禁止されています。一部の地方自治体で特定の副業のみ解禁する動きがみられるものの、まだまだ一般的とはいえません。
このことから、公務員が副収入を得られるのは資産運用だけです。収入を増やす唯一のチャンスであるため、資産運用をおすすめします。
理由2.退職金は減少傾向
もう1つの理由が、公務員の退職金減少問題です。実は公務員の退職金は近年減少しています。減少分を補うためにも、資産運用をおすすめします。
参考に、2015年と2019年における公務員の平均退職金を以下にまとめます。わずか4年で100万円前後減少していることがわかるでしょう。
公務員の平均退職金の推移(2015~2019年)
国家公務員 (定年) | 地方公務員 (25年以上勤続後の定年) | |
---|---|---|
2015年 | 2,181.3万円 | 2,333.9万円 |
2019年 | 2,090.6万円 | 2,184.6万円 |
差額 | ▲90.7万円 | ▲149.3万円 |
- 内閣人事局 退職手当の支給状況
- 総務省 地方公務員給与の実態
退職金は定年退職後の大切な生活費です。退職金の減少は、それだけ老後の生活が圧迫されてしまうことを意味します。
資産運用で少しでもお金を増やし、退職金の減少を補いましょう。
公務員が目指したい利回り
退職金の減少を資産運用で補う場合、どの程度の利回りが必要なのでしょうか。
上記で紹介した100万円の減少はあくまで平均です。少し余裕をもって200万円増やすと仮定し、資産運用および運用期間別に必要な利回りを以下にまとめました。
運用資金 | 10年 | 15年 | 20年 |
---|---|---|---|
100万円 | 11.61% | 7.60% | 5.65% |
500万円 | 3.42% | 2.27% | 1.70% |
1,000万円 | 1.84% | 1.22% | 0.92% |
運用期間が長いほど、また運用資金が大きいほど必要な利回りは下がります。資産運用で退職金の減少分を補う場合、上記の表を参考にしてください。
公務員の資産運用で注意したい3つのこと
公務員の資産運用は、公務員ならではの注意点があります。以下3つに注意しましょう。
- 副業と見なされない方法で行う
- インサイダーが疑われる企業の株は買わない
- 職務中に取引しない
それぞれ解説します。
副業と見なされない方法で行う
上述したように、資産運用の中には副業と見なされてしまうものがあります。それらの方法を避けて資産運用を行うようにしましょう。
インサイダーが疑われる企業の株は買わない
株式取引を行う場合、インサイダー取引には注意しましょう。職務で知り得た非公開の内部者情報(インサイダー情報)を使って利益を得る取引のことです。金商法で禁止されており、刑事告発や課徴金の可能性があります。
職務内容によっては内部者情報を知り得ることがあるでしょうが、インサイダー取引は絶対に行ってはいけません。内部者情報を知っているかどうかにかかわらず、職務で付き合いのある企業の株式を買わないようにし、疑われないよう心がけることが大切です。
職務中に取引しない
株式やFXは自分で取引できますが、職務中の取引はしないようにしましょう。「職務専念義務」違反が疑われ、ペナルティを負ってしまう可能性があります。
職務中の取引は極力避けるようにしましょう。
公務員におすすめのプロ一任型の資産運用
上記した注意点を考えると、公務員の資産運用は「プロに一任するタイプ」がおすすめです。副業に該当しないのはもちろん、自分で直接取引しないのでインサイダー取引や職務中の取引を行う可能性がないためです。
では、プロに一任する資産運用とはどのようなものがあるでしょうか。代表的なものが以下の2つです。
- 投資信託
- ヘッジファンド
それぞれ概要を解説します。
投資信託
投資信託は多くの投資家から資金を集め、運用会社が代わりに資産運用を行う金融商品です。銀行や証券会社などで購入することができ、原則自由に売買できます。
投資信託の運用方法は大きく2つです。「アクティブ運用」と「パッシブ運用」で、それぞれ以下のような特徴があります。
- アクティブ運用:市場平均と比較し、大きなリターンを目指す
- パッシブ運用:市場平均と同程度のリターンを目指す
端的にいえば、投資対象を選別するのがアクティブ運用、しないのがパッシブ運用です。アクティブ運用は市場平均を超えるため調査・分析を行い、売買も比較的積極的に行います。したがって高いリターンが望めますが、運用コストは高い傾向にあるでしょう。
一方パッシブ運用は市場平均と一致しさえすればいいので、株価指数などの構成銘柄を機械的に投資します。投資対象を分析する必要がないため、運用コストが低い強みがあります。その代わり、市場平均を超えるようなリターンは望めません。
両者は一長一短あり、一概にどちらが優れているか断定はできません。過去の運用実績などを確認し、慎重に判断しましょう。
ヘッジファンド
ヘッジファンドも運用会社の1つで、投資家の代わりに資産運用を行います。
投資信託と異なる点は主に以下の2点です。
- 特定の投資家からしか資金を集めない
- 「売り」を行う
ヘッジファンドは投資信託と異なり、投資家を広く募集しません。したがって広く流通しておらず、資金を預けたい場合はヘッジファンドへ直接コンタクトを取る必要があります。最低投資額が大きいこと、自由に売買できないことも特徴的です。
投資信託と大きく異なる点は運用方法にあります。投資信託は原則「買い」だけ行いますが、ヘッジファンドは「売り」も行います。このため投資信託は相場全体が下落するときは利益を得にくいですが、ヘッジファンドは下落時でも利益の獲得が可能です。
運用資金に比較的余裕があり、長期的な運用を検討している方はヘッジファンドが向いているでしょう。
公務員の資産運用はプロにおまかせ
本記事の内容を以下にまとめます。
- 公務員も資産運用できる
- 職務専念義務&インサイダー懸念から「プロ一任タイプ」がおすすめ
- 投資信託またはヘッジファンドが選択肢
公務員も資産運用は可能です。一部で例外はありますが、一般的な資産運用は副業に該当しません。
ただし、自分で取引を行うタイプは注意が必要です。公務員はインサイダー取引や職務専念義務違反を疑われるケースがあるためです。運用をプロに任せるタイプならそれらの懸念がないためおすすめします。投資信託かヘッジファンドのような商品から選び、職務に影響がない方法で資産運用を行いましょう。
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